呪霊装術   作:戦艦YAMATO

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七海ブチギレ回です


38話 愚者の末路

 

 

伏黒が3人に指示を出して動き出した。

 

虎杖は大きく振りかぶり、伏黒も剣を構えて粟坂に向かう。

美々子も拳を構えて走り出した。

 

それを見た粟坂は笑った。

「(いいぞいいぞ。エンジンかかってきたなぁ)」

「(必死の攻撃を当てても俺には効かねぇ。むしろ反撃を与える隙を作ることになる)」

 

「こいや!ガキども!」

 

パシャッ

 

菜々子のスマホのシャッター音が鳴った。

 

「こ、これは!?」

 

粟坂の体が硬直し、その隙を狙って3人が同時に攻撃

 

ドゴォッ!

 

美々子の拳が一番深くまで刺さり、粟坂は吹き飛ばされた。

 

「スッゲー吹き飛んだ!」

 

「恵が言ってた通り」

 

「このまま続けるぞ。菜々子、もう一回だ!」

 

「OK!」

 

実は伏黒は粟坂の術式に勘付いていた。

虎杖と自分の攻撃が効かない。

術式の無効化ではないのに渾の攻撃も効かない。

だけど菜々子の術式は効いた。

美々子によって巻き付いた時の縄の跡が体に残っている。

五条先生達には絶対に勝てない。

このことから粟坂の術式を【あべこべ】と想定、急いで3人に指示を出した。

結果は成功、一番力を抜いた美々子のパンチが一番効いた。

 

「ガハッ…ガキどもが〜『パシャ!ドゴッ!』っ!」

 

口から血を吐いた粟坂が顔を上げた瞬間、菜々子に撮られて、虎杖の拳が顔面をとらえた。

 

バゴーン!

 

粟坂はガードレールに吹き飛ばされて意識を失った。

伏黒の宣言通り戦いはすぐに終わった。

 

 

 

 

 

虎杖達は粟坂を縛り、帳の基を破壊した。

だが上がったのは『術師を入れない帳』だけだった。

 

 

「あれ?全部上がんない」

 

「おそらく3つで一枚か2つはダミーだったんだろ」

「だがこれで術師は渋谷を自由に動ける」

 

「この気持ち悪いジジィに色々聞きたいけど、起きないね」

「虎杖どんな力で殴ったの?ゴリラ?」

 

「菜々子、虎杖がゴリラなのは元から」

 

「違うからね!」

 

「お前ら……まぁとりあえず猪野さんと合流して……」

 

伏黒が言葉の途中でビルの方を見て目を見開いた。

 

「恵?」

 

「猪野さん!」

 

伏黒が叫んだのでビルを見ると猪野が落下していた。

 

「「「!」」」

 

伏黒は急いで鵺を出して猪野の落下の位置を変える。

虎杖が落ちてくる猪野を受け止めた。

猪野は意識を失っており、顔面はボロボロになっていた。

 

「っ!」

 

「猪野さんは!?」

 

「大丈夫…じゃねぇけど死んでない」

「ちょっと殴ってくる」

 

「虎杖!」

 

「気持ちは分かるがおさえろ!俺達の最優先事項は!」

 

「……五条先生と千鬼先生」

 

「帳は上がった。上の連中はもう逃げたかもしれねぇだろ」

 

「猪野さんを連れて一度外に出るぞ」

 

虎杖は伏黒の言葉に行こうと意気込んでいたが、深呼吸をしてなんとか抑え込んだ。

 

 

「猪野さんを頼む。俺は先に駅に向かう」

 

「(今渋谷での単独行動は…だが虎杖の力を考えると美々子と菜々子じゃついて行けない。逆に虎杖一人の方が何かと動きやすい)」

「(美々子と菜々子に猪野さんを抱えて家入先生に送ってもらっても戻ってくるのを考えると…)」

 

「…分かった。でも」

 

「分かってるよ。『死んだら殺す』だろ?」

「心配ないって、メカ丸もついてるし(まぁさっきからずっと反応してないけど)」

 

「分かってるならいい、“後でな”」

 

「頑張って〜」

 

「またね」

 

「応!」

 

 

 

 

 

 

七海が帳の外で灰原がいるであろうところに行くと、歩道橋が破壊されてそのすぐ近くに灰原が腹から血を流して倒れていた。

 

それを見た瞬間、七海は拳を握りしめた。

 

「……」

 

灰原は目を瞑っていて、いつものまっすぐな瞳はそこにはなかった。

 

七海の中で何かが湧きでてくる。

額には数本、血管が浮かび上がった

 

「……ふざけやがって」

 

 

 

 

 

 

 

〜松濤文化村ストリート 帳外〜

 

釘崎と補助監督の新田は灰原のもとへ向かっていた。

 

すると野薔薇が何かに気づき、新田を止める。

 

「新田ちゃんストップ」

 

野薔薇の視線の先には重面春太が来ていた。

 

「あー!スーツの女の子だぁ」

「うれしいなぁ」

「男ばっかで飽き飽きしてたの」

 

釘崎が金槌を構えた。

 

「新田ちゃん隠れてて、すぐ終わるから」

 

釘崎は静かな声で新田に指示を出す。

 

「ブンカムラに隠れたフリをしてそのまま東急を通り抜けて」

「口振りから灰原さんはやられてるかも、だとしたら急がないと」

 

「…ッス!釘崎サンも無理はしないで」

 

「コソコソ話?気になるじゃん」

 

そう言って重面は剣を投げる。

釘崎は叩き落とすと同時に新田は別方向へ走った。

 

「あーあ、隠れちゃった」

 

「自ら丸腰とかナメプかよ」

 

釘崎は金槌を振るが重面は寸前で避けた。

 

「危な!」

 

「あ、君前会ったね」

 

釘崎は本当は覚えているが

 

「どちら様ですか!?」

 

「!、アレェ?」

 

「?」

 

「なんだ隠れたんじゃなかったの」

 

そう言って重面は走りだした。

方向は新田が走っていった方向と同じ。

釘崎も急いで追いかけた。

 

中に入ると、新田が両足から血を流して倒れていた。

 

「新田ちゃん!」

 

ボギュッ!

 

「ガッ!」

 

重面は容赦なく倒れている新田の腹を蹴る。

 

「テメェ!」

 

釘崎が攻撃しようとした時、上から剣が落ちてきて重面の手を握った。

 

「(は?さっき落とした剣、なんで上から?)」

 

重面は剣を振るが、釘崎は避けて釘を打ち出す、

 

重面は釘を剣で逸らし、天井に当たった。

 

「簪!」

 

重面の真上に刺さった釘によって天井が崩れ、重面に落ちた。

釘崎はすぐに新田に視線を向けた。

 

「新田ちゃん」ドゴォ!

 

重面の剣が釘崎の顎をとらえた。

脳が揺れて意識が朦朧としたが、なんとか持ち堪える。

だがかなりの衝撃で少しはまともに動けない。

 

「おっ、顎入った?立てない?」

「ねぇ立てない?ねぇってば」

 

重面はしゃがんで釘崎を見つめる。

表情は完全に揶揄っていた。

 

「君さ、前に会った時よりすごく強くなったでしょ。俺最初気づかなかったもん」

「でもさぁ、ただ強いだけで勝てる世界じゃないんだよ。特に俺の術式が絡むとね」

 

重面の剣が戻ってくる。

 

「つっても俺も俺の術式のことよくわかってないんだけどね」

 

「さて、どっちから殺そうかな」

 

「(回れ口!少しでも時間を!)」

 

「テメらは何がしてぇんだよ」

 

釘崎の質問に重面はキョトンとした。

 

「あー、なんか五条悟と龍山千鬼封印したいんだって」

 

「テメェに聞いてんだよ」

 

「あっ俺?」

「…サッカーが大好きで大得意の人がさ、サッカーのない世界に生まれたらどうするかな?」

「あーダメだ。上手く言えないや。っていうか理由ってそんなに大事?」

 

「いーじゃんいーじゃん楽しいじゃん、俺が楽しければそれでいいじゃん!」

 

そして重面は笑いながら倒れている新田を斬りつける。

 

「君もそう思わない?」

 

ザクッ!

 

「あ゛」

 

なんとか立ち上がった釘崎が叫ぶ。

 

「やめろ!」

 

釘崎の制止を嘲笑うかのように重面は何度も新田の足を剣で突き刺す。

 

「やめさせてよ〜」

 

「俺にこれ以上罪をキャッ、噛んじゃった」

 

釘崎はフラフラしながらも近づいていく。

 

「フラッフラじゃん」

 

釘崎が金槌を振りかぶり、重面は余裕そうに振りかぶった時、

ガラスが割れる音が響く。

 

パシャァンッ!

 

重面春太は反射的に目を向けた。

そこには割れたガラスの向こう、逆光の中で一人の男が立っていた。

ネクタイを腕に巻き付け、静かに、しかし確実に怒りを纏った七海建人だった。

 

その姿を見て、重面の口元が緩む。

 

「……あれぇ?黒じゃないスーツも殺していいんだっけ?」

 

その軽口に七海は一切反応を見せない。ただ、無言で歩み寄ってくる。

 

「いやいや、状況見てよ?女の子が人質……あれ?」

 

重面が剣先を向けた方向に、新田の姿はなかった。

釘崎が新田を支えて、エスカレーターで下に逃がしていたのだ。

 

「……逃げちゃった」

 

残念そうな重面の声に、七海はなおも無言で歩を進める。

その表情は、怒りに染まっていた。冷静なようでいて、その奥には激情が渦巻いていた。

 

「ねえ、君、空気読んでよ。せっかくいいとこだったのに――」

 

重面は軽く剣を振るった。蹴りも交える。だが、

 

ゴッ!

 

斬撃は届かない。

蹴りも効かない。

まるで岩を相手にしているかのように、七海は微動だにしなかった。

 

「……え?」

 

次の瞬間、七海の拳が重面の顔面を撃ち抜いた。

 

ドゴォォッ!

 

重面の身体が地面を滑り、壁に叩きつけられる。

鼻から、口から、血が噴き出し、重面はふらつきながらもなんとか立ち上がった。

だが、足は震えていた。

 

「(……死んでた。今の、俺の術式なかったら、死んでた!)」

 

逃げなければそう思ったその時には、もう遅い。

七海がすでにすぐ近くまで来ていた。

 

無造作に、だが容赦なく、重面の髪を掴み上げる。

 

「……仲間の数と配置は?」

 

「……は?知らな──」

 

答える間もなく、七海の拳が腹に沈む。

 

ボッ!!

 

重面の背が反り、壁に再度叩きつけられた。

 

だがその直後

 

シュッ、と剣が飛来する。

だがそれは、釘崎が釘を刺して止めた。

 

「させねぇよ!」

 

「空気読めよぉ!!」

「んぐぇっ」

 

釘崎に重面が悪態をつくが、その瞬間七海が重面の首根っこを掴む。

 

「ここに来るまでに、何人もの補助監督が殺されていました」

 

言葉は静かだった。

だがその声音の底には、激しい怒りが宿っている。

 

「あなたですね?」

 

「ご、ごめんなさ……」

 

ドゴォォッ!!

 

謝罪の言葉を遮るように、七海の拳が重面の腹を打ち抜いた。

重面の身体は壁を突き破り、隣の建物まで吹き飛ぶ。

 

バギィン!

 

壁が崩れ、瓦礫が崩れる中、七海はその場を歩いて離れない。

ゆっくりと、しかし確実に、瓦礫に埋もれる重面へ向かって歩を進める。

 

重面の腕が瓦礫の中から伸びる。生きている。

七海はその首を掴み、地面に押しつけた。

 

「……あなたが襲った人の中には、私が“幸せになってほしい”と思っていた親友がいました」

 

拳がゆっくりと構えられる。

 

「……最近でも、子供が小学生に上がったと、嬉しそうに報告してくれたんです」

 

その表情には、一切の慈悲も、哀れみもなかった。

 

「ねぇ聞いてんの!? もうしないから!もう本当に!助け──」

 

「……灰原がまだ学生の時でした。片目と片足を失い、それでも、決して折れずに、クソみたいなこの世界を真っ直ぐ走り続けていたんです」

 

「それを、あなたは全て壊そうとした」

 

七海は静かに言い放った。

 

「私は、あなたを……許さない」

 

「安心してください。次で……終わらせてあげます」

 

「ま、待って!!」

 

重面が手を伸ばすが、

 

「くたばれ…」

 

その手が届く前に、七海の拳が振り下ろされた。

 

グシャッ……

 

重面春太の頭が潰れる音が、静かに、確実に響いた。

 

そして何も言わず、七海はその場に立ち尽くしていた。

 

血まみれのスーツのまま、怒りと悲しみを押し殺し、ただ一つの使命を果たした男のように。

 

釘崎はその七海の背中を見つめていた

 

 

 




補足の小話

灰原は重面の顔の線を一本消していたので、七海と会合した時点で重面の幸運の量は原作より少なくなっていました。
灰原は倒したと思って油断したところを後ろから刺されてしまって、やられた感じです。
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