夏油は
いや、正確には神凪の“策”に負けた。
夏油は神凪と対峙した時、冷静に相手を分析していた。
神凪蒼真の術式は『操符呪法』
札を介して五行を行使するなどの術式。
つまり札がなければ何もできなくなる。
そう考えた夏油は神凪が札をしまっている着物の袖を狙った。
戦いの最中、袖を破壊して札が破られてしまうことを確認した夏油はすぐに神凪を攻め立てようと游雲を手に向かっていくが、
──神凪は笑っていた。
夏油は「なぜ?」と思った瞬間、後ろから何かに刺されてしまった。
実は夏油と神凪が対峙してすぐに、神凪は数十枚の札を出して夏油に攻撃を仕掛けていた。
その隙をついて、
あとは簡単。
夏油が完全に神凪へ意識を向けた時に影から攻撃を加えればいい。
いつもの夏油なら、夜刀神が影に潜む瞬間を気づけていたかもしれない。
だが夏油も、五条と千鬼が封印されるだけでなく、明らかに渋谷での状況がまずいと感じており、内心かなり焦っていた。
その焦りが意識を神凪だけに向ける形になってしまい、周りへの注意が疎かになっていた。
そのあとは神凪と夜刀神に攻め立てられることになる。
もちろん抵抗するが、深手を負った体ではまともな抵抗はできず、出した呪霊も夏油が意識を飛ばしてしまうと同時に消えてしまった。
※
夏油は身体中から血が出ており、左腕に関しては本来は曲がらない、いや曲がってはいけない方向に曲げられていた。
なんとか意識を保とうとするが、負った傷から大量の血が出ているので、もう少しすればその意識を失ってしまうだろう。
神凪はしゃがみ、微笑みながら夏油に語りかける。
「残念だったね。私の札を全て無くせば勝てるという考えはとてもよかったよ」
そう言いながら、神凪は夜刀神に「あれを」と言うと、夜刀神は自分の影から頭のない鯉のような呪霊を取り出した。
本来頭があるであろうその部分には、ただ真っ黒な空洞があるだけだった。
「これは私の格納呪霊でね、札はこの呪霊に入れてるんだよ」
そう言いながら呪霊から札を取り出す。
「私の袖に入っているのは、緊急時の咄嗟に出せる用さ」
つまり、あの袖の札が全てなくなったとしても戦えたと言うことだろう。
だが神凪も特級として名が上がるほどの術師だ。これぐらいの対策はしている。
現に夏油も、心の中で「私としたことが、普通はそうだろう」と自嘲していた。
さらに神凪は語る。
「それに君も分かっているだろう。勝ち筋をわざと作るということを、私にしか意識がいかなかった時点で、君は私の策に嵌ってたんだよ」
「だがまぁ、流石の君も五条悟と龍山千鬼を封印されてしまっては、いつものようにはできないか」
神凪はやれやれと言うような仕草をして立ち上がる。
「だけどこうして君を戦闘不能にできた。あとは君の体をもらうだけだ」
そう言うと同時に札を使い、槍に変えた。
点滅する灯で怪しく銀色に光る槍の先が夏油に向けられる。
そして心臓に目掛けて突き刺そうとした瞬間、
「「!」」
何かを察知した神凪と夜刀神は瞬時に回避する。
二人が立っていたところには糸が伸びていた。
神凪と夜刀神は糸が伸びてきた方向へ目を向けると、少し顔を顰めた。
「悪いが、その男を殺されるわけにはいかないからな」
そこには神凪が会いたくない存在
──
神凪はすぐに微笑んで声をかけた。
「……やぁ、久しぶりだね。二人とも」
土蜘蛛と滝夜叉姫は眉を少しひくつかせながらも、返す。
「そうだな」
「そうですね。ついでに、そこの蛇も」
滝夜叉姫の鋭い視線の先にいる夜刀神はめんどくさそうな顔をしてため息をつく。
「はぁ……なぜお前達がここに?」
「龍山千鬼に祓われたと思ったが?」
「残念ながら、あの方は私達を調伏することを選んだようです」
「屈辱的だが、こうしてお前達とまた会うことができたからな」
その言葉聞いた神凪は内心舌打ちをした。
呪霊装術の最大のデメリットは呪霊に体を取り込まれてしまう可能性があることだ。
そうなったら最後、もがき苦しみながら死んでしまうか、最悪呪霊となってしまう。
その主な原因としては調伏した呪霊が成長することだった。
夏油の『呪霊操術』や神凪の『操符呪法』は取り込んだ時点で呪霊の成長は止まるが、『呪霊装術』はそうではない。
そのため、調伏する呪霊は選ばなくてはならないし、無闇矢鱈に調伏してはリスクが大きくなる。
実際、歴代の呪霊装術の使い手の中には慎重に取り込む者もいたが、結局は成長した呪霊に蝕まれて体が破裂するとという悲惨な死を遂げていた。
「(特級を複数取り込むだけではなく、大嶽丸も取り込んでいる。だから体に相当な負担がかかっているはず…少なくとも特級はもう調伏しないと思っていたんだが)」
「……本当に厄介だね」
「どうするんだ。神凪」
「私達で祓うしかない。ほっといたら絶対に邪魔になる」
「君は土蜘蛛を頼むよ」
神凪の提案に夜刀神は頷く。
「…承知した」
「話し合いは終わりか?だったら!」
土蜘蛛は糸を射出して夜刀神と神凪を狙った。
二人はそれを回避して神凪は滝夜叉姫に、夜刀神は土蜘蛛に向かって行った。
※
夜刀神と土蜘蛛、二人が向かい合った時空気が震えた。
不気味な震動が走り、床のコンクリートが盛り上がる。
「……本当に久しぶりだな。夜刀神」
地を這うような声。土蜘蛛の眼が、暗がりからギラリと光る。
夜刀神は眉一つ動かさず
「本当に面倒だ。あの時、祓われたほうがよかったんだがな」
蜘蛛の脚が床を叩き、鉄骨が軋む。
蜘蛛の顎から垂れるのは、濃い紫色の毒液。
「お前から受けた痛みも、あの時の屈辱も……今ここではらす!」
殺意が周囲を満たしていく。
夜刀神は笑みすら浮かべて挑発する。
「飼い主が変わって牙を剥くか。だが結局、お前はただの獣だ」
“獣”その言葉に土蜘蛛は青筋を立てた。
その瞬間、床下から無数の糸が一斉に噴き出した。
鉄骨のように硬質な糸が天井に突き刺さり、地下通路を瞬く間に封鎖する。
夜刀神の影がその場を裂くように広がり、彼の姿は闇へと沈んだ。
「俺は誰にも飼われてないどいない!」
土蜘蛛は糸を絡め、影の中へ毒を流し込む。
暗闇が波打ち、影の中から斬撃が走る。
「影を縛れると思うな!」
鋭い影の刃が、蜘蛛の脚を掠める。
ガシィン!
弾かれた火花とともに、土蜘蛛は後退する。
だが次の瞬間には天井を這い、夜刀神の死角を狙って糸を張っていた。
「またその動きか……」
夜刀神は薄く笑みを刻む。
張り巡らされた糸が壁や天井に無数の影を落とし、蛍光灯の明滅で蜘蛛の巣のように歪んで揺れる。
その中心で、土蜘蛛と夜刀神がにらみ合っていた。
「どうした、影に隠れるだけか?」
土蜘蛛の低い声が、金属音のように響く。
「……ふん」
夜刀神の姿は見えない。だが、足元を這う黒い影がわずかに揺らぎ、その中から声が漏れる。
「相変わらず、獣の吠え声は耳障りだ」
次の瞬間。
床一面に広がった影が波紋のように揺れ、土蜘蛛の八本の脚を目掛けて影の刃が伸びた。
鋭利な黒の斬撃が一気に迫る。
「甘い」
土蜘蛛は巨体にもかかわらず、不気味な速度で跳躍する。
鉄骨を蹴り、天井に張り付くと同時に毒糸を吐き出し、真下の影を覆い尽くすように塗り固めた。
ジュゥ……ッ!
闇に染み込む毒が、影の奥に潜む夜刀神を焼き立てる。
「……チッ」
影の中から舌打ち。
次の瞬間、土蜘蛛の背後から夜刀神が影を裂いて現れる。
影の刃が閃き、蜘蛛の脚の一部が削がれた。
「……ッ!」
土蜘蛛が呻き、天井から地面に落下する。
だが落下の最中に放った糸が、壁や天井に絡みつき、巨大な巣のような網を形成していた。
「やはり……」
夜刀神はわずかに警戒を強める。
次の瞬間、土蜘蛛の脚が糸を伝い、驚異的な速さで走り回った。
その動きは直線ではなく、不規則で予測不能。
まるで獲物を追い詰める蜘蛛そのものだった。
夜刀神の口元に、嘲りの笑みが浮かぶ。
「結局、力任せでしか迫れない」
「違う——」
土蜘蛛の声が響き、無数の糸が一斉に収束する。
それはただの網ではなく、影そのものを絡め取るような罠だった。
糸に触れた瞬間、夜刀神の影が軋んだ。
影が吸い込まれるように糸に絡み、自由を奪われていく。
「……なるほど」
夜刀神は動きを止めながらも、声は落ち着いていた。
「龍山千鬼に調伏されて、少しは知恵をつけたか」
ズルリ……と影の底から新たな分身が這い出て、糸を断ち切る。
束縛は一瞬で破られ、再び闇が地下に広がった。
「だが、それでも獣は獣だ」
夜刀神の姿はもう見えない。残るのは四方八方から迫る殺気だけ。
土蜘蛛は脚を広げ、毒を滴らせながら構える。
「俺を獣扱いするな……!」
轟音。
影と糸がぶつかり合い、コンクリートを抉り、柱を粉砕していく。
天井が崩れ、粉塵が視界を覆う。
粉塵が舞い、蛍光灯の光が途切れ途切れに明滅する。
光と影が交錯する度に、夜刀神の姿が掻き消え、また別の場所から現れる。
「……はぁっ!」
土蜘蛛が巨体を振るい、脚を振り下ろす。
床を貫いた衝撃でコンクリートが砕け、亀裂が広がった。
だが、そこにいたはずの夜刀神はすでに消えている。
「遅い」
囁きが背後から。
土蜘蛛が反射的に糸を放つ。
だが、絡め取ったのは影の残滓にすぎなかった。
直後、真横から鋭い影が閃き、蜘蛛の腹部を裂いた。
「グッ……!」
膿のような毒が飛び散り、壁を溶かして穴を穿つ。
「毒も、力も、どれも聞いたことはあるな」
夜刀神は淡々と呟く。
「お前とは同じ時代に生きていたが、面識はなかった。だが噂は聞いていたよ」
「都を恐怖に陥れ、名のある術師を見せしめのように苦しませながら殺し、最後は鈴鹿御前によって封印されたと」
土蜘蛛は裂かれた腹を再生しながらも、皮肉げに笑った。
「俺は知らんな。いつも影に潜んでいるから逃げ足だけは早いと聞いたことがあるぞ」
ズズ……ッ!
その言葉と同時に、床下から無数の脚が生え出した。
それは土蜘蛛自身の影ではなく、地縛呪操によって生まれた“擬似の脚”。
地面から生えたそれらが一斉に夜刀神を叩き潰そうと迫る。
「数で押すか」
夜刀神は影に沈み、地を這う脚をすり抜ける。
だが、次の瞬間。
「——そこだ」
土蜘蛛の本体が影の出口を予測して待ち構えていた。
八本の脚が交差し、影から躍り出た夜刀神を挟み撃ちにする。
脚が激突し、凄まじい火花が散る。
夜刀神の腕に裂傷が走り、血が滴った。
「……(当てられた?)」
夜刀神の目が細められる。
土蜘蛛の眼が妖しく輝き、毒の滴がコンクリートに落ちて煙を上げる。
夜刀神は口元に笑みを刻み、
「今回はここまでだ」
次の瞬間、蛍光灯が一斉に消え、地下は完全な闇に沈んだ。
光が失われ、残るは無数の糸の白と、影が溶け合った黒。
そして影がなくなり、視界が戻る頃には夜刀神の姿は無くなっていた。
「チッ…逃げ足だけは早いな」
※
渋谷駅構内に、重苦しい鼓動のような響きが満ちていく。
暗闇の奥から無数の兵の影が現れた。
鎧兜を纏った武者の群れ。
槍、弓、刀、薙刀。古の戦場を思わせる軍勢が、亡霊のように並び立つ。
その先頭に立つのは、艶やかな衣をまといながらも鬼気迫る双眸を放つ女——滝夜叉姫。
「……神凪蒼真」
その声は怒りでも嘲笑でもなく、憎悪を飲み込んだ低音。
「またしても、貴様に弄ばれるかと思うと、吐き気がする」
対する神凪は、涼やかに笑みを浮かべ、手にした札をひらりと舞わせる。
「弄ぶ? いやいや。私は君を消したかったんだよ」
「黙れ。私は父の無念を果たすためだけに、この世に在る」
滝夜叉姫が手をかざすと、武者の群れが一斉に前進を始める。
床を叩く足音が地鳴りのように構内を震わせた。
「そう来るか」
神凪は札を空中に散らし、指先で印を切る。
次の瞬間、五行の文字が浮かび上がり、火、水、木、土、金が顕現した。
それぞれはまるで人の形に変わり、五行の式神の軍が形成された。
式神達は鎧武者と対をなすかのように並び立つ。
「遊ばせておこう。……さて、君はどこまで抗えるかな」
轟音。
鎧兜の軍勢と、五行を模した式神達が衝突する。
槍と槍が砕け、刀と刃が打ち合い、火と風が爆ぜて炎柱が立ち上がる。
構内の壁はたちまち崩れ、空気は熱と呪力でひび割れたように震えた。
滝夜叉姫は戦場を指揮するように手を掲げ、軍勢の士気を一気に高める。
「我が兵よ、怒りを思い出せ! あの忌まわしき朝廷を、この世から消し去れ!」
怨霊の武者たちが咆哮を上げ、形を保てぬほど膨れ上がった呪力を刃へと変えて突撃する。
「ほう……そこまで憎しみを宿しているか」
神凪は微笑みながら、一枚の札を噛み切る。
血に濡れた札が光を放ち、神凪の分身が三体、影のように並び立った。
「ならばこちらも数で合わせよう」
本体と分身が同時に印を切り、五行の式神たちを強化する。
金属の巨兵が怨霊の槍を弾き、炎の軍勢が鎧武者を焼き払う。
分身たちはそれぞれ別の軍勢を操作し、戦場を支配するかのように動かしていく。
「……!」
滝夜叉姫の目が怒りに燃える。
「また……数で、策で、私を縛るつもりか!」
「縛る?」
神凪の笑みは崩れない。
「違うよ。君を“祓う”だけだ」
「戯言を……!!」
滝夜叉姫が両腕を広げると、背後の闇から新たな影が立ち上がった。
それは武者よりも巨大な、鬼と呼ぶに相応しい姿。
牙を剥き、血走った眼を持つ巨兵が、獣のように咆哮する。
【
「全てを薙ぎ払え」
滝夜叉姫が呟くと、鬼と化した軍勢が五行の式神を蹂躙する勢いで突撃した。
火も、風も、土も、その圧倒的な呪力の前に吹き飛ばされていく。
神凪は初めて、眉をひそめた。
「……なるほど。やはり君は厄介だね」
札を握りしめ、背後にずらりと浮かぶ新たな符の群れ。
「ならば、ここからは——優しくはないよ」
轟音。
札から生み出された五行の式神が次々と砕かれ、鬼と化した武者の軍勢が渋谷駅構内を埋め尽くしていく。
炎の兵も、金属の巨兵も、その猛攻に次第に押し返され始めていた。
「……ふむ」
神凪は静かに札を数枚、掌で弾いた。
分身たちが一斉に印を結び、再び軍勢を立て直そうとする。
だがその瞬間、滝夜叉姫が前に出た。
「札の陰に隠れて策を弄するだけか、神凪!」
怒声と共に振り上げた手が、鬼兵の咆哮と同調するように呪力を解き放つ。
烈風が吹き荒れ、符兵の軍勢をまとめて薙ぎ払った。
「……!」
神凪の袖が破れ、紙片が舞い散る。
思わず笑みを深めながら、彼は呟いた。
「これは……少し面倒だな」
滝夜叉姫の瞳がぎらりと輝く。
「面倒? お前が軽んじてきた“怨霊”の力を、思い知るがいい!」
その刹那、彼女の背後に巨大な影が顕れた。
それは鬼兵でもなく、武者の軍勢でもない。
かつて戦場を怨みで覆った“将門の怨念”そのものを象徴する黒々とした鬼気。
神凪は初めて、笑みを止める。
「……なるほど」
視線の奥に、わずかに愉悦と驚愕が混ざる。
神凪は目の前にいる存在について思い出し、改めて実感する。
日本三大怨霊のひとり、平将門。
その遠い子孫などではなく、その血を色濃く受け継ぐ娘。
彼女は元々呪詛師だったが、平安の術師達に追い詰められ自害した。
だが、ただ敗北したのではない。
あの呪術全盛期の平安において、総力を上げなければ彼女を追い詰めることはできなかった。
さらに総力を上げたにもかかわらず、彼女を仕留め損ない、自害を許してしまった。
平安で最強の一人として数えられた存在にして、その怨念で現代に“特級”呪霊として蘇った存在
──それが滝夜叉姫
「私は再び父の国を作る!例え呪霊になったとしても、その意思は変わらない!」
彼女の声に呼応するように、鬼兵たちの力がさらに膨れ上がる。
槍が鉄骨を砕き、怨霊の咆哮が駅構内を震わせる。
神凪は札を翻しながら煙を出し、呪霊の大群を出した。
滝夜叉姫が扇を振ると、鬼兵が一斉に突撃する。
神凪の分身ごと呪霊の軍勢が押し潰され、神凪の立つ床が抉れた。
だが、煙の中で声が響いた。
「今回はこれで退くことにするよ……」
煙が晴れ、呪霊と式神が殲滅された頃には神凪の姿はなかった。
「…逃しましたか……」
ここで深追いをするのは簡単、だが神凪は逃げるだけではなく、さらに策を弄してくるだろう。
夏油を一刻も早く助けなければならない現状これ以上する意味はなかった。
滝夜叉姫は顔を歪ませながらも、深追いをすることはなかった。
※
崩れた駅の地下二階。
血溜まりの中で夏油は横たわり、滝夜叉姫と土蜘蛛が周囲を警戒していた。
「神凪と夜刀神は……逃したか」
土蜘蛛が毒を吐くように呟く。
「今それは置いておきましょう。それよりも夏油傑を早く運ばないといけません」
滝夜叉姫はしゃがみ込み、夏油を見下ろした。
その瞳にはまだ怒りの火が燃えていたが、同時に義のようなものも宿している。
「(神凪の額の傷、昔父上に接触した者と似ているが…)」
彼女は静かに呟く。
「もしかしたら、この渋谷を超える呪いが起こるのかもしれませんね」
「超える、か……あの時代が再びくると?」
「勘ですよ。ただの女の勘です」
破壊された蛍光灯の下、地下は闇に沈んでいた。
ただ残されたのは、血の匂いと呪いの気配だけ。
渋谷事変の裏で繰り広げられたもう一つの激闘は、決着を見ぬまま幕を下ろした。
そろそろ渋谷事変も終盤に入ってきました。
先に言っておきますと、次の戦いで渋谷事変は概ね終わりになります。
楽しみにしていただけると幸いです。
雪女の名前は何がいい?
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冬音(ふゆね)
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澪華(れいか)
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瑠璃(るり)
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