とある影の物語   作:野良拳

5 / 5
1章
ep00「とある大型新人達との出会い」


 

 

 

  ――――――――――――――――

 

 

 わがままな王子に友達が出来てから一年が過ぎました。

 

 その間に王子は黒髪の友達を大そう気に入っていた。遊んでくれと言ったら言われた通り遊んでくれる、教えてくれといったら教えてくれる。王子が危ない時も助けてくれました。

 

 しかし、王子は何かをされてばかりで、友達に何もできていません。だから王子は何時ものわがままを言うように

 

『友よ。私はお前に友として何かをしたい。何か願いを言ってくれ』

 

 そう言いました。しかし、友達はそれに無言で首を横に振り答えます。

 

『私の望みはもう叶っています。これ以上の事はいりません』

 

 王子はその意味がわからない応答の疑問よりも、友達が自分のわがままを聞き入れなかった事に驚きました。

 

 これが友達が王子のわがままを断った最初で最後の出来事でした。

 

 

      ――絵本『わがまま王と騎士の物語』1章より

 

  ――――――――――――――――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 あの不良の抗争騒ぎからしばらく経った旧市街。そこは抗争が終わっても、相変わらず騒がしい場所だった。

 

「…はぁ」

 

 そんな光景を白髪の青年、カナタはアパートの自分の部屋の窓から眺めながら大きなため息をついた。

 

 そのため息の理由は彼の手にある紙束にあった。それは先日グレイスからもらった資料であり、その内容は“黒月≪ヘイユエ≫”についてグレイスなりに調べた事が書かれているものだ。

 厚さ的には結構な厚さでカナタが調べてきた情報以上の事も乗ってはいたが、本当に知りたい事はカナタが調べた情報とほとんど同じだった。

 

 東方街の伝説の暗殺者“銀(イン)”。一般にはいるか、いないかも謎に包まれた存在。しかし、カナタには絶対にその暗殺者が存在している確信があった。

 

(…やっぱり直接会うしか手はないか)

 

 どうやら、彼は絶対に暗殺者に聞かなければいけない事があるらしく、再び溜息をこぼしながら、心にそう誓っていた。

 

「…っと、ヤベ。そろそろ行かねぇと」

 

 カナタは自分の部屋の壁にある時計の時間を見て、支部の方に行く時間という事に気づき、資料を棚の中に終い、壁に立てかけてあった剣を掴み、部屋を出ようとドアを開けた。

 

「あ…」

 

 部屋を出て鍵を閉めようとしていると、階段の上から声が聞こえた。階段を見上げると、そこには青髪の女性がこちらを驚いた目で見ている。

 

「?…どうも」

 

 あまり見たことがない人だと思いながら、カナタは軽く頭を下げて挨拶をする。女性もそれに慌てて反応し、ペコリと挨拶を返し、そのまま横を通り過ぎていった。

 

 その女性に何故か違和感を感じ、アパートを出ていくまでカナタはジッと見つめていた。

 

「…おや?カナタ君。彼女に一目ぼれでもしたかの?」

 

 そんなカナタを見ていたのか、このアパート全員の面倒を見ている老人、タントスが声をかけてくる。

 

「――…そんなんじゃない。っていうか、タントスさん。あの人、どう見てもここで暮らしていい人じゃないぞ」

 

 カナタはタントスの言葉にジト目でそう返す。

 

 そう言う理由は先程の女性は普通の人だったからだ。もちろん、このアパートに住んでいる人は皆普通だ。しかし、それはそれなりの理由があっての事。さっきの女性には見覚えがない事、そしてあの若さなら十中八九一人暮らしだ。若い女性が住みやすいほど、旧市街は安全じゃない。

 

「ふむ…もちろんワシも言ったさ。やめといた方がいいと。それを聞いてもここに住んどる。よっぽどの理由か君のように自信があるのじゃろう」

「む…それなら問題ないか」

 

 返された言葉にカナタは一応納得する。が、

 

「うむ、お前のような人間が襲わなければな」

「しつこいぞ、爺」

 

 何時までも疑ってくるタナトスにそう言って、アパートを出て、遊撃士支部まで走るのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ep00「とある大型新人達との出会い」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「おはようさ…って、あり?」

 

 カナタが遊撃士支部のドアを開けて入って、すぐにカウンターにいるはずのミシェルがいない事に気づく。

 一瞬留守かと思ったが、ミシェルがそんな事しない事はわかっている。そして、上から話し声が聞こえた事ですぐに二階で誰かと話している事がすぐにわかった。

 こういう時は掲示板に自分への仕事を書いてるはずだと思い、掲示板を見る為に足を進めた。そして、掲示板に書かれていることは

 

“道案内”

 

「…いや、何処に誰をさ」

 

 あまりにもシンプルな仕事内容に声を出して突っ込んでしまう。これはミシェルを待って仕事内容を聞き直さなくてはいけないと思うカナタ。

 

(しかし、珍しいな。アイツがこんな初歩的なミスするなんて)

 

 そう思いながら、近くの椅子に腰をかけようとした時、玄関のドアが開かれる音がした。

 

「ごめんくださーい!」

 

 人一倍元気な声を出して入ってきたのは男女の二人組。

 一人は栗色の髪をツインテールにし、棒を持っている女性。その後ろには黒髪と赤い目が印象的で、腰に二刀の双剣をかけている男性。

 

「…へ(…見るからにして一般人ではない。しかし、こんな人たち見たことないから先輩じゃないはずだし)」

 

 一瞬いきなり入ってきた二人にフリーズしそうになるカナタ。それを察してか、後ろの黒髪の男性が声をかけてくれる。

 

「いきなりすみません。僕たち本日でこちらの支部に配属になった遊撃士なんですが」

「あ、ああ。そういうことか。えっとミシェルは今二階で誰かと話してるけど、呼んでこ…きますか?」

 

 初めて会った人には一応敬語を使うように教え込まれていたが、それを忘れていた事に途中で気づき、途中から敬語に直しながら聞く。

 

「あ、いえ。そこまで急いでいませんので…いいよね?エステル」

「うん、もちろん」

 

 どうやら上の話しが終わるまで待ってくれるらしい。というより、“エステル”って何処かで聞いた事があるカナタ。

 

「…もしかして“エステル・ブライト”さんと“ヨシュア・ブライト”さん?」

「あれ?何で知っているの?」

 

 女性の言葉、そして男性も意外そうな顔をしてる辺り、カナタが言ってる人物で当たっているらしい。

 

「ミシェルから聞きいています。確か“リベール異変”で活躍した。棒使いと双剣使いの名前だと」

「…名前と武器の順番逆じゃない?」

 

 カナタの言葉にエステルは苦笑いをしながら答える。そこに黙っていたヨシュアがに「ああ」と何かに気づいたような声をだす。

 

「君が噂の“千影”のカナタさんかな」

「…確かにその通り…なんですが、カナタ“さん”は止めろ――じゃなくて止めてください。貴方の方が年上だし、寒気が走るので」

「あははは、じゃあ私達にも敬語いらないよ、ね?」

 

 エステルはカナタの嫌な顔を見て笑いながら、そうヨシュアに同意を求める。ヨシュアもそれに頷く。

 

「あら?エステルちゃん達来てたの?」

「こんにちわ~、ミシェルさん」

 

 笑われた事が気に入らず、何か反論しようとしたが、階段を下りてきたミシェルが三人を見て驚いたような声によって止められる。

 

「ごめんなさいね。カナタ君が来ただけだと思ってたわ」

「―――おい、何気に俺に喧嘩売ってないか?」

 

 ミシェルの言葉にカナタは青筋を立て、腕を震わしながら言葉を続けようとするが、

 

「…久しぶりだな。エステルにヨシュア」

 

 再び階段の上の方から聞こえる声によって止められた。

 

「あ、アリオスさん!?」

「よかった。丁度いらしゃったんですね」

 

 エステルとヨシュアが言うとおり、降りてきたのはアリオスであり、二人はアリオスの方に近づき挨拶をしている。

 それを少し離れて見ているカナタはカウンターに戻っているミシェルに声をかける。

 

「何?知り合い?」

「ふふ、まあね、ちょっとね…でも、あの二人+アナタまでいるならクロスベル支部も安泰だわ」

 

 カナタの疑問にミシェルはそう返してくる。ミシェルの言い方だとカナタがオマケのように聞こえるが、カナタもその言い方に異論がなかった

 

 “リベール異変”…カナタが知るのはリベール中の導力器が動かなくなったという事だけだが、ミシェルから聞いた話だと、それだけじじゃ収まらない大事件だったらしい。

 それを解決に導いた遊撃士の中の一人…ではなく一組なのだ。自分より遊撃士としての実力は数倍上だとカナタも認識はしている。

 

「……あら?嬉しそうね」

 

 そんな事を思っていると、ミシェルがカナタの顔を不思議そうに声をかけてくる。

 

「ふん、まぁな。学ばせてもらうチャンスは多い方がいいし、学ぶ人も多い方がいいからな」

「あら、そう?じゃあ、今日の仕事も頼みやすいかな」

 

 カナタはミシェルの言い方に不安を覚え、ついでにさっきシフト表に書かれてあった“道案内”を思いだし、ある一つの予想を立てる。

 

「…まさか、あれを?」

 

 そう言ってカナタはエステル達を見る。結構この場に馴染んでいるし、それに三か月ぶりとか話してるし、いくらクロスベルが広いからって案内する必要はあるのだろうか?とカナタは思う。

 

「そうよ。とは言っても、大体はわかってるでしょうから、案内するっていうより彼女達の仕事を手伝ってきなさいって感じで」

「仕事?…ああ、街道周りか」

 

 カナタの言う街道周りとは遊撃士が習慣としている事だ。自分達が守る地域を実際に歩き目で見て体で感じる事をする。カナタもここに配属されてから一通り歩いている。

 

「…しかし、それなら俺いらないんじゃないか?暇な職場じゃあるまいし」

「そうね~…でも、アナタはあの子たちの戦いみといた方がいいでしょ?」

 

 ミシェルの言葉にカナタは「む」と言葉に詰まる。それを言われると辛いのだが、アリオスの時といいそこまで良くされては申し訳ない。

 

「安心しなさい。今日だけだから。明日から地獄だから」

「…ミシェル、人の心を読むな」

 

 そう言うカナタだが、ミシェルに「顔に出てるわよ」と言われ苦笑いをされては何も言えなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「それで、俺がアンタ達の案内…もとい、今日だけ補助させてもらうわけだが…」

 

 一通りの話しが終わり、エステルとヨシュアと共にカナタは支部の前通りでそう言って、二人に視線を送る。

 

「アンタ達は今日は何処に行くんだ?」

「ん~…そうね。前にマインツに行ったし、魔獣の確認がてらそっちでもいいだけど」

「鉱山町に?…ふーん」

 

 なんでまた鉱山町になんて所に?とカナタはそう思ったが、仕事で行ったのだろうと思い疑問は口には出さない。

 

「――今日はベルガード門の方とアルモリカ村の方に行かない?」

「うん、そうだね。マインツの方は明日にしよう」

 

 二人のそんな会話を聞きながら、カナタは二人…特にエステルの様子がおかしいことに気づいてはいた。が、それを敢えて疑問にせずに、話をそのまま進める。

 

「そうか、じゃあアリモリカ村の方がここから近いからそっちでいいか?」

「うん、お願い」

「よろしく」

 

 カナタの言葉に二人はそれぞれに答え、三人は足を進めた。

 

 

 

 

 それから東通りからクロスベル市を出て東クロスベル街道に入る橋を渡りきった後、カナタは腰にかけてあった片手剣を鞘から抜いて二人に声をかける。

 

「…ここから魔獣が出る。アンタ達に言う必要はないかもしれんが、用心はしとけ」

 

 カナタは一応そう言って、二人の方を見る。しかし、そこには若干引いているエステルと苦笑いをしているヨシュアが目に映った。

 

 はて?とカナタは顔を傾げる。自分が何か変な事を言ったと思ったが、すぐにそれは違うと悟った。

 

「これは俺の趣味じゃない」

 

 遊撃士の知り合いに絶対これを言ってるような気がするカナタは溜息をつく。

 

「あ、あはははは。ごめん」

 

 エステルはそう言いながら、肩にかけてた棒を外して両手で構え出している。

 ヨシュアの方もすでに双剣を抜いており、足を動かしている。

 

「…ちっ」

 

 さすがだと思いながら、カナタは剣を横に振りかぶり、体を返すと同時に一閃し、甲高い金属音を響かせた。

 鳥型の魔獣“メタルソーサ”、固い金属のような毛で覆われた鳥の魔獣。カナタの一撃では仕留めるまではいかなかったが、怯ませる事は可能にした。

 瞬間、カナタの横からヨシュアが目にもとまらないスピードで横を通りすぎて行って、そのまま怯んでいる魔獣に切りつける。

 

 

 カナタはそのスピードにも驚いていたが、その驚きはいきなり出来た影に気づき、それを変に思ったその瞬間

 

「おりゃああ!!」

「んな!」

 

 カナタの目の前に、魔獣に向けて棒を振りおろしながら、空中から落ちてきたエステルに驚愕した。

 

 魔獣はエステルの一撃によって見事に地面に埋まっていた。

 

(…俺が補助されてるよ)

 

 それを見ていたカナタは自分の未熟さが悔みながら、すぐに他の魔獣がいないか確認する。

 

 そこに再びカナタに向けて突進してくる同種の魔獣が目に入る。

 カナタは何か恨みでもあるのかと愚痴りながら、剣の刀身に集中する。

 

「方術!」

 

 カナタが叫ぶと、赤い刀身に黒い影のようなものが纏わりつく。

 

「風牙!」

 

 言葉と同時に剣を振ると、影は剣を離れ斬撃のように魔獣を襲う。その斬撃は魔獣の固い毛をものともせずに、魔獣を一撃で仕留めた。

 

 しかし、これで安心するわけにもいかない。再び周りを見て気配を探る。

 

 どうやらあの二体だけじゃないらしい。姿は見えないが、数体の魔獣の気配と視線があった。

 

「…珍しいな」

 

 それを感じとったカナタはそう呟いた。

 

「へ?何が?」

 

 それを聞いていたエステルは首をかたげる。棒を構えたままの所を見るとカナタと同じで気配と視線には気付いている。

 

「この感じ、魔獣が縄張りに入られた時の気配に似てるね…カナタ、ここって縄張りの一部?」

「いや、そんなはずないんだが」

 

 ヨシュアの言葉を否定するが、これはその言葉通りの感じだ。まるで自分達の縄張りに入ってきた物を警戒してる感じには似ているが、ここは街道だ。バスだって通る。こんな場所を縄張りにする方がおかしい。

 

「…一応ミシェルに報告しておくが、面倒だが全部狩るか?」

 

 カナタはそう二人に聞くと、ヨシュアは少し考えてそれを否定するように首を横に振る。

 

「気配からしてこれ以上攻撃は仕掛けてこないようだし、場所も場所だし、すぐに縄張りを変えると思う。それにこの手の魔獣は繁殖力が大きい。全部狩るのは無理だ」

「……なるほど、道理かもな。エステルあんたはどうなんだ?」

 

 本当はヨシュアの意見を“甘い”考えだとも思ったが、彼の言うことも通りだった為に同意し、エステルの方の意見を聞く。

 

「う~ん、ちょっとこの道を通る人が心配だけど…私もヨシュアに賛成かな。それに襲ってこない所を見ると、まだ縄張りにしたわけじゃないんじゃない?どっちかと言うと怖がってるような感じがしない?」

「む…なるほど」

 

 エステルのもっともな意見にカナタは完全に納得し足を進めた。

 

「そう言えば、さっきのって方術?」

 

 先程の戦いでカナタが使った影の斬撃を見ていたのか、エステルが声をかけてくる。

 

 方術。それは東方武術などに伝わる術の事であり、エグニマなしでアーツのような事が出来るものだ。本当の使い手になると大規模な幻術などアーツより強力な術を行使できるらしい。

 

「ああ、まぁな…まだまだ未熟だけどな」

「そんな事ないんじゃないかな?敵を倒すだけの力はあったんだし」

 

 それを聞いていたヨシュアがそう言ってくれているが、カナタはその言葉に自傷するかのように笑って答える。

 

「慰めはいいさ。俺はアンタ達が知る“方術使い”ほどの使い手じゃない。未熟は未熟だ」

 

 カナタはそう言って、溜息をつく。

 

「あれ?クルツさんの事知ってるの?」

「?何言ってんだ?Aクラスの遊撃士の名前を知っていて変じゃないだろ?強いんだから」

 

 当たり前のようにカナタは答えるが、エステルは小声で「…そうかな?」と呟き、ヨシュアも小声で「まぁ、変ではないけど」と答えている。

 

「…ふん。強者を求めるのはマコト家のゆえんだ」

 

 しっかりと聞こえているカナタは拗ねたようにそう言って足のスピードを速めた。

 

「わわわ、ごめんごめん。ちょっと意外だったから」

 

 慌ててエステルがカナタの肩を掴み、止めにかかる。ヨシュアは「マコト家?」と呟き、何かを考えている。

 どうやら、“千影のカナタ”という名は知ってるらしいが、マコトという言葉は初めて聞いたらしい。

 

「…いらん話する前に、さっさと行くぞ。今日中にベルガード門も行くなら日が暮れちまうぞ」

 

 カナタはそれを遮るかのようにそう言って、エステルの手をほどいてスタスタと足を進めた。

 

「あ、もう!ヨシュア、急ごう」

「え、あ…うん」

 

 エステルの声にヨシュアはハッとして答えて、前の二人について行きながら

 

(…武術の名門、マコト家の遊撃士?)

 

 そう疑問に思ったのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 空が赤く染まる時間。カナタは支部の二階の机に頭をのせてダウンしていた。

 

「…もうだらしないわね。エステルちゃん達は元気なまま帰っていったわよ」

 

 そんなカナタを見かねてか、ミシェルが声をかけてきた。

 

 ミシェルは簡単そう言うが、あれから色々あったのだ。手配魔獣がいたのでついでに戦闘。帰りにバスを使えばいいのに、この頃出没している狼型の魔獣の話しが気になって、それについて調べながら周ったりとか…いや、それ以前に

 

「…あの二人ってさ、本当に兄弟?」

 

 何を言ってるのかこの人は?と思う人がいるかもしれないが、それも今日二人と行動していたら当たり前の疑問かもしれない。

 

「?どういうこと?」

「いや、なんていうか、前に仕事で新婚夫婦の御守をした時に似た空気…そう、ここに居たくないっていう空気を感じた」

 

 カナタが言う通り、エステル達は仲がいい兄弟というより、どちらかと言うと彼氏彼女の関係に近い。

 

「ああ、そう言えば言ってなかったわね。あの子たち義理の兄弟で、付き合ってるわよ」

「…そんな奴等と組ませないでくれ。もう一人いるならともかく、俺一人だとあれはキツイ」

 

 カナタはそう言って更に項垂れる。

 

「…意外ね。アナタ、そういうの興味ないじゃない」

「確かにないが、あれはそれと関係あるのか?」

「まぁ、そうね…確かにああいう空気はいにくいものを感じるわね。でも、残念」

 

 カナタの言葉に一度賛同するが、すぐに不安な一言を出すミシェル。

 

「何だ?その残念って言葉は?」

「今シフト決めてるんだけど、アナタと彼女達を組ませる事が多そうだわ」

 

 ミシェルの言葉に「グフっ」と血を拭きだすような呻き声をだす。

 

「ご愁傷様。でも、アナタもラッキーじゃない?あの子たちの腕前って相当なものだったんでしょ?」

「む…その通りだが」

 

 カナタはそう言って、今日の戦闘を思いだす。エステルの棒術のキレはすごく、ヨシュアのスピードははっきり言って見えなかった。

 それ以上に驚いたのは二人のチームワークだった。正直、あれに手伝いは逆に邪魔になると思えるほどだ。

 

 

「…でも、だからと言って」

 

 ぶつぶつとカナタが唸りだす。ミシェルはそんなカナタを見てニヤリと笑い口を開く。

 

「アナタがそんな事で悩むの結構面白いから、出来るだけアナタと彼女達を組ませようかしら」

「面白がるなよ…」

 

 カナタはそう言って、頭を抱える。しかし、ミシェルにとって普段から無関心のカナタがどんな反応しても面白いらしい。頭を抱えてるカナタを見て面白そうにニヤニヤと笑っている。

 

(ここにいちゃ、このオカマにもてあそばれる!?)

 

 聞き方によっては、更に危険な言葉を頭に思い浮かべ、立ち上がる。

 

「…帰るわ」

「あら、そう?じゃあ、明日も同じ時間でお願いね」

 

 カナタの言葉にミシェルはそれだけ言って、シフト表の作成に没頭し始める。

 それを見たカナタは邪魔してはいけないと思い、出来るだけ音を立てずに階段を下りて支部を出て行った。

 

 

 

 

 

 支部を出て、カナタは背伸びをし体を伸ばし、長い息を吐く。

 

(…ヨシュア、マコト家の“真実”を知っているような感じだったな。珍しい遊撃士…ってなわけでもないか)

 

 道の途中でヨシュアの反応を思いだしながら、カナタは赤く染まり綺麗な空を見ていると

 

「うん?」

 

 何処からか視線を感じ、カナタは視線をめぐらす。しかし、誰もこちらを見ていない。一応気配を探ってみるが、こんな人通りで気配を探すほど達人じゃない。それに先程の視線もなくなっている。

 

「??……気のせいか。はぁ、どんだけ疲れてるんだよ、俺」

 

 そう言ってカナタは旧市街に向けて帰っていく。その後ろ姿を青髪の女性が遠くから見ているのに気付かずに。

 

 そして、青髪の女性は小さく

 

「あれが、マコト家の遊撃士」

 

 と呟いた。

 

 

 





あれ?ロイド君がまったく出ていない…だと。

まぁ、次回はでますよ。多分

今回、方術の設定がイマイチよくわからないので自分設定で書きました。
(空やってるはずなのに。(苦笑い))
本当に申し訳ない。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。

評価する
一言
0文字 一言(任意:500文字まで)
※評価値0,10は一言の入力が必須です。参考:評価数の上限
評価する前に 評価する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。