「間違いない…赤いガンダムです」
ソドンのブリッジからイズマ・コロニーを眺めていた男…シャリア・ブルはそう呟いた。
赤いパーソナルカラー、ブイ字アンテナ、そしてビット…その全てがあの日、最後に見たガンダムの特徴と一致する。
しかし…。
「パイロットはシャア大佐ではありませんね…」
「シャア・アズナブルって…シャリア中佐のMAVだった人ですよね?」
「コモリ少尉…」
現在のソドンクルーの一人…コモリ・ハーコート少尉がシャリアの後ろに立っていた。
「シャア・アズナブルの偽物なんて今まで何人もいました。今回も偽物なのでは?」
「パイロットは違うでしょうね。ただし機体は本物です」
今までシャア・アズナブルを追っていたソドンは幾人もの偽物を見てきた。
まさか機体だけが中立のコロニーに潜んでいるとは…。
「ともかくイズマ・コロニーに降りる準備をしてください。エグザベ君を助けなくては」
「はいっ!」
ガンダムが放った光、あの光をもう一度見ることができるなら、私は…。
シャリアはシャアのことを考え、目を瞑った。
「ここは一体…?」
目を閉じて考え事をしている間に眠ってしまったのだろうか?
シャリアはどこかのコロニーに立っていた。
ー見ての通り軍人だー
「大佐!?」
間違いない、今の声は大佐の声だ!
「大佐!どこですか!」
「あら、大佐を探していらっしゃるの?」
「!?」
気が付けばシャリアのすぐ横に一人の少女が立っていた。
黒髪と褐色の肌が美しい、どこか神秘的な印象を相手に抱かせる少女であった。
「ふふ、あの人はいつもそうなの。探そうとしても見つからなくて…」
「あなたは、シャア・アズナブルを知っているんですね!?」
「どうかしらね」
あくまでこれは夢だとシャリアは自分に言い聞かせたが、この少女を見ているとまるで本物の…違う世界に紛れ込んだかのような錯覚を覚えた。
「お願いしますレディ。どうか大佐のところへ案内していただきませんか?」
「そういう言い方嫌いです。大人っぽくって」
年下の少女と話しているはずが、まるで時間を超越した存在の掌で転がされているような気分にさせられる。
もし大佐がこの場にいたらこの少女を気に入るだろうなとシャリアは思った。
「それにまだダメなの。まだあなたが大佐のところに来るのは速すぎるわ」
「…それは一体どういうことですか?」
「物語というのは時間をかけて進めるものよ。ショートカットなんてつまらないわ」
それに、もうあなたは起きる時間でしょ?
「中佐!聞こえてますか中佐!」
「コモリ少尉…?」
気が付けばシャリアはソドンのブリッジに戻ってきてしまっていた。
「中佐がボーっとするなんて珍しいですね」
そんなに赤いガンダムが見つかったのがうれしかったんですね、とコモリが困り顔で笑っていた。
「…ええ。少し考え事をしていました。もう大丈夫です」
「あれ…もしかして中佐…怒っているんですか?」
「…?いえ、怒っていませんよ?」
上官に失礼な態度をとってしまったかと青ざめたコモリにシャリアは慌てて弁明した。
「きっと目が疲れて眉間にしわがよっていたんでしょう。ほら、私老け顔ですから」
「そ、そんなことないですよ!」
フォローを入れてくれたコモリを見ながらシャリアはさらに考えた。
夢とはいえ大佐と会う機会がなくなってしまったから自分は不機嫌になっているのか?
それとも…。
「あの少女に嫉妬している…?」
「いいのかシャア?夢でくらいあってやらなくて」
「…まだそのタイミングではあるまい」
アムロとシャアはシャリアが元の世界に戻るのを見計らって姿を現した。
今までララァが気を引いて姿を隠していたのだ。
「それにこちらから干渉しすぎるわけにはいかんだろう」
「俺に対してはララァは滅茶苦茶干渉してきてたぞ」
「うふふ」
続く