「カミーユ!会えやしないわよ!」
「カミーユ?…女の名前かと思ったが…なんだ男か」
「なめるな!カミーユが男の名前で何で悪いんだ! 俺は男だよ!」
もしもあの改札の前で…私がカミーユの名前を呼んだりしなければ…
「何故そうも簡単に人を殺すんだよ! 死んでしまえ!」
「こういう奴は生かしておいちゃいけないって、わかるはずだ!」
「……みんな、死んでいく……こ、こんな死に方、嬉しいのかよ、満足なのかよ……!」
「ヘンケン艦長やカツを殺した人を、このままにはしませんよ!」
「女たちのところへ戻るんだ!」
「大きな星が点いたり消えたりしている…。あはは、大きい! 彗星かな? いや、違う……違うな。彗星はもっと、バーって動くもんな。暑苦しいなぁ、ここ。うーん、出られないのかな?おーい、出してくださいよ。ねぇ?」
「カ、カミーユ…!」
カミーユは戦争も知らず、幸せに生きていただろうか…
「カミーユ、少しまっててね」
「………」
カミーユとファは地球の病院に訪れていた。
シャアの反乱の余波も落ちつき、地球は少しずつ再興し始めていた。
第一次ネオジオン戦争が集結し、精神崩壊から持ち直し始めたカミーユだったが、シャアの反乱以降また症状がぶり返し始めた。
無理もない…尊敬していた二人が殺し合い、行方不明になってしまったのだから……
「受付してきたわ」
「……ああ、ありがとう、ファ」
カミーユは少しずつ口数が少なくなり、うわ言を呟く回数が増えていった。
今回は知り合いの伝手を借り、地球でも有名な病院にやってきた。
(せめて二人が見つかりさえすれば……)
シャアとアムロが行方不明になって以来、手がかりすら見つかっていない。
今も二人の捜索が続いているが、果たして見つかるのだろうか……
病院での結果は芳しくなかった。
そもそもニュータイプの精神を普通の患者と同列には語れないのだ。
時間が解決するのを待つしかないというのが医者の見解であった。
それでも一縷の望みを捨てず通院生活を続けていたある日、異変がやって来た。
「”キラキラ”だ……」
「カミーユ?」
カミーユは突然”何か”を見上げ、これまで以上にうわ言を呟き始めた。
「クワトロ大尉だ…アムロさんもいる……」
「何を言っているの…!?」
「あれは白鳥かな……?いや、女の人だ、黒髪の……」
このままではいけない…!カミーユがまた連れ去られてしまう!
「カミーユ!」
ファが病院に連絡を取ろうとした時、カミーユは立ち上がった。
「ファ、少し行ってくるよ。これが最後になるかもしれないんだ」
「行かないで!カミーユ!」
カミーユはぷつりと糸が切れたように気を失った。
「……っ!?」
「なんだこのプレッシャーは!?」
シャアとアムロは突然の殺気に反応した。
以前にも迷い込んでくる者たちはいたが、今回は違う。
明らかに自分の意思で乗り込んできている!
「大尉!」
「あ、あれは!」
もう会うことはないと思っていた少年がこちらに駆けてくる。
以前のような精神状態ではありえない、軽やかな足取りで!
「なぜ彼が…!?」
「カミーユ!」
シャアは考えるより先に駆けだした。
合わせる顔がないなど考えている暇はなかった。
まずは彼と話さなければいけないと思った。
「クワトロ大尉!」
「カミーユ!」
「あんたは何をやってるんです!!!」
「うぐぅっ!」
そうだった!カミーユは口と手が同時に出るタイプだった…!
「エゥーゴを捨ててテロリストの親玉ですか!」
「ぐあっ」
「そもそも見舞いになんで来ないんです!」
「ぬふうっ」
「それとも何ですか!アクシズが見舞いの品代わりとでも言うんですか!」
「ぐえっ」
「そんな大人!修正してやる!」
「うごっ」
シャアはカミーユにボコボコにされていた。
それでも少し嬉しそうなシャアにカミーユはさらにイラっとして殴りかかった。
「落ち着くんだカミーユ!確かにそいつは情けない男だが…!」
「うるさあい!」
「ぐおっ!」
なんて理不尽な若さだ…
巻き沿いを食らったアムロはシャアを見捨てることにした。
「アムロさんと決着をつけたかった?そんなことのために地球を巻き込んだんですか?」
「うむ…」
「ダカールで偉そうに演説してた割にやることがせこいですね」
「ああ…」
「責任感とかないんですか?」
「すまない…」
シャアとカミーユはまるで空いた時間を埋めるかのように話をした。
アムロは気を遣い二人から離れていた。
「ところで最近女の子にカミーユみたいとか言ってないですよね?」
「!?」
「別に殴ったりしませんよ。もうそんな子供じゃありません」
会話の中で、カミーユはやはり自分はこの人をまだ尊敬しているんだと再確認した。
シャアもアクシズが地球に落ちなかったのはカミーユにとって良かったのだと思い直した。
「話したいことはまだありますけど……もう行きます。ファが僕を待っててくれてるんです」
「そうか…」
カミーユは立ち上がった。
その体が透けていく。
「カミーユ…君が生きていてくれて嬉しく思う。君は誰よりも優しい男だ。それ故に傷ついた。」
「買い被りすぎです」
「どうかこれからは幸せになって欲しい。」
カミーユの体はもう既に向こう側が見える程透けている。
「言われなくてもそのつもりです。ファもいるんですから」
「そうだな…」
カミーユが空へ消えていく。
「さよならは言いません!変なことを考えたら修正しに来ますから!あと、似合ってませんよ、そのオールバック!」
「なっ!」
「カミーユ!しっかりして!カミーユ!」
「ファ……もう大丈夫だよ」
カミーユが目を覚ますと泣いているファが待っていた。
「カミーユ!」
「本当にもう大丈夫なんだ…もう君を置いてどこにもいくもんか…!」
続く