今回も楽しんで貰えたら嬉しいです。
カズマは人材を増やすためにスカーモールを訪れていた。
人材を増やすのは野菜の収穫、道や水路などインフラ面の整備、バベルの活動における戦闘員を確保するためである。
元締めであるスカーアイと交渉したことにより労働者の仲介だけでなく、奴隷をおまけとしてつけてもらうことができた。
スカーアイによれば負傷したことにより傭兵として使えないとのことだが、カズマの回復魔法を使えば治療できるため問題ない。
奴隷。
現代人であるカズマからしてみれば、奴隷という言葉は、異世界ファンタジーでチート主人公が勝ちまくりモテまくりで美少女奴隷ハーレムを侍らせるという王道展開のイメージを想起させるモノであった。
もともとカズマはゲームやアニメが好きだったため、異世界で魔王退治をして欲しいというあの駄女神の話を受けたのだ。もっともチート特典としてあの女神を選択したことでそんな異世界王道展開は起きなかったが。
しかし、こっちの
もしかしたら、回復魔法をかけてくれたお礼に美女奴隷や美少女奴隷にご主人様と呼ばれながらハーレムを作れたりするかもなんて淡い期待を抱いていた。
しかし、ここはテラだ。
地上のカズデルの光景よりも酷い光景が広がっていることなど、カズマには考えられなかった。
カズマがいた異世界や日本は恵まれていたのだ。
そして、ここには都合の良い現実なんてものは無かった。
「ドクター、危ないから私のそばを離れないでね」
「大丈夫だよ、テレジア。俺には数多のスキルがあるからな。それにあいつも護衛としているからな」
「…そうね」
テレジアは頷く。
カズデル地下の深い溝に奴隷たちが鮨詰めのように積み込まれていた。
奴隷たちの微かなうめき声、源石粉塵が爆発を起こして周囲に撒き散らされる音が地下に響く。
中には四肢が欠損している者もいる。
「スカーアイのやつ、在庫処分って言っていたけど、これは酷いな」
「…」
自分が予想していたよりも酷い状況に顔を顰めるカズマ。
少し間をおいて、テレジアは尋ねる。
「…ねぇ、ドクター。本当に彼らを治すことができるの?」
「ああ、それなら安心してくれ。回復魔法は身をもって体験してきたからな」
「…わかったわ。あなたを信じるわ、ドクター。これまで私たちはあなたのしてきたことに対して驚かされてばかりだもの」
カズマは最上位回復魔法を唱える。
「『セイクリッド・ハイネス・ヒール』!!」
光が──女神から教わった奇跡が奴隷たちを包み込んだ。
苦痛が薄れていき、不思議と安らぎを得ていることを奴隷たちは感じ、意識を覚醒させる。
霞んだ視界の中、自分たちが光に包まれているのに気づいた。
目を凝らし、この光がどこから発生しているかを探した。
そして、暗がりの中で光源を見つけた。
光が少年の掌から発されているのを。
麗しき青髪の女神が微笑んでいる姿が、少年の姿と重なって見えた。
それが奴隷たちの見た幻覚かはわからない。
ただ一つ分かることは、今だけは安心して休むことができるということだった。
奴隷たちは安堵し、瞼を閉じた。
──────────────────────
「我々は見た!」
「魔王テレジアにより、異界から呼び出された女神の使い─サトウカズマがもたらした奇跡を!」
「大地に豊穣を与え、神聖な水路が引かれ、我らに女神の恵みをもたらして下さった!」
「この奇跡をみて女神を信じぬと誰が言えるだろうか!」
「源石の呪いから解放される時は近い!」
「女神アクアに祈りを捧げよ!」
「アクア様最高! アクシズ教最高! さあ、皆さんも一緒に!」
「アクア様最高! アクシズ教最高!」
サルカズ神父の語りに合わせて、信者達は叫ぶ。
信者たちの中にはサルカズだけではなく、他種族の面々がいる。
信者たちの興奮は最高潮に達し、教会の内外に歓声が響きわたる。
うーん、頭おかしい。
カズマは目の前の光景を見て思った。
なぜこんなことになってしまったんだろうか。
自分はただ回復魔法をかけて傷を治しただけなのに。
くそっ。
カズマは心の中で毒づく。
あの女神はいつも自分の予想もしないトラブルを引き起こしてきた。
その女神を信仰する宗教の信者がカズマの予想を超えるのは当然であった。
「ドクター、君はやりすぎたんだ」
「な、なんだよ。俺が悪いってのかよ」
カズマに対して詰め寄るケルシー。
「君を責めているわけではない。今回の一件で私は君に対する認識をより改めざるを得ない。君は最上位の回復魔法で彼らの傷を治療した。それは良い。負傷者を治療するのは医療に携わる者としては当然のことだ。しかし、失われた四肢の再生や重度であった鉱石病の進行具合を軽微な状態までへ治療してしまうことができてしまった。これが何を意味するのか。君ははっきりと理解しているのだろうか?テラにおいて四肢の再生は言わずもがな、鉱石病の治療法は長らく存在せず、進行を抑える治療方法しか無かった。君はテラで初めて鉱石病の症状を快方に向かわせることができた存在だ。
彼等は過酷な環境に身をおき、不治の病である鉱石病に蝕まれていて、死を座して待つしかなかった。その絶望の淵から彼等を掬い上げたのが君だ。
彼等からすれば君は救いをもたらすような神に見えても無理はないだろう」
「お、おう。もとはといえばあいつらが俺を神様みたいに崇めてきたから、矛先をそらしただけだよ。もともとあの魔法はアクアから教わったし、間接的にはアクアが助けたもんだろ。いや、俺だってアクシズ教がこいつらに刺さるとは思わなかったんだよ。ダメ人間の考え方だし」
ケルシー特有の長話に対して、カズマは少し引き気味ながら答える。
「アクシズ教の教えは君の言う通り、一般的にみれば刹那的な欲望主義に聞こえるだろう。しかし、鉱石病に罹患して未来のことなど考えれない彼等にとってその教えは一筋の光だった。その上、奇跡を起こした君が語った神。彼等が受け入れてしまっても不思議ではない。」
「うぐっ…」
「ドクター、私の言いたいことはこれで終わりだ。テレジア、後は君に任せる」
テレジアの名前を聞き、固まるカズマ。
首を錆びた機械のように動かして振り返る。
そこにはサルカズの魔王がいた。
「や、やあー、テレジアじゃないかー」
無言でカズマの肩をがっしり掴むテレジア。
「あ、あの。痛いんですけど、テレジアさん」
「…ドクターはカズデルを乗っ取る気なの?」
「いや、そんなことはしないって! 俺は元の世界に戻りたいだけだよ」
「本当に、本当の、本当なのよね!」
「本当だって!」
テレジアはサルカズが異種族と手を取り合って暮らしていける理想を望んていた。
カルト信者になって手を取り合う世界ではないのだ。
だから、テレジアは下手人であるカズマを詰めていた。
「ほら、アクシズ教のおかげで文字を勉強するサルカズたちも増えてるじゃないか!」
「ええ、本当にありがとう! ドクターのおかげよ!」
テレジアはカズマに礼を言いながら、カズマの肩を掴んで前後に激しく揺さぶる。
「うおおあああああ! 落ち着け、テレジア! お前そんなキャラじゃないだろ!」
「殿下、カズマさんを揺さぶるのはそれ以上おやめください! 」
「あなたはスカーモールの…」
声をかけたのは、スカーモールの元奴隷だったサルカズ達だ。
「はい、私達はスカーモールでカズマさんに助けられた奴隷です」
「殿下、我々は気づいたのです。ただ異種族を排斥し、同胞同士で争っているだけでは駄目なのだと…」
「あ、あなた達…」
同胞であるサルカズが異種族の怨恨を乗り越えていく姿勢に、テレジアは歓喜した。
「そうです!」
「我らがなすべきことは──」
「テラ全土にアクシズ教の教えを広げることなのです!」
「「⁉︎」」
テラ全土にアクシズ教を布教するというトンデモ発言に固まる2人。
アクシズ教布教発言をきっかけに信者達に感嘆の声が広がる。
「いや、まずはアクシズ教をカズデルの国教にすべきなのでは? それからでも遅くはないはず」
「だが同じ鉱石病に苦しんでる人達を助けるのが先決なのでは?」
信者達は次々と意見を出し始めている。
さらっと、とんでもない発言が聞こえた気がしたが、気のせいだと思いカズマは無視をする。
ここまで何の反応もしないテレジアに対して、恐る恐る声をかける。
「あ、あのー。テレジアさん?…テ、テレジア? フリーズしてる」
急激に変化するカズマの改革やバベルの活動に対応していたテレジアは疲れがたまっていた。同胞であるサルカズ達のアクシズ教布教発言が引き金となり、ショックを受けてフリーズしたのだ。
「まずは手始めにヴィクトリアから始めましょう!」
「おお!いいじゃないか、ロンディニウムとかはどうだ!」
「待て待て、クルビアやリターニアも悪くないぞ!」
信者達はどこからアクシズ教の布教を始めて行くかで盛り上がり始めている。
ケルシーはフリーズして動かないテレジアを介抱しており、カズマに対して何か言いたげな視線を向ける。
その視線に耐えられなくなり、カズマは一言発する。
「俺、なんかやっちゃいました?」
今回は結構はっちゃけちゃいました。
このすばコラボは毎回、他作品の世界にアクシズ教の汚染が始まるからね。
仕方ないですよね。
ケルシーの喋り方やテレジアの反応に、今回は凄い悩みました。
念の為キャラ崩壊とかタグにつけた方がいいですかね?
アークナイツのキャラを原作寄りにしつつ、このすばテイストを与えたいんですけど。
すごく難しい。
後、アンケート協力やここすきしていただけると執筆の参考になるので助かります!
次回も更新頑張ります!
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