空崎ヒナは幸せでなければならない   作:rilu

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やる気が消えてきてるので息抜き執筆短いです。
前話投稿後からまたアンケート始めました。どっちになるかでちょっと展開が変わります。




重さは捉える方向次第

 

「“随分と厄介なことをしてくれたね”」

『自覚はしております。しかし我々が居たからこそヒカさんは生きているということをお忘れなく』

 

私が預かることになったヒカが置いていったスマホ…その着信の名前を見た私はすぐに皆の居ない場所に移動して繋げた。

 

案の定連絡してきた黒服が私に話したことは面倒事だった。

ベアトリーチェがなにやら特殊な状態で復活したこと。手下を集めて様々な場所に襲撃を仕掛けていること。既に何人かの生徒が被害に遭っていること…

 

そして、保護施設の襲撃とアリウススクワッドに対しての襲撃もベアトリーチェの手の者によって起こされた事件だということも。

 

『よもやすぐに事は起こすまいと思っていましたが…少々見通しが甘かったようですね。想像以上に考え無しですよ、あれは』

「“そうは言ってるけど、結局私達にできる策は無いの?”」

『小手先の技は圧倒的な力の前には無力です。私ができるのは妨害程度…事前情報があまりに少なすぎるのもあり、下手に刺激すれば何が出てくるか分かりません。全く、生前はあそこまで野蛮ではなかったのですがね』

「“じゃあ何をすればいいの?”」

『目には目を、歯には歯を、力には力を…あれよりも圧倒的な力で捩じ伏せればいいんですよ』

「“…そう”」

『それと、ゲヘナとトリニティを早めに協力させておくことを推奨します。私とてあの程度の物にキヴォトス(実験場)を破壊されるのは御免ですので』

 

それだけ言い残して黒服は電話を切った。

 

「“何が起こっているっていうんだ…”」

 

救護騎士団によって運び出されるアリウス生を見ながら独り呟く。

スクワッドはとりあえず隠れてやり過ごしてもらっている。彼女たち一応指名手配犯だし…

 

…ティーパーティーと万魔殿に連絡を入れたら協力して対策してくれないだろうか。

とりあえずティーパーティーに連絡を入れてみることにした。

 

 

 

 

 

 

『あの爆破の下手人が分かった…?』

「“うん。それについて少し話をしたいんだけど”」

『分かりました。手配をしましょう。今日中は予定が合いませんので、明日でよろしいでしょうか?』

『あれー!ナギちゃん先生とお話してるの!?いいなー私もお話させて!』

「“分かった。楽しみにしてるよ”」

『ちょっとナギちゃん無視はひどいよー!』

『うるさいですねミカさん!ロール──

 

ツー。ツー。ツー。

電話が切られる。思っていたよりもさっくりアポを取れて良かった。

…ミカとはまた今度時間を取ってゆっくり喋ろう。そうしよう。

 

万魔殿にも連絡を取るべきだろうか。あーまずい疲労で頭が回らなくなってきた。

 

改めてここ最近は出来事が多すぎる。ヒカの救出のためにビルに突入してからまだ1日も経っていない。そこで一度今日中の仕事を片付けることにした。何か進展があったらまた出向こう。

セリナに別れを告げ、タクシーでシャーレへと向かう。

 


 

急いで来たと言っていたホシノと合流した私は、すぐに捜索を開始しようとした。

 

「まぁまぁ落ち着いて。こういうのは情報が大事なんだから」

 

そう言ってスマホを少しいじっている。

 

「…というかそもそも、ヒナちゃんのお姉ちゃんってどんな見た目なの?」

「言ってなかったかしら。戦闘中ころころ交代してた私じゃない方、あれがお姉ちゃんよ」

「うそぉ!?」

「今の見た目は…そうね、まっくろくろすけ?」

「どんな見た目なの…」

 

雑談をしながらネットニュースをスクロールして流している。

しばらく待っていると、興味深いネットニュースがいくつか見つかったらしい。当たりをつけて読み上げてきた。

 

「『トリニティ自治区で謎の爆発 狙いはアリウス生保護施設か』…うーん、ヒカちゃんも一応身分はゲヘナなわけだからトリニティには行かないでしょ。多分これは違う」

「そもそもなんでニュースを?」

「経験則、かなぁ。こういう時って大抵何か面倒事に巻き込まれてるから…お、これとかそれっぽくない?」

「なに…?」

 

その記事に書かれていたのは『更地になったブラックマーケット 周辺インフラに打撃』という見出し。

 

「『今日16時ごろ、ブラックマーケット一部地域が何者かの手によって大きく破壊される事件が発生した。マーケットガードは周辺の警備を強化するとともに目撃者への聞き込みを行っています』…ブラックマーケットも大変ね。あぶれたのがうちの自治区に入ってこなければいいのだけれど」

「そうじゃなくて…ほらここ。このヘリからの写真を見て」

 

写真には建物を破壊しながら何かを追っている赤いもの…それが追っているのは見覚えのある黒い影と…確か、アリウスの生徒だったか。

 

「これ、当たりじゃない?」

「うん。あそこで何をしてるかは分からないけど、多分お姉ちゃんだ」

「それじゃあアタリもつけたことだし、早速探そうか」

 

一応地区周辺を護衛中のマーケットガードに確認をとってもこの2人みたいな人の目撃情報は無いらしい。まだこの地区から出ていないと予想できたので、早速地区内を探し始める。

報道されていた地区がほぼ更地になっていたことにより、捜索は案外簡単に進んだ。

 

それで見つけて、今に至るというわけだ。

 

 

「お姉ちゃん!!」

「うおぉっ」

 

お姉ちゃんに抱きつく。…うん。姿には見覚えがないけど、この声にこの雰囲気。間違いない。

 

「…それで、連れ戻しに来たってワケ?」

「そういうことになるね。ところでさっきからヒナちゃんに抱きつかれてるけど大丈夫なの?」

「大丈夫だよ。こんなにかわいいものに抱きつかれて嬉しくないわけがない」

 

…?普通に抱きついているはずなのになんかこう…物足りない。手ごたえというかなんというか。薄い…?いや別に胸が無いとかそういう話じゃなくて…いやぱっと見た感じ無かったんだけど。

 

「…腕?」

 

…そうだ。ない。ない。

腕ごと抱きついたはずだ。実際に、私の左腕には胴体とは違う感覚がある。でも右手にはどうだ。ない。

 

「ひっ」

 

思わず腕を解いて尻餅をつく。さっきまでの歓喜は無くなり、寒気がする。

 

目の前にいる姉の体には左腕がない。だらりと下に垂れた制服の袖がその事実をそのまま伝えてくる。

 

視界が震えて定まらなくなっている。

 

「ヒナ大丈夫!?」

 

やめて。近づかないで。風で揺れるその腕を近づけないで。

…私にそれを見せつけないで。まるで、まるで…

 

「っ、!!」

「ヒナちゃん!」

 

それが、私のせいみたいじゃないか。

 

「待って!」

 

 


 

 

あー、やってしまった。

 

「元々私の腕が無いってことでなんとかならないかな」

「ヒカちゃん、ちょっと後でおじさんとお話しよっか」

「甘んじて受け入れよう」

 

まぁ今回に関しては私が全面的に悪いし。いやワンチャンあのまま見てたらサオリが持ってかれてた説もあるしコラテラルコラテラル。致し方ない犠牲だ。

 

「それで一応聞いておくけどその腕は大丈夫なんだよね?」

「大丈夫だって。ほら、医者のお墨付きだよ」

 

セリナの方を指差すとうんうんと首を縦に振っている。専門家(救護騎士団)がそう言っているなら問題はないだろう。

…あれは医学では理解できない範囲なだけ?まぁ命に別状がないなら大丈夫。

 

「痛くもないし本当に『無いだけ』なんだよ。これで血がダバダバ出てたら流石の私もやばいとなるんだけど」

「それはそれとしてお説教ね」

「はーい…」

 

さてどうしようか。ここら辺に居るとは思うが私の足と体力じゃ追いつけそうにない。

問題は私がこの辺りの地形に疎く、さらには一切の通信機器を持っていないということだ。はぐれたら多分迷子一直線だろう。

 

「サオリ、この辺の建物とか…おーい生きてるかー」

「あ、あぁ。大丈夫だ。少し動揺していて…」

 

私には分かるぞ。エデン条約の時のことを引きずっているんだな。シャーレ当番でヒナと何回かブッキングしてその時も気まずそうにしていたから分かるぞ。

 

「あれか。撃っちゃったからか」

「まぁ、そんなところ…待て、なぜ知っている」

「そりゃ撃たれたの私だし」

「え」

 

まぁヘイローも見えないのに目の色だけで見分けろというのは酷か。私の目の色が緑とかだったらまだしも青だからなぁ…まだ見間違いとか光の当たり方で紫色に勘違いされても仕方ない。エデン条約ってだいぶ前だしそもそも私は体が変わっているわけで。

私が急にだーれってクイズ出されてあの時あなたに腹を撃ち抜かれた者でーす。でも体は違いまーすとか言われればあまりのクソ問にキレる自信がある。

 

「でも、あの時は確かに空崎ヒナが…」

「あれの中身私なのよ。色々やって分離して、今はこうなってる」

「うぅ、ぐぅ…す、すまない。そんなことをしてしまっても助けてくれて…」

「だから気にしなくていいって。傷もすぐ治ったし今が元気なんだから。ヒナも今は傷一つ無いし」

「ヒナちゃんの心は傷だらけだと思うんだけどなぁ〜?」

「いやそのほんと、申開きもございません」

 

どうやって追おうかな…

 


 

 

逃げてしまった。また逃げた。

何から逃げたんだ?恐怖?責任?それとも…姉を傷つけたやつがいると思って逃げたのか。

 

いや、ちがう。私は事実から逃げたんだ。ただただ受け入れたくなかっただけだ。

 

そこらの瓦礫の傍に座り込んで膝を抱えた。今考えたら、あの場で何があったか聞くべきだったのかもしれない。間違いなくそうだ。そうすれば少しは冷静になったかもしれない。動揺していた。

 

あの真っ黒な体から私たち(生徒)のような姿になっただけなら手放しに喜べただろう。でもそうじゃなかった。代償なのかは分からない。因果なんてないのかもしれない。でも左腕が無いという事実が心を揺さぶっている。

 

お前がもっと早く合流して出奔するのを止めてくれていれば。お前がもっと私の目的を聞いていれば。そもそもお前が油断して私を頭の中から逃さなければ。

頭の中で声が響いている。あの時頭で流れていたお姉ちゃんと同じ声だ。言っていることは大概が支離滅裂。そんなことができたわけがないだろうと考えても声は止まらない。

 

姉は私をこの手で撫でたいと言っていた。もうそれは半分しかできない。

姉の愛銃はリボルバーだ。リロードには両手を使う。6発撃ったらただのおもちゃと同じだ。

日常生活もどうなるのだろう。きっと慣れるまで苦労が多くなる。

 

お姉ちゃんが何をしたんだろう。ねぇ、何をしたの?教えてよ。

生きるために頑張って、やりたいことのために頑張っているだけなのにどうしてそんなにひどいことをしたの?

 

何をしたっていうの…ねぇ。

 

…なんかもう疲れちゃった。心の中がぐちゃぐちゃになって纏まらない。一回帰ってゆっくりしようか。

ゲヘナに…一度、帰ろう。




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白洲アズサはアリウス生一時保護施設襲撃/爆破事件に

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