空崎ヒナは幸せでなければならない 作:rilu
アンケートの結果『白洲アズサはアリウス生一時保護施設襲撃/爆破事件に気づいている』となったのでそっち√です。
気づいていない√は完結後気が向いたら書きます。まずは完結させてからですね。
急にホテルを包囲するように出現したアリウス生。ホシノとサオリは即座に臨戦態勢をとり、包囲網からの脱出を図る。
「おじさんが突っ込むから、サオリちゃんは援護よろしく」
「了解した!…すまない、みんな」
盾、IRON HORUSを構え突撃するホシノ。ショットガンを連射しながら前方の集団を薙ぎ倒していく。
まともに食らったアリウス生は後ろのメンバーを巻き込みながら吹き飛び、掠っただけの者もよろけて動きを止める。足が止まった者はすぐにサオリによる射撃が叩き込まれて地に伏す。
そうして包囲網の中に突っ込んでいく2人。道を邪魔する者はシールドバッシュで薙ぎ倒されていく。弾を撃とうとした者はすぐさまサオリに頭を撃ち抜かれる。
「数が多すぎる…!」
「さすがのおじさんでも、この量はさすがにちょっとまずいかも」
しかし倒しても倒しても湧いて出てくるアリウス生に体力的にも精神的にもダメージを受けていく。
突破しようとしていた場所も次から次へと人員が補充されており、包囲網から抜け出せていない。
確かに2人の戦闘力はキヴォトスの中でも上澄みだが、広域殲滅能力でいえばサオリは低いと言わざるを得ないだろう。ホシノも万全の状態であれば簡単に蹴散らせるだろうが、後ろにはサオリがおり、そちらに処理能力以上の敵が行かないように対処し続ける必要がある。
しかし気にすることが多いながらも即興のコンビで連携を取っている辺りは流石としか言いようがない。
それでも若干や押されている。慣れない地形、慣れない状況、慣れない味方…その全てが少しずつ重なって確実に不利になっていた。
「なーんかしぶとくなぁい?光ってるから?それともおじさんの気のせいかなぁ?」
「いや、確実に強くなっている。アリウスで模擬戦をしていた時の数倍は…攻撃力も防御力も、高い。救いは連携が杜撰なことだろうな…そこだっ!」
リロード時の交代の一瞬の隙を突いてサオリが1人、また1人と撃ち抜くも一向に数が減る気配が無い。
瞬間、爆発。
敵の増援か。それとも私達への援護か。爆発で舞った粉塵が収まると同時に、周囲から勇ましい声が聞こえてくる。
『迫撃砲の着弾を確認。
「応っ!」「いくぞぉ!!」「叩きのめせぇ!」「せっかくだ。新顔を立ててやれ!ついでに手柄を上げるぞ!!」「風紀委員会、突撃ィィ!」
トリニティ生が見たらこう言うだろう。野蛮だ、と。確かに野蛮で無鉄砲。だがしかし、それがこの場で今一番必要なものであることもまた事実だった。
小隊が3つ戦闘に参加した程度では数の利はひっくり返らない。数というのは、戦場で絶対的な力である。それに変わりはない。だが場合によっては『士気』、そして『指揮』は数の利すらもひっくり返し得る要因となる。
圧倒的な数をものともせず押し返すような気迫と共に突撃する風紀委員。
それは確かに、戦場を変える一手となった。
本格的に戦闘が始まったため、後方で指揮を執っている。ここまでの規模の物は初めてだ。
…それにしてもベアトリーチェが来ると思っていたが、暴走したアリウス生が来るとはな…任務限定の敵だと思い込んでいたが、まさかこんな形で出てくるとは思わなかった。
身につけているのは昨日のような一般的な制服ではなく風紀委員会の制服。流石に所属を示すという意味で貸してもらっている。
風紀委員会の中での私の評価は、なぜかそこそこ高い。新顔と呼ばれているのは少々物申したいが…まぁいいでしょう。事実新顔だし。
それでもこの体で昨日の今日に入った割に存在が受け入れられているのは風紀委員会が良くも悪くも実力主義だからなのか。
07はすでに戦闘に突入している。このまま戦闘をさせて次弾発射までの時間を稼ぐ。05と06も順次戦闘を始めるだろう。
『補佐官!こちら
「死ぬ気で防衛を。本作戦において迫撃砲は重要です。多少の犠牲には目を瞑りますが損害はなるべく減らしてください。場合によっては
こういう部隊運用はアコの仕事で正直言って私が得意なのは前線指揮なのだが、アコは別件で出払っているので仕方ない。
小隊をキャラに見立てて指揮をする…
「戦車中隊、状況報告を」
『こちら戦車中隊。襲撃に遭ったため
「到着までの時間は」
『恐らく5分程度。足止めが激しくなれば8分ほどかかります』
「了解しました」
突撃組への連絡は…まぁ、いらんだろ。多分なんとかなるし、ホシノとサオリも居る。あの2人なら風紀委員も上手く使うだろう。
今やるのは援護要請。あまり頼りたくはないが、折角だ。頼ませてもらう。
「もしもし。ヒナ、少しいいかな?」
『うん。大丈夫よ』
「例のホテルの周辺で
迫撃砲がまばらに並べられている市街地。本来邪魔になるであろう建物は今回の騒動で根こそぎいかれている。
「来たか!」
青白く光る生徒が姿を現す。それが07小隊から伝えられていた襲撃者の姿ということはすぐに分かった。襲撃者は迫撃砲へ手に持ったARを連射するも、その弾は盾を持った小隊員3名によって防がれた。
「よく防いだ!私達はあいつらを足止めするぞ!!」
盾持ちの肩を踏み越えて隊長は接近戦に切り替える。隊員は遮蔽に隠れながら銃撃戦を始める者がほとんどだが、隊長に続き距離を詰める者も居る。盾を持つ者も前線を上げる隊長達に付いていき、近接での戦闘が開始される。
隊長はARを撃ちながら前進し、自分の銃に付けた銃剣を使える距離まで近づく。
「後ろだっ!」
「えっ…」
隊員の1人の後ろにはRPGを構えた襲撃者がおり、声をかけた頃には既に発射されていた。弾頭が後頭部に直撃し、倒れる隊員。辺りは爆炎に包まれた。
煙の中を何かが通る。小隊長はすぐに見上げて、何かを察した。
「クソッ、RPGはただの目眩しか…!」
後ろに目を向ければ、盾持ちを足場にして遮蔽を飛び越え隊員達を気絶させていく敵の姿。
そばに落ちた風紀委員会が制式採用しているARを拾っておいて背中に背負う。
「あいつ…強い!」
「あいつの相手は私がやる!!みんなは引き続きこっちの対処を頼んだ!」
「了解しました天田小隊長!」
踵を返し防衛網を抜けたアリウス生を追う。相手は既に次々と迫撃砲を破壊し、確実にこちらに被害を与えてくる。
近づいてくるこちらに気づいたのか一旦破壊をやめ睨み合う。
…逃げた。
「待て!!」
銃を連射しながら迫撃砲防衛のために残しておいた人員の方に向かっている。
待機していた風紀委員は応戦しようとするも、スモークグレネードを投げられ視界が塞がる。
「どこに…」
すぐ後、彼女の腹を激痛が襲った。鳩尾を正確に捉えた蹴りが彼女を穿った。それでも最後の意地を張り反撃のARをお見舞いしようとするも、既にそこに敵は居ない。その姿は既に横の迫撃砲にあった。
「任せろ!」
即座に横に配置されていた風紀委員がSRを放つ。しかし直前で既にアリウス生は離脱しており、弾丸は迫撃砲を貫くのみとなった。もちろん迫撃砲は破壊される。
「私達が…」
「手玉に、取られた…」
呆然とする2人。小隊長は大きな声をあげる。
「あいつの方が一枚上手だ!気をつけろ!」
小隊長はようやく追いつき、改めてアリウス生と対面した。
「守っていたら勝てない…攻めるしか、ないっ!」
走ってARを連射。それを軽くいなして近づき、タックルをしてくるアリウス生。その衝撃に合わせて後ろに跳び、背負っていたARも取り出して2丁構える。
「一か八かだ…ッ!諦めてっ、たまるかぁ──!!」
引き金を引いた。
「うん…?」
例のホテルの周囲をパトロールしていたイオリ。銃撃戦、それも大規模な物が起こっていることに気づきここに来たというわけだ。
…別にここをパトロールするよう急に指示が出されたわけではない。本当にたまたま今日のパトロールのシフトがここだっただけだ。
「何が起こっているんだ?」
イオリが目にしたのは、銃撃の中を進む戦車中隊とそれを護衛する顔見知りの風紀委員達だった。
(普段風紀委員会が戦車中隊を投入することは滅多にない。相応に大きい事件…周りがさっきからやけに騒がしいと思っていたが、温泉開発部でも居るのか?)
何か話が聞けないかと近づくとそのタイミングでちょうど襲撃が起こった。イオリはそのまま襲撃に巻き込まれていく。
「砲手、迫撃砲の再装填は」
『済んでいます。しかし、襲撃により正確な測量ができず照準が…』
「いい。私が指示する。指示の通りに動かしてください。迫撃砲はトリニティの専売特許ではないこと、見せてやりましょう」
…右、左、下げる、上げる…いつも通りにEXスキルを使う要領で。そのまま指示を続けて…撃った。
『こちら
「よろしい。そろそろあれも到着するはずです」
「ただいま戻りました…あれ?随分と気を張ってますね。何かあったんです?」
「お前から借りた
やはりこういうのはアコの仕事だ。やはり私に軍隊の運用は向いていない。そもそも経験が足りない。多分指揮した中で一番人数が多いの最終編の虚妄のサンクトゥム攻略戦の時だぞ。ヒナ含めても9人だ。あまりにも少ない。
「まぁ、指揮はそのままやりますよね?」
「えっ」
押し付けようとしていることがバレた?
「いい機会でしょう?今までやってこなかったんですしこれから私の代わりぐらいできるようになってください」
「…了解」
とはいえ、もうそろそろ指揮の必要は無くなるだろう。
十分に敵本隊の戦力は削げた。反応も近づいている。
お姉ちゃんからのタレコミの通り、ホシノ達が居たというホテルの周辺は戦火が広がっている。
足に力を込めて跳ぶ、飛ぶ。やはり上空に到達すると戦場がよく見える。
なんだか調子がいい。今だったら枷も遠慮も、何もなく撃てる。
ひたすら撃って撃ってホテル周辺の敵を片付ける。ばさりと羽ばたき、一度地に足をつける。
「…待たせたわね、みんな」
周りには戦車中隊と歩兵小隊のみんな、それと小鳥遊ホシノに錠前サオリ。やっぱりここで一緒に宿泊させられていたらしい。
「その様子なら、大丈夫そうだね」
「うん…大丈夫。迷わないから」
気力十分。ホシノと共に残敵の掃討にかかる。
右にワンマガジン。地面が抉れ吹き飛ぶ。
左にワンマガジン。建物が倒壊し押し潰す。
正面にワンマガジン。屍のみがその場に残る。
気づけばその場は死屍累々の地獄と化していた。
…一応言っておくけど、別に誰も死んではいない。
『くっ…こちら
「分かった。位置は?」
『座標は────』
「────ね?分かった」
片膝をつき、
「それ、当たるのー?ヒナちゃんを信用してないわけじゃないけどさぁ?」
「風紀委員会を舐めてもらっては困るわ。この程度はイオリでもできる」
座標を参考に、狙って、狙って、狙って…
「それに、こんな言葉を知っているかしら?」
放つ。
「風紀委員長からは────」
ヒナは最後の仕上げに入ったようだ。
「アコ、こんな噂話を知っている?」
「なんですか?噂話って」
「風紀委員長からは────」
「「逃げられない」」
終幕:デストロイヤーから放たれた一筋の光は建物をいとも容易く貫き、逃走者の頭を撃ち抜いた。
それにより残されたのは元に戻ったアリウス生達と、勝利の余韻に浸る風紀委員達、それにホシノとサオリであった。
『──みんな、お疲れ様。怪我があったら救急医学部に診てもらってね』
こうして、暴走アリウス生徒達によるゲヘナ襲撃は幕を閉じた。
「アズサさん!それに他の補習授業部の皆さん!出てきてください!もうそこは完全に包囲されています!」
「“うん?”」
ティーパーティーとの会議のため、後日改めてトリニティを訪れた先生。そこで先生は異様な光景を見た。多数の正義実現委員会がが、恐らく弾薬の保管庫であろう建物を包囲しているのだ。
しかも建物の中には補修授業部の姿もある。
ちょうど見えたので、ハスミ達に話を聞くことにした。
「“みんな、なにしてるの?”」
「あぁ、こんにちは先生。今は見ての通り、ここを包囲しています。理由としては…」
ハスミが建物の方を見遣る。
「な、なにをやっているんだー!早く出てきなさーい!」
「あはは…すみません。でもこうしないといけないので」
正義実現委員会が投降を呼びかけるも、それに応じる様子は無いらしい。
「このように立てこもりが続いているのです。それにしては要求も『ここに正義実現委員会を集めろ』の一点張り。今すぐ突入しても良いのですが、あそこが弾薬庫である以上誘爆などの可能性もあります。それに我々の補給場所でもありますので…少々対応を決めかねている状態です」
辟易したようにハスミは息を吐いた。本当に困っているらしい。
私はとりあえず話を聞こうと建物を近づく。
「先生。お久しぶりです」
「“久しぶりだねハナコ。できればどうしてこんなことをしたのか聞きたいんだけど…”」
「あら…そんなに私を求めてくださるのですか?」
「“そういうわけじゃないんだけど、みんながこういう事をするのは珍しいなって思って”」
「せ、先生も来たの!?アズサ、もう投降しよう!?」
「いや、まだだ…まだ…」
嫌な予感がする。勘がこれ以上前に進むなと言っている。本能的な恐怖を感じてしまっている。
(“何があるんだ…?”)
足を一歩、踏み出す。その瞬間、弾薬庫に向けて何かが突っ込んだ。
「“もう突入したの!?”」
「いえ、私はまだ突入の号令はかけていません!」
ハスミは焦りが見える声でそう言っている。一体何が…
きっかけは些細な事だった。たまたま見ていたネットニュースが、トリニティでの爆破事件を報じる物だったこと。そのニュースで報じられていた場所が、ちょうど近くにあったこと。
そしてそこで、事件現場から運び出される生徒を見てしまったこと。
…あれは、アリウス生の保護施設だった。
その瞬間から、漠然とした不安を感じていた。
あれはなにが起こしたんだ、と。
アリウスに怨みを持つ一般生徒の物か?いや、トリニティでそういうことをここまで
考え事をしながらも、みんなと約束のカフェへ向かった。
「そんなことがあったんですね」
「コハルちゃんもそれに緊急で招集されたから遅れるそうです!ゆっくり待ちましょう」
カフェに並びながら雑談をしている。それでもずっと同じことを考えていた。そんな中、ヒフミがあるニュースを読み上げた。
「あっ。『今日16時ごろ、ブラックマーケット一部地域が何者かの手によって大きく破壊される事件が発生した。マーケットガードは周辺の警備を強化するとともに目撃者への聞き込みを行っています』…って。怖いですね」
…なぜヒフミがブラックマーケットのニュースについて見ていたのかも気になったが、聞いたのはそれではなかった。
私はそれとあの保護施設に何か関連があるのではと思った。
「その記事、少し見せてくれないか?」
「…?はい、アズサちゃん」
渡されたスマホで記事にある写真を見る。
映る赤い影に、恐怖を感じた。思わず走り出そうとする。別に何か目的があったわけじゃない。なんだか無性にそこから離れたくなった。
「待ってください!」
ハナコに腕を掴まれて説得される。
1人でなんとかしようとしないでほしい。頼って相談してほしい。
頭を冷やす。事情を…確証はないが、物凄く嫌な予感がすることを話した。そして、その対策をしたいということも。
後に合流したコハルも含めてみんな快く承諾してくれた。
そこからは急いで準備をした。ヒフミ、ハナコ、そしてコハルを巻き込んで物資などを集める。
物資を集めて立て籠りを起こし、正義実現委員会を集める…大きな組織である正実がただの生徒1人のただの勘で動くわけがない。ならば自分から集めよう、という作戦になった。
そして、今…
「来たっ!」
赤い影が壁を突き破り突っ込んできた。回転して身を翻し、間一髪で回避する。
「アズサちゃん大丈夫ですか!?」
「大丈夫だ。やっぱり、あれが…」
真っ赤な肌、頭についた萎れた花のような装飾に大量の目…姿は大きく違うが、この雰囲気、圧。間違いない。
「マダム…っ!」
感情を込めて睨みつける。
同時、正義実現委員会が突入を開始した。先頭には急ぎ到着したであろう剣先ツルギ。
沈黙を保っていたが、唐突に両手のショットガンを構え…赤い影に向けて撃った。
即座に正実の生徒が前に回り込み、壁のように立ち塞がる。
「大丈夫ですかツルギ」
「…あぁ。だが、そうとう不味い状況だ」
「“みんな大丈夫!?”」
それでも目の前の物が放つプレッシャーは収まらない。
目の前で銃を放つ正実生徒もよく見ると冷や汗を流しており、ツルギですら重圧を感じている。
…戦闘が始まった。
本当はトリニティ側も書き終えたかったんですが、既に7000文字を突破していたので次回です。参考程度に今までこの作品で一番長かった話数は最終編で6800文字です。
感想とかをくれると作者が喜びます。動物園で売られてる餌を与えるぐらいの気軽な感覚で書いてくれると嬉しい。
…動物園で売られてる餌をやるって結構難易度高いな…