空崎ヒナは幸せでなければならない   作:rilu

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ハフバが近く猛暑が一層厳しい今日この頃、皆さまいかがお過ごしでしょうか。
私は80連で水着セイアと水着ハスミのPU2人をぶっこ抜き、後はドレスヒナの天井に頭をめり込ませる準備をしている最中でございます。
アーカイブ募集の方でもいっぱい新規の生徒さんが来てくれて嬉しい限りです。
皆さまの今後のガチャ運がより良くなることを心から願っております。

話は変わりますが、ここすきいっぱいしてくれる人がいてちょっと笑顔になりました。あると見てて楽しいのでどんどんじゃんじゃんぽちぽちしていってほしいです。



ただの人の集まり

 

(“次はゲヘナか…大丈夫なのかな?”)

 

トリニティを一度離れ、ゲヘナへと向かう先生。無事にトリニティからの協力は取り付けられたが、ゲヘナ側はどうだろうか。

言い方は悪いが気性の荒い生徒の多いゲヘナ学園。ヒナ…の連絡先を使ってヒカが送ってきた資料を見るに向こうも相当な被害を受けていると思う。

そのことを言えば協力を…

 

「“いやいやいや”」

頭を横に振って考え直す。生徒にそんな脅しみたいなことをしてはいけない。私ができるのは頭を下げて頼み込むことだけだ。そう考えを改め万魔殿に向かう。

 

「いいぞ。その件、我々万魔殿及びゲヘナ風紀委員会が受けよう」

「“いいの!?”」

 

あっけなさすぎる。それが感想だった。

なんかもっとこう…ないの?組織の長としての葛藤とか。

 

「キキキ!鳩が豆鉄砲を食ったような顔をしているな先生。ならば教えてやろう。なぜ万魔殿が今回の件に積極的に関わるのかを」

 

マコトは大仰に語り出したが、その答えはシンプルなものだった。

 

「私は自由を愛する。飲食店を爆破しようが、温泉のため地面を掘り進めようが、正直割とどうでもいい。強いて言うならゲヘナらしくて結構という程度だ。だが…」

 

 

 

 

「ゲヘナ生でもない奴がうちの生徒に好き勝手やるのは気に食わん。それも被害者が私のそれなりに親しい奴となれば尚更な」

「“なるほどね”」

 

なるほど道理だ。マコトが風紀委員会…いや、ヒナとヒカにどういう思いを向けているのか私は知らない。友人関係なのだろうか。軽口を言い合うような仲なのか。政敵というだけで、プライベートではそこそこ仲がいいのか。

正直に言って、私はそういったところを見たことが無いのだ。

 

「自由と混沌の象徴、ゲヘナ万魔殿の議長として今この瞬間に決定する。万魔殿及び風紀委員会は総力を持ってアリウス…否、下手人であるベアトリーチェを叩き潰す。トリニティと風紀委員会にはそう伝えておけ」

「はっ!」

 

机の上で腕を組み、そう堂々と宣言した。その重圧、カリスマ、リーダーシップ。普段のポンコツさは鳴りを顰め、身体から溢れる為政者としての風格はゲヘナのトップに相応しいもの。

普段の彼女を知らない人が見れば皆口を揃えて彼女は名君だ、と宣うだろう。

 

「…ほんと、いつもこうなら助かるんですがね」

「イロハ、虎丸の整備は万全にしておけ。あいつら(ヒナ達)にだけいいカッコさせるなよ。我々からも出せる戦力は出す」

「はぁ…はい。わかりました。そう言っておきます」

「頼んだ。さて先生。会談のセッティングはそちらに一任しよう。ついでに風紀委員会にも顔を出してやれ」

 

悲しそうな目を向けるマコト。何があったのだろうか。

 

「…この仕事が終わったら私は休む。ほんの少しばかり、疲れてしまったのでな…」

 

書類に向き直りペンを走らせる。いつもとは全く違う様子に戸惑いながらも退室した。

 

 

扉の隙間から漏れ出ていた弱々しい声は、私の耳には入らなかった。

 

 

 

 


 

 

…どうすれば良かったんだ?

私は、ただの政治家だ。立場があり、面子もあり、他校との交流もある。自由と混沌が校風のゲヘナでも、おいそれとは動けずこうして先生に頼み込むしかない。上に立つ以上、制約も多くなる。自分がどんなスタンスであっても、それなりの責任がある。理由もなく権力を振り翳し暴力を振るうのであればそれは責任を持つとは言わないだろう。守るために力を使わなければ、良い為政者とは言わないだろう。

 

私は躊躇った。空崎ヒカ捜索に万魔殿から人員を出すことを。私は恐れた。他校にある種の弱みを握られることを。

 

別にあいつらとは友人関係ではない。むしろ政治的な場では邪魔な奴らだ。こうして協力しなければならない時には()()する程度だ。

ただ…私は、ゲヘナの生徒を助けることに少しでも躊躇してしまったことに狼狽えている。

風紀委員会であっても問題児共の一員であってもゲヘナに所属している以上は私が守るべきなのではないか?それも命に関わるようなものであったのならば尚更。

…あいつの腕が無くなったのは結果論だろう。だが、もしもと何度も何度も考えてしまうのが人間という生き物だ。

 

外部に動きを漏らさない活動では確かに情報などを探らせることはできるだろうが、所詮情報は情報。それだけだ。実働部隊がなければ無用の長物になる。

それだけ渡してはい終わり、そうした結果がこれなのではないのか?

 

空崎ヒナは心にダメージを負い、空崎ヒカは左腕を失い、ゲヘナ自治区は一時的ではあるものの無視できないダメージを負った。

普通に考えれば勝手に出奔していったヒカが悪い。

だが、もしもそれが防げたことなら?

 

最初にヒカが失踪した時も、我々が体面を気にせず兵力を動かせば便利屋を雇うなどという面倒な手は使わないで済んだだろう。

その次も人員を動かしてさっさと確保をしてしまえば…いや、そもそも周知しておいて誰かをヒカにつけておけばああはならなかったのでは?

 

 

あぁっくそ、ただの想像ですらないのに思考が止まらん。コレはきっと後悔ではない。反省だ。

切り替えて次へ進むべきなのだろう。

ならば、この苛立ちはどこにぶつければいい?

考えられる限り、その先は一つ。

 

「潰すぞ、全力で」

 

ゲヘナらしく、奴をただ愚直に叩き潰すのみ。

 

 

 


 

「“みんな、調子は──”」

 

マコトの言う通り、風紀委員会を訪れた。変わった点といえば、一つ増えたデスクとそこに座る人影。…あと、チラチラとそのデスクを見ているヒナ。

デスクではカリカリとペンを走らせる音のみが響いている。

 

「やぁ先生。ようやく戻ってきたよ」

 

顔を上げてこちらを見る彼女。確かに彼女の姿は見たことない。だが知っている。会ったことがある。そう私の経験と勘が言っている。

 

「こうしてちゃんと私を確立してから会うのは初めてかな。改めてはじめまして。空崎ヒカです」

 

失踪していた空崎ヒカがそこに居る。空崎ヒナの中ではなく、顔の見えない真っ黒な影でもなく、確かにそこにいる。

 

「さて、それじゃあ約束通り握手といこうか」

「お姉ちゃん、待っ…!」

 

あの時にした約束の通り、左腕を差し出すヒカ。

…そこから見えたのは色白の素肌ではなく、ヒナのように手袋を付けているわけでもなく、制服の左側、二の腕から下がだらりと垂れているのみだった。

 

「“ぇ…え?ヒカ…?”」

「大丈夫だよ。大丈夫だって。何もない。何も問題はない」

 

そう言っている顔は自信満々で、本当に何もないように見える。そんなはずは無い。

 

「“大丈夫なの!?”」

「だから大丈夫だって。血は一滴も出てないし、もう痛くもない。それにほら」

 

急に左腕の袖を捲りだす。本来腕が付いていた部分は内側が真っ黒の闇に覆われて奥が見えない。

 

「っ…!」

「私は普通じゃないから大丈夫なんです。何も問題はありませんよ」

 

…抱きついてきたヒナを宥めている。彼女にとっては辛い出来事だろう。

私は、ヒカの事をただ見ていることしかできないのか?

 

 

 


 

 

腕が無くなっても書類は無くならない。先生と会って会話を交わした後、待っていたのは相変わらずの大量の書類。自分のデスクができたのはありがたいが、だからといって別に仕事が増えるわけでも減るわけでもないのだ。片腕な分書類の処理効率も落ちるのでヒナと一緒にやって大体以前の1.2倍程度の処理速度になってしまう。別に無いよりはマシだが…正直ヒナの中に居た時の方が楽。

 

「…北部で大規模抗争…?分かった。すぐに向かう」

「私も行きたい!行かせて!!」

「そんな体で連れていけるわけないでしょ」

「頼むって!こんな体だからいつもの6割増しぐらいで疲れるんだよー!」

「“そんな体”だから連れて行けないって言ってるのよ」

 

強情だ。いや客観的に考えれば言い返しようのない正論なのだが…それでもリフレッシュしたい。

…あ、そうだ。

 

「こんな体じゃなければいいんだね?」

「…まぁ、そうね」

「それじゃあちょっと失礼して」

 

廊下から大きな掃除用バケツを持ってきて、そこに足を入れる。これぐらいあれば大丈夫だろう。

 

「ヒナ、ちょっとこっち来て肩貸して」

「…いいけど、何するつもり?」

 

この前やったから、できるということは分かっている。何回もできるかどうかはちょっとわからないけど。

 

「よっ──」

 

吸い出されるような感覚とともに、体がどろどろに溶け始める。全て溶けきると、バケツの中に並々と入った真っ黒い液体があった。視界はさっきよりも低く、体は自由に動かせない。だが、こちらの方が私は慣れている。

 

『──と。これならいいでしょ』

「…そうね。これならいいかも。それじゃあ行こう」

 

バケツに『手を触れないこと。空崎ヒナ』と書いた張り紙を貼ってデスクの下にしまい込んだ後、出動した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「状況は?」

「ゴタゴタヘルメット団とスケバンが抗争中です!現在鎮圧のために戦車中隊まで投入していますが奴らの抗争が想像以上に激しく…我々も攻めあぐねている状態です!」

「分かった」

『サポートは任せろ』

 

いつも通りに前へ進む。ヒナは銃撃をものともせず周囲を薙ぎ払い、爆発をものともせずに相手を吹き飛ばしていく。

だが何かがおかしい。ヒナがではない。私が、だ。

 

視界が狭い…いや、感覚が鈍いと行った方がいいだろうか。後ろが()()ない。前方だけ。

前までだったらぼんやり、俯瞰のように見えた視点が何も動かない。

 

「狙撃…?お姉ちゃん、位置は?」

『見えない…なんだ?靄がかかって…違う。視界が広がらない。視界以外が、見えない?』

 

おかしい。いつも感覚でできていたことができない。違和感しかない。何故だ?何故…?

 

「お姉ちゃん!?大丈夫!?」

『なんで…?あぁっ、っくそ、駄目だ!何も見えない!とりあえず弾道から考えると7時の方向!距離不明!』

「それだけ分かれば十分。周りごと吹き飛ばす」

 

高く飛び上がり、建物の上に陣取っていたスナイパーを撃ち抜き、そのまま連射を続け周囲の仲間も吹き飛ばした。

ドンパチやっていた方は戦車中隊が大方片づけている。

 

「終わったわね」

『うん…』

 

事態は一旦収束した。しかし、この異常は続いている。

何故だ?なぜ…?

 

 

 

 


 

 

次の日、シャーレ内にある教室を借りる形でトリニティとゲヘナによる会談が行われようとしていた。

 

「“それじゃあみんな、準備はいい?」

 

先生の一言によって会議が始まる。

2校の今後を左右する可能性すらあることを話しだす。

 

「それでは」

「ああ。こちらとしても問題はない。それでは…」

 

 

いがみ合う者達の間に共通の敵として立ちはだかる者によって、表面だけであっても2校は手を繋ぐことになった。2校のトップは一度目線を合わせる。

 

()()()()()()に関する会議を始めよう」

「ええ。早速参加するメンバーを出しましょうか」

 

 

 





先生の指揮能力は多分自前だろうけど、ヒカ(俺ら)ってシッテムの箱無かったら何もできなさそうだよねって話。
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