空崎ヒナは幸せでなければならない 作:rilu
うすしおのポテチより内容がスッカスカです。久々なのに申し訳ない。
作戦は…正直に言って考えていなかった。だってそんなの考える暇無かったし。プランとしては私が隙を見て腹に手を突っ込み、黒服の言っていたモノを引き摺り出すということだけ。私も前に出たのはシンプルにタイミングを伺うため。後ろで指揮をしてるだけじゃどうやっても手が届かない。
でも、ヒナがいれば?前線までヒナが来てくれたならば?
…多分、なんとかなるかもしれない。
現在動かせそうなメンバーは少ない。対策委員会、正実の一部
頭数は十分。
ホシノを最前線、アツコをその一歩手前に置きベアトリーチェにターゲットされないようにする。ベアおばの最優先排除対象であるため慎重に扱いたい彼女だが、彼女の回復できる端末は腐らせておくにはあまりに惜しい。ツルギも最前線、ただし遊撃に当たってもらう。前線枚数が十分になり得る以上、無理して相手を押さえつけることに拘らず好きに暴れさせた方がいい。
中衛にはシロコやセリカ、コハル、そしてミカなどのメンバー。ノノミもここに入れた。ノノミのフィジカルなら近接もいけるだろう。彼女らは場合によってはホシノ達と一時的に交代して前線のカバーに入ってもらう。
後衛はミサキ、ヒヨリ、それとハスミ。撤退援護や、交代の支援。それと銃撃での行動阻害をしてもらう。アリス…は、含めなくてもいいだろう。ぶっちゃけあの子は自分で判断して動いてもらった方がいうと思う。
そして最後…ヒナ。
「ヒナ、水筒ある?ペットボトルでもいいけど」
「え?小さめの水筒なら一応あるけど」
「それ貸して」
懐から出てきた水筒に入っていたお茶は仕方ないので捨て、中に指を入れる。
体は真っ黒に、そしてドロドロに溶けて空になった水筒へと入っていく。私の意識はヒナの中へ。
『ヒナ、あれやるよ』
「分かった」
片眼は青く。思考は冷静に。ただただ彼女のサポートに回る。使う機会が無かったからしばらく使わなかっただけだったが、今がその機会だ。
その場に落ちたリボルバーと指輪、それと携帯端末を拾いリボルバーは腰に、端末は懐に、指輪は左手の薬指…待て、いや待たせてる場合ではない。この際その指輪の位置は気にしている場合ではないか。
『行こうか、ヒナ。準備は?』
「もちろん万端。久々のこの状態だからって、置いていかれないでよ?」
『言ってくれる…さて、行こうか』
前線では今も皆が戦っている。会話は確認に留めて最小限に。さっさと前に行こう。
いつも通り。いつも通りだ。私は愛銃を握っていて、
何を恐れる必要がある?何を怖がる必要がある?
さあ、歩みを進めよう。
『“みんな、しばらくしたらそっちに私も行く!到着するまで耐えてて!”』
「ホシノ、交代!──ミサキ、爆撃を!」
「おっけー」「了解」
弾薬補給のためにホシノが下がったタイミングで丁度ミサキが撃ち出した弾丸が着弾。辺りを煙に包んで奴の視界を塞ぎ、その隙に前に出る。そのまま紛れて懐に入ろうとするも、腕の一振りで起こった風圧によって吹き飛ばされた。
『そう簡単にはいかないか…』
「どうする?守りは固そうだけど」
『向こうが突っ込んでくるタイミングに仕掛ける。それまでは耐えよう』
そう言って回避に徹する。拳を避け、蹴りを避け、訳のわからん謎ビームは身を翻して避ける。今の目標は先生がこちらの戦線に到着するまでこの場を保たせること。こいつの討伐は第一目標じゃない。
『ヒナ、防御!』
「──っし…!」
振り下ろされた腕を、デストロイヤーを間に噛ませることで防ぐ。あまりの剛腕に一瞬拮抗する。しかし踏ん張っていた右脚の感覚に異変を覚えてしまう。脆くなったコンクリートを突き破り、支えが無くなったことでこちらの姿勢が崩れていたのだ。右脚を中心に、地面には即座に蜘蛛の巣状の破壊痕が刻まれる。
『まずっ』
「はぁっ!」
この程度は慣れっこだと言わんばかりに足を即座に引き抜き、一回転して近づいてきていた頭にサマーソルトを叩き込む。大したダメージにはならなかったようだが押さえつけるような力から抜け出し離脱することができた。勢いのまま振り下ろされる拳は、先程の破壊痕を悠々と越えるヒビを作り出す。もうこの周辺は滅茶苦茶だよ。
『どうするか…このままいってもジリ貧だぞ』
「じゃあ早く作戦を…」
『ダメだ。それをするには早すぎる』
あれは計画の内ではあるが、使わないことに越したことはない。取れるタイミングがあれば積極的に狙うが正直あまり使いたくはない。
目を前に向ければこちらに手のひらが向き、極光が見える。思考によって一瞬動きが遅れた。
しかしその光は上へ向き、文字通りの
「きひひひ…大丈夫か?」
ツルギが腕部分を撃ち抜いてブレさせたのが原因だった。…危ないところだった
「問題ない──むしろそっちは大丈夫?弾薬とか足りてる?──もし必要ならそっちの役割は代われる」
「こちらも問題ない。銃も最悪その辺に転がってるしな。…にしてもそれが…いや、今は無駄な詮索はよしておこう」
「そうしてくれると助かるわ」
「ヴア゙ア゙ァ゙ア゙ア゙ァ゙ア゙ア゙ア゙ァ゙ァ゙ァ゙!!!」
余裕綽々でいる私達が気に障ったのか大きく雄叫びを上げる。…ちょっといい加減イラついてきたな。
テントから抜け出し足をひたすらに動かす。日頃の運動不足が祟ったか息が切れているが、そんなことを気にしている場合ではない。
テントが設営されていた場所から目的地に近づくにつれ、建物の破壊痕や大きくなり寝かせられている怪我人が多くなる。
処置の方法や手順をテキパキと支持するミネを見かけたために現在の状況確認のため声をかけた。
「“ミネ、状況は?”」
「あ、先生。前線での指示の通り余計な人員を下げてこちらで対応しています。無事なメンバーはこのままこちらの救護にあたらせています」
「“分かった。できれば手の空いている子はAチームの方に向かうよう指示してほしい”」
「了解しました。ところで先生」
「“ん?”」
真剣な目つきになり、こちらを見つめてくる。どうしたのだろうか。
「目的地は、前線ですか?」
「“うん、そうだね”」
「なら丁度良かったです」
脇の間に手を入れられ、瞬く間に抱えられる。
「一緒に行きましょう」
雷を思わせるような轟音とともに飛び上がっていく。後ろにこちらを手を振って見送るハナエとセリナの姿が見えた気がした。
…永遠にも感じる数十秒、終わった頃には一帯が均された最前線へ到着した。
「先生、到着しましたよ」
「…先生、指揮をお願いします」
「“分かってる。行くよ、みんな”」
『…イオリ、それとゲーム開発部の皆様とサオリさん、Bチームの戦線まで移動してください』
「急にどうしたのアコちゃん」
『単純に掃討の目処が立ちました。あとは私達に任せて向こうに行ってもらって大丈夫です』
「こ、これ死亡フラグってやつじゃ…」
「お姉ちゃん、縁起でもないこと言わないの」
「…分かった。行こう。アコちゃんがこういう時に戦力を見誤ることはそうそう無いから大丈夫。そこは信頼できる」
『…私も向かっていいのか?』
『大丈夫です。手は足りているので』
「こ、このまま行って大丈夫なんですよね!?」
「ん、大丈夫。ファウストとして行けば誰にもバレない」
「そのファウストがいっぱいいることになるが大丈夫なのか?」
「楽しそうだからいいじゃないですか〜。それにこんな事するのは初めてなので…すごく、楽しみです」
「…そろそろ注意した方がいい。みんな、これ被って」
「うぅぅ…まさかクルセイダーちゃんを持ち出すことになるなんて…」
「“もうそろそろ、仕事だね”」
「“…もう少しここに居たかったけど、仕方ない、か”」
タブレットを取り出して、起動のための文言を唱える。
「“……我々は望む、七つの嘆きを。我々は覚えている、ジェリコの古則を。お寝坊さんの2人とも、そろそろ起きる時間だ”」
「「おはようございます、先生!」」
何も写っていなかったタブレットからは、快活なものと落ち着いたものの2つの声が聞こえた。
「お久しぶりですセリナさん!」
「はい!お二人もお元気なようで何よりです」
今、ここにいるのは5人。
「“それじゃあ2人とも、手筈通りに”」
「おまかせください!」
「…大丈夫です。それでは、さようなら、先生」
「“大丈夫、心配しないで。『私』はいつも側にいるから…ね?”」
シッテムの箱の中で彼女たちが悲しげな表情を浮かべた。画面越しに頭を撫でて、セリナに向き直る。
「“セリナ、後の事と向こうの私のこと、よろしくね”」
「…大丈夫です。分かってます」
「“私からも、いいかな”」
そう言ってシッテムの箱を手渡されたセリナは、
「“私からも、お願いがあるんだ。これを”」
「これは…」
「“お願い!”」
「…分かりました。それでは先生、また、いつか」
「“また会おう、セリナ”」
セリナと、彼女に抱えられたシッテムの箱は、この空間から消えた。
「“…先生、先に行っていてもいいんだよ?”」
「“そんな冗談を。ここが崩れる最後まで付き合うよ”」
生徒のやりたいことがあるなら、できる限り連れ添っていたいからと言って、その場には静寂が残った。
↓ここから下は後書きのスペース
…して皆様、本作のオリ主である彼女について、皆様どのような感情をお持ちでしょうか?
愛情?それとも面白がっていたり?あるいは無関心という方もいるかもしれません。
ああ、安心して。別にエタとかの報告ではありません。作者の主義主張を書き殴ってるだけですので、読み飛ばしていただいて結構です。興味のある方はただの面倒な奴の1人語り程度に思っていてください。
さて話を戻して。皆様は私の作った空崎ヒカというキャラクターに何かしら感情を抱いていただけているでしょうか。そうなっていてくれたのなら、ワタクシ、つまりは作者としても非常に嬉しく思います。感情移入ができるほど彼女を彼女らしく描けているということだと思いますので。
私は空崎ヒカに感情を持って描いている、と思っています。
彼女のことを愛しています。娘のようなものですから。
贔屓したいとも思っています。あまりよろしくないと分かっているのですがね。
そして何より、彼女のことを殺したいと思っています。
それはもう、純度100%の殺意です。
絞殺、銃殺、焼殺、轢殺、発狂、その他諸々etc…
確かにヒカのことは好きですけど、なんか、ムカつくじゃないですか。こんな不出来なのがその辺をほっつき歩いてるの。なのでどこかで殺します。でも今じゃない。
この物語の果て、いつかどこかで、空崎ヒカは…
いえ、この話はやめておきましょう。あまり、続くかどうか分からないことを書いても意味がありません。
作者の