空崎ヒナは幸せでなければならない   作:rilu

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遅れました。理由として真面目にこのお話なにがおもろいんやろなーってなってました。私、何かしら面白いと思えないと書けない難儀な人間なもので。




先生は生徒の味方である

 

先生が指揮を始める。それは、この場で戦っている私達にとって十分な希望だった。

付け焼き刃の私の指揮よりも正確で、未熟な私の指示より素早く、そして何より明瞭。即座に崩れ掛けていた戦線が立ち直っていのが分かる。しかし、それは決して相手を倒せるわけではない。アリスのスーパーノヴァはまだ最大出力を出せないし、一撃で損害を与えられる火力はまだ出せない。

 

だが、少しずつ、少しずつ。着実にこの風は、こちらに吹いてきている。

 

「“シロコ、ドローンで射線を組んで攻撃を!ツルギはそれに合わせて!ミネは治療をお願い!”」

「分かった。ドローン展開。挟撃、開始!」

 

指示を聞いたシロコが即座にドローンを展開してミサイルを発射する。挟み撃ちの形でツルギが詰めていく。

ヤツが、防御姿勢を取った。その瞬間だった。

 

『…ズレた…?』

「お姉ちゃん、どうかした?」

『ヒナ、ヤツに向けて全力で掃射!さっきからまともにこっちの攻撃を取り合われない理由が分かるやもしれん!』

「分かった。頼まれた以上全力でやる」

 

ツルギが恐らく私達が感じた違和感を察知し、一歩下がる。その退避の穴を埋めるように、私達は狙いを定めて発砲した。

 

20、60、100。数えきれない程の光り輝く弾幕を張る。ある程度バラけてもいいが、なるべく腹へ。

 

銃身の冷却とリロードのために銃撃が止まった瞬間、土煙が晴れる。そこにはやはり、無傷のあの怪物、そして異常と言えるほど傷つき、ひび割れたアスファルト。

キヴォトス外の人間なら即刻ミンチ、キヴォトス内の人間でも気絶は避けられないような代物。本来ならばこんなベアカスのカッスカスの残りカスぐらいは即座に霧散させられる代物である。

だが、そうはならなかった。何故か?

 

「あの、2人の…!」

 

繋がった。種が割れた。だが、種が分かったからといって同じ手品ができるわけじゃない。

即座に通信をまだキャンプに居るであろう黒服に繋ぐ。

 

「黒服、答え合わせしてもいい?」

『ええ、どうぞ』

「あいつ、取り込んだ私の腕を起点に()()シッテムの箱を引き込んでる?」

『恐らくは。あなたの存在とここまで露骨な逸らし方。十中八九でしょう。まったく、もう少し慎ましやかにやってほしいものです』

「とりあえずこのまま行くと理不尽を押し付けられることは分かったよ。ヒナ、作戦変更。なるべく早くモツを引っ張り出す──了解した」

 

つまり、だ。私がまだ黒かった頃、私が生徒として形を取れなかった頃にアイツに左腕ごと持っていかれた私の魂。あの黒い状態は明確なテクスチャを貼られていないバグのようなものであったために黒かったのだが、それ故に何でもなかったし、何にでもなれた。

そして、手に入れた私の魂を()()()()()()()と自らを繋げる中継機として利用しているのだろう。

あー、まぁ、つまり要約すると…今のあいつは擬似的にとはいえシッテムの箱の能力が使えるということだ。アロプラバリアー、指揮能力の拡充。あのビーム…はちょっとよく分からんけど。まあそういうことだ。

…まるで正解かのように語っているが、はっきり言おう。滅茶苦茶な理論だ。なんだよ先生として存在する私のテクスチャを利用してシッテムの箱を疑似再現(ダウンロード)するって。おかしいだろチートやチーターや!私だって自分のテクスチャが生徒に固定化されたから先生としてのテクスチャを貼り直せないんだぞ!なんでお前だけ使えるんだよ!

 

通信を一旦切り、先生に伝える。

 

「先生、悪いが余裕が無くなった。私達が前線に入る」

「“分かった。そう伝えておくね”」

 

ヒナは足に力を込めて地を蹴った。そのままグングンと距離を詰めていって、

 

『ヒナ、足元が!』

「ッ!」

 

失策を悟った。焦っていた。私が。あと少しで勝てると、あと少しで潰せると油断した。だからこそただの瓦礫に足を取られ、そして生まれた思考の隙間は明確な付け入る隙となった。

…近づいてくる。赤い、ヤツが。そのまま、手を、こちらに伸ばして…ああ、夢で見たなぁ、こんなの。やばい、しn

 

「撃ってください!」

 

その号令と共にヤツが横向きに吹っ飛んだ。

 

吹っ飛んだ方向の反対を見れば、何やら華美な装飾が取り付けられた戦車…戦…え?

 

『クルセイダーちゃん!?』

「知っているのヒカ?」

『ごめん、忘れて』

 

ああ、でも、あの紙袋頭、やっぱ…あ、クロコも居るのか。元気そうで何より。

…ん?待って、他の覆面水着団メンバーってここに居るよね?なんでまだクルセイダーちゃんから人が出てくるの?

 

「“みんな!?”」

「あれは、まさか、覆面水着団…!?それに、ファウストまで…!なぜここに…!」

 

ハスミさんや、彼女ら、あの青いの被ってるヤツ以外身内ですぜ。

だって

 

「目には目を、歯には歯を」

 

紙袋から覗く純白の髪に、飾り付けられた綺麗な羽。完全に白洲アズサですほんとうにありがとうございます。

 

「無慈悲に、孤高に…ふふっ」

 

こちらはピンク。その妖艶な笑い方は、例のファッション痴女…いや、ガチ痴女の可能性も捨てきれないが。そんな彼女は完全に浦和ハナコですほんとうにありが(ry

 

「我が道が如く魔境を行く…!」

 

ノリノリでそう名乗りをしているのはシロコ*テラー。君が元気そうで先生安心したよ。でもなんでもっと普通に来れなかったの????

 

「わ、私達が、覆面水着団、です!!」

 

ファウストォ!なにやってんだお前ェっ!ノリノリじゃねーか!?

 

「あ、あんたら、なにやってんのよーーー!!!」

 

あ、流石にコハルは気づいた。まあ、普通気づくよね。だって服装同じだし。

 

「なぜ、ファウストが、こんなに…!?」

 

ああ、だがしかし、ご都合主義(作劇上の諸々の都合)には勝てないようで。

 

「ん、それに関しては私…ブルーが説明させてもらう」

 

もっともらしくシロコが豊満な胸を張って言う。

 

「裏社会で、ファウストの名は広まりすぎた…それこそ、本物を騙り、そしてその座を狙ってブラックマーケットで日々争いが続いている…」

 

隣でヒフミが『えっ嘘!?嘘ですよね!?』と言わんばかりにシロコを見ている。だがしかし、これは事実だ。最近だとゲヘナでもやれ『ファウストの名を継ぐ者』だとか、『ネオ・ファウスト』だとか、何が何やら無駄に名前だけデカいのが雨後の筍のように生えてくる。所詮は木端なので別に何の問題もなく潰せるんだが。

 

「だからこそ、私達覆面水着団はここに声明を発する。ファウストは後にも先にも私達のリーダーのみ。それに加えて、影武者も動員することにした。でも“本物”は1人」

 

あーはん?なるほど?つまりファウストの影武者とすればその紙袋を被った奴がどれだけ増えてもいいってぇことだな?

 

「今日のところはご挨拶。この説明を、とりあえず3大校の内2校の治安維持組織に通達しようと思いここに来た。まあ…」

 

「来た以上、ちゃんとやる」

「ちょっと、ハナコ!説明!説明しなさい!何でそんな場所に…」

 

この4人もアイツに向き直る。コハルはわーきゃーと問い詰めようとバタバタしている。これなら…と思ったタイミングで、更に援軍が訪れた。

 

「よく狙え!合わせるぞ!」

「は、はい!大丈夫です…当てます!」

 

2つの弾がアイツに向かって、ずれた。やはり意識外からぶっ飛んでくるような攻撃が必要なのだろう。

 

「弾かれる…?くっ、どうすればいいんだ?」

「とにかく行きましょう!合流します!」

 

さっきの狙撃はイオリとミドリ。

Aチームのネームドメンバーが合流した。頭数は揃った。数の差で勝てる相手ではないが…頑張るしかない。

 

 

 

 

 

 

進む。戻る。進む、進む、戻る、戻る。

先生の指揮の下、一進一退の攻防が繰り広げられている。

 

 

そして、チャンスは訪れた。

狙撃が噛み合い、急襲が噛み合い、そして、位置が噛み合った。ただそれだけ。

 

空いた意識を横からブン殴るように即座にヒナが位置を詰める。

 

『ヒナ、せーので水筒投げるよ!せー…』

「のぉぉぉ!!!!!」

 

腰に提げてあった水筒をヒナが思いっきりぶん投げた。すぐに意識を水筒の中の私の体に移す。

奴は、銃弾じゃないからと疑似バリアで防ぐのではなく手で叩き潰す方法を選んだ。…選んでしまった。

金属製の水筒が割れ、中から真っ黒の液体が溢れ出る。水のように広がると思われたそれはうにゅうにゅと人型を作り出した。左腕は無い。白い長髪。生徒の形をとった空崎ヒカ()であった。

 

「!??!?」

「予想外だったかァ?残念、接近戦でも強いのよォ!」

 

アズサとハスミが作ったという腹の傷に手を突っ込む。赤い液体が右腕を伝う。嫌な温かさで包まれたが意にも介さず、奥へ、奥へ、奥へ…痛みを訴えて体を暴れさせるベアトリーチェを意にも介さず、肉を掻き分け進む。

そして、見つけた。まるで私を求めるかのように開いた手を。

 

「うおぉぉぉっっっっ!!!」

「ア゙ァ゙ア゙ア゙ア゙ァ゙ア゙!!???!?」

 

引き抜け。取り戻せ!

 

 

 

 

そして、私の右手に握られていたのは、未だ真っ黒なままの私の腕。

 

「っしゃあっ!」

 

これで恐らく疑似バリアによる防御は切れる。そして、これを使ってシッテムの箱、ひいては使用していたであろう指揮能力の拡張も無効化される。ネームドがこちらに引き抜かれたとはいえ、A小隊の方も楽になるだろう。

しかし、相手もただ痛みに悶えているわけではない。その拳をこちらに向けて…

 

私は打撃を甘んじて受け入れた。

 

腹から足先、脳天まで等しく衝撃が走る。目にもとまらぬ速さで景色が流れる。このままいけば、そのまま壁にぶつかる。

 

そう思った瞬間に首と膝裏に手が添えられ、ふわりと優しく受け止められた。

 

「なんとか間に合いました…大丈夫ですか、先生?」

「…ありがとう、セリナ」

 

もちろん、取り戻した腕は離していない。

セリナに降ろしてもらってすぐに左腕をくっつける。私の左腕の断面が黒かった理由がこれだ。パズルのピースのように、合致するものがどこかに存在するから接続が可能な状態にされていた。逆にパズルのピースも合致するものが存在しなければその時点で完成したもの…そういう形となる。そうなった場合、きっと私の身体は未完成な概念的な形ではなく物質的な形を成し、もう一度くっつけるなんて暴挙は不可能な状態であっただろう。

 

それでも真っ黒なままの左腕に力を込めれば、問題なく指示の通りに動く。そして、差し出された真っ黒な画面が映しだされているタブレットを受け取る。

 

頭の中に浮かぶ言葉を、ただそのままに口ずさむ。

 

「我々は望む、七つの嘆きを」

 

懐かしい(ことば)を。

 

「“我々は覚えている、ジェリコの古則を”」

 

私の、先生としての、世界への証明を。

 

『行きましょう、先生』『この戦いに終わりを』

 

その声が耳に入る頃には、真っ黒だった左腕は──若干右腕とは違う色とはいえ──薄橙色に変化していた。

 

 

 


 

 

 

「お姉ちゃん!」

「“ヒカ!?”」

 

あの赤いののはらわたを引っ張り出した後、すぐに吹き飛ばされてしまった。彼女の言っていた作戦は成功したのか、そもそも無事なのか。そういった心配が砂煙の奥へ向けられる。

腹の中から何かを引っ張り出したベアトリーチェは、さっきから蹲ったまま動かない。砂煙が晴れて向こうから現れたのは…

 

「“…待たせたね”」

 

無かったらはずの左腕が生え。

 

「“ようやくお披露目だ”」

 

制服の上には純白の白衣のような上着を羽織り。

 

「“身体は、ちょっと重く感じるけど…まあ、問題ない”」

 

頭上に灯っているはずのヘイローは消滅しており。

 

「“…行こうか、みんな”」

 

右腕には見慣れたタブレット(シッテムの箱)を携えている、空崎ヒカであった。

 

 

 

 


 

問題ない。やれる。そして、加減をできるような状況じゃない。だからこそ最初からフルスロットルでいく。

…やってみせろよ、私。

 

“大人のカードを取り出す”

 

いつの間に羽織っていた上着の内ポケットからカードを取り出して使う。即座に脳内で編成画面を呼び出し、誰を呼び出すか決定する。

 

ストライカーを4人。スペシャルは2人…ではなく、既に居るセリナのことを考えスペシャルは1人とする。

 

「“みんな、力を貸して!”」

 

決定と共にカードは眩い光を放つ。私の何かが削られていく感覚とともに、広がった光の中から人影が現れる。

 

「前衛は私に任せて」

 

バチギレホルス、小鳥遊ホシノ(臨戦)。

 

「めんどくさいけど。まぁ、やらなきゃいけないことだから」

 

ゲヘナ最強、空崎ヒナ。

 

「面倒だけど、これもトレーニングの一環」

 

ウキウキ委員長、空崎ヒナ(水着)。

 

「ドレスでもやることは変わらない」

 

対軽装備最強、空崎ヒナ(ドレス)。

 

「本当は穏便に済ませたかったのですが……やるしかなさそうですね」

 

とりあえず入れれば仕事する、甘雨アコ。

 

「準備万端、ですね。行きましょう先生」

 

誰でもお世話になるヒーラー、鷲見セリナ。

 

「“いくよみんな。戦闘開始!”」

 

途轍もない威圧感とともに歩き出した。

 

 

 

 

 


 

 

 

崩れる、崩れる、崩れる。この場所を支えていた全てが崩れ去っていく。それと同時に、私もどこかへと消えていく。

未練は無い。元々私はあそこで消えるはずだった者だ。そう長く現世にしがみついているつもりもない。

 

ただ、ほんの、ほんの少しだけ悲しいとすれば…

 

私の、とても、とっても可愛い、世界一の妹の笑顔を、もう二度と見られないことだろうか。だから、お前は役得だぞ、(空崎ヒカ)。私の分まで、楽しんでくるといい。

 

…倒れる。無茶をしてばかりだったが、こうも保たないか。

しかし、体に衝撃が走ることは無く。なぜか、と思い後ろを見れば、(彼女)がしっかりと支えてくれていた。

 

「“ああ、そこに、いてくれたのか”」

 

 

 

「せん、せ──」

 

 

 

 

 

ゆっくりと砕け散る己の体を感じながらも、意識は深く、紅く、闇に向かい沈んでいく。そのまま1人で、深い深い穴蔵の中へと向かっていった。

 

「“ごめんね、ヒカ。私は、そこから先へは行けないみたいだ”」

「きに、するな。せんせいには、もっといくべきところがある。ここからさきは、わたし、ひとりで、いい」

「“…せめて、君の眠りが安らかなものであらんことを”」

「ああ、だいじょうぶさ。こんなにあったかくゆけるのなら、じゅうぶんだ」

「“…さようなら、ヒカ”」

「ああ、さよ、な」

 

声を発する間もなく、あの場は消えた。あるべきものは、あるべき場所へ。あの場に居た者達は、本来居るべき場所へと帰って(還って)いく。

 

少し長い(幻想)の終わりであった。




Sorasakis Assemble…

これがやりたかっただけ。

中盤のヒカが言ってること意味わからんパズルのピースとか訳の分からん物で例えるなやという方、ご安心ください。私も訳が分かってないです。一体彼女は何を言っているんでしょうかね。

空崎ヒカや黒服の言っているペラ回しが

  • 司祭A「理解できる」
  • 司祭B「ニュアンスは掴める」
  • 司祭C「理解できぬ」
  • 司祭D「なんとなく読んでる」
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