空崎ヒナは幸せでなければならない   作:rilu

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お誕生日おめでとうヒナちゃん!


IF:存在した可能性
IF:BAD 梔子ユメは死ななければならなかった


 

アビドス砂漠。大きなバックパックを背負い汗を垂らす1人の少女が歩く。若干息を切らせながらも、一面の砂原に足を取られることなく進む。

誰とも分からぬ人間と話しながら。

 

「これ、本当に意味あるのかしら?」

『まあまあ。実地調査も大事だよ。見ているだけじゃ分からないこともあるし』

 

空崎ヒナと空崎ヒカの2人(1人)。ゲヘナ学園情報部所属のはずの彼女らは、なんの因果かアビドス自治区に足を踏み入れていた。

 

『にしても、電波がこんなに急に駄目になるとは思わなかった。アビドス舐めてた。この世界で舐めていいのはイオリの足だけだったか…』

「イオリって誰…?まあ、準備万端にしておいて良かったわね。ところで、どこまで行くつもりなの?」

『何かしら収穫があったら一度戻ろう。あまり長居するのも良くない』

 

そもそも、なぜここに来ているのかといえばヒカの提案が原因であった。実地調査をしてみないか、という提案である。

改めて砂漠の奥深くまで足を運んでみれば、それは、まあ、見事な砂だという感想が包んでいる。それ以外にこれといった収穫は無く、ただ時間を無為にしているようにしか感じられないほど。

 

「…居ないわね、人」

『自治区の高校の在籍数が2人とはいえ、いくらなんでも人が少なすぎないか?』

「まるで人払いでもされてるみたい。不気味だわ」

 

 

 

…たとえ原典がそうであろうとなかろうと、ここでそれは意味を為さない。そうあれと定義された世界で、そうあれとするために世界は動き続ける。

王に手を伸ばす悪魔には贄を。理解者には裁定を。隼には立会人を。あらゆる本来の意味と意義を捻じ曲げ、捻れて歪んだ道程を正さんとする。それは、誰とも知れぬ何かがその方が都合がいいからと決定した自分勝手な結果である。

 

そう、あえて言うのならば…

 

「あれ、人?」

『倒れてる…?ヒナ、経口補水液出して!ここで寝て過ごすような馬鹿じゃなければ、熱中症の患者だ!』

「わかった!意識は、まだ、ある?とりあえず発煙筒で救難信号を…!」

 

この広い広い砂漠で、転生者が目的の者を見つけ出すことも。

 

「あれは、発煙筒?もしかして救難信号?」

 

(…まさか、ユメ先輩が?いや、あの人がそんな用意周到なことするわけが…だったら、別自治区からの遭難者か?)

 

「…どちらにしても、行った方がいい」

 

暁のホルスがその救難信号を見つけ出すのも。

 

『振動…!?まさかっ』

「私の顔が見える!?あなた、起きられる!?」

「う、ゔう…あ…あ、この水美味しい…」

『ヒナ、あそこに突き刺さってる盾とその子を抱えて物陰に退避!何かデカいのが来るよ!』

「くっ…!」

 

預言者が何の気まぐれか、そこに現れるのも…

 

全てが偶然であるようで、全てが必然である。

 

 

 

…………『違いを痛感する静観の理解者』、ビナー出現。

 

 

 

 


 

 

「あれは、まずい!」

『向こうさん、なんであんな気が立ってんだ?とりあえず、この子を安全圏に…』

「ご、ごめんなさい、私のせいで…うぇっぷ…」

「無理しないで。兎に角今は逃げることを」

 

ビナーの口元に眩い光が集まる。介抱しなければならないユメから意識を逸らしていたからこそ気づけた。ないはずの顔からさぁっと血の気が引いていくのが分かる。ヒナから主導権を奪い取り、遮蔽物に捨て置かれた盾…IRON HORUSを構えて慣れない防御を行う。

 

『お姉ちゃん!?』

「ぬぐぅ、あァァァァァァァ!!!!」

 

全身が途轍もない勢いで焦げていく。別にバリアのようなものを貼っているわけではないために、真正面以外からの熱量は防ぎ切れない。

生きるため、生き残らせるために体に意識を向けて外傷を治していく。治した場所からどんどんと焼けていく。焼けた場所から治す。自分がどんどんと削られていく感覚がある。だが、止めない。後ろには守るべき生徒がいて、この体も大切なヒナの物だ。ここを通すわけには、いかない。

 

「まだっ、かっ!」

『お姉ちゃん!?私に、代わって!それ以上は…!』

「あ゙…?止まっ…」

 

ビームが止まると同時に脚が吹き飛ばされた。即座に新たな脚を補修し作り出す。また大きく、削られた。

 

それと同時に、今度はまた引き戻されてヒナが表に。吹き飛ばされた盾がまた砂原に突き刺さると同時に、一斉射が叩き込まれる。

砂埃が開けた場所に居たのは、傷は無いものの多少怯んだビナー。逃走か、攻撃への一手か。地面に潜り砂嵐を作り出す。

 

『うっぐぅ…あ、あの子を連れて、早く遠くへ!』

「分かった!」

「大丈夫、た、てる…」

「無理しないで。変に動いて悪化する方がまずい」

「でも、血…」

「治ってるからいいわ。兎に角今は外へ!」

 

ビナーが作り出して砂嵐を抜けた2人(3人)。その先に居たのは…

 

「ユメ先輩!?」

「ほ、しの、ちゃ…!」

 

要注意人物、小鳥遊ホシノその人であった。

 

「小鳥遊ホシノ…だったわよね。今は遠くへ行くわよ」

「待って、そっちは誰?その格好を見るに、ゲヘナ…」

「ホシノちゃん、大丈夫。私を助けてくれた子、だから…」

「でも…」

「大丈、夫。私を信じて」

 

疑わしいということを隠しもしない目でこちらを睨みながらも、まあいいですと言いユメとIRON HORUSを受け取り砂嵐から離れる。

 

その時だった。前を行くホシノの背中が、猛烈な熱と光に襲われた。後ろに居たのは、確か…?

 

「うあぁあああっっ!!!!」

 

悲鳴が辺り一帯に響く。助けに行こうにも、あのビームに飛び込んだらミイラ取りがミイラになりかねない。

 

そうして、一瞬にも、永遠にも感じる数秒は過ぎ去った。

 

 

直前に見えていた立体的に見えるヘイローでは無く、それとは別の、平らなヘイローが割れるのを、2人は見た。

 

 

 

 

 


 

 

 

 

「風紀委員長として、謝罪するわ…ごめんなさい。うちの部下が迷惑をかけたわね」

「ヒナ、ちゃん…」

 

 

「…分かってる。あの場では、誰も悪くない。でも…」

 

 

 

「1人の空崎ヒナとしては、あなた達に…アビドスに謝るつもりはないわ」





『END1:夢の世界に日陰は無い』

もし今後番外編で投稿するならどれから?

  • 絆ストーリー的なの
  • 風紀委員会の日常
  • 空崎ヒナと空崎ヒカがデートする話
  • シャーレ当番での話
  • 空崎ヒカが各自治区を巡る話
  • 本編前:アビドス3章
  • 掲示板回
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