戦姫異譚シンフォギアAnother   作:暁真

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始まりの鼓動

 

……立花

 

そう、立花。響が私の妹なのは本当のこと、昔は凄い元気な子で……うん、少し元気すぎたかな。

 

お喋りと食事と友達が好きなただの女の子。頑張ろうとしすぎてよく空回りするのがたまに傷な普通の子、それが立花響。

 

……まあ、響との思い出をダラダラ話すわけにもいきませんし本題に入りましょう。

きっかけは……そうですね、偶然あの日のライブのチケットが当たったんです。私と響、それと響の友達で3人分。

 

3人も……よくあの倍率で全員当たったな。

 

運が良い……なんて言っちゃいけないか。

 

いえ、運が良かったのは確かですよ。ツヴァイウイングのライブってことでそもそも超高倍率、ドーム公演なのもあってさらに跳ね上がってましたもん。多分1000倍は余裕で超えてました。

 

……そう言うわけで現地入りしてドームに……までは良かったんですが。

 

「り、律姉……未来、来れなくなっちゃったって……」

「1番楽しみにしてたのに?」

「うん、おばさんが怪我をしてそっちに行かなくちゃ行けなくなったって……どうしよう律ねえ、私達全く分からないのに……」

「んー……まあ仕方ないよ、流石に家族の事が第一だもんね。なら未来ちゃんの代わりに目一杯楽しんで、思い出話をプレゼントしてあげるとかどう?」

「……名案!」

「でしょ?……とりあえず中に入れたらペンライトとか買いに行こっか。お金はこっちで出すから」

「いいの!?」

「バイト代入ったばっかりだし平気平気、こう言う時くらいお姉ちゃんに奢らせて」

「ありがとう律姉!」

 

響の友達がトラブルで来れなくなっちゃって。私も響も当時ツヴァイウイングは少しテレビで見た事ある程度だったのでちょっと不安でしたがまあ楽しもうかって事で2人でそのまま会場に、今思えば来れなくて良かったのかもしれません……あの子まで私達のようになってたら響は間違いなく今よりもっと酷いことになっていたでしょうから。

 

その友達は今どうしてるんだ?

 

分かりません、その後引っ越してしまったので。場所だけは分かりますが何をしているのかも正直。

 

……また会いたくはないの?

 

会いたくても会うわけには行きませんよ。私はもう緒川旋璃です、立花律じゃありません。死人が今更化けて出たってどうなるんです?

 

……ごめんなさい、軽薄な事を言った。

 

いえ、大丈夫です……続けますよ。

 

 

「えーっと、パキッて折ったら光る……試しに折ってみていい?」

「流石に一本無駄にするのはいただけないかなぁ、多分会場に合わせればどうにかなるよ」

「そうだね……せ、席忘れちゃった。ごめんチケット見せて……」

「しょうがないなぁ……はい。ちょっと席離れちゃうけど響ももう中学生だし大丈夫だよね?」

「勿論!もううっかり迷子になったり……なんか……」

「……しそうだね、付き添うよ」

「ありがとう律姉……」

 

……まあライブの途中までは普通も普通でしたよ。グッズ買って、色々済ませて、席に行って……まあ学生の身分なのであまり良い席は取れなかったんですが、それでも初めてのライブ現地参加ってことで2人して不思議な盛り上がり方をしてたのはよく覚えてます。

 

オレと奏もあの時は初めてのドームだったからな、正直観客の多さに少しビビってた。

 

そんなに多かったの?

 

何せ国民的ボーカルユニットのツヴァイウイングです。ドームは当然満員、ライブが始まるまでに群衆雪崩が起きなかったのが不思議なくらいでしたよ。

 

「それじゃあ私も自分の席行くから……周りの人に迷惑かけないようにね?」

「分かってるよ律姉、それじゃあライブが終わったらね!」

「うん、未来ちゃん用のレポート、書こっか」

「れ、レポートはちょっと……」

「流石に冗談だよ、緊張ちょっと解れた?」

「……うん!」

「なら良かった」

 

特に何かトラブルがあったわけでもなく席について公演を眺めてました。ペンライトって案外軽くてどう振ればいいのか分かりませんでしたよ。やっぱりああいうのって使い切りじゃなくて自分用の買った方がいいんでしょうか?

 

んー……今度公式グッズで提案してみるか?

 

間違いなく需要はあると思いますよ。

 

 

(……周囲と一体になった感覚、主役から目が離せない。不思議な高揚感……)

(これが……ライブ!)

 

1曲目が終わるまでは平穏そのもの、周りに倣ってペンライトを振ってライブを楽しんでました。

 

……2曲目は、途中までしか歌えなかったからな。

 

……ええ。

 

「……え」

「爆……発……?」

 

……唐突に中心部が爆発したかと思えば会場に現れる大量のノイズ……聖遺物起動実験の失敗という話は後に聞きましたが、当時はパニックになりかけました。ただ、響を守らなきゃっていうのと……

 

Croitzal ronzell gungnir zizzl(人と死しても、戦士と生きる)

 

Imyuteus amenohabakiri tron(羽撃きは鋭く、風切る如く)

 

 

「……歌?」

「なんで、ライブどころじゃないのに……ってそうじゃない、今は響を!」

 

……シンフォギアを纏って戦う奏さんと翼さんを見て一周回って落ち着きまして、同じように2人を見ていた響の所へ。

 

逃げ遅れてたのはそういう事だったのか……

 

それもありますが、あの群衆に今から追いついた所でっていうのが……私達みたいな子供なんかすぐ押し除けられるのが関の山です。

 

「響!」

「お姉ちゃん……?」

「良かった、無事で……多分非常口は今使えない、落ち着くまで何処か……!?」

 

……そうやって響と合流した後に立ってた場所が崩れて、落ちて……此処からは2人もご存知でしょう。

 

ああ、よーく覚えてる。あの時のことはな……

 

 

「……っ、たぁ……」

「響!?……掴まって、見つからなそうな所に……っ!」

 

響が足を怪我して、どうにか抱えて逃げようとした所にノイズが目の前にいて……

 

(……せめて、響だけでも……!)

「ぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」

「……え?」

「駆け出せ!早く!」

「……は、はい!行くよ響、掴まって!」

「うん、律姉……」

 

……寸前で奏さんに助けられて、どうにかこうにか駆け出したまでは良かったんですが。

 

(早く、早くノイズが居ない所へ……!)

「っ!?律姉っ!」

「響?なにが……っ!?」

 

逃げてる途中でまた爆発が起こって、2人揃って吹き飛ばされた。

 

「律姉っ!?」

「ぐ、う……響、逃げ……」

「律姉を置いてなんて行けないよ!」

「大丈夫……すぐ、追いつく、から……」

「嫌だ!死んじゃやだ律姉!」

(……何か、刺さった。右手が、熱い……)

 

(……これは、これは、何……?)

 

その時です、何処から飛んできたのか分からないコレが右手に刺さったのは。

 

グレイプニル……

 

……グレイプニルもあのライブの裏で制御実験を行っていたんだ。ただ同じように暴走して爆発と同時に地上に出てきたってのが了子さんから聞いた話。

 

やっぱり私に刺さったのは偶然……なんですかね?

 

多分な……狙ったようにお前の右手に刺さったから言い切れないのがもどかしいが。

 

「私に構わず、早く……!」

「嫌だ!嫌ったらい……」

「っ……響ィ!?」

 

そして追い撃ちで響も胸を貫かれて、倒れて……

 

……あの時お前の妹を貫いたのはガングニールの破片だ。謝って許される事じゃないが……もう一度謝らせてくれ。

 

いえ、もう過ぎたことですし、奏さんに悪意があったわけでもないし響もそんな認識はありませんでした……礼こそ言いますけど謝られる道理はありませんよ。

 

「おい死ぬな!?」

「ひび、き……」

「目を開けてくれ!生きるのを諦めるな!」

(……守ら、ないと)

(多分、あの人はもう戦えない)

(私が、響を守らないと)

(私にも、あの人達みたいな力が、あれば……)

 

奏さんが響の所に向かったのを尻目に、私は不思議と立ち上がってノイズの居る方向へと向かいました。

 

「おい!?お前何する気だ、死ぬぞ!?」

「……守ら、なきゃ」

「え?」

「ぐっ……私が、家族を……」

 

 

「響を……守らなきゃ、いけないんだ……!」

 

翼さんに止められましたが、無意識に右手に刺さったこれを引き抜いて……

 

「あれは……」

「シンフォギア……なんでこんな所に!?」

 

(……暖かい)

(ねえ、力、くれるの?)

(あの子を守れるだけの……力を)

 

 

 

 

「……力を、寄越せェェェェ!!!!!」

 

Verderben Fenrir tron……!(呪縛からの解放)

 

 

「なっ……」

「……嘘だろ、なんで、変身して……!?」

 

……正直な話、その後の事は私はよく覚えていないんです。気付いたら病院のベッドの上でした。

 

だから覚えているのは私と翼の2人だけ……凄かったよ、あれは。

 

ああ、ノイズをちぎっては投げちぎっては投げ……初変身、しかも手負いの状態でな。

 

あの時旋璃が居なかったら今頃私は此処に居なかったかもしれない、そう思えるほどには……強かった。

 

買い被りすぎですよ……何やってたのかよく覚えてないですし私。

 

でも、旋璃さんが戦ってくれたから皆この場にいるんでしょう?

 

そうだぞ、そんなに自分を卑下するな。

 

……そう、ですね。ありがとうございます。

 

 

「……っ、あ……」

「私、生きて……」

「ひび、きは……」

 

……病院で目覚めて、色々事情を聞いて……とりあえず響が無事って聞いて安心して。駆けつけてきた両親や祖母と話をして……

 

「すまない、君が立花律君……で合っているかね?」

「……貴方は?」

「失礼、俺はこういうものでね」

 

……ようやくまともに動けるかなーってなってきた頃です、司令が私の元を訪ねてきたのは。

 

なんで司令が直々に?

 

それはですね……

 

「君があの時纏っていた対ノイズ用兵器、シンフォギア……あれは特別な資質を持つ者しか使えない物だ」

「……よくわからないんですけど、私はそのシンフォギアっていうのを纏って……ノイズと、戦ったってことなんですか?」

「そうだ。まず言っておくべき事はあれは国家特別機密に該当するものでね、君には今後言動や行動に一部の監視が付くことになる」

「まず……じゃあ他にもあるんですか?」

「聡い子だな……あのギア、グレイプニルを纏える資質を持つ者は今のところ君しか居ないんだ」

「グレイプニル……」

「退院してからの話にはなるんだが……君はあれを纏ってノイズと戦える。情けない話だが……我々には人手が足りないんだ」

「……また、ノイズと戦えってことなんですか?」

「強制じゃない、確かに人手不足なのは事実だが、君の自由を奪う程俺たちは落ちぶれてはいないさ……だからこれはもし良ければ、の話になる」

 

……司令直々にスカウトとは、偉く買われてたんだなお前。

 

じゃあそれを受けて?

 

……いえ。

 

「……少し、保留させてください」

「……そうか、理由は?」

「嫌って訳じゃありません。その力があれば……多分、家族を守れるんでしょう?」

「ああ」

「けど……いきなりどうこう言われてもちょっと理解が追いつかなくて。学校とか、普段の生活とか……そういうのってどうなるんだろうって、思考が纏まらなくて」

「……」

「それにもしかしたらですけど、響と……妹と離れ離れになる可能性だってあるんでしょう?そう考えたら安請け合いはできません」

「分かった……結論が纏ったらまた連絡してほしい」

「はい、またその時に」

 

その時は保留、と言う形になりました。色々ありすぎて頭が追いつかなかったというか……

 

まあ普通そうなる。いきなりシンフォギアだの二課どうこうだの言われても困惑しかしないだろうしな。

 

それにその時話を受けていたら私は多分「緒川旋璃」ではなく「立花律」として此処に居たと思います。

 

……そう、そこ。

 

ええ、何故私が「緒川旋璃」になったのか。

 

……ちょっと此処からは長くなりますよ。

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