パラディ・ガストロノミック〜食を愛せしもの、神ゲーに食を求めんとす〜 作:エピキュラ
アニメからハマったクソ弱作者ですwiki片手に頑張るから許して
「……〜っ! やぁっと買えた、シャンフロ!! VRやってみたかったんだよなぁ!」
とある小さな部屋の一室で、肩を震わせて縮こまり、その直後に一度に身体を大きく広げて歓喜にうち震える少女がいた。
まだ若かりし高校生とは思えぬほどの荒れた手で、ごそごそとレジ袋を漁るその顔はまさに満面の笑みだった。
「VRの食べ物、どんな感じなんだろな〜? やっぱファンタジーな奴とかあるのかな? 神ゲーって言われてるし、絶対ご飯も充実してるよね? あ〜!! 口角が痛くなってきた!!」
先程から不気味な笑みを浮かべながら独り言を絶えず呟く少女の名は、
そんな彼女は今日、シャングリラ・フロンティア、通称シャンフロという神ゲーを始めようとしていた。
「水よし、栄養補給よし、ベッドよし! ……っとと、始める前に一応説明書読まないと」
ベッドの傍らの机に置かれた水と、いかにも焼き立てですと言わんばかりの香ばしいバターの匂いを放つクッキーとを指さして声を張り上げる。
最も大切ともいえる事項を確認し終えた灯里は、そのままシーツへと飛び込んでVR機材とシャンフロの説明書を読み込み始めた。
フルダイブ型VRゲームは基本、ベッドや床に寝転んでプレーするものだ。勿論プレー中は現実での体は動かない。その為、事前に食事や水分補給を行うことが何よりも大切なのだ。実際、夏休みの時期にはそれらを疎かにした学生が熱中症やら空腹やらで救急搬送されることもあるらしい。
「……ふむふむ、うん、分からん!! ……ま、やれば分かるでしょ!」
しばらくの間文字がずっしりと書き込まれた紙を睨みつけた後に勢いよく起き上がる。そのまま説明書をぽいっと投げ捨てて乱雑にVR機材を手に取った。
香坂灯里は面倒くさがり屋なのだ。
「ソフトも入れたし電源入ってる。……うっし、やるぞー!!」
再びチェックをして、気合を入れるためにばちんと頬を叩く。
勢いよくガバッと再びベッドへと倒れ込む。顔の上部がVR機材で覆われていながらも、一目見れば分かってしまうくらいに、彼女は笑みを浮かべている。
沸々と湧き上がる期待を胸に、灯里はシャングリラ・フロンティアの世界へと沈み込んだ。
____この後に、過去の自分を恨むことになってしまうのを知らぬまま。
***
「ほぇー、これがキャラクリ空間? なんかすごいなぁ……ってどんだけ数あんのこれ?!」
初めてのVRMMO空間に感動しながらもキャラメイキングのあまりの自由度に、わたしは思わず瞳を大きく開かせる。
人種やら体格やら顔の細かい造形やらと、もう正直多すぎて大抵の人が困るんじゃない?……まぁ別にキャラメイクの方向性は元から決めてたし、わたしはそこまで迷わなかったけど。
「金髪碧眼で髪の長さは今のわたしと同じ背中の真ん中くらい、顔立ちは綺麗なお姉さん風で身長は高くすらっとさせて……うん、できた!」
目の前にすらりと立つ自分を見つめて、思わず笑ってしまう。きっと誰が見ても美人に見えるはず。うーん、さすがはわたしだ。センスあるぞぅ!
「次は職業とか……かな? ……って量! 量!」
ずらりと並ぶ文字列に思わず身体を仰け反らせる。なにこれ、殺しに来てるの?
どうもシャンフロには職業や出身によってステータスの変動があるらしく、しっかりとこれらの中から最も自身に合うものを選ばないといけない。うーん、やっぱり殺しに来てるねこれは。
とはいえどわたしがやる職業自体は殆ど決まっている。目の前の文字群の中から、血眼になってその狙いのものを探していると、ようやくそれらが見つかった。
「あった! 料理人!」
料理人____それはわたしがかつてから憧れているもの。最も親しいもの。
食を愛し、食を作り、食を広める人。誰かの笑顔を、「おいしい」の声を、人の感動を作る人。
何よりも食が大好きなわたしには、それ以外は選べないわけで。
「ぜ〜ったいに極めてやる! 覚悟してな、シャンフロの料理人たち!」
と強く意気込んでいるけども、自分が次にやるべきことがある。
次は出身。これは正直なんだっていいと思ってる。しいていうならLUCを上げれるやつだと食材回収が楽になりそうでいいかな。
ざっと眺めてから、候補になるものをいくつか選ぶ。
彷徨う者、獣の子、美食屋。幸運の上昇が見込めるのは……彷徨う者、かな。正直美食屋でやりたいけど、それ以上に彷徨う者が魅力的だ。たしか幸運によってはクリティカル判定も良くなるんだったっけ。早いとこモンスターを倒せそうならいいでしょう。
「……よし、できた。後は名前……っと、できた!」
出身を入力して、最後に自身のプレイヤーネームを書き込む。装備の確認だとかを諸々終え、決定ボタンを押す。
さぁ、シャンフロ、すなわちシャングリラ・フロンティアのはじまりだ! ……と、その前に、シャンフロのプロローグが流れ出した。
____遥かな太古、神代と呼ばれる時代があった。 偉大なる神人達は後世に命を紡ぎ、その姿を消した。
BGMとともに、説明文が流れてくる。そういえば、説明書にも書いてあったような、なかったような。
正直、かなりうろ覚えだったので一応プロローグはスキップしないでおいたほうがいいかな。
____さぁ、一歩踏み出して。 未知を、未来を、そして可能性を切り拓いて。それがこの地に生まれ落ちし、神代よりの子らに課せられた使命なのだから。
ぼんやりと聞いているうちにプロローグが終わったのか、一度に目の前が暗くなり、今まで経験したことのない感覚が到達してきた。
きっと、次に目を開くときにはシャングリラ・フロンティアの世界が広がっているのだろう。そう考えると、わくわくが止まらない。
胸の高まりが、最高潮に達する。わたしは、強い決意を胸に抱いた。
今、香坂灯里、あるいは『べラブーシュ』という、一人の料理を愛せし者がシャングリア・フロンティアへと……!!
原作に寄せて書いてはいきたい……
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