パラディ・ガストロノミック〜食を愛せしもの、神ゲーに食を求めんとす〜   作:エピキュラ

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 やばばばば。wiki眺めてたらヴォーパルバニーのマフラーみたいなアイテムあるじゃないですか?!

 ……まぁ、コミックにしか登場してないし? それにうちのは致命の襟巻なので?

 この世界線ではベラブーシュがシナリオクリアするまで兎の首巻布がなかったということで。はい。

 ゆるして。



悩みのタネは

 

 一人の男が、セカンディルの宿にて頭を悩ませていた。

 椅子に座って肩を組むその男の頭上には、「ミリオネア」という文字が浮かんでいる。

 

「……ううん、そろそろこっちに移動してくると思ってたんだがなぁ」

 

 ミリオネアの悩みのタネ、それはとあるプレイヤーのことだった。その名こそは知らないものの、あの日の森での出来事は、確かにミリオネアの記憶に刻みつけられていたのだ。

 

 

 

 生まれて(シャンフロを始めてから)初めて、心を奪われたその瞬間を。

 

 

 

 ファステイア周辺部の森の、その奥深くにて。

 

 レベリングを行っていた男、ミリオネアは本来ならば人のいないそこで、微かな戦闘音を聞き取り、その場へと向かっていた。

 

「……? 誰だ、ここは俺しか知らないはず」

 

 一体全体こんなところに来たのは誰なのか。彼は疑問を胸に、段々と大きくなる戦闘音を耳にしながら歩みを進めていると、激しく動く人影を見つけた。跳ねては駆け、しゃがんでは跳ね、とそれはもう非常に激しいものである。

 

「! 女……? あの服、料理人じゃないか?! あんなに動けるものなのか?!」

 

 よく目を凝らしてみれば、金髪の料理人らしき女性が、やけに長いマフラーを靡かせるヴォーパルバニーと戦闘を行っていた。どちらの手にも真紅の包丁が握られていて、それを光が乱反射する。

 

「……っ」

 

 自身には到底避けきれない速度の斬撃を見事に躱し、どころかカウンターすらも行う金色の髪を靡かせるその人は、彼にはとても美しく思えた。いつまでも眺めていたいと感じた。

 とはいえど、明らかに今は相手のモンスターが有利な状況。それ故に彼は半ば諦めていたし、もうこのままスクリーンショットでもして個人の観賞用に残してやろうか、などとリテラシー違反な行為にすら及ぼうとしていた。

 

 

 

「っらァァァ!! っしゃぁぁぁ!!」

 

 

 

 だがしかし、彼女は赤き兎を倒してのけた。その時の衝撃はなんと言えばよいのやら。とにかくその斬撃は正確で美しく、その不敵な笑みとギラリと煌めく蒼き瞳に、彼は驚くほど心臓の鼓動を早め、頬を火照らせた。

 

「……きれいだ」

 

 彼は、惚れてしまったのである。名も知らぬ、美しき金色の料理人に。誰よりも綺麗なその瞳に。

 

 

 

 しかし、彼が気がついた時には、もう既に愛しきその人はいなかった。

 

 

 

 だから彼は調べた。あれ程の人が、無名な訳が無い! 誰かしら知っているに違いない! そんな期待を胸に抱え、電子の海に浸る。

 料理人、女性、金髪、強い、タレ目、美人。多くの単語で調べるも、その結果は惨敗だった。

 

「……っ、ない、ない、ない!! どうして、どうして見つかんねぇんだ?!」

 

 もう、彼女には会えないのだろうか。

 

「っくそ!」

 

 悲嘆を胸一杯に溢れさせながらも掲示板を眺めていると、何やら先ほど彼女が倒したモンスターの同類であろうヴォーパルバニーの話題で賑やかになっているのを発見する。

 

「なに……? ヴォーパルバニー? ……そういえば、あの時の……」

 

 始めのうちはそれこそ軽い興味だったが、彼は段々とその話題に心が惹かれていった。なんとなく、件の彼女が関係しているような気がしたからだ。事実、掲示板に心当たりがある旨を載せれば多くのプレイヤーらにそれだ、と言われたのである。

 

「しっかし、掲示板の人らすげぇなぁ……よくそんなに考察できるわな」

 

 そんなわけで、彼は今の彼女に出会うため、ファステイアの次の街であるセカンディルに来ていたのだ。掲示板の住人らからの情報で、大抵そういう時は直ぐに次の街に向かう、と聞いたためである。もちろん速攻で向かった。

 

「……はぁ。居ねぇんだよなぁ……」

 

 しかしながら、今に至るまで彼は一度も金髪のその人を見つけることは出来ていない。

 

 件の彼女は実力があるため、もしや既にサードレマへと向かってしまったのでは、という不安が一瞬彼の頭によぎる。

 

「……どうする、サードレマに向かっちまうか?」

 

 ここで待ってそのまま置いていかれるよりも、先に待っていたほうがいいのではないか。そんな選択肢が彼の頭に思い浮かんだ。なるほど、確かに置いていかれてはどうしようもないが、先にいれば待つだけで確実に会うことはできるだろう。思い立ったが吉日、というやつだ。

 

「……よしっ!」

 

 今後の方針を決めたミリオネアは、すくっと立ち上がった。やるべき事は、ただ一つ。

 

「絶対かわい子ちゃんと出会ってリードしてやるぅ!!」

 

 かくして、今ここに、将来のベラブーシュのパトロン、その代表者となるプレイヤーが誕生したのであった。

 

***

 

「おーし、今日も一日頑張るぞっ!」

 

 セカンディルのあまり目立たない宿屋で目覚めたわたしは、思いっきり声を上げていた。昨日は中々に濃い一日だった。

 

 あの蛇との戦闘が終わってから、セカンディルの宿に行ったのは良かったのだが、戦闘の興奮が冷めないのなんの。直ぐに付近のエリアでモンスターを狩ろうとしたら沼地で全く速く動けなくて腹が立ったし物凄く面倒くさかったなぁ。

 

 取り敢えず近くにいたカエル——確かマッドフロッグだったか——を腹いせに倒して後脚部を唐揚げに調理した。大して美味しくはなかったけど。いや、味付けだとかは上手くできていたと思う。だけどその、味覚制限のせいで味が薄いしちょっとボソボソ感増してるっぽいしでかなりがっかりだった。

 

 ああ、あと盗賊禿鷹(バンディットバルチャー)の手羽先も同じく揚げ物にした。味付けが甘じょっぱい濃いめのタレだったからかはわからないけど、マッドフロッグよりかは美味しかった。

 だが食感。貴様は駄目だ。口の水分という水分が取られるパサパサ感に、中々の硬さ。多分味付けが上手く行かなかったら味のしないジャーキーみたいになってたんじゃないだろうか。

 

 まったく、早く味覚制限を開放しないとだ。昨日は散々だった。ほんとに。

 

「まぁ、昨日は昨日、今日は今日! 取り敢えず鉱石でも掘って武器作りますか!」

 

 そう、実は昨日、セカンディルの武器屋で色々見てきた。例の本を店主さんに見せてみると物凄く驚かれて、「自分にはこれを作れる技術がない。防具は諦めてくれ。だけど、素材を用意してくれれば何か武器を作れるよ」みたいに言われた。ほんとに、あのファステイアのおじさんは何者なんだろうか。下手したらこの辺りで一番凄い鍛冶師だったりしない? 

 

 だがまぁ、なんやかんやで装備は一新したかったので取り敢えず隔ての刃の皮服装備一式を買っておいた。安かったからこれにしたのは良いんだが、その……だいぶ身体のラインが出る服で、ちょっと恥ずかしかった。リアルの身体じゃなくてよかった、絶対哀れみの目線食らうもん。

 

「……あー、向こうで装備変えるか」

 

 流石にわたしにはそこまで度胸はなかった。とほほ。

 





 料理にバフってありですかね……? やったほうが楽しいかな、と思うんですけど、素材は何とも無いのに料理したらバフってのもあれですし、そもそも原作にバフ食材って旧大陸ではほぼ登場しないし下手したら原作壊しそうというか……
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