キヴォトス鉄砲伝来!   作:エドモンド橋本

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火縄銃の撃ち方適当に調べただけなので間違ってたらすみません。


ザコ到来

 

 

 眠い。しかし起きなければいけない。今が何時かも分からないのに、今日やらなければいけないことだけはハッキリ頭に流れてくる。西野重工さんと、森田建設さんのとこに見積りを出して、谷山さんとの打ち合わせ、予算会議、それから、それから?嫌になる情報が頭に入り込んできたかと思えば、今度は妙な違和感が脳を支配した。これでもそれなりに仕事で稼いでいる。金の使い道の一つとして睡眠に投資していた。寝具関係は良いものを使っていたはずなのに、なぜ俺は今こんな硬く冷たい床に寝ている?それに妙に脚がスースーする。顔や首に掛かる長い毛は何だ?というか。

 

 「ここ、どこ?は?え?」

 

 今いるのは、雑居ビルの空部屋のような場所。置かれているのは姿見とクローゼット?のようなものだけ。というか今のは誰の声だ?いや分かる。俺の口から発せられたものだ。ん?何で俺はスカートを履いている?というか何だこのうざったい髪は。明らかに混乱を招く状況。しかし、俺は察しが良い。これがどういう事で、今俺はどうなっているのか。俺はその正体を確かめる為に姿見の前に立った。

 

 「は、はは」

 

 そこには苦笑いを浮かべる美少女が映っていた。俺は全てを理解した。今俺がどうなっているのか、ここが何処なのか。それは、頭上に浮かぶ光の輪が教えてくれた。

 

 

 

 

 

 ブルーアーカイブの世界にTS転生した。はい。そういう事ですね。しかし転生なのかどうかは不明だ。何せ俺は普通に1時半に就寝したのだ。死んだ覚えはない。まあその辺は深く考えない方がいいか。

 

 さて!透き通るような世界、ブルーアーカイブ。ここキヴォトスは愛と平和の象徴の様な

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 窓ガラスが吹き飛んで部屋が黒煙に満たされたとこまでは記憶がある。グラグラする頭を摩りながら恐る恐る吹き飛んだ窓の外を見る。まるで全てを許してくれる様な優しさを感じる美しい青空、戦車が並び銃弾と罵声と怒号が飛び交う大地。そうでした。これがキヴォトスでした。

 

 銃を持たずに歩く人は全裸で歩く人より少ない世界。特にこれからの目的はないが、取り敢えず護身用の銃を手にしなければ。戦うつもりなど毛頭ないが、それでも少し気分が高まる。男の子とというのは剣や銃にロマンを抱くものなんだよなあ〜。うわー!何にしよう。スナイパーライフル?ショットガンもありだよなあ〜。でも重いか?護身用なら拳銃かな?ならリボルバー!?くー!!憧れる!!スッと取り出して早撃ち!!こんなんリボルバー一択じゃん!!決定!!早速ショップに!ショッ、プ、に。

 

 大事なことを忘れていた。俺は、俺は。

 

 「……金ないじゃん」

 

 嘘だろ。金、ないの?俺。あんだけ働いて、仕事一筋で生きてきて。ただ明日のスケジュールを確認してから就寝しただけなのに。武器も金もないまま透き通るような世界観(笑)のキヴォトスに放り投げられて。ここでこれから生きていけと?おい、何がしたいねん神様。せめて換金くらいしてくれよ。

 

 「はあ、クソだな」

 

 金が欲しけりゃ強盗?だからその武器がねえんだよ。武器を奪うにも武器がいる。だめだ詰んでる。全裸で出歩いて油断させるか?もはや尊厳など捨てれるぞ俺は。

 

 「あ、そう言えば」

 

 この部屋にはまだ確認していないものがあった。謎のクローゼット。あの爆発の後、姿見は吹き飛んだが、このクローゼットだけは壊れるどころか傷一つない。怪しすぎる。

 

 「良い、よな?確認するだけだし」

 

 俺は若干ビビりながらクローゼットに近付く。何かあれば逃げられるように体を後ろに引きながら、手を伸ばし、クローゼットを開くと同時にダッシュで部屋の隅に走る。数秒間身を丸めていると、特に何も起きる様子がない為、もう一度クローゼットへと近付く。

 

 「え?これ」

 

 クローゼットの中には、幾つもの銃火器が並べられていた。俺は察しがいい。直ぐに理解した。これは初心者ボーナス。好きな武器を選んで始めろって事だろ?ちょうど目の前にあり、長年の相棒の様な雰囲気を放つリボルバーに手を伸ばす。

 

 「さあ、始めよう。俺の、いや、俺達の、ブルーアーカイブを!!痛っ!!??」

 

 リボルバーに指先が触れた瞬間、強烈な静電気の様なもので手が弾かれた。俺はそのまま30秒程固まる。俺は察しが良い。だから分かる。この状況が理解できない事がよく分かる。

 

 「は?え、何で?」

 

 理解出来ないと人はどうするか、そう。繰り返すのである。

 

 「痛ったあい!!だから何で!!??」

 

 強力な静電気がバチン!!と指先に走る。これじゃまるで拒まれている様だ。こうなったら仕方ない。

 

 「ま、まあ、俺はやっぱリボルバーとかより?断然?ショットガンが似合うと思って、痛ああい!!!」

 

 ダメでした。ショットガンもダメでした。え?嘘だろ?装備する武器に決まりとかあんの?なんだろう。性格とか、前世の行いとかで決まるとか?ダンジョンゲームとかで心理テスト的なの受けて自分のキャラクターが決まるみたいな?

 

 「あ、は、はは、俺はさ、結構裏方でじっくり仕事するタイプなんだよね。縁の下の力持ち?前に出て仕事取ってくるより、静かに一つ一つ片付けていくタイプ?花の狙撃手!!スナイパーライフぎゃああああ!!!」

 

 静電気じゃない。最早電気ショックレベルなんだけど。えなに?意思ある?俺の事見えてんの?

 

 「もう良いよ。俺が選べないなら選んでよ。何なら持って良いの?」

 

 こうなったら何でも良い。無いよりマシだ。まあ出来れば重すぎない奴だとありがたいが。そう考えているとクローゼットの隅っこが謎の光を放つ。

 

 「は?」

 

 そこへ手を伸ばすと、風呂敷に包まれた銃が出て来た。嫌な予感がしつつ風呂敷を開くと、かつて若かりし頃歴史の授業中教科書の隅に書いてあった様なものが幾つかあった。丸い弾丸、それを押し込む為の鉄の棒、火薬、そしてその名の象徴たる火縄。一発撃つのに慣れていても30秒は掛かると言われ、雨の日は使えず、命中率も低く、射程も100〜200メートル程。

 

 「これが、俺の武器?」

 

 火縄銃。日本の戦の歴史を変えた武器。これで俺に、キヴォトスの歴史を変えろって、そう言ってんのか?そうか。良いぜ。やってやるよ。

 

 「下で撃ち合ってる奴らんとこに全裸で乗り込んで銃奪ってやるよ」

 

 火縄銃で身を守れるわけねえだろ。弾込めてる間にシバかれるわ。武器がないなら奪う。古の争いからあった行為だ。やってやる無鉄砲になってやる。火縄銃だけにな。

 

 「さらば尊厳」

 

 「誰だテメェ!!」

 

 身に付けていた衣服を脱ぎ捨てようとした瞬間、部屋の入り口から威嚇するような声が飛んで来た。

 

 「ここは今日からウチらのアジトだぞ!!」

 

 胸にサラシを巻いたまま長ランを着ているというどえれえ格好をした金髪の女の子が俺にマシンガンを向けている。その後に続くようにポニーテールの子や三白眼のショートの子が入ってくる。そう、この子達はスケバン。ブルーアーカイブにおけるモブキャラ達だ。

 

 「コイツバタバタヘルメット団じゃねえのか?」

 

 「あのダセェヘルメット被ってないし、違うんじゃ」

 

 「うるせえ!ウチらのアジトに勝手にいる時点でアウトだろ!!」

 

 「そっすねリーダー。取り敢えず見せしめとしてボコしますか」

 

 「やっちゃおやっちゃおー!!」

 

 驚いたのは海辺のスケバンもいることだ。しかし水着では無い。リーダーの金髪の子のようにサラシの上から学ラン着ている。凄いな。美少女なら何やっても許されるんだろうな。

 

 「おい!さっきから黙ってっけど、結局オメエ誰だよ?」

 

 「はい!織田です!!」

 

 やばい、迫力にビビって名乗ってしまった。

 

 「んで、どこのもんだよ?」

 

 「え?いやどこのって言われても」

 

 どこのもんなら許してくれんだろ?

 

 「ねえリーダー、コイツ変な銃持ってるよ」

 

 海辺のスケバン(SMG)のロリっ子が俺の火縄銃をツンツンしながらリーダーの子に言うと、全員がそっちに気を取られる。これは逃げるチャンス!と思い立ち上がると、脇腹に銃口が当てられた。

 

 「おい、妙な事すんな」

 

 三白眼のきつい視線が銃口より強く俺に刺さる。スケバン(SR)ちゃんは見た目通りクールな仕事人の様だ。他の面々が火縄銃に夢中なのに、この子は俺から目を離そうとしない。

 

 「い、痛いんだけど」

 

 「それで?」

 

 ダメだ。会話に応じる気はなさそう。

 

 「あん?これどこでリロードすんだ?」

 

 「何だこの棒?それに粉?いや火薬か」

 

 「これが弾か?なんか丸くね?ウケんだけど」

 

 嘘だろこの子達火縄銃知らねえの?単純に学力故かそれともこの世界の問題なのか。

 

 「おい、お前これどうやって撃つんだ?」

 

 「はい?ぐえっ」

 

 先程より強く銃口を押し付けて来たかと思えば、リーダーの前に突き出された。何かを期待する4人の目と、背中に当てられた銃口から俺の選択は一つしかない。やるしかない。だが、やった事がない。

 

 「ん?どうした?」

 

 「え?あ、いや、なんでもねえっす!それじゃ、やらせてもらうっす!!」

 

 5人の視線を受けながら俺は震える手を必死に銃に伸ばす。思い出せ、教科書の片隅に書かれていた火縄銃の撃ち方を。何だっけかな?確か、銃口に火薬を入れて、弾を込める。そこに棒を突っ込んで突いて、手元の近くにあった火皿?に火薬を入れて、縄に火を点けて火ばさみで挟み込む。覚えてるもんだな。意外と。これで火ばさみを上げ、火蓋を開き、照準を合わせればいつでも撃てる。はず。

 

 「なんかめんどいっすね」

 

 「いつの時代の銃だよ」

 

 「性能悪く無い〜?」

 

 うるせえな。お前らの武器のご先祖様だぞ。敬え。ついでに温故知新って辞書で引いてこい。

 

 「じゃ、じゃあ撃ちまーす」

 

 覚悟を決めろ。ここから生きて出るには、やるしか無い。この一発で、出口扉の前に立つあのスケバン(SMG)のポニテちゃんを撃つ。そこからダッシュで逃げる。やるぞ。俺はやるんだ。生きてれば必ずチャンスは回ってくる。

 

 「あんたら」

 

 「あ?」

 

 「詰めが甘いんだよ!!」

 

 俺を舐めていたな。ハナからぶっ殺してりゃ、こんなことにならずに済んだのによ。あばよモブちゃん。生憎俺は君達と遊んでる暇はないんだよ。イカしたセリフと共にぐるりと体を反転させ、銃口を扉の前に立つポニテちゃんに向ける。全員の表情が一気に変わる。鋭い眼光を光らせ、誰よりも早く動き出したSRちゃんには悪いが俺の方が早い。覚悟を決めて引き金を引く。すると、想像以上の衝撃が身体を伝う。それにより思わず体勢を崩し、逃げの初動が遅くなった。

 

 「ぐえっ!!」

 

 「お前、死にてえんだな」

 

 あっという間に組み敷かれました。どうやら俺は、この世界ではモブ以下の様です。撃った弾もあらぬ方向に飛んでいったのかポニテちゃんは扉の外の方を呑気に眺めてるし。ダサすぎる。俺超ダサすぎる。てか何だよ。何も悪いことしてないのに急な第二の人生始めさせられて、こんな暴力を受けるなんて。クソだ!クソクソクソクソクソクソクソクソクソ!!!!

 

 「うぐぇ、いた、痛いでふ、たふへて」

 

 銃口頬にグリグリされるの痛い。顔踏まないで。腹蹴らないで。泣いちゃう。

 

 「あ〜あ、おもちゃの説明だけしてればさ、こんな思いしないで済んだのに」

 

 海辺のスケバン(MG)ちゃん。ビジュはめっちゃ好きです。髪撫でてくれんの嬉しいけど今はめっちゃ怖い。やめて、DV彼氏っぽくてめちゃ怖い。急に大声出して殴るタイプじゃん。

 

 「どうする?サンドバッグ?それとも射撃台?」

 

 こわい。純粋無垢なロリボイスで物騒な事言うの怖い。

 

 「ああ、そうだな〜、うちらを騙して銃を向けた。それは大罪だよな?」

 

 「ちょっ!リーダーたんま!」

 

 死を覚悟していると扉の外を覗いていたポニテちゃんが、知らない人を引きずりながら現れた。

 

 「あ?何だよそいつ」

 

 「バタバタヘルメット団だよ!なんかウチらの後をつけてここに入って来てたみたい」

 

 ヘルメット団?この子達とバトってた子達か。可哀想に。俺と同じ運命を辿る事になるのか。

 

 「は?まだいたのかよ。お前が仕留めたのか?」

 

 「いや、そいつが撃った弾に当たって気絶したっぽい。なんか手にグレネード持ってたから。この部屋ごとウチらを吹っ飛ばそうとしてたんだろうね」

 

 へ?俺の撃った弾に、当たって、倒れた?マジで?

 

 「偶然、か?」

 

 「でもさリーダー。こいつさっき、ウチらの詰めが甘いって」

 

 「偶然だ」

 

 痛い。認めたくないのかSRちゃんが銃口グリグリしてくる。それ痛い。絶対口内炎になる。やめてよ〜。

 

 「アンコ、離してやれ」

 

 「ッでもリーダー」

 

 「いいから」

 

 「はい」

 

 ……この子アンコって言うんだ。かわいいね。それはともかく。助かった。良かった。何か誤解してるっぽいけど。

 

 「コムギ、そいつ縛っとけ」

 

 「うん、もうやってる」

 

 あ、ポニテちゃんはコムギちゃんって言うのね。君もかわいいね。

 

 「んで、織田だったか?」

 

 「うす!姉貴!」

 

 うわ、アンコちゃんが睨んできた。ミスったかな。

 

 「ふはっ!姉貴か、面白えなお前。中々良い腕してるし。あのヘルメット野郎からウチらを助けてくれたしな。良いぜ。お前、今日からウチらの仲間だ」

 

 あ、決定事項なんすね。断れ、ないよね。アンコちゃんの目がめっちゃ怖い。これ断れないやつだ。RPGみたいに断ってもYESって言うまで続くやつじゃない。断った時点でエンドロール流れるタイプだ。俺はまだ冒険を続けたいです。セーブもしてないし。

 

 「よ、宜しくお願いするっす!」

 

 「おう、宜しくな。ウチはモナカ。ここのリーダーだ」

 

 「モナカの姉貴!一生ついていくっす!」

 

 やだなあ。何で第二の人生でこんな下っぱムーブかまさなきゃならんのか。

 

 「はは!お前本当に面白えな!」

 

 急に肩をガシッと組んできたモナカちゃん。大きなボインが頬に当たる。あー、これは良い。グリグリされた頬が癒されていく。モナカちゃんヒーラーなのね。

 

 「ああ、そうだそうだ、こっちの2人な」

 

 パッと肩を離したモナカちゃんは後ろに控えていた海辺のスケバン組を指さした。ボインが名残惜しいです。

 

 「さっきはごめんね、うちはチマキ。よろ」

 

 「アタシはヨモギ!宜しくね!」

 

 MGのチマキさん。SMGロリのヨモギちゃん。2人ともかわいい。まだちょっと怖いけど。

 

 「何々!もう自己紹介終わった感じ?あ、さっきはありがとね!ウチはコムギ。よろしく!」

 

 元気っ子のコムギちゃん。天使かも。

 

 「……アンコ。下手な真似したら撃つ」

 

 名前可愛いのに。怖いよお〜。俺の視線を感じ取ったのか、スッとアンコちゃんの隣に立って宥める様に肩を叩くチマキさん。カッケェ。尊敬するわ。全員の自己紹介が終わったからか、モナカちゃんはみんなの前に立って俺に手を差し伸べた。

 

 「そんじゃあ織田、お前は今日からウチら《尽黄泉(つくよみ)》の6人目のメンバーだ!キヴォトス最強のチーム目指して、気張っていこうなー!」

 

 「う、うっす!!」

 

 やばいダサすぎる。今すぐ辞めたい。

 

 

 

 

 

 

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