【推しの子〜アオの行方〜】   作:ジェナス_j

7 / 13
第1章『再演』
Scene6『再会』


Scene6『再会』

 

母の死から、10年以上が経ち、

八神蒼人は15歳になった。

 

「ん?・・・よし」

 

硝子に映る自分を見て、

蒼人は髪を整えていた。

母の面影も残しつつ、

10年の歳月を得て、

彼は大人になりつつあった。

 

「さって、俺の家はどっこだろな〜♪」

 

蒼人は、母亡き後、

祖父母の実家がある京都に引っ越した。

そして、高校入学を機に

単身東京に出て来た。

今日は新生活の1日目である。

綺麗な街並みに、住宅街。

新しい土地に、

不安と楽しみを感じていた。

 

「じいちゃんとばあちゃんが、

用意したって言ってたけど。

変なの用意してないよな?」

 

蒼人は祖父母の過保護さを思い出し、

少し心配していた。

 

「ま、流石にんなことしねぇか。

幾ら、孫大好きって言っても、

マンション買ったりは...」

 

蒼人は目的地に到着した。

しかし、その目に広がる光景に

目を疑った。

 

「...あの、すみません」

 

「はい?」

 

「この住所、ここで合ってますか?」

 

「えっと...あ、ここです。」

 

「そうですか、

ありがとうございます。」

 

通り過ぎて行った、お

兄さんにお礼をいい、

会釈をした。

 

「...な、な、な

んじゃこりゃぁぁぁ!!!」

 

蒼人は驚愕した。

何故なら、目の前にあるのは

高級マンションだからだ。

本人も、半信半疑だった。

いや、これが嘘であればと考えた。

だから、出て来た住人に聞き、

最終確認を取った。

 

しかし、真実は残酷だった。

 

「おいおいおい、聞いてねぇぞ!!」

 

蒼人は、顔を真っ赤にし、

祖父に連絡をした。

 

「じいちゃん!!」

 

「ん?おぉ、蒼人。

どうした?ホームシックか?」

 

「早ぇよ。じゃなくて!

何だよこの家は!」

 

「お?着いたか。

気に入っただろう!

お前の為に買ったんだ!」

 

祖父の隼人は自信満々に、

答えていた。

それに蒼人は頭を抱えた。

 

「気にいる、

気に入らねぇじゃなくて...ん?

ちょっと待て、買った?」

 

「そうだ」

 

「この家を?」

 

「そうだ」

 

「態々?俺の為に?」

 

「そうだ!立派なもんだろ?」

 

「任せるんじゃなかった。」

 

蒼人は後悔した。

こんなに大事にされるとは、

思っていなかったのだ。

 

「まぁ、そういうな。

金はある!」

 

「金の問題じゃねぇって!

何で、態々マンション買ったの?

こんなことしなくても、1R

のアパートでいいのに」

 

「可愛い孫の為だ」

 

「あんたは、加減を知らんのか?」

 

「知らん」

 

「このおじいちゃん、やだ...」

 

蒼人の祖父は大層のジジバカであった。

また、八神家は老舗の旅館を

経営していることもあり、

資金がかなりある。

その為、マンションの一つや二つ、

買う分には問題ないのだ。

 

「まぁ、可愛い孫の為は本当だが、

ちゃんと理由もあるぞ?」

 

「どんな?」

 

「...お前を守る為だ」

 

「...」

 

「お前が決めたことだ。

文句は言わん。

だが、万が一のことがあれば」

 

「わかってる。

ちゃんと、わかってる」

 

「蒼人、

こんなことしかしてやれず、本当に」

 

「じいちゃん」

 

蒼人は優しい声色で、

祖父に話しかけた。

祖父の心を癒す様に。

 

「ありがとう」

 

「...あぁ、元気でな」

 

「うん、わかってるよ。

ありがとう」

 

蒼人はそっと、通話を切った。

 

「ちゃんと、わかってる」

 

祖父の隼人はオートロック式の

防犯のしっかりしたマンションを与えた。

亡き娘、星菜の息子を守る為に。

孫が安全に過ごせるように、

せめてもの贈り物として与えたのだ。

愛故に。

そして、それを本人もわかっていた。

 

「まぁ、予想はしてたけど。

綺麗なお部屋だこと。」

 

蒼人は、玄関を通ると、

部屋を探検していた。

その家は、1人暮らしの

男子高校生には広く、

とても豪華なものだった。

 

「まったく、

こっちに来て揃えようと思ったのに、

全部揃ってんじゃんか。

家具家電。

オマケに調理器具まで。」

 

祖父母は、孫が不自由しない様にと、

各種家具や家電を取り揃えていた。

孫が、元気に。

そして、無事に過ごせる様に

願いを込めて。

 

「本当に、ありがとう。

じいちゃん、ばあちゃん。」

 

ソファーに荷物を置き、

景色を見る為、

ベランダに向かった。

 

「いい眺め。景色いいな〜」

 

ベランダから見える景色は、

とても綺麗なものだった。

そして、桜の咲く季節とあり、

彼の心はとても落ち着いていた。

 

「...母さん、着いたよ。

ここから始めていくから。」

 

蒼人は景色を見ながら、

亡き母に思いを馳せていた。

 

「あ、いけね。」

 

蒼人は、思い出した様に

カバンから写真を取り出した。

 

「えっと、どこにすっかな〜

...ここにすっか。」

 

蒼人は日当たりのいい、

リビングの棚に母の写真を飾った。

 

「母さん、心配しないで。

...俺は、真実が知りたい」

 

写真を一撫でし、

母に話しかけた。

彼の目的、

そしてやるべきことを...

 

「さって、昼食いに行くか。」

 

蒼人は昼食を取る為に、

家を出た。

途中で街を散策し、

景色を楽しみ、

新しい生活に慣れようとしていた。

 

「綺麗な街だな〜、天気いいし。

何かいいことありそう」

 

蒼人は商店街に向かった。

どの店も美味しそうに感じられた為、

どこに行くか迷っていた。

 

「お、美味そう〜」

 

蒼人は肉屋でコロッケを眺めてた。

 

「おぉ、兄ちゃん!見ねぇ顔だな。」

 

肉屋の店主が、

元気に話しかけて来た。

その姿に一瞬びっくりしたが、

笑顔で返した。

 

「え?

あぁ、今日ここに引っ越して来て」

 

「そうかい。

この時期で来たってことは、

アンタ学生だね?」

 

「えぇ。よく気づきましたね」

 

「あたぼうよ。

肉屋始めて、30年!

俺の目に狂いはねぇぜ!」

 

肉屋の店主が、

気前よく話してくれた。

この街で1人きりだった、

蒼人にとっては話し相手がいるのは

とても嬉しいことだった。

 

「へぇ〜ベテランなんですね。」

 

「まぁ、それ程でもあるがな!

所で兄ちゃん。

おめぇさん、俳優か何かか?」

 

「え?

まさか、僕はただの高校生ですよ。」

 

「そうかい。

勿体無いねぇな、

かなりのイケメンなのに。」

 

「だとしたら、

親の顔立ちが良いだけですよ。

僕が持ってるものなんて、

平凡ですから。」

 

俯き気味にそう答えた。

彼は、常に考えていた。

優れているのは、自分ではない。

母であると。

 

「馬鹿言っちゃいけねぇ。

たとえ、親から貰ったもんでも。

それはもう、おめぇさんのもんだ。

だから、おめぇさんが

イケメンなんだ。」

 

店主は、

そんな蒼人の思いを

知ってか知らずか、

気前よく答えていた。

その言葉は、

彼には有難いものだった。

 

「ありがとう。

...あ、すみません。

コロッケ3つお願いします。」

 

「おぉ!任せとけ!

揚げたて入れてやっから、

待っとけ!」

 

「ありがとうございます。」

 

「はいよ、

お待ちどうさん!」

 

店主が揚げたてのコロッケを、

袋に詰め渡した。

そして、中を確認し。

 

「あれ?多くないすか?」

 

「いいんだ、いいんだ。

引っ越し祝いだ」

 

「ありがとうございます!」

 

店主に感謝し、

笑顔でお礼を言った。

初めての場所での施し。

これは、とても嬉しいものだった。

 

「いいってことよ」

 

「あ、すみません。

桜見ながら食べたいんですけど、

どこかいいとこありますか?」

 

「おぉ、それならな。

ここ真っ直ぐいったら、

綺麗な桜並木があっから

そこ行きな。

そしたら、

でっけぇ桜の木があっから、

そこがお勧めだ。」

 

「ありがとうございます。」

 

蒼人は店を出て向かおうとしていた。

 

「お、そうだ。

運が良けりゃ、

女優に会えるかもしれねぇぞ?」

 

「女優?」

 

「おぉ、さっきな。

おめぇさんと

同い年ぐらいの女優さんが、

ここ通ってったからな。」

 

「有名な人ですか?」

 

「あぁ。

この辺の学校行ってるって、

噂だからな。」

 

「誰ですか?」

 

「確か名前は...

思い出した!白川!」

 

店主は元気に答えていた。

しかし、

蒼人はそれが誰だかわからなかった為、

目を丸くした。

 

「し、白川?」

 

「そうだ!白川だ。」

 

「へ、へぇ〜」

 

「おぉ。

ありゃ、相当なべっぴんだ。

うちの母ちゃんもあれぐらいだったら

「アンタ!何油売ってんだい!

さっさと仕事しな!」げぇ!

そ、そんじゃな坊主!また来な!」

 

「あ、ありがとうございました...」

 

店主が店に引っ込むのを見届けた

蒼人は、さっき教えてもらった

桜並木に行こうと歩き出した。

 

「...白川か。

ん〜誰だろう。」

 

蒼人は目的地を目指した。

新しい場所への期待。

そして、何か起こるのではないかと。

彼は、運命に心躍らせていた。

 

「...(ため息)何で、

この番組に出なきゃ

いけないんだろう」

 

場所は変わり。

綺麗な桜の木の下に、

制服に身を包んだ1人の少女がいた。

 

「はっきり断れれば」

 

彼女は、資料を読みながら一言呟いた。

そして、資料から目を離すと、

キーホルダーを手に取った。

 

「...元気かな」

 

優しく撫で、

何かを思い出すように、

優しく微笑んでいた。

 

「あ、台本読まなきゃ」

 

その後、彼女は台本に目をやった。

その表情は、真剣そのものであり、

メモ帳を片手に

ひたすら読み込んでいた。

自分の反対側に、

人が座ったことに気付かない程に。

 

「...ここにすっか」

 

蒼人は、袋を片手に桜の木の下にいた。

ここで、昼食を取ろうと考えていたのだ。

 

「綺麗だな」

 

桜を見ながら、彼は思い出していた。

自分の大切な思い出を。

大切な人を。

 

「...」

 

掌に落ちて来た、桜に目をやり。

彼は歌い出した。

 

「空にある何かを見つめてたら〜」

「え?」

「それは星だって君が教えてくれた〜」

「この歌、まさか」

 

少女は居ても立っても居られず、

駆け出した。

この歌が、1人の少女の運命を変えた。

 

「まるでそれは僕らみたいに寄り

「ひーくん?」へ?」

 

「...あ、あの」

 

「はい」

 

少女は躊躇いながら、

ゆっくり口を開いた。

願いを込めて。

 

「ひ、蒼人くん...ですか?」

 

少女は願った。

この少年が、待ち侘びた人であると。

 

「えぇ、蒼人ですけど、あなたは...」

 

少年は少女を見て思い出した。

それは、まだ母が生きていた時に...

 

「あかね...黒川あかねちゃん?」

 

「嘘、本当にひーくん?」

 

「え、えっと...

あかねちゃん、だ、よね?」

 

お互い、半信半疑だった。

目の前の少女が、

かつて出会った子であること。

目の前の少年が、かつて出会い...

 

「うん、うん。

そうだよ、あかねだよ」

 

「久しぶり、元気だった?」

 

「うん...うん。

元気だった!」

 

「うぉっ!

あ、あかねちゃん?」

 

この少女は黒川あかね。

過去に、蒼人と共演し、

彼により運命を変えられた女の子が

成長し再会したのだ。

 

「会えた、また会えた!」

 

感極まり、蒼人に抱きついた。

過去の辛さを忘れ去る様に。

新しい思い出に浸る様に。

 

「うん、また会えたよ」

 

蒼人は、優しい声色で言い背中を撫で、

あかねを落ち着かせようとしていた。

 

「久しぶり、元気だった?」

 

あかねは離れ、涙を拭い向き合った。

 

「まぁ、それなりに。

あかねちゃん、どうしてここに?」

 

「私、この近くの学校に通ってるの。

それで、息抜きに」

 

「そういえば、高校生だよね。」

 

「そ!今年から2年生」

 

「歳上なの忘れてた」

 

「もぅー!どういうこと?」

 

「ごめん、ごめん。

何か、歳下みたいだったから」

 

「こう見えて、お姉さんなのよ?

1つだけど...」

 

2人は懐かしさで、同時に笑い合った。

かつての友達に会えた喜びから。

 

「...ひーくんと離れて、

10年だっけ?」

 

「うん、10年経った」

 

蒼人とあかねは、

離れ離れになり10年が経った。

それ程の年月を、

別々に過ごしたのだ。

 

「ねぇ、ひーくんはどうしてここに?」

 

「ん?俺、この辺に引っ越したんだ」

 

「え!本当?」

 

「うん、本当」

 

「なら、この辺りの高校通うの?」

 

「あぁ、高校は陽東高校」

 

「あ、違う学校だね。」

 

「あっと...あ、それ」

 

あかねが落ち込んだのを見て、

申し訳なく思った蒼人だが、

あかねの手元にある物に目をやった

 

「へ?あぁ、これ?」

 

「持っててくれたんだ。」

 

「うん、ずっと持ってるの。」

 

「そっか、ありがとう」

 

「ううん。大切な思い出だから。

ずっと、大切な。」

 

そう話すあかねの表情は、

とても穏やかで幸せそうだった。

 

かつて、別れ際に彼女に渡した

クマのキーホルダー。

手入れが行き届いていたからか、

とても綺麗で

大切にしてくれていたことを、

蒼人は喜んだ。

 

「ありがとう。

まさか、ここであかねち...

あかねさんと会えるなんて」

 

「ふふ、あかねちゃんでいいよ?」

 

「歳重ねたからさ、なんか恥ずかしくて」

 

「私は気にしないのに〜」

 

「年頃の男子高校生なの」

 

「なら、私も蒼人君にした方がいい?」

 

「んっと〜、可能なら?」

 

「むぅ、わかった」

 

本当はひーくんと呼びたかったし、

あかねちゃんと呼ばれたかった。

だが、本人が嫌がるならと、

あかねは剥れながら、渋々了承した。

 

「ありがとう」

 

「あ、ねぇ!引っ越してきたのは

わかったけど、

どうしてここにいるの?」

 

「あぁ、昼飯食べようと思って。

散策がてら、ここでさ。」

 

蒼人の言葉に、

期待が生まれた。

もしかしたら、

今日は時間があるのではないかと。

 

「え!じゃあ、この後時間ある?」

 

「うん、超暇」

 

「それなら、私案内するよ!

一緒にどう?」

 

「え?いいの?」

 

「うん!気晴らししたかったし、

久しぶりに蒼人君と

話したかったから」

 

あかねは身を乗り出して、

笑顔で話した。

彼と話せる時間。

一緒に居られる時間が嬉しいから。

 

「ありがとう、俺も話したい」

 

「!そ、それじゃ行こっか」

 

蒼人は優しく微笑んだ。

10年もの歳月を経て、

成長した男の子は

青年になりつつあった。

そして、彼の笑顔を見て

あかねは頬を染めた。

 

「うん。行こう、あかねさん」

 

「行こう、蒼人君」

 

こうして、あかねと蒼人は

歩いて行った。

あかねは、行きつけのカフェへと

蒼人を案内した。

 

「へぇ〜、こんなカフェあるんだ」

 

「そう!私の行きつけなんだ〜」

 

「あかねさん、センスあるね〜」

 

「へへっ。

蒼人君何頼む?」

 

「どうしよっかな」

 

蒼人はメニューを

見ながら悩んでいた。

しかし、中々決まらないので、

あかねの意見を聞いた。

 

「あかねさんは?」

 

「んっとね、いちごパフェ!」

 

「可愛らしい」

 

「あのね!ここの美味しいんだよ!」

 

「そうなんだ。

なら、俺も頼もっと。」

 

「本当!一緒なの嬉しいな。

あ、店員さん呼ぶね」

 

「あ、俺呼ぶよ。

すみませ〜ん」

 

蒼人は店員を呼び、

注文した。

 

「あ、すみません。

いちごパフェ2つお願いします。」

 

「もう、そういうの私がやるのに」

 

自分から率先して、

注文などを取りに行くことが

多かったあかねは、

仕事を取られたと言わんばかりに、

申し訳なさそうにしていた。

 

「エスコートということで」

 

蒼人は屈託のない笑顔で、

あかねにそう伝えていた。

 

「え!?」

 

「ん?」

 

「な、なんでもない

(...本当にひーくん?

彼、ひーくんなの!?)」

 

蒼人がエスコートという言葉を

笑顔で発する程、

成長したのかとドキドキしていた。

その後、各々頼んだ物が来た。

 

「ねぇ、来たよ!食べよ。」

 

「お、めちゃくちゃ美味しそう」

 

「あ!一緒に写真撮らない?」

 

「うん、いいよ」

 

「やった!それじゃ、撮るね」

 

スマホを片手に、

あかねは写真を撮っていた。

蒼人とのツーショットということで、

とても嬉しそうにしていた。

 

そして、お互い食べ終えてから、

蒼人が話し始めた。

 

「そういや、あかねさんと

こうやってお茶するの初めてだね」

 

「本当ね。あの時は、

稽古場で会うだけだったよね。」

 

「そうだね。懐かしいな〜、

あかねさん、ずっと台本読んでて、

俺が気にせず話しかけたんだよね」

 

「今になって思うと、

あの時は少し怖かったかも」

 

「その説は、申し訳ございません」

 

「ふふっ、いいの。

今となっては、いい思い出だから」

 

「それなら、よかった」

 

昔を思い出して話し出した。

稽古場での出来事。

出会った当初のこと。

 

そして、あかねが踏み込んだ。

 

「ねぇ、蒼人君」

 

「何?」

 

「今まで、何してたの?」

 

「え?」

 

「初めて共演した日から、

あなたのこと耳にしなかったから。」

 

「あ、えっと...」

 

「何かあったの?」

 

蒼人の表情が曇ったのを

見過ごさなかった。

彼の身に、何かあったのでは無いかと

思ったのだ。

 

「...引っ越したんだ、あれから」

 

「そうなの?」

 

「うん、家の都合で京都に」

 

「京都!?

結構遠くに行ったんだね」

 

「まぁ、色々あって」

 

「そっか...」

 

これ以上、

踏み込んではいけないと思い、

それ以上聞くことはなかった。

 

「あかねさんは、

まだ演技続けてるんだよね?」

 

「うん。何とか、続けてるよ」

 

「噂聞いてたよ」

 

「え!?ど、どんな?」

 

「劇団ララライの若きエースにして、

看板女優。

向こうでも、結構話し出てたし」

 

「そ、そんなことないよ!

私なんて、まだまだで。」

 

蒼人が自分の話題について、

知っていたことがとても嬉しかった。

離れていても、

ちゃんと見ていてくれたことが。

 

「それに。

かなりの美人って、話しも出てたよ」

 

「うぇ!?」

 

「ん?どうしたの?」

 

「え、いや...

蒼人君もそう思うの?」

 

「うん、俺も綺麗だと思うよ」

 

「え!あ、ありがとう...」

 

「子どもの頃は、可愛いかったけど。

今は綺麗なお姉さんって感じ」

 

「ふぇ!?」

 

「どうかした?」

 

「な、何でもない!」

 

「そう?」

 

「...あ!蒼人君、背伸びたね」

 

蒼人からの誉め殺しに耐えられず、

唐突に話題を変えた。

その間、顔を真っ赤にしていた。

 

「え?そうかな?」

 

「子どもの頃は変わらなかったのに、

今は蒼人君の方が高いもん」

 

「まぁ、成長期だからかな。」

 

「ふふっ。私もまだ、

成長期なんだけどな〜」

 

「なら、あかねさん

どんどん綺麗になるね」

 

蒼人はイケメンになっていた。

そこから放たれる笑顔は、

あかねにとっては爆弾と同じなのだ。

 

「うぇ!!??」

 

「ん?」

 

「な、何でもない

(ひーくん、かっこよくなってるから、

一つ一つの破壊力が凄い!)」

 

子どもの頃から成長し、

可愛らしかった男の子が

今や王子様の様になっていた。

そして、ずっと待っていた人からの

褒め言葉の連続で、

彼女の脳内はパニックになっていた。

 

「でも、よかった。

あかねさん元気そうで。」

 

「蒼人君こそ。

...ねぇ、もう演技やらないの?」

 

「...今は、考えてないかな」

 

「勿体無いよ!」

 

あかねは身を乗り出して、

熱心に訴えかけた。

 

「え?」

 

「だって。

蒼人君程、演技出来る子、

同年代で中々いないよ?

それに、蒼人君は人を思いやって、

楽しませて、喜ばせて。

本当に素敵な役者なんだもん!」

 

「あ、あかねさん...」

 

「今は、まだ考えてないかもしれない。

でもね、私は待ってる。」

 

蒼人がどれだけ素敵な役者であるか。

そして、自分にとって

どれ程大切なのか。

 

自分の思いを笑顔で話した。

 

「蒼人君と舞台で再会できるのを。」

 

「...」

 

「あ、ごめん、その、

ひーくんにも色々事情があるよね。

だから、無理せず「ふっ」え?」

 

蒼人は、笑い出した。

それも、嬉しそうに

 

「ひ、ひーくん?」

 

「ごめんごめん。

まさか、あかねさんが

そこまで言ってくれるなんて、

思ってなかったから。

何か、嬉しくて」

 

「嬉しいの?」

 

「こんな俺でも、

認めてくれる人がいるんだなって」

 

「認めてるよ」

 

「え?」

 

真剣な表情で。

そして、蒼人を真っ直ぐ見て答えた。

 

「...あの頃から、

私の最高の俳優は蒼人だから。」

 

「あかねさん。」

 

「だからね、

もしやりたくなったら言ってね?

手伝うから」

 

あかねの言葉で、

少しだけ救われた気がした。

だから、蒼人は笑顔で答えた。

 

「ありがとう、あかねさん。

機会があったら、是非」

 

「勿論!いつだって、大歓迎だよ!」

 

「天才女優にそこまで言われるなんて、

光栄の極みだね」

 

「もう、茶化さないの。」

 

「ごめんなさ〜い」

 

「むぅ」

 

蒼人は嬉しかった。

例え昔の思い出だとしても、

自分を褒めてくれたこと。

そして、自分を認めてくれたこと。

蒼人にとって、それが嬉しかった。

 

「あ!

ねぇ、連絡先教えてくれない?」

 

「わかった、いいよ」

 

「ありがとう!」

 

あかねと蒼人は、

連絡先を交換した。

彼と連絡を取れること。

彼と繋がれたことが、

あかねは嬉しかった。

 

「これで連絡取れるね。」

 

「昔は知らなかったもんね」

 

「うん。

だから、ひーくんと

連絡取れるの嬉しいな。」

 

「俺も嬉しいよ」

 

蒼人は、微笑みかけた。

だが、成長した蒼人と出会って、

まだ時間が経っていない為、

その笑みに全然慣れていなかった。

 

「あぅ、えっと。

あ!こ、今度舞台出るの!」

 

「そうなの?」

 

「そう!

だから、もし良かったら、

観に来てくれない?」

 

あかねの言葉に察しがついたのか、

蒼人が揶揄い出した。

 

「ははぁ〜ん。

読めたぞ?」

 

「な、何が?」

 

「告知宣伝、

俺にガンガンするつもりだな?」

 

「ち、違うよ!

そりゃ、観て欲しいけど。

でも、蒼人君と連絡したいのが

本音で...」

 

「はは、冗談だよ」

 

「もぅ!

意地悪なんだから」

 

そう言っていたあかねは、

楽しそうだった。

こうやって軽口を叩いてくれる蒼人が。

そして、こうやって言い合える関係が。

 

「ごめんごめん。

どんな作品なの?」

 

「『赤髪の白雪姫』って作品だよ」

 

「『赤髪の白雪姫』?」

 

「そう!

漫画原作なんだけど、知ってる?」

 

「一応。

名前ぐらいは聞いたことあるよ

あかねさん出るんだ?」

 

「うん。

それでね、私、ヒロインやるの。

だから、蒼人君に観て欲しくて...」

 

「わぁお。

それは、是非観に行かないと。」

 

「ほ、本当に?

来てくれる?」

 

「うん。

久しぶりにあかねさんの芝居、

生で見られるの楽しみだよ」

 

「ありがとう!

私、頑張るね!」

 

「楽しみにしてるね」

 

その後、2人は楽しく話していた。

過去のこと、今のこと。

時間の許す限り、話し続けた。

 

そして、夜になろうとしていた。

 

「あ、もうこんな時間なんだ。」

 

「え?あ、本当だ...」

 

蒼人が外を見ながら呟いた。

あかねは、

とても寂しそうにしていた。

 

「あかねさん、時間平気?」

 

「そろそろ、レッスン行かないと...」

 

あかねは、

まだ蒼人と離れたくなかった。

長い間待ち続け、

漸く再会できたのだ。

だから、もう少し...

 

「そっか。

なら、駅まで送るよ」

 

「え!?い、いいの?」

 

「うん。

街に早く慣れたいし、

何かあると危ないから」

 

「あ、ありがとう...(優しいな)」

 

あかねは、とても嬉しかった。

もうすぐお別れかと思ったが、

まだ一緒に居られることが。

そして、蒼人の思いやりが。

 

「それじゃ、行こっか。

あかねさん」

 

「うん!行こう、蒼人君!」

 

蒼人は、あかねを駅まで送る為、

店を出た。

歩いている途中で、

あかねが話し出した。

 

「あ、蒼人君。

私の学校、ここだよ。」

 

「へ?...わぁ〜、お嬢様学校だ〜」

 

あかねが通っている学校は、

有名な名門校であり、

彼女がかなりの偏差値を

有していることを示していた。

 

「そ、そんなことないよ。

楽しいから勉強してただけで。」

 

「さっき調べたけど、

ヒロインの白雪って

薬剤師なんだよね?」

 

「うん、そうだよ。」

 

あかねの返答に。

蒼人の中で、

導いていた答えが見つかった。

 

「なるほど。納得した」

 

「何が?」

 

「白雪って、勉強も出来て美人でしょ?

まんま、あかねさんだなって」

 

「え!?」

 

「天は二物を与えずって言うけど。

与えすぎだよね」

 

「も、もう!!

ほら、行くよ!」

 

「あ、ちょ!

押さないでよ!!」

 

あかねは恥ずかしさの余り、

蒼人の背中を押して歩き出した。

真っ赤な顔を見られたくない。

何より、

今蒼人の顔を見てはいけないと、

直感が訴えていた。

 

『どうしよう。

ドキドキが止まらない...』

 

そして、駅に到着した。

 

「ここでいいよ。

送ってくれてありがとう」

 

「ううん。

気をつけてね。」

 

「うん。

またね、蒼人君」

 

「またね、あかねさん」

 

蒼人は、あかねを見送っていた。

目が合ったあかねは、

少し視線を逸らしたが、

蒼人を見て手を振っていた。

 

それに、蒼人も返した。

 

あかねを見送った蒼人は、

そのまま自宅に帰った。

 

「...まさか、

あかねさんに会うなんてな。」

 

そう呟く、蒼人の表情は、

とても優しかった。

 

途中で別れたあかねは、

劇団ララライにて

レッスンを行っていた。

 

道中とレッスン中と。

会いたかった人に会えた喜びで、

その日はとても機嫌が良かった。

 

その後、レッスンを終えたあかねは、

鍵を返し帰宅しようとしていた。

 

「おお、あかね。

レッスンか?」

 

「あ、金田一さん、お疲れ様です。

もう終わったから、

帰るところです。」

 

帰ろうとした所に、

金田一と呼ばれる男と出会した。

この人物は、過去に蒼人とあかねが

出ていた舞台の演出をしていた。

 

「そうか、気をつけてな」

 

「はい。

金田一さんはお仕事ですか?」

 

「あぁ。

赤髪の白雪姫なんだが、

アンサンブルを

追加しなきゃいけなくなってな。」

 

「追加ですか?」

 

「そうだ。

台本が書き変えるから、

人数を集めたいそうだ。」

 

「そうなんですね...」

 

「どうした?」

 

「あの、金田一さん!」

 

「何だ?」

 

「それ、誰でもいいんですか?」

 

「あぁ。

もう、新人でもいいから、

入って欲しいくらいだ」

 

「...あの、心当たりがあるんですが」

 

「本当か?」

 

「はい!彼なら絶対安心ですよ!」

 

「お前が推してくるってことは、

相当な奴なんだな?」

 

「えぇ、私はそう思ってます。」

 

「誰なんだ?」

 

「蒼人君です」

 

「! 蒼人?」

 

「はい、昔私と共演してた子

なんですけど。

覚えてませんか?」

 

「...帰ってるのか?」

 

「え?は、はい。

私の学校の近くに住んでるみたいで」

 

「...連れて来い」

 

「いいんですか!?」

 

「キャストは足りてないんだ。

使えるなら、使う」

 

「ありがとうございます!

でも、本人ブランクあるみたいで。」

 

「構わん、過度な要求はせん。

それに、アイツなら大丈夫だろ」

 

「珍しいですね、

金田一さんがそんなに言うなんて。」

 

「...まぁ、色々な」

 

「?」

 

「とりあえず、連れてこい。

出演交渉は俺がする」

 

「金田一さんが、ですか?」

 

「あぁ。少し話もあるしな。

アイツの連絡先、知ってるか?」

 

「知ってます!」

 

「連絡しておけ、

劇団ララライに来るようにと。」

 

「わかりました!

失礼します。」

 

あかねは、頭を下げると

帰宅して行った。

 

「帰って来たか。

...もう少し、早ければ」

 

帰宅途中で、あかねは電話をかけた。

 

「あ、もしもし、蒼人君?」

 

「あかねさん?どうしたの?」

 

「あのね...話しがあるの」

 

Scene6『再会』 完




Scene6『再会』 NGシーン

シーン1

「...」蒼

「...」あかね

「...空にある何〜かを〜」あか

「あ、ごめん!!
歌うの俺だ!」蒼

「ひーくん、
歌ってくれないと気づかない」あか

あかねは笑いながら、
指摘していた。

「すみませーん!!
皆さん、
もう一回お願いします」蒼

蒼人は、周りに謝り撮影が再開した。

シーン2

「それじゃ、食べよ!」あか

「うん。
いただきます...うぇ!
ゲッホ、ゲッホ」蒼

「え!ひーくん?!」あか

「ごめん!
あのね、これ辛いの。
めちゃくちゃ辛い」蒼

蒼人はあかねに
スプーンを差し出した。

「うぇ、本当だ!
辛い!
お水、お水!」あか

蒼人のパフェに、
激辛ソースが混ぜられていた。

「お前か、アクア〜」蒼

「ごめん、出番なくて暇だった」アク

アクアはニヤニヤしながら、
イタズラをしかけていた。

「バカか」蒼

その後、蒼人とアクアは楽しそうに
小突きあった。

シーン3

「キャストは足りてないんだ。
使えるなら、使う」金

「ありがとうございます!
でも、本人『プ』ランクあるみたいで。」あか

「構わん、過度な要求はせん。
それに、アイツなら大丈夫だろ」金

「珍しいですね、
金田一さんがそんなに言うなんて。」あか

「...まぁ、色々な。
それと...10年プランクやってたら、
腹筋バキバキだろ?」金

「え?
...私、何て言いました?」あか

「プランク」金

「うわぁ!やらかした
ごめんなさい!!」あか

「そっか〜、
俺10年プランクやってたのか」蒼

「ひーくん!!」あか

「蒼人、
お前10年の
プランクあったのか?」金

「そうです。
10年のプランクあります」蒼

蒼人と金田一が
笑いながら話していた。

「あぁ!もう!
ひーくんも
NG出してるんだからね!」あか

「俺、このシーン出てない」蒼

「関係ない!!」あか

蒼人とあかねは、
楽しそうに戯れあっていた。

Scene6『再会』 NGシーン 完
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。