俺のピカチュウだけでんき技使えないんだけど 作:イリノイ州の陰キャ
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モンハン始めました。虫棒がなんか俺の知ってる虫棒じゃないんだけど。ストーリークリアまで使っておきながらムズすぎて挫折しました。結局ハンマーでアルベドくんと戯れてます。
真円状に土地を取り、その中心に校舎を置くという正気を疑う立地の学園だが、正門と裏門がある場所の周囲は、特に壁が高くなっており、傍目から見たデザインは中々秀逸だ。広大な敷地内を往来するアクセスの悪さに目を瞑れば。
壁を高くしたことにデザイン的な意図はないだろう。単に外部からの侵入を阻害する目的と見ていい。ただ、その内部に関してはあまり気が向いていないようだ。
「…………」
「来たぞ……」
「あの人を呼べ……!」
学園南北の壁沿いの辺りは、ガラの悪い生徒達が屯するのに、いい目隠しとなっているようだった。
しかも、自然保護を謳って林が切り開かれないまま育ち放題なので、野生のポケモンが居着いていたりする。普通の生徒ならまず近寄らない場所だ。
「テメェ……」
待ち受けていたのは、10人に近い人数の男子生徒と、あのスコヴィランのトレーナーだった。
「のこのこ一人で来やがったか。バカが」
男子生徒を固めて目立たせることで、視線を誘導しようという意図にはすぐに気が付いた。茂みや林の中に、息を潜めた気配を感じる。
何かあればいつでも、大勢で袋叩きにできますってか。いいね。卑屈に下から顔色を窺ってくる奴より、最初から敵意ムンムンのほうが好みだ。
「電話がつながってる。シャグマさんからだ」
緑頭は画面がバキバキのスマホロトムを取り出して、横にした状態で俺に向けた。ハイエンドの一つ前のモデルだ。よくそんなもんをバキバキにできたな。
『噂通りらしいね。病人みたいに顔色の悪い
トリトマと全く同じ髪色の、何の差し色もくすみもない不気味な赤い髪の女。
こいつがシャグマか。高そうなソファチェアに座って組んだ足をこちらに向け、攻撃的な網タイツとハイヒールを見せつけていた。
『へぇー……確かに
その男気風な喋り方にしては、あどけない顔をしている女性だった。キンキンと高い声が耳に痛い。幼い顔と声で「姐さん」とか呼ばれるのが似合いそうな話し方をするので、何だか滑稽と言うべきか、微笑ましいとすら感じる。
身長もアコニより低い。トリトマの双子ということなので、今年で18歳になるはずだが、150センチもないのではなかろうか。
「で、何の用すか」
『お前の誤解を解いてやろうと思ってね』
誤解? ということは、弁明がしたい訳か。数日前のトリトマを思い出すが、あちらは(お見舞いを除いて)無手で、部下を引き連れず、かつ直接顔を見せに来ていた。
その誠意を本物だと信じて、俺は彼を部屋に招いたのだから。対してこのシャグマはどうか? ……まぁ、話半分に聞くべきか。どういう言い訳が口から出てくるのか、全く楽しみで仕方ないよ。
『大体お前、おかしいと思わなかったかい? アタシを止めるためにトリトマがお前を勧誘したぁ?』
「そう聞いてますけど」
あの日、脂汗をかきながら頭を下げてきたトリトマの表情は、どことなく自罰的だった。身内が迷惑をかけたのなら誰でもあんなものだとは思うが、いつか責任感で押し潰されやしないだろうか。
ただ、このシャグマとかいう先輩の実の姉に言わせれば、俺の心情は全然お門違いであるらしい。
『馬鹿だね。
鼻につく無駄な横文字が倍増してきた。意識だけ高い連中からよく聞くビジネスかぶれの迂遠語とは違う、彼女の独特な表現ばかりなのが余計に腹立たしい。
確かに、そもそも奴らはトリトマの研究会傘下を名乗る人間だった。トリトマ自身の詫び入れ兼弁解も、無理筋の感は否めない。
「それじゃ、そこの緑髪は何すか? あんたの部下だからそこにいるって以外に説明付かないですよね」
『任務に失敗したことに怒ったトリトマが
証拠も何もない。俺を納得させるような態度でもない。しかも自らは顔を見せに来ない。見上げた根性だ。
ただ、証拠がないのはトリトマのほうにしても同じだ。実際、俺も一度は彼が飴とムチを使いこなして、俺の警戒を解こうとしているのだと疑った。
『それより聞いたよぉ? お前のピカチュウ、発電できないんだって?』
「…………だったら?」
ポケットの中のボールが一つ、ふるふると震え始めた。俺は不遜な態度で怒りを表しているかのように装って、ポケットに手を突っ込んでボールを手掌に包む。
『アタシの下にくれば、そんな
「…………」
実は、この手の話を別の人物に持ちかけられた経験はある。引き合いに出されたのはポケモンのことではないが、全く同じような顔をしていた人物がいた。人を人でなく、商機と見る顔。
シロガネ山を降りてすぐの頃を思い出す。リーグ戦を蹴ったとしても、バッジを八つ揃えた事実は変わらない。それをダシにキナ臭い大人が何人、粉をかけにきたことか。
『アタシの手駒から聞いてるよ。お前、強化生のくせに随分
そう言うと、シャグマの通話背景であった画面内の遮光カーテンが自動で開き、高層マンションの最上階から見るような景色が彼女の背後に映った。
相当父親に甘やかされているようだな。欲しいものは全て手に入れてきた、とでも言いたげだった。確かにいい眺めだ。もし自らの力で勝ち取ったものなら、感動もひとしおと言ったところか。
「そうだな……分かったよ」
『アタシのものになる気になったかい?』
「残念。全文字間違い」
というか、今の話が本当なら、トリトマが俺を研究会に(客分とはいえ)引き入れられた時点で、シャグマの試みは半分成功していたようなものだ。
それをわざわざ、俺の反感を買うようなこと言う必要はない。折角間接的にも囲い込んだ俺を反目させて、それに何の得がある?
ではなぜ、あのトリトマの一見無理筋な言い訳と謝罪を信用できるのか。俺ならもっと、反例を以て簡単に説明できる。何ならたった今、確信した。
「実力じゃ勝てないんだろ。あんたはトリトマ先輩を恐れてる」
シャグマのこめかみに血管が浮いた。眉が寄ってつり上がり、彼女は傍に置いてあったグラスを叩き飛ばした。
『痛め付けられないと分からないようだねぇ!!』
効きすぎだろ。顔面ビッキビキじゃん。やっぱ跡継ぎを決めるバトルで負けたの気にしてたんだ。
『優しくしてたらつけ上がりやがって……! 〝学内ランク〟も付けられていない駆け出しが……! 分を弁えない
どうだ驚いたか! とばかりに茂みから複数人が出てきた。全員ボールを構えており、最初から姿を現していた連中を合わせて、20人が俺の周りを囲んでいた。
「見ろ! この人数を!」
「震えて許しを乞え! 許さねぇけどな!」
シャグマの手下が出してきたポケモンは、いずれも猫ポケモンだった。
レパルダス、ニャイキング、ガオガエン、ニャオニクス……食肉目のポケモンばっかりだ。四方からニャーニャー聞こえてくるのはかわいいけど、そんなこと考えてる場合じゃないな……。
「ポリさん、一気に薙ぎ払う――――」
ポケットに手を突っ込んだ瞬間、ポリさんのものとは別のボールが震えた。
……そうだな。言われっぱなしじゃ、君も納得いかないよね。
「ライム。多勢に無勢だけど、ポリさんとハイネの助けはいる?」
多対一はポリさんの得意とするところだ。むしろライムは一対一のジャイアントキリングを想定してトレーニングしている。
「ピ」
というのは愚問だった。ライムは四つ足をついたまま、イヤイヤと首を横に振った。シャグマの罵倒が余程癇にさわったらしい。
「自分でぶちのめしたい? いい気合いだね」
「ピカァ!!」
ライムはいつも以上に息巻いていた。揺れる大きな尻尾が一見には見分けるのが難しいリズムを刻む。
「クソガキが調子乗ってんじゃねぇぞ! レパルダス! 〝つじぎり〟ッ!」
「ガオガエン! 〝クロスチョップ〟!」
何も考えていない、ただ指示された通りにするだけの攻撃。直線的で、しかも予備動作が分かりやすい。
どうせ指示で声を出すからバレてるだろ、という考えは素人のそれだ。避ける時にはなるべく動きを小さく。つまり、引き付けられるだけ引き付けたほうがいい。そのほうが反撃までの時間を削減できる。
「ライム! 〝かげぶんしん〟ッ!」
三匹に分かれたライムの、丁度二つの影が消し飛ばされた。レパルダスとガオガエンは、来るべきはずだった衝撃が手に感じられず、すぐ目の前に迫る地面への回避行動に遅れ、激突した。
「ニャイキング! 〝メタルクロー〟!」
「ライム! 地面を叩け!」
〝メタルクロー〟が届く直前に、ライムが尻尾を叩きつけた地面から、日に当てられて乾いた土埃が舞う。
「いないッ……!?」
「〝きしかいせい〟ッ!」
ライムは地面を叩く反動を利用して跳躍していた。土埃だけを切り裂いて困惑していたニャイキングの頭に、兜割りの要領でライムの尻尾がヒットする。
「ニャイキング!?」
「クソッ! 油断するな! 全員でやらないとやられるぞ!」
ダメージをもらっていないとはいえ、はがねタイプのニャイキングに〝きしかいせい〟は結構効くだろ。
両手を突いて怯んだニャイキングに追撃するのは後だ。今は一対一じゃない。
「レパルダス! 〝ギガインパクト〟だ!」
威力の高い技を覚えさせちゃって。過ぎたるはなお及ばざるが如しって言うだろ。そんな大振りの技に乗ってやる義理はこっちにはない。
「〝なげつける〟!」
レパルダスは大きく前足を振り上げた体勢のところに〝でんきだま〟をぶつけられ、照準をズラしてしまった。ライムからほど近い地面にクレーターを作るだけ作って、反動で動けなくなる。
「ガオガエン! 〝DDラリアット〟!」
二足歩行になって縦に伸びたガオガエンの腕で、四つ足の上に小さなライムを腕で殴り付けようってか。
小回りの効くチョップならともかく、腕全体を振り回すその技で、地面スレスレの位置を正確に狙えるか?
「〝かげぶんしん〟!」
ライムの姿がまたも三匹に増え、一斉に散会する。チンピラ達が出した20匹以上(一人で何匹も出してる奴がいる)のポケモンのうち、半数以上が分身に惑わされてあらぬ方向を攻撃し始めた。
「今だライム! どろぼ――――」
「ニャオニクス! 〝ねんりき〟!」
「ピカッ……!?
多数のポケモンの対応に追われて、一瞬だけ足を止めたライムは、その次の跳躍を見抜かれてか、空中で〝ねんりき〟に捕えられた。
「ライム!」
「よぉし! 浮かせてる間に袋叩きにしろ!」
一対一ならまだしも、流石に30に近い数の全てのポケモンを相手にするのは無謀だったか……! ポケモンどころかトレーナーからも死角になっていた方向からの攻撃には対処しきれない。
「一斉攻撃だッ! やっちま――――」
「〝バリアーラッシュ〟だッ!!」
飛び出してきたアヤシシが、展開したオーラの壁にのしかかりながら、その壁ごとニャオニクスに激突した。
「すまない! 妨害を受けて遅れてしまった!」
「トリトマ先輩!」
吹っ飛ばされたニャオニクスは〝ねんりき〟を維持しきれず、完全に捕えられていたライムの拘束が解かれる。大丈夫そうだ。今の〝ねんりき〟も、ダメージが発動する前に解除されたようだ。
「ブーバーン!! 〝しっとのほのお〟!」
アヤシシの雄々しいツノに怯んでいた猫ポケモン達が数匹、横から地面に拡散した火炎の波に呑まれ、吹き転がされた。
「サワギ先輩も……!」
特徴的な剃り込み坊主の青年が、無言のまま片方の親指だけを立てて不敵に笑った。何だそれ、カッコいいな、ズルいぞ。
「エンニュート! 〝ヘドロウェーブ〟!」
君は最近よく話しかけてくれるエンニュートの相棒の会員さん! まだ名前覚えてないけど! 君も助太刀に来てくれたのか! 事前にトリトマに連絡しておいてよかった。
「とにかくこの場は逃げるぞ!! サワギ! 撹乱しろ!」
「会長! 私も続きます!」
日夜研究を続けている俺達と比べれば、数こそ揃っているものの、所詮は烏合の衆。
ライムも含めた4匹だけで、7倍近い数のポケモン達を蹴散らして、俺達は何とか突破口を切り拓いた。
「今だ! サワギ! キサマが先に行け!!」
ポケモンの足が遅い順に飛び出して行く。アヤシシとライムで早いポケモン達を抑え、エンニュートの〝ヘドロウェーブ〟で後続迫る追手の道を塞ぎつつ、俺達は何とか一目のある場所まで走り切った。
『強化生!! お前の顔、覚えたからね!! 研究会大会を楽しみにしてなぁ!!』
それはこっちのセリフだ。小学生みたいな身長しやがって。
道中、奴らのポケモンには相当食らわせてやった。傷を癒すためにしばらくは、今回のような目立つマネはできないはずだ。醜聞が立たないように根回しをする時間もいるだろう。
とにかく、これではっきりしたな……面倒事が減ったわけではないが、スタンスは決められそうだ。
「すまない。僕と姉の諍いに、結局キサマを巻き込む形となってしまった」
第二競技棟、つまり完全に安全地帯と言える場所に逃げ込んで、俺達はようやく休憩することができた。
「はぁ……はぁ……いや、今回のことは、よかったですよ……」
俺は息を整えつつ、含羞の色を表情に浮かべるトリトマに手のひらを向けた。
「先輩が、本当のことを言ってる……確証が得られました……」
トリトマから渡されたおいしいみずを受けとり、一息で飲み干すと、空になったペットボトルをさっさと捨て、エントランスの椅子にどっかりと腰を下ろした。
俺以外にも、サワギとエンニュートのトレーナーの研究会員は、すでにラウンドテーブルを挟んで談笑に興じていた。
「要は、やっぱあのシャグマって人の差し金だったってことですよね」
「あぁ。僕にとっては恥じ入るべき事実だがな……」
身内の暴走を本気で申し訳なく思っている顔だった。家族がいるってのも大変だね。孤独な我が身を嘆いたこともあったが、これを見てると誰しも悩みがあるのだな、と思い知らされる。
「手段を選ばなくなってきたな……」
缶コーヒーを飲みながら、トリトマも壁際に背を寄せ、足にかかる体重を分散させた。
「しかし、わざわざ姿を晒してキサマに接触したということは、それだけ姉が焦っているということでもある」
焦る、というからには、何か理由があるのだろう。そんな予想を言い出したトリトマには当然、シャグマが焦っていると断じるだけの心当たりがあるのか。
「……我々はもう最終学年だからな。姉はリーグ挑戦を志望していたが、丸2年、五つ目のバッジを取得できずにいる。形振り構っていられないのだろう」
思ってたよりシンプルな理由だな……でもそうか。卒業したら、進学とかでもない限りジムチャレンジなんてやっている暇はなくなる。とはいえ、自分の成績はもはや打ち止め……。
実績に焦っているという訳か。俺もすでにハドリアでのバトル大会にいくつかエントリーしており、その一環で少し情報を集めたが、以前の大会の優秀者一覧に、シャグマなどという名前は見当たらなかった。
「シャグマを直接炙り出す方法があればな……」
「姉はあれで学業は優秀でな、無論僕もだが、単位は取り切っている。今はほとんど学校に通っていない」
となると、直接会う機会は、あの女が電話越しに捨てゼリフのように吐いた、夏の研究会大会しかないか。
それも実績と言えば実績だ。学内で最優秀の研究会に所属していた、と言えることができれば、自らに面目を施すこともできようという腹づもりなのかもしれない。
実績と言えば、シャグマはトリトマを引き合いに出されただけで、突然スイッチが入って怒り心頭に発していた。
「聞いていいか分かんないすけど、トリトマ先輩はバッジ、いくつなんですか?」
そんな場合ではないことは確かなのに、つい興味本位から聞いてしまった。
何なら最近は配慮がどうとか面倒なことが巷間では騒がれていて、マナー講師を名乗るタレントが「バッジの数を尋ねるのは失礼!」とか言っていたのを思い出した。余計なことを聞いてしまったか。
「ん? 僕か?」
聞かれたトリトマはそこまで気にしていない様子であった。彼は特に気負うでもなく制服の内ポケットからバッジケースを取り出し、その中身を俺に見せた。
「僕は七つだ。夏季休暇中、最後の一つを取りに行く」
六つもあれば、競技者とは言わずとも大抵のバトル関係の仕事に就けると言われている世間では、七つも取ればネット記事やオンライン辞典ページが作られる。
やっぱあのシャグマって人、弟に水を開けられている現状をコンプレックスに思ってるのかな……。
タマゼンマイとたけのこの甘辛炒め煮
味 :★★★★☆
栄養:★★★☆☆
他 :★★★☆☆
総合評価:★★★☆☆
シンオウ南部、キタカミの里より北のあたりで食される郷土料理。アクを取ったタマゼンマイ(レジェンズアルセウスのアレ)を砂糖とみりんでくたくたになるまで炒めたのち、事前に下処理をしておいたたけのこ、ニンジン、しらたき、輪切りトウガラシを入れ、醤油、出汁、を入れて落とし蓋をして煮る。
ライム評:★★☆☆☆
備考
ピカー……(嫌いじゃないけど、びみょー)
シラン評:★★★★★
備考
カントーにいた頃、名医ハピナス先生が教えてくれたタマゼンマイの炒め煮。先生がカントーから送ってくれたので、ありがたく調理することにした。
辛いのが嫌いな人はトウガラシは入れても入れなくてもいい。あとから油揚げとか入れてもいい。
非常に懐かしい。ハピナス先生が「ハピー!(作りすぎたわ!)」とか言って、度々持ってきてくれたのを思い出す。これで白飯3杯とか食ってた。今度手紙送ろうかな……。