俺のピカチュウだけでんき技使えないんだけど 作:イリノイ州の陰キャ
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キマワリは狼狽するハギギシリを目掛けて、〝ギガドレイン〟を連打してきた。
俺は一度、トレーナーから大きく距離を取らせてしまったハギギシリをボールに戻すことで攻撃をスカしつつ、キマワリの意表を突く。
「それずっこいねー。ウチも今度やろ」
いいぞ、どんどんやれ。ルールのあるトレーナー同士のバトルじゃないんだ。捕獲さえできればこっちのものだろ。
特に俺は己の体力のなさを自覚している。自分が動き回るより、こうやって小細工を弄するほうが性に合っている。
「ハギギシリ、多分あいつは……」
全て語らずとも、ハギギシリは察してくれた。理解が早くて助かる。
有効な攻撃技が〝ギガドレイン〟しかないんだ。他は変化技か、くさタイプ以外の技であると見るべきか。
カウンター狙いで〝ギガドレイン〟を撃ってきたこと自体にミスはない。その次に迷いなく連打してきたのは、悪手だとしか言いようがない。
「…………」
「何か、睨まれてるね」
その証拠に、キマワリは攻勢に出るでも逃げ出すでもなく、こちらをじっと睨みつけていた。近付かれなければなす術がないのだ。
射程のある〝エナジーボール〟や〝タネばくだん〟を覚えているなら、そちらを使ってくるだろう。
「ハギギシリ、取り合うなよ。待て……」
ジリジリと距離を詰めてくるキマワリ相手に、俺達は読み合いを余儀なくされていた。そろそろ〝ちょうはつ〟の効果が切れる頃だ。
キマワリは接近しつつ、ハギギシリに追撃を与える隙を探していた。
膠着が続いて無意味な接近を許せば、ノーガードの撃ち合いになる。そうなれば相性有利かつ吸収効果のあるキマワリに敵わない。
こっちから釣り針を垂らすしかないか。
「ハギギシリ! 〝こおりのキバ〟だ」
キマワリの足の動きに合わせ、相手が次の一歩を踏み出した瞬間に命令する。動作を完了した瞬間より、動作を始めた半ばの瞬間を狙うほうが、敵の予想を裏切ることができる。
「でもそれじゃ、さっきと同じになるだけじゃ……」
そう。ミヤコの言う通り、ここまではさっきと同じ。そして野生のポケモンなら、いくら賢い個体と言えど、一度通用した戦法に味を占めるはずだ。
……来た! 〝ギガドレイン〟!
「ハギギシリ! 受けろ! 〝いたみわけ〟だ!」
ギガドレインと交換されるようにして、お互いの体力が目まぐるしく移動していく。
ハギギシリに効果ばつぐんの〝ギガドレイン〟のダメージの分だけ、キマワリにもダメージが及び、予想外の痛みにキマワリは片膝を突いた。
「おぉ。誘い出したんだ。テクニカルだね」
絶好のチャンスだ。渡された手持ちのボールは10個。一つも無駄にはしたくない。
「今だッ……!」
キマワリの頭部にボールを命中させ、衝撃反応がオンになっているボールが勝手に開口する。その中に引きずり込まれるようにして収まったキマワリは、大した抵抗もせず、完全にボールに捕獲された。
「おー。おめでと」
ミヤコはわざとらしく手のひらだけを動かして拍手をした。
幸先よく2体目の手持ちを確保できた。もうここからは何階か下の層を目指してもいいかもしれない。
「結局分かってるのは〝ギガドレイン〟と〝やどりぎのタネ〟だけでしょ? 他にどんな技覚えてるの?」
「あぁ、丁度今……」
ボールから送られてきた情報をスマホロトムで読み取り、キマワリの技構成を確認してみる。
やどりぎのタネ
ギガドレイン
ねをはる
こうごうせい
何だこれ……。
「すごいね……こう、生きぎたな……何としても生き残ろうみたいな、強い意志を感じる技選び……」
気を遣ってくれるのは嬉しいが、もう言っていいよ。俺も全く同じことを思ったよ。
ここまで来るともはや生き汚い。覚えているのは全て回復を伴う技だ。このキマワリは一体どんな修羅場を生き抜いてきたのだろうか。
「ま、とりあえずは下の階に行ってみようか。そっちのがポケモンもトレーナーも沢山いるかもしれないしね!」
賛成だ。この辺りで気配を探すのも、そろそろ限界がある。さっさと階段を見つけて下に行こう。地下一階、まだスタートラインだ。変な位置に階段があったりはしないだろう。
地下2階、水気の多かった上の階層と同じで、ところどころに水路が走っている。様相はあまり変わらない。強いて言えば、内部の空気を循環させている空調の音が大きいくらいか。
「見て、あのジムリーダーさんが言ってた磁気カードがどうこうってヤツ。これかな」
階段を降りてすぐのところにバーが降りたゲートと、カードリーダーが設置されていた。こんな地下でどうやって稼働させているのかは甚だ疑問だが、視覚的にも関門を突破した達成感を覚えて気持ちいい。
「さて、どっちに行く? ウチとしてはね、水が多くないほうがいいかな」
「何で?」
「滑ったら嫌だもん」
それにも同意見だ。本人が歩かされるバトル施設で、足を取られる環境を積極的に選びたくはない。
「じゃあ左か。先導してくれ。この辺までならフローゼルが詳しいだろ」
「はいはーい。フローゼル、頼むよ」
ここに暮らしているだけあって、迷ってもある程度はポケモン達に道を任せられる。
ビカビカ光って仕方ないリタイヤ用のエレベーターを除けば、来た道や方角を把握する術に乏しい迷宮では、生命線とすら言える存在だ。
「ん? フローゼル、どしたの?」
そのフローゼルが、二度細道を曲がったところに見つけた少し広い空間の前で立ち止まり、鼻を鳴らして不機嫌に毛を逆立て始めた。
「何かいるのか?」
「そうだろーね。てか、そーじゃなきゃ面白くないし」
「あぁ」
もっと波乱を期待している。こっちは武者修行に来ている訳だし、さっきのキマワリみたいな、こちらの予想を超える戦法や奇襲を仕かけてくる奴はいないものか。
「君達!! ここで止まってもらおうか!!」
別の意味で予想を超えてきた。
広間に出てきたのは、俺達とそう変わらない年齢の男女3人だった。自信に満ち溢れた表情がちょっとコミカルだ。
何で自分から出てきちゃうんだよ。折角俺達は位置までは分かっていなかったのに。戦う前から脈絡もなくアドバンテージを放棄する奴があるか。
ミヤコはその真ん中の男の顔を見て、うげ、と言わんばかりに(実際に声に出てた)顔をしかめ、俺の後ろに隠れた。
そんなに嫌いなの。しかも以前アコニに突っかかっていた時のような雰囲気ではない、むしろなるべく関わりたくないみたいな顔をしている。
「知り合いか?」
ブンブンと首を横に振った。どうやらそのカテゴリーにも入れたくないようだ。何やったんだよ。無断で部屋に入っても(その前に俺がやられてたとはいえ)怒らない子だぞ。
どんなヤバいセクハラをしたんだろうか。勇者過ぎるだろ。
「君!! 今極めて失礼なことを考えていなかったか!?」
何で分かるんだよ。怖いって。
「君は〝雑魚狩り〟のシラン……そうだろう?」
その二つ名を面と向かって俺に言ってきたのはお前が初めてだよ。頼むからやめてほしい。異名で呼ばれることすら恥ずかしいのに、その内容まで最悪だ。
「…………そういうお前は誰なの?」
こんな水浸しの迷宮で、少しでも泥水が跳ねたら一発アウトの白いタキシードをきたキザな少年。何ならズボンの裾はすでに大変なことになっていた。
ここにその服を着てくる根性は評価したいところだ。俺には無理。というか普段着でも白タキシードは無理。
「僕を知らない……? ハッ! 見え透いた嘘はやめてくれ。この僕を知らないはずがないだろう。同じ強化生なのだから」
あ? 強化生? そう言われると何か見覚えがあるような……いや、やっぱ見たことないわ。こんな面白い奴、一回でも見たらその先いつまでも忘れられないだろ。
「もしかして、本当に知らないのかい? 同じカントーの出身なのだが」
「…………ごめん」
あっちは俺のことを知ってくれているようなのに、失礼な態度を取ってしまったか。
「いや、謝らないでくれたまえ! ならば自己紹介をするまでだ!」
気に障ってないのは助かるんだけど、声のボリューム落としてくれないか。他のトレーナーやら野生に気付かれるってそれ。
「僕はキレンゲ! 〝白夜〟のキレンゲさ!!」
あーやっぱ俺〝雑魚狩り〟で良かったかもしれない……その二つ名で呼ばれるのは耐えられないかもしれない。あるいは二年前くらいの俺だったら喜んでたかも……。
「あれね、自分で名乗ってるんだよ。自分で考えたヤツ。ヤバいでしょ」
ミヤコが耳打ちで衝撃の事実を暴露してきた。すごいなキレンゲくん。ハートの強さで言ったらチャンピオン級だぞ。
「だから関わりたくないんだよなー」
言動がエキセントリックな奴なんて、この世界にはごまんといるだろう。君の出身のイッシュにもいるじゃないか。ジムリーダーの……誰だっけ、虫タイプの使い手の人。あの人も相当な変わり者ではなかろうか。
「ミヤコ女史は知っているだろう!」
ここでミヤコに話が飛んだ。全力で顔を逸らしていた彼女の肩がビクッ、と震える。
「何せ僕は強化生の中でも、そこのミヤコ女史に次ぐ第二位の実力の――――!」
「そうなの?」
「知らなーい。大体ウチ、自分より弱い人にキョーミないし」
「とか言ってるぞ」
同郷らしいけど顔は知らない。同い年のようなので、多分同年にカントーでジム巡りをした一人だとは思うけど……こんな奴いたっけ。
正直グリーンさんに認められることばかり考えていたせいで、俺は他のことなんて目に入っていなかったフシもある。
それでも一応は新聞とか読んでいたから、有名なら名前くらいは知ってるはずなんだけどな……。
「な、何ィ……!? 強化生の中でも唯一、君のポケモンを苦戦させたこの僕だぞ……?」
「らしいけど」
「うーん……? ブリジュラスが削られたから念のために戻したことは2回くらいあったけど、大体そのあとはガマゲロゲが何とかしてくれたからなぁ……」
そう言えば彼女は、最後に出したあのガマゲロゲに、ブリジュラス以上の信頼を置いているようだった。
確かにあのガマゲロゲ、〝すいすい〟によって尋常ではないスピードを出しながら、自分の体を完璧にコントロールしていた。攻撃力に乏しい分、身のこなしで手数を稼ぐスタイルなのだろう。
「ってゆーか。それで言うなら、唯一苦戦したのはあの人じゃなくて君ね。だからあの人は少なくとも二位ではないかな」
これはお褒めの言葉をどーも。もちろん俺も、人から言われずとも自分の実力には相当な自信がある。
ただ、自分という〝存在〟への自信で言えば、多分このキレンゲに勝てる奴はいなさそうだな……。
「くッ……! この僕を知らない強化生が二人もいるとは……! 面白い女……いや、面白い男女……!」
面白いのはどちらかと言えばお前だけどね。何だよ面白い男女って。
「いいさ! どうせここで会った時点で、僕達はバトルをする運命にあるッ!!」
「ウチの邪魔する気なら、容赦しないよ」
バトルという文言に反応して、さっきまでしおらしい態度だったミヤコの目つきが変わる。その膨大な闘気にあてられて、彼女の手に収まっていたボールが武者震いを起こしていた。
「ふっふっふ……そうだな。君達の頭数に揃えてあげよう。ダブルバトルでいいかな?」
まだ了承もしていないうちからバトルの流れになっているが、奇襲でないだけマシだな。そもそも、この迷宮内にいる時点で、いつバトルを吹っかけられても文句は言えない。
「早くやろーよ。で、さっさとそこどいてよね。ウチら急いでるから」
「随分自信があるようだね。だが、ここでは僕に一日の長がある。行けッ! サマヨールッ!!」
キレンゲ達が出したのはサマヨールとウソッキーだった。
「サマヨール……美しいポケモンだ……僕の本来の手持ちはヨノワールなのだが、こちらもイイッ……!」
聞いてもいないことをベラベラ語り始めた。
どうでもいいけど、その取り巻きの二人は喋らないの? 腕を組んで笑顔のまま閉口しているのは、それだけで変な威圧感がある。
「さぁ! 君達もポケモンを出すがいい!」
「ほら、あいつバカでしょ。ウチら見てから出せるよ」
「あ、あぁ……」
ミヤコが相手に死ぬほど失礼な内容の耳打ちをしてくる。残念だが、同感だ。
先に出してしまったせいで、俺達はそれを参考に選出を決められる。現にミヤコは先行させていたフローゼルを戻し、使いやすい技の多いニダンギルを繰り出した。
「君もだシラン君。ポケモンを出したまえ」
キマワリの初陣……と行きたいが、サマヨールにもウソッキーにも有利を取れるのは、やはりこいつだな。
「行ってこい、ハギギシリ」
分かりきっていた俺の選出を見て、ミヤコがうんざりしたような表情を漏らす。ハギギシリの何が不満なんだ。
「なっ、何だそのポケモンはッ!!?」
そのリアクションはもういいよ。さっき一階で散々聞かされたから。
「ハギギシリ、だと!?」
「文句あるか?」
キレンゲはわなわなと震えながら目を剥いた。そのまま倒れ込んでしまいそうな勢いに、取り巻きの男女が慌てて彼の体を支える。
大袈裟過ぎるだろ。お前ら一体ハギギシリの何が気に食わないんだよ。
「何と、エキゾチックで麗しい……!」
お?
「紫は高貴なる色ッ……! 水玉模様と補色の黄色は、自然界において〝目立つ〟というハンデを自ら背負う、覚悟と自信の表れッ!!」
流れ変わったぞ。
「〝雑魚狩り〟などと不名誉な呼ばれ方をしているが、人は噂にはよらないようだね。そのセンス抜群のチョイス! 君も〝一角〟のトレーナーということか」
「おい、気をつけろミヤコ。アイツもしかしたら本当に第二位の実力者だぞ」
「君もバカ? どう見てもただのトンチンカン野郎でしょ」
うるさいな。だってあいつハギギシリの良さを分かっているんだぞ? そんなの優秀なトレーナーに決まってるだろ。
「それでは始めよう……! 学園最強のトレーナーを決める対戦をここに……!」
イマイチ据わりの悪い能書きだな。それに、100歩譲っても決まるのは学園最強ではなく強化生の中で最強が誰か、ということにならないか。
ダーテング焼き
味 :★★★★★
栄養:★☆☆☆☆
他 :★★☆☆☆
総合評価:★★★★☆
ホウエン土産の焼きまんじゅう。ダーテングの手の形を模しており、中に抹茶風味のあんこが入っている。店頭で6個買うと箱に入れてくれる。焼きたての温かいものにこだわっており、通販や冷凍などの商品展開はおこなっておらず、ホウエンに直接赴かなければ味わえない一品。
一個260円。6個で買うと少しお得になって1500円。
ライム評:★★★★☆
備考
ピカ!(おいしー! 甘ーい!)
シラン評:★★★★★
備考
抹茶風味の餡が楽しい焼きまんじゅう。周りの生地も抹茶で着色されており、中も外も緑色。滑らかで舌触りのいい感触の餡の甘さを、抹茶が多く練られた生地の渋みによってうまく整えられている。生地自体のカリカリとした食感も香ばしさを引き立たせている。
ホウエンに行かなければ購入できないのが難点か。まだ一度しか食べていないが、機会があれば必ず食べに行きたいところ。