東方二次SS ふたつのいろ If not for you  〜紅〜   作:赤井せりか

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 If not for you ……. 〜異聞紅魔郷 序〜 4

 

 

 眩いまでの光の奔流。

 星屑が渦を巻き、局地的な小銀河を形成する。

 膨大なエネルギーが爆発的に膨れ上がる。

 

 ―――まるで小規模のビッグバンね。

 

 なにも、こんな狭い所で使うスペルでも無いでしょうに。

 私は溜め息をつくと、霊力をたっぷり籠めたお札を一枚、その小銀河の中心に撃ち込む。

 

「 霊符『夢想封印…… 」

 

 臨界まで膨れ上がった魔力に干渉、その膨張を抑え込みながら霊力が爆縮する!

 

「 ……集』!」

 

  ぱんっ!

 

 小気味良い音を残し、擬似的に形成された小銀河は跡形も無く消滅した。

 

 ぶわっ

 

 数瞬遅れて爆縮の際の衝撃が一迅の風となる。

 風に暴れる前髪を掻き上げ、私はそのスペルの主、箒に跨った黒白の少女を睨みつけた。

 

「全く―――」

 

 一方の黒白の少女も黒い帽子を風に飛ばされないよう、大事そうに押さえている。

 その表情はやはりどこか楽しげで―――、私はほんの少しだけ苛つき、溜め息をついた。

 

「こんな所であんなスペル使って。ほら、今の衝撃波で庭や境内があんなに落ち葉だらけじゃない。一体誰があれを掃除してると思ってるの?折角、さっき掃除したばかりだというのに」

 

 腕を組み、私はヤレヤレと首を横に振った。

 黒白の少女は悪びれもせず、ナハハと笑う。

 

「そうか? さっき暫く眺めてたが、お前は一向に掃除をしてた気配は無かったぜ?ただ、箒と塵取りを持ってウロウロしてただけ。あの行為を掃除と呼ぶならば、私がホラ、箒に跨って飛んでるだけでももはや掃除と呼ぶに足りかねるぜ? それに加えてだ、落ち葉は元々の物。私の性為じゃあないぜ」

 

「過程はどうでもいいの。結果として落ち葉が散らかったままだもの。今ので吹き飛んでしまえば私も掃除の手間も省けたっていうのに。使えないわね」

 

「話が微妙に噛み合ってないぜ。冬に枯葉が落ちるのは自然の摂理。それが散らかって混沌としてる様は、ああ、なんだその、カオス理論だ。自然が自然で在るための摂理だぜ」

 

「全く詭弁ね」

 

「そうか?これでもいつもよりはまともな事を言っているつもりなんだけどな」

 

「見解の相違、ってやつかしら」

 

「歩みよりは大切だぜ?」

 

「ふむ。それじゃあ。さっきあなた言ってたけれども、『人にモノを尋ねるときは先に答えるもんだ。だから先に答えるぜ』って事は、何か私に尋ねるつもりだったんじゃないの?」

 

「ああっ」

 

 私の問いに、少女はぽん、と手を打つ。

 忘れてたのか。

 ぽりぽりと後ろ頭を掻きながら、少女は笑った。

 

「すっかり忘れてたぜ」

 

「やっぱり」

 

「あれだ、ここは、何処なんだ?」

 

 痛む頭を押さえながら、私は答える。

 

「幻想郷よ」

 

「それは流石に知ってるぜ」

 

 言って、少女は苦笑い。

 

「あら意外」

 

「予想に反せて光栄だぜ」

 

「……ここは幻想郷の果て。“あちら”と“こちら”の境界。博麗神社よ」

 

 へえ、とさしたる感動も無い声を上げる少女。

 

()()が、()()なのか。神社ってのはもっと参拝客で溢れかえってる場所じゃないのか?」

 

「今はシーズンオフなのよ」

 

「それは知らなかったぜ。私はてっきり―――」

 

「五月蝿いわね。そんな事より、もう気は済んだかしら?」

 

「いいや、まだ尋ねたい事はあるぜ」

 

 そう答えた少女の表情はそれまでとは打って変わって、真剣なものだった。

 

「あれだ」

 

 少女が振り向く。

 つられて、私もそちらを見る。

 視線の先。

 紅い霧が空に立ち込めていた。

 その霧はつい先日、突如として現れた不可思議な紅い霧。

 

「―――()()()()()()()()()()()?」

 

「……はぁ?」

 

 唐突に何を言い出すのだこの少女は。

 

「なんでまた。あれは私じゃあないわ」

 

「そうなのか? 私はてっきり」

 

「根拠は何なのよ」

 

「根拠? うん、まあ、それは、ほら、紅いじゃないか、服とかリボンとか色々」

 

 うん、確かに紅い。

 でも、

 

「白も入ってるわよ?」

 

「そーなんだよなー」

 

 少女は首を捻る。

 

「色は紅と白の2色。いわば五分五分ってやつだぜ。私も半信半疑だったんだけれども―――」

 

「呆れた。本当に色だけで判断していたの?」

 

「ああ、そうだぜ」

 

「……それじゃあ、その理論でいくと神社の鳥居も怪しかったりするわけ?」

 

「鳥居は真っ赤だからな。100%の疑いを持ってかかるぜ。そうやって此処へ辿り着くまで幾つもの赤色をした建造物に疑いをもったことか―――」

 

「……もういいわ。あなたと話しているとなんだか疲れる」

 

 溜め息。もう何度目だろう。

 黒白少女もまた溜め息をついた。

 

「ああ、全くだ。()()()()()()()は私の柄じゃあないぜ」

 

  じわり。

 

 少女の魔力が増大する。

 

「まずは()()()()()()()()()って諺もあるしな」

 

「ちょっと違うような……」

 

 私は油断なく間合いを取ると、少女の次の行動に備えた。

 

「私は、まあ、力ずくは好きじゃあないんだけど」

 

 ここで暴れられても―――困るし、それに少女のさっきのスペルが彼女の本気だとも思えないし。

 まるで私の心を見透かしたように、

 

「"さっきの"はほんの小手調べだからな?」

 

 軽やかに笑いながら、少女は、ぴっ、とスペルカードを取り出した。

 

 ああ、やっぱり。

 

 当たらなくてもいい予感ばかり当たる。

 当たって欲しい時には存外に外れるくせに。

 

 少女のスペルカードが、光を纏う。

 

()()()()()

 

  ()()()()()()()()()?」

 

 

 

続く。

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