TSエルフのやりすぎ物作りダンジョン配信~家と動物とご飯と時々拠点に襲撃~   作:芦屋貴緒

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11 エルフ、テントを壊される

128名無しの探索者

篝火を見てるだけでも時間潰せるなー

 

 

129名無しの探索者

昔そういう動画が流行ってたよね

 

 

130名無しの探索者

現役だぞ

 

 

131名無しの探索者

あのチャイナ服みたいなのえっちだよな……

 

 

132名無しの探索者

動きやすそうではある

 

 

133名無しの探索者

じゃあ着てみる?

 

 

134名無しの探索者

いいえ、私は遠慮しておきます

 

 

135名無しの探索者

でもアレ、〈強化〉をかけなくても冥境以下のモンスターの攻撃なら確実に弾くぞ

 

 

136名無しの探索者

アレを着てそれだけなのはな……

 

 

137名無しの探索者

最低でもそれくらい。

実際はもっと強靱だろうし、まひろちゃんの〈エンハンス〉によっては探索者百人が儀式魔法を使っても無効化するぞ

 

 

138名無しの探索者

でもあのエグいスリットが……

 

 

139名無しの探索者

なんか声聞こえない?

配信から

 

140名無しの探索者

犬っぽいな

 

 

141名無しの探索者

みんなスパチャ送りまくって起こせ

第一階層の死神が来るぞ

 

142名無しの探索者

狼の群れじゃー

 

 

143名無しの探索者

テントが壊されていくぞ

 

 

144名無しの探索者

爆発した!?

 

 

145名無しの探索者

爆発……!?

 

 

146名無しの探索者

テントごと吹き飛んだわ

 

 

 

 わずかに拾ったオオカミの遠吠え、その連なり。それと仕掛けておいた鳴子がカランカランと高く乾いた音を鳴らした瞬間に俺は飛び起きた。

 しかし警戒が緩んでいたのか相手が達者なのか、起きた時にはすでにテントは突破されて今こちらの喉笛を食いちぎらんとする白いオオカミの姿が目に映った。

 

 こちらに逡巡はない。小指に対応している〈ストレージ〉から魔法爆弾を取り出し、即座に起動。〈エンハンス〉を使って耐久力を出来る限り上げて――自爆!

 

 鼓膜を破る爆音。全身を焼け焦がさんとする爆風。ジャージなんかはすっかり焼け焦げて大事な部分をかろうじて隠してくれるだけ。緊急事態だというのに『全裸になってR18チャンネルに移らなくてよかったな』などとのんきな感想がぼんやりと浮かぶ。

 

「――ハ」

 

『――――』

『――――』

『――――』

 

 スマホと視覚共有をしたコメント欄が急速に流れていっているのが分かるが、その内容は読み取れない。目も肌も耳もボロボロで感知なんざロクにできないなか、必死に情報を拾っていく。風の流れと臭いからして、数は分からないが敵の集団がこちらを取り囲み注視しているのは分かる。

 

 左手薬指を動かし、もう一つの魔法爆弾を〈ストレージ〉から取り出す。どこに投げて良いかは分からない。オオカミたちがこちらの感知能力がほぼ死んでいるということを悟れば間違いなく陣形を活かした狩りに移行するだろう。

 回復アンプルは体力を失うが即座に回復するもの、デメリットはないが徐々に効くもの、その中間のものの三つを右手の指と〈ストレージ〉をリンクさせてある。この場面では二つ目と三つ目の回復薬を使いたいが、それをさせてくれるほど優しくはない。

 

 故に左手の魔法爆弾の起動で脅す。あちらが迷っているということは先ほどの爆発を恐れている。ここで「俺はお前たちの集団にすぐさま爆弾を放り込めるぞ」というポーズを取ってオオカミたちに撤退を促すのだ。

 

 オオカミのうなり声がわずかに聞こえる。俺は左手を強く握り、威圧をする。

 

 行け、行け……行け!

 

「――――」

 

 長い長い一瞬の緊張ののち――。

 複数の足音が遠ざかっていく。

 

 オオカミたちの撤退を判断した俺は即座に即効性があるアンプルを突き刺し――久方ぶりにまともな呼吸で大自然の空気を吸い込んだ。

 視界はみるみるうちに晴れていき、その端にはこちらを慮るコメントが眺める間もなく流れていく。

 

「ふう……。死ぬかと思った」

 

『いきなり爆発したから何事かと』

『SNSでニュースになってるよ』

 

「喉に噛みつかれそうになったから、自爆した。複数に迫られてたし持ち直す暇もなく死ぬだろうから、自爆のほうが勝算はあったからね」

 

『さすが鬼耐久』

 

「鬼耐久? ……うん、まあありがとう。褒められてる?」

 

 もちろんこんなことはレガリアがなければやっていない。普通のスキルでこんなことをやるのは自己救済も出来ない救いようのない馬鹿だけだ。

 髪も少し短くなっているし、なんならジャージはほぼ消えている。

 

 喉奥に溜まった血を吐いて、口を手で拭う。

 辺りを見渡せばキャンプ地はものの見事に破壊されており、浴槽やらテントやらは先ほどの爆発で消し飛んだようである。月も沈む夜明け前。なにが原因であいつら――ホワイトウルフの群れがやってきたのかは分からない。しかし、なんらかの理由でマーキングをされたのならこの先も襲撃は起こるに違いない。

 

 おそらく今回は臭いを消して逃亡もできないはずだ。これは勘だからまだ裏付けが取れていないけどね。

 

 裸足で周囲を見回りに行けば、昨日の晩に撒いたはずの護法灰が黒く焼け焦げている。これは灰の効力を上回る魔物が現れたということ。

 一匹一匹が非常に強く、そしてこの辺りをうろつく強敵の群れ。

 

「あいつらがここの階層の『逃げろ』枠だね。……とりあえずあいつらに負けない拠点作りをするんで、次回からもよろしくゥ!」

 

 相手がこちらを狙い澄まして逃がさないなら上等だ。

 その喧嘩、買った!

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