ブルアカss   作:鰯くん

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先生とミヤコが夜に何か良からぬ事をしている?

ある日の子うさぎ公園
いつものように整備をしていたサキはふとした拍子に先生とミヤコとのモモトークのやり取りを目撃してしまう。
その文面にサキは良からぬ事をしているのではと思い至る。

サキはその真相に辿り着く事が出来るのか?



ウサギは浮かれ、調査は乱れる

最近、どうも隊が浮かれている気がする。

いや、隊というか主に隊長が。

 

ある日の正午過ぎ。

 ピンクのウサギの耳を模様したカバーを付けたスマートフォンをソワソワしながら手に持っている月雪ミヤコに、空井サキは聞こえないくらいの小さなため息をついた。

 最初の十分くらいはどうしたのかとそこまで気にしなかったが、時計に目をやればかれこれ三十分はずっとこの調子だ。

 流石に長すぎる。

 

子うさぎ公園のテントの外。

朝に比べて気温は少し上がったのか外は比較的暖かく、寒さで指が悴むこともない。

 

「……よし、こっちも綺麗になった」

 

サキは手入れをしていた銃の部品を磨き終えると、前で相も変わらずにそわそわしながら椅子に座っているミヤコに声をかけた。

 

「ミヤコ、少しは落ち着いたらどうだ?見ててこっちも落ち着かない」

「そんなに落ち着きがなかったでしょうか?」

 

 サキの指摘にキョトンとした表情をするミヤコ。

 

「ああ、数十秒に一回はスマートフォンの画面を覗いてたぞ」

「……すみません。確かにそれは落ち着きが無いように見えますね……」

 

ミヤコは何か言うわけでもなく苦笑いで答えた。

スマホを見ているのは割といつものことなのだが、それにしたって今回はおかしい。

そうサキが思うほど、先ほどのミヤコはやたらとスマートフォンを気にしていた。

そこでサキの中に一つの疑問が浮かび上がる。

 

──ミヤコは一体何をそんなに気にかけていたのか。

 

 ミヤコに何気なしに目を向ければ、「さすがに気にしすぎでしたね」とひとりごちて手に持ったそれを椅子の肘掛けに置くと、そそくさと自分の装備を簡単に点検し始めた。

 それも終わると、ミヤコは席から立ち上がってはテントの方へと向かっていく。

テキパキと弾薬やら精密機器が入ったケースを運んでいるミヤコの後ろ姿がサキの目に映る。

 

……聞く機会を見逃してしまった。

 

 別に凄く聞きたいかと言われればそうではないが気になると言われれば気になる。

しかし今更聞きに行くのも終わった話を掘り返しているようでなんかしつこいと思われそうだ。

いつもならそんなに気にならないのに、何故か今回ばかりは妙に気になってしまう。

 

「いけないいけない。こんなんじゃ不測の事態に対応できないぞ」

 

 サキは自分に言い聞かせるようにそう呟くと頭を振るう。

 

 「そうだ、何か別の事をしよう。そうすれば気にならなくなる」

 

気晴らしにと工具と銃の部品を手に持ってメンテナンスを再開しようとした時、それは視界に入った。

 

「……」

 

ミヤコが座っていた椅子に何かが置いてある。

 

「これは……」

 

目を向ければ、ピンクのウサギの耳を模様したカバーを付けたスマートフォン。

それは紛れもない……ミヤコのスマートフォンだった。

 

気になる。一体何をそこまでミヤコの気を引いたのか。

だが流石に人様の物を触るような非常識な事はできない。

公園でデモ活動をしていた身でも、人の個人情報を盗み見る事がいけないことは流石にわかる。

それが他ならない隊員の私物なら尚更だろう。

でも気になる……いやでも……。

 

いつの間にか部品を磨いていたサキの手は止まり、ミヤコのスマートフォンのことで頭は支配されてた。

サキ自身でも訳の分からない葛藤が続く最中、ピコンとミヤコのスマートフォンから音が鳴る。

 

一瞬ビクっと肩を揺らしたが、どうやらミヤコは通知が鳴ったことに気づいていないらしい。

 変わらず備品の整理をしてくれている。

 

と、とりあえずミヤコを呼ぼう。

 

元はと言えばこのスマートフォンがいけないのだ。

ならさっさとミヤコに持って行って貰おう。

そう結論を付けたサキは、全く進んでいなかった銃の部品達を置いて立ち上がる。

ミヤコはすぐそこだ。さっさとこれを持って行ってもらおう。

 

「おい、ミヤk──」

 

だが、サキは目の前の光景に声が途切れてしまった。

椅子に置いてあったスマートフォンは表が上に置いてあったのだ。

それだけなら大した事は無い。問題はその画面に映っていた内容だった。

 

 

『この前、夜遅くにごめんね。見せてくれてありがとう』

 

「──っ!!!」

 

あまりの内容にブンッと勢いよく顔を逸らす。

無意識に口からは声にならない声が漏れた。

駄目だろ。これは駄目だろ。流石にいけないだろこれは。

しかも送り主はまさかの先生。

仮にも先生ともあろう人が生徒……それも自分を信頼してくれている生徒に手を出すのは、いくらなんでも駄目だろ!

 

力なく後ろに下がり、ストンと席に座る。

もう武器の整備とかしている場合じゃない。

これは、これは由々しき自体だ。

ミヤコと先生が?

変態だったのは知っているがまさか本当に手を出すとは……。

しかもよりにもよって相手がこのRABBIT小隊で常識人枠のミヤコ。

弱みを握られていたとか?それとも何か理由が?

 

……まさか利用されている?騙されているとか!?

 

「駄目だ……さっぱり分からない」

 

耳まで真っ赤に染めたサキの脳内は、既に収集が着かなくなりつつあった。

 

「あ、やはりここにありましたか……」

 

頭を抱えながら考えていると、いつの間にかミヤコがこっちに戻っていていた。

ミヤコは自分の椅子に置いてあったスマートフォンを回収する。

 

「サキ、大丈夫ですか?どこか調子が悪そうですが……」

「だ、だだ大丈夫だ!問題ない!」

「そ、そうですか……」

 

サキの様子にやや引き気味に返事をするミヤコ。

 

「私は午後から用事がありますので、少し公園を離れます」

「あ、ああ。わかった。気をつけてな……悪い人に騙されちゃ駄目だぞ?」

「……騙されませんよ。では行ってきます」

 

変なものを見るような困惑した目をサキに向けながら、ミヤコは公園を後にする。

そのやや上機嫌な後ろ姿をみて、サキは独りでに決意をする。

 

「……誰にも知られてはいけない。これは自分一人で調査をしないと」

 

ミヤコの安全のために、強いてはRABBIT 小隊の平穏とこのキヴォトスの治安の為!

ミヤコと先生がどんな関係なのかを調べなければっ!

そうと決まれば即行動。

サキは自身のスマートフォンを取り出すと、モモトークの画面を開いてメッセージを打ち込んだ。

 

 

 

昼過ぎの少し眠くなる時間帯。

シャーレの部室に立てかけてある時計の短針は一時を差していた。

 

「そろそろ午後の業務を始めないと」

 

嫌だなぁと机に積まれている書類に目を向ける。

 量もそこそこ在るためにやるのを躊躇ってしまう。

 

 「でもやらないと終わらないし……頑張ろう」

 

 憂鬱になりつつも机に向かおうとすると──。

突然スマートフォンからモモトークの通知が届いた。

 

『先生、今ちょっと時間あるか?』

 

画面を見れば、その人物は意外にもサキだった。

 

確か直近でサキと何か予定はなかったはず。

サキは基本的に何か予定があった時とかでしか連絡をしてくれないような印象を抱いていたから、なんだか新鮮な感じがした。

 

『ううん、大丈夫だよ』

『そうか』

『なら今からシャーレに行くから待っててくれ』

 

「……何かあったのかな?」

 

忘れ物でもしたのだろうか。

とりあえず業務は一旦お預け。サキが来るのなら何か飲み物でも出す準備を……。

大義名分を得た足取りはとても軽く、席から立ち上がってコーヒーメーカーへ向かおうとすると、今度はミヤコから連絡が入ってきていた。

 

『先生、お疲れ様です。今ペットショップに居るのですが、ぴょんこの餌について、どんなのがいいでしょうか……』

 

ぴょんこの餌……うさぎって草とか食べてるイメージがあるけど、それ以上に自分の知識が少なすぎる。

生半可な知識でぴょんこに負担をかけて辛い思いをさせるよりも、その専門の人に聞いた方が良さそうだよね。

 

『うーん、ごめんね。私もちょっとそこまで詳しく無いから、店員さんに聞いた方がいいかも』

『そうですか……ご迷惑をおかけしてすみません』

『いいよ、全然気にしないで!ぴょんこの為って気持ちは凄く伝わったから!』

 

気を遣わせてしまったかな……。でもぴょんこというRABBIT小隊の家族に関わることに、生半可なアドバイスをしてはいけないし。

 

「うーん。難しいな……」

 

でも中途半端な知識で何か物申すのも気が引ける。

だけど相談してくれたからにはなんとかして力になってあげたい。

ミヤコになんて言葉を送っていいか考えていると、不意にドアをノックする音が聞こえた。

 

「先生、私だけど入っていいか?」

「うん、入ってきて!」

 

声音からして、少し前に連絡をしてきたサキだろう。

返事をすると、ガチャリとドアノブが回る音が聞こえる。

しかし、一向にドアが開かない。

 

「先生?開かないんだが……」

ガチャガチャとドアノブを動かしているが、一向にドアは開かない。

おかしいな……鍵は普段からしてないはずだったんだけど……。

 

「ごめん!今行くよ!」

 

ミヤコのモモトークのトーク画面に打ち込んである一言を返信して、急いでドアの方へ向かった。

 

 

 

「おかしいですね……」

 

D.Uのショッピングセンターにあるペットショップ。

その一角で月雪ミヤコは手に持っているスマートフォンに眉を顰めた。

 

画面には先生とのモモトークの画面が表示されており、ミヤコはその最後に送られてきた一文に目が止まった。

 

『私も調べておくけど、まずサキに聞いてからだね』

 

「どうしてサキに聞くのでしょうか?」

 

訝しげに画面を見つめるミヤコ。

 

もしかして、以前はああ言っていたけど、やはり本当は先生とサキは常日頃から連絡を取り合っているのでしょうか?

だとしたら、以前のあれも……。

 

ミヤコの中で黒い感情が沸々と底から上がってくる。

 

『どうして、私では無くサキなんですか?』

『私じゃ駄目なんですか?』

 

送っても、返信は返ってこない。

 

「ずっと隣に居てくださいって言ったじゃないですか……」

 

どうしてサキなのか。なんで私じゃ駄目なのか。

感情が心の中でぐるぐるとのたうち、ぐるぐると駆け巡る。

ミヤコの視線が徐々に下がっていくと、通知が一見入っていることに気がついた。

 

『ごめん!打ち間違いで、先とサキを間違えちゃった!あと今度一緒にぴょんこの話聞きに行こうね!』

 

「先生……」

 

また勝手に勘違いをしてしまった。

 それにまた先生に迷惑をかけるような気を使わせてしまう内容を送ってしまった。

 前だって言っていたはず、これは単なる打ち間違え。

 へんな他意は決してない。

 ……本当にそうだろうか?

やはり打ち間違いは怪しい。

 以前ならともかく、なんで今回も先よりも先にサキが変換に出てきたのか。

そもそもこの様な打ち間違いがあるのがまずおかしいのに、一回ではなく二回もあったとなれば、それは黒では無いのだろうか。

 

「これはおそらく一度調査をする必要がありますね」

 

主に先生の身の回りの身辺関係を。

 

ミヤコは店員から一通り餌について聞くと、購入した餌を手に子うさぎ公園まで戻る。

そこにサキの姿はなかった。

 

「あ、おかえりミヤコちゃん」

 

出迎えてくれたのはぴょんこを抱えたミユ一人。

モエは今日は一日外でやらなきゃいけない事があると朝から公園を離れているのでここには居ない

 

「はい、RABBIT-1ただいま帰還しました。こちらぴょんこの餌です」

 

ミヤコはミユに近づくと、餌の入った袋を一度置き、ぴょんこをミユから預かる。

 

「すみませんミユ、実はこれからまたここを留守にしてしまうのですが、大丈夫ですか?」

「う、うん……私は今日どこも行く予定ないから問題ないよ」

「すみません。ではぴょんこを頼みます」

 

ミヤコはそう言ってぴょんこをミユに再び預けると、シャーレへと向かって行った。

 

 

「で?はっきりしたらどうだ先生」

「だから本当だって!冤罪だよ!」

 

お昼過ぎにサキから連絡があってシャーレにやってくると、開始一番になぜか詰め寄られた。

目と鼻の先でサキがこちらを睨みつけている。

 

「先生がミヤコとよからぬことをしようとした、もしくはしたことは既に把握済みだ!白状しろ先生!」

「だから本当に冤罪だって!第一最近ミヤコとあってないから!」

「ほほう、最近合ってないというんだな先生は」

「う、うん……そうだけど」

「なら、最近ミヤコから夜遅くに見せて貰ったっていうことについて何か言いたいことはあるか?」

「それは夜に眠れなくて、なら散歩しよっかって感じに……」

「なるか!普通そんな展開になるわけないだろ!」

「いやなったんだって。それで少しミヤコと夜の散歩を」

「それを人はデートって言うんだ!」

「違うよ!別にそんな目的で歩いてたわけじゃないから!」

「だとしても普通はそう言うふうに捉えられるんだよ!」

「本当なんだって、この前ミヤコに案内されたんだ。ここがお気に入りの場所だって」

 

気がつくと、お互いに息が上がっていた。

サキは目を細めると、はあとため息をつく。

 

「……どうやら本当っぽいな」

「だから本当なんだって。最初から嘘ついてないよ」

「……まあ良い。でもこれだけは忠告しておく」

 

サキはまた一歩ぐっと距離を詰めてくる。

 

「最近シャーレに出入りする妙な格好をした生徒と同伴する先生が目撃されたって言う情報もある。だから変な噂が立たないように注意するんだぞ?」

「もちろん!大丈夫だよ」

「…………」

 

サキは少しの間ジト目で睨みつけた後、離れようと一歩後ろに下がる。

しかし思っていたよりも踏み込んでいたようで、足がこちらの足と絡んでバランスを崩してしまった。

 

「「うわっ!?」」

 

足を刈るように引かれたことで、体が前──サキの方に傾く。

そのままサキを押し倒す形で倒れ込んでしまう。

ぶつかりそうになるところの寸前で、なんとか腕で体を支えて耐えることができた。

 

「大丈夫だった?頭とか打ってない?」

「あ、ああ。ヘルメットがあったからそれは大丈夫……だけど」

 

怪我をしていないかと声を掛けると、サキは気まずそうに視線を逸らす。

 

「私はいつもそうだ。勝手に早とちりをしてわかった気になって。それでいつも周りに迷惑をかける」

「……サキ」

「今回だってそうだ。勝手にミヤコが先生に騙されたと思って暴走して、先生に迷惑をかけている」

「……迷惑なんかじゃないよ」

「そんな嘘をつかなくてもいい。わかってるから」

「本当だって。それにサキはいつもみんなのことを考えて行動してくれてるし、みんなはそれを迷惑と思ったりなんてしないよ」

「でも──」

「結果はどうあれ、サキは今回だってミヤコの身を案じて動いてくれたんだから。それは迷惑とは違うんじゃないかな」

「先生……」

「それに、私はサキのことを迷惑だなんて考えたこと一度もないからね」

 

サキは横に向けていた顔をこちらへと向けると、「ふふっ」と吹っ切れた様に笑う。

 

「先生はいつもそうだよな。どんなに私達がやらかしたり、相談しても嫌な顔ひとつもしないで笑顔で引き受けてくれる」

 

表情もどこか晴れやかで、先ほどのどこか思い詰めていた面影は無くなっていた。

真っ直ぐなその瞳は、こちらを見ているようでどこか遠くに想いを馳せているようにも見える。

少しの沈黙の後、サキは息を吐くように小さく呟く。

 

「先生が先生で良かった」

「私も、サキが生徒で良かったよ」

 

静かな部室の中で、お互いの笑い声が小さく響く。

そろそろ腕が限界かも。

立ちあがろうと足を動かすと、不意に背後から妙な寒気を感じた。

 

 

「──それはどういう意味ですか。先生」

 

感情がこもっていない声音。

ギギギと機械のように恐る恐る顔を上げれば、そこにはサキと同じ制服と長い銀髪に黒いリボンを着けた少女が佇んでいた。

 

「ミヤコ……さん?」

「先生、それにサキもさっさと立ったらどうですか?距離が近いです」

「そ、そうだなっ!」

 

二人で急いで立ち上がると、ミヤコは間を割り込むようにしてサキを遠ざける。

ギロリとした目つきに、冷や汗が止まらない。

 

「これには訳があって……」

「そ、そうだミヤコ!だから変な勘違いは」

 

ただならぬ雰囲気を感じ、サキと二人してことの弁明をしようと言葉を紡ごうとするが……。

先ほどよりもキッとした目を向けれて言葉が遮られてしまう。

 

「いえ、理由は聞かなくても大丈夫です。きっと先生のことだから『たまたまサキと躓いちゃって転んだ拍子に押し倒しちゃっただけ』

そう言おうとしてたんですよね?」

 

ニッコリとこちらに目に笑みを浮かべながら言うミヤコ。

良かった。ちゃんと理解してくれた。

……心なしかうっすらと見える瞳が笑っているように見えないが、きっと気のせいだと思う。思いたい。

 

「……ミヤコならわかってくれると思ってたよ」

「ええ、先生のことですから」

 

どうしてだろう、とてもじゃないけど今のミヤコに目を向けられない。

そんな心情を見抜いてか、逸らした視界に入る様にして無駄のない動きでミヤコが立ち回ってくる。

 

「嘘つきはそうやって平然と嘘をつきますから」

 

 表情一つ変えずに言うミヤコに自然と足が後に下がった。

 しかし一歩下がる度に、笑っている筈なのに笑っている様には見えない顔をしたミヤコが一歩、また一歩と詰め寄ってくる。

 

「私は街の治安と秩序を守るSRTのRABBIT小隊です」

 

腰に机の縁がコツンと当た理、後ろにこれ以上下がれないことを悟る。

 

「さあ先生、ここで何を行っていたか教えてください」

 

あ、圧が強い……有無を言わせない絶対的な威圧感を瞳から感じる。

下がれないでいるこちらを気にもとめず、ぐっと近づいてくるミヤコは、顔を近づけてくると──。

 

「……なんて、本当は特に何もなかったんですね」

 

そう言って口角をニコリと上げた。

先ほどとは打って変わった雰囲気に、思わずキョトンとした顔をしてしまう。

 

「……ミヤコ?」

「すみません。少しからかってしまいました」

「ど、どういうことだ?」

 

若干の動揺を見せながら、サキが訊ねる。

 

「いえ、そんな大したことじゃないでんです。子うさぎ公園に居る時、偶々私に近づくサキの様子が窺えたので……打ち間違いの時は何だと勘ぐってしまいましたが、先ほど全て合点つきました」

 

ミヤコは話ながらポケットから自身のスマートフォンを取り出すと、サキはビクリと身体を一瞬震わせる。

 

「恐らくスマホの通知を見て勘違いしたサキが先生の元に訪れ、その際のやり取りの間に私が介入してしまい、結果打ち間違いが発生。そこでまた勘違いした私がここに来たら、偶々サキと先生が転んだ場面に遭遇してしまった──こんな感じではないでしょうか?」

 

「す、すごい……」

「見てたんじゃないかってくらい全部あってるぞ」

 

サキの言葉から見て、おおよその話はあっているのだろう。

ミヤコの名推理に一緒に思わず感心してしまう。

 

「誤解を解いておくと、サキがどう思っているのかわかりませんが、少なくても私と先生はそういった関係ではないですので安心してください」

「……なんか疲れたし、帰るか」

 

一件落着してサキは小さくため息を吐くと、ドアの方へと進んでいく。

ミヤコはその後ろ姿を横目に、こちらに近づいてくると耳元に口を寄せてきた。

 

「私も子うさぎ公園に戻ります。何かありましたら、なんでも連絡してください」

「うん、連絡するよ」

「本当ですよ?」

「もちろん」

「ふふっ、約束ですからね?」

 

ミヤコは笑みを浮かべるとサキを追いかけるようにドアに向かって進んでいく。

バタリとドアが閉まる音が一人になった部屋に響いた。

 

……そろそろ午後の業務を進めないと。

 

一連の騒動が終わり。

少しの眠気を抱えながら机に座ろうとする最中、何気なしに巡らせた視線に仮眠室のドアが少しだけ空いている隙間が映った。

ここ最近はずっとここにお世話になっているから、もしかしたら朝起きた時に閉め忘れてしまっていたのだろう。

だがドアを閉めに再び立ちあがろうとしたその時、目に前で起こった現象に思わず目を疑ってしまった。

まず今日は誰も呼んでいないし、顔を合わせたのだってミヤコとサキの二人だけ。

その二人も、既にこのこの場には居ない。なのに眠室のドアが独りでに開き始めていた。

と言うことは、誰かが仮眠室にいると言うこと。

もしくは人ならざる者が……。

思わず固唾を飲み込み、ドアが開くのを警戒しながら伺っていると。

 

「──おはようございます。先生」

 

聞き覚えのありすぎる響く気の抜けた抑揚のない声が、前の仮眠室から聞こえてきた。

ドアからチラりと見えるのは金色の長い髪にしなやかで細い指。

 

この子は……。

 

「今はもう朝じゃなくてお昼だよ……」

 

仮眠室から出てきたのは、なぜかシャツを着た……と言うよりシャツしか羽織っていない飛鳥馬トキだった。

 

「昨晩の任務を終えた時は時間が遅かったので、つい」

「つい、じゃないよ……」

 

悪びれもなく言うその姿に思わず頭を抱えそうになる。

というか、そうじゃなくて!

 

「なんで私のシャツを着てるのかな!?せめて他の服も着てもらえると助かるんだけど」

「生憎他の服は全て洗濯済み。なので着る服がないのです。先生がご所望ならこのシャツを脱ぐことも可能ですが」

「良いから!絶対にそれ脱がないでね!絶対だよ!?」

「……なるほど、先生は裸シャツがお好きなんですね」

「違うけど……もういいやそれで」

 

トキのフリーダムさに若干頭が痛くなりそうになる。

でもこれで合点が合う。

部室のドアがしまっていたのは任務が終わって入って来たトキが閉めたんだ。

だからサキが入ってくるときに鍵がしまっていて入れなかったんだろう。

見られたら色々と怖いけど、トキのこういった振る舞いは今に始まった事じゃないし。

 

「ま、いっか。今日はもう誰も来ないと思うし」

 

サキにはああ言われたけど、まあ今日ぐらいは大丈夫なはず──。

 

「──何が良いんですか?」

 

いきなりだった。

耳元から聞こえる透き通った声。

 

「うわっ!!?」

 

驚いて立ち上がれば、そこにはさっき帰ったはずのミヤコとサキが冷めた目をしながら佇んでいた。

二人の目の先にはそれぞれこちらと、シャツ一枚のトキへと向けられている。

 

「ふ、二人ともまだ帰ってなかったんだね」

 

ゴミを見るような目。

どうしよう、刺さる視線が痛い。

 

「はい、少し先生に聞きたいことがありましたが………どうやら先生はお楽しみらしいので、私たちは帰らせていただきます」

「ちょっと待って!違うって!なんか絶対誤解してる!」

「いえ、大丈夫です。まさか私たち以外にも第三者が隠れているとは思いませんでした」

「これには深いわけがあって」

「申し訳ありませんがこれから私たちは予定があるので失礼します……後で話を聞かせてくださいね、先生」

「──最低。地獄に堕ちろ」

 

口答えは聞かないと言わんばかりにスタスタと足早に歩くと、バタンと強めにドアが閉められた。

 

お、終わった………。

 

横を見ると、トキが、いつの間にか淹れていたコーヒーの入ったマグカップを一つ持ってやってくる。

 

「私の勝ちですね。ピースピース」

 

これから起こることと、妙に誇らしげな表情をして指をチョキチョキさせてるトキを見て、どっと肩が重くなった気がした。

 

仮眠室に脱ぎっぱなしのバニースーツがあって一悶着あるのは別の話。

 

ウサギは浮かれ、調査は乱れる ──完──

 

 




お久し振りです。鰯です。
数年振りの二次創作になります

一発目がドルフロでなくてすみません……端末の関係でドルフロが追えなくなってしまってその間に設定とか増えちゃってわかんなくなり難しくなってしまいました……。

ブルアカの方は友達がやっていた事と辛うじてプレイが出来たので続けられ、今も楽しく遊んでます

以前と変わらず疎い文ではありますが、どうか読んで頂けると幸いです。

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