赤い波形の依頼主「貴女達が大企業にも重用される、有力な企業である事は理解しています」
赤い波形の依頼主「ですが…アビドスに生きる人々について、貴女達により深く知って欲しいのです」
先陣を切るシロコさん、セリカさんが、パワードスーツを着込む兵士で足止めを受ければ
左右に回り込んできたオートマタには、肩のミサイルで牽制。
陣を組んで纏まった集団にはノノミさんのガトリングと合わせて、アサルトライフルの一斉射で薙ぎ払う。
一人で釣りながら突撃していた時と多少違うが、大体のタイミングはすでに把握している。
その誤差もエアが必要に応じてオペレートで指示してくれるので、敵が出る傍から封殺していった。
「先生も凄いけど、オペレーターさんも凄いわね…出てくるタイミング全部丸わかりじゃない」
『
セリカさんがリロードしながら驚いていると、エアが誇らしげに答える。
私の専任と言う点を強調していたが、そうでなくても彼女は優秀である。
ルビコンの頃でもハッキング能力を始めとして、様々な場面で頼りになった。私には勿体無い程の相方である。
そんな事を考えていると、何故か息の詰まる声が交信に乗る。
複雑そうな表情を浮かべるかの様に明滅しているが、大丈夫だろうか?
【…問題ありません、レイヴン。サポートは任せて下さい】
それなら良いのだが。頼りにしてます。
接敵したオートマタをライフルで打ち抜いている間に、
アヤネさんが操作するドローンから弾薬などを受け取りつつ、更に先へ進んで行く。
『目標の座標地点に到着!その付近の建物に、ホシノ先輩がいらっしゃる筈です!』
『全ての追加報酬目標の破壊も確認。
”ひぎぃ…”
アヤネさんからの通信で一度立ち止まり、周囲を見渡す。
同時にトリニティ…覆面水着団が施設設備の全破壊を完了したと、エアから報告が入る。
その報告に先生が悲鳴を上げた。どうやら報酬は先生から出る事になっていたようだ。大丈夫?もふもふする?
「…この付近で、建物って…」
「…あれって、学校の痕跡?」
先生に背後からハグされていると、ノノミさんが何かに気づいたように目を開く。
周囲を見渡していたセリカさんが何かの痕跡に気が付き、建築様式から学び舎ではないかと推察した。
私も先生の顎を後頭部に乗せながら視界をそちらへ向けてズームする。
確かに、アビドス高等学校に似た建築様式のような気がする。
「砂漠の真ん中の学校…もしかして」
「…!オンッ」
シロコさんも何かに気付いたのか、真剣な表情になる。
そんな中、レーダーに敵影を捕えた為吠え声をあげて注意を促す。
皆さんが警戒態勢を取ると、学校らしき痕跡の先。残っていた建物から戦車を引き連れたオートマタの軍隊がワラワラと出て来る。
その中央が左右に分かれると、恰幅の良いオートマタが一人歩み出て来た。
「そうだ。ここは本来のアビドス高等学校…その本館だ」
『…!その声は…』
本館だと言うオートマタ――カイザーPMC理事は苛立った様子で私達を睨み付けて来る。
そう言えばアビドス高等学校は、移転を何回かしていたと聞いた事がある。
大量に積もる砂塵に追われて、留まれずに仕方なく移転を繰り返したのだとか。
ここが元々の場所だったのか。
「良く此処まで来たものだ、アビドス対策委員会、シャーレの先生よ。そして…独立傭兵、
カイザー理事は視線を皆さんにゆっくり向けた後、最後に私を見た。
その目の色は若干薄いが見覚えのある色があった。…
確かにここまで皆さんと一緒にPMC兵を蹴散らしてきたが、今回はそこまでの事は(まだ)していない筈だが。
『あれだけやっつけたのに、まだ敵が…恐らくこれが全兵力。ここで総力戦に持ち込む気です!』
内心で疑問に思っていると、出て来た戦力を分析したアヤネさんが意気込む。
どうやら協力してくれている皆さんが殆ど倒してくれたらしい。流石である。
私一人の時はここも辛かった。倒しても倒しても次々に敵が出て来るので、レッドガン部隊迎撃を思い出す程だ。
最も、彼らに比べたら一人一人は弱かったが。もし
「察しの悪い者共にも教えてやろう。かつてキヴォトスで最も繫栄し、強大だった学校。アビドスの中心地だったこの場所は砂漠化が深刻化し、やがて捨てられた。そして廃墟となった後は時と共にその残骸は砂に塗れて…この砂の下に埋もれた」
カイザー理事は大げさに身振り手振りし、痕跡を足で踏みつけながら説明する。
その様子に皆さんの怒りが再び高まるが、周囲に構える銃口がまだ話の続きがあると抑えていた。
「…ゲマトリアは、ここに『実験室』を用意する事を要求した」
実験室…?確かに黒服は、本来の目的は実験だったと話していたが。
治療もできる実験室をこんな周りに何もない、砂だらけの場所に用意させる意図は一体何なのか。
私が疑問に思っていると、アビドス側の事情を知っているノノミさんが一歩前に出る。
「そんな事よりも、ホシノ先輩はどこですか!」
「奴ならば後ろの建物で療養中だ。そこの駄犬に負わされた負傷のな。もしかしたら悪化しているかもしれんぞ?」
【っ…レイヴンの事を何だと…】
不安と苛立ちを煽る様に私へ向けて指をさしてくるカイザー理事に、怒りでエアの声音が震える。
何だと思っているのかと言えば、ダメダメな犬ではないだろうか。スネイルも私の事をそう
【…レイヴン。あれはまた
私がカイザー理事の言う通りだろうなと思っていると、エアが説明しようとして止めた。
何故か途中から脱力したように声が柔らかくなっていたが、呆れさせてしまったろうか。
ルビコンにいた頃もだったが、人を呆れさせる事が良くあった。これも頭が悪い私のせいだと思うと、申し訳なくなる。
私が心の中で謝罪していると、違うそうではないとエアが交信でフォローしてくれる。
その間にも、対策委員会の皆さんとカイザー理事との間の睨み合いは続いていた。
「彼女の元に急ぎたいか?構わんぞ。…代わりにそこの先生と駄犬を置いて行けばな」
カイザー理事は構わないと言うが、対価として先生と私をその場に残すよう要求してきた。
だがその目線は価値あるものを見る目ではなく、憎い相手を睨む視線だ。
私だけであれば即決する内容だが、先生もとなると簡単に飲めるものではない。
この戦力差の中、一人で先生を守れる程に私は強くはないからだ。
私が単身でできる事と言えば僅かなもので、かく乱か単機特攻しかない。
…そんな私を、彼は
「貴様等だ。貴様等さえ来なければ、急ぐ必要も、協力者の手が引かれる事も無かったのに…!」『この兵力を前に、お二人を残して先に行く訳にも行きません…』
アヤネさんが困った声を通信越しで上げている。
こうなれば先生達だけでも送り出そうと思い、私は一歩足を前に踏み出そうとした。
時間が経過する程、協力者達の負担も増えるし、包囲網が完全になる前に。
そんな心配を吹き飛ばす様に、交信でエアが待ったをかける。
【大丈夫です、レイヴン。彼女達が到着しました】
エアの言葉と共に黒の大きなバッグが放り込まれ、敵陣の中心部から爆発が巻き起こる。
カイザー理事を吹き飛ばした爆発を基点に、それは渦巻き状に連鎖して爆発し続け、敵の陣形は撒き散らされた。
「グワーッ!?」
『爆発!?ファウストさん達は、今は後方の足止めをして頂いている筈…!?』
アヤネさんが通信で言う通り、火力支援は今まさに後方で火の雨を降らせている最中だ。
それに風紀委員会の皆さんは、北で大隊や増援の足止めをして貰っている筈。
だとしたら、あの黒いバッグを放り込んだ人達は。
「じゃーん!おっ待たせ~♪」
「…あー…先生から借りたお金で補充した爆弾が…」
「わ、割り込み失礼します!」
ドリフトで砂塵を巻き上げながら、ジープ(オープンタイプ)が一台滑り込んでくる。
助手席から楽しそうに笑い、先生達へ
後部座席には派手に爆発が続いているのを見て、カヨコさんが額を抑えている。
その横からハルカさんが転がり出てくると、近場で混乱していたPMC兵に向けてヘッドショットを決めた。
そして運転席でアルさんはハンドルを片手に、不機嫌そうな表情でスナイパーライフルを肩に担いでいた。
『べ、便利屋の皆さん…!』
「くふふ~。レイヴンちゃんに以前
「…それなら効果的な方法をいつか見つけるまでよ。今日は借りを返しに来たまで」
通信越しのアヤネさんの声が感動に震えている。
とても良いタイミングでの登場に、先生も対策委員会の皆さんも驚いて居る様だ。
ムツキさんが
借り、とは言うが先生か対策委員会の皆さんの誰かが、何かを貸していたのだろうか。
「か、借り?」
戸惑いがちにセリカさんが代表して尋ねると、アルさんがジープのダッシュボードから一枚のチケットを取り出す。
――紫関ラーメンの一杯無料券。それをヒラヒラと掲げた後、口端を上げて笑って見せた。
「…ラーメン屋で、アビドスには大盛りを奢って貰ったもの」
流石アルさんだ。普段からはあどぼいるど?を目指しているその姿勢は、凄いと思う。
これが
ノノミさんも察したようで、絶妙なタイミングで現れた便利屋の皆さんに感動しているようだ。
シロコさんも頷いて私を見た後、握り込んだ拳に親指を立てて来たので私も同じようにハンドサインを真似る。
そう。つまり、そう言う事だ。…どういう事だろう?
「…あれ。何、その(任せていいんだね的な)表情は?」
「社長、嫌な予感…と言うか、もう絶対アレだから状況の共有を…」
ムツキさんが少し汗をかきながら、疑問を浮かべている。
カヨコさんも私達の様子に不安を覚えたのか、情報共有の時間を持たせようとしていた。
確かに報告は大事だろう。エアにお願いして共有して貰おうと思ったが、その前にアルさんが動きだす。
「…ふふっ。言わなくてもわかるわ。ここで言うべき言葉は一つ」
ジープのシートから立ち上がり、肩に羽織った上着をバサッとなびかせながら大声で彼女は宣言する。
「此処は私達に任せて、先に行きなさい!!」
「社長…それは死亡フラグって言うんじゃ…はぁ」
アルさんの宣言に先生も対策委員会の皆さんも感動したようで、その声が少し漏れている。
私もレッドガンの隊員に薦められて見た有名な動画の台詞に、拍手を送る。
このような僻地(カイザーPMC駐屯基地)で、生の先行けを聞けるとは…感激だ…。
後部座席のカヨコさんは
「くふふ、流石アルちゃん。増々惚れちゃうんじゃない?」
「さ、流石ですアル様!もう一生付いて行きます!!」
「うーん。見事にその通りだったね~」
ムツキさんが楽しそうに笑い、ハルカさんが尊敬と憧れの視線を向けている。
彼女の珍しい明るい表情に、ムツキさんはやはりと言った様子で目線を動かした。
そんな皆さんの視線を受けながら、アルさんは恐れを知らない様子で薄い笑みを浮かべ続けている。
強者の風格が漂う格好良さだ。私もいずれはあのようになれるだろうか。
「(言っちゃったー!でも気持ち良いー!!)」
【(…何て内心、白目を剥いて考えている等とは、レイヴンには言えませんね)】
エアが交信で溜息を吐く。エアもアルさんの格好良さがわかったのだろう。
感動の溜め息にしてはその色合いは軽かったような気がするが…。
「…もうっ。べ、別に。お礼何て言わないんだからね!」
セリカさんがそっぽを向きながら赤面する。
しかしこの隙にリロードを済ませ、弾薬を銃に叩き込んで走り出した。
彼女を先頭にして、私達も便利屋の皆さんへこの場を任せる事にする。
「でも全部終わったら、一緒にラーメンをまた食べに行くわよ、便利屋!」
「ふふふ。ツンデレ可愛いですね~☆便利屋の皆さん、この御恩は必ず!」
「ん、御馳走様。便利屋もありがと」
”無理はしないようにね!”
約束の言葉を残しながら走り抜けるセリカさんへ、ノノミさんとシロコさんも続く。
お礼の言葉を掛ける二人と、先生も身を案じる言葉を残した。
私も一吠え声を掛けて走り抜けるが、少し心配なので後方へ獣耳と目を向ける。
「はぁ…こうなったら仕方ないか」
溜息を吐きながら後部座席から降りるカヨコさんに対し、アルさんは先程までの恰好良さを崩して慌てていた。
おや…?あれも作戦だろうか?
「い、勢いに乗っちゃったけど、この後は…!?」
『敵兵力の陣容分析を送ります。役に立てて下さい』
「おっ、流石オペちゃん。有能!」
アルさんの慌てふためいた様子が聞こえた気がしたが、エアがジープの通信機を介して合成音声と共に情報を渡す。
ムツキさんはエアに賞賛を送った後、ようやっと混乱が落ち着き始めた敵陣営に向けて顔を向ける。
その表情は先程まで笑っていた楽しそうな顔ではなく、怒りに満ちた好戦的な笑顔に切り替わっていた。
「それじゃっ、始めようかっ!!」
ムツキさんの開戦の宣言と共に鳴り響く爆発音と発砲音。
私達も目標の建物までの間に居る敵兵を蹴散らし進む。
この時間なら
いつも御閲覧、しおり、御感想やお気に入りを頂きまして、ありがとうございますっ
ここすき、ご評価も頂き、本当に感謝感激です!!
アルちゃんには白目が良く似合う()
そして、UAが3万突破致しました。皆様の目に留まっていらっしゃり、恐悦至極に御座いますっっ!!
前々回の投稿より、UA数が増えており何事!?と驚いてました。あわわ。
今回も少しずつ、御名前記載をさせて頂きます。
一部時間順ではない場合もありますが御了承の程、お願いします。
(閲覧、しおり、ここすきは御名前が表示されず、感想は今の所個別で返信するため割愛とさせて頂いてます)
002001様。
ご評価頂き、ありがとうございます!
頂きました御好評を胸に、増々励んでいきます!!
アグネス様、なつ72様、ギアム様、クソネミ様、山下智紀様、
白黒饅頭様、RIZE.DUMMY様、エリエリ様、魅綺様、炬燵の猫様。
御気に入り登録を頂き、ありがとうございます!
(すり抜けは)やっぱつれぇわ…もふもふで癒されて頂ければ幸いです。
設定は考えている時も楽しいですからね。出力に時間がかかるのが大変ですが…するする書ける方も尊敬します。
厄除け饅頭…なるほど、そういうのもあるのか。脳内フロイトもまた一つ知見を得たようです。感謝!
オマケの話:
ミニライブ京都編、色々と発表がありましたね。
スケジュールのうぇるかむキヴォトス記載フラグによる、ゲーム内コラボの発表はありませんでしたが…4周年組な筆者は初ゲーム内コラボ来るかな?と身構えてたので、嬉しいやら寂しいやら。