青空の下、猟犬は求め流浪する   作:灰ネズミ

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PMC兵「あっ、あれは何だ!?」
オートマタ兵「超巨大回転双翼航空機。デュアルネイチャー(ペイター・デース)、接近!」
(^q^)「ワァー」
[^p^]「イソイデハシレ!」



33.曇りのち晴れ。所により絶望

◆◇◆◇◆

-カイザーサイド-

 

逃げ回る便利屋共に何故か削られていく戦力を尻目に、最後の手段として用意させた特製のゴリアテに乗り込む。

どこかのバカ(ギャンブル狂い)が借金返済用に横流した為に、今まで投入できなかったそれの座席に座り、ハッチを閉じながら一人呟く。

 

「対策委員会…ずっとあいつ等が目障りだった。これまで、ありとあらゆる手段を講じて来た…」

 

表に出せないような手段で蹴落とした前任者。甘言で唆して土地を手放せさせてきたアビドス生徒会。

誤った治水情報を流して干上がらせた地域。秘密裏に少しずつ減らしていった防砂壁。

…全ては、アビドスに眠る「お宝」を掘り出す為の投資(散財)

前任者から引き継いだものや、自身が指示した計画を思い振り返る。

 

「それでもあいつ等は、崩壊しかけた学校にいつまでも残り、諦め難くしがみ付き、借金すら根気強く返済して!」

 

様々な計画と共に思い出す、監視員からの報告と映像。

…絶望でも諦観でもない、奴らの笑顔。

 

「あれ程懲らしめたのに、徹底的に苦しめたのに、日々楽しそうに!」

 

時に少額の金を得て笑い、時には甘味を食べて笑顔を浮かべ。

たまに失敗しようとも苦笑い程度で、最終的には仲間と共に笑い飛ばしていた。

膨大な借金と利息の辛さに歪むでもなく、ただ真っすぐな姿で。

そしてヘルメット団のようなならず者達をけしかけ続け、ようやく物資不足で音を上げると思った瞬間。

 

「あいつ等のせいで…土壇場のイレギュラー共(先生とレイヴン)のせいで、立場までっ!私のっ、私の計画があぁぁっ!!」

 

ぶち壊された計画。打ち切られた協力。暴かれ始めた暗部。損切を見出(尻尾切りを示唆)した上層部。

また一部隊、便利屋の仕掛けた罠で爆散した報告が届くと、ガラガラと崩れ落ちる何かの音が聞こえた気がした。

――これが破綻した計画の…妥当な末路だとでも言うのか?

思わず弱気になり私は背もたれに頭を打ち付け、頭によぎった考えを振り払う。

ゴリアテの起動スイッチを押下し、操縦桿を握り潰す様に掴む。

 

「認めん。絶対に認めんぞ!」

 

 

 

◆◇◆◇◆

 

『ホシノ先輩の居場所が確認できました!バンカーの地下に続く…その扉の向こうです!』

 

最後に立ち塞がっていたカイザーPMC兵達を蹴散らした先。

バンカーの地下へと続く、分厚い鋼鉄の扉が立ち塞がる。

カイザー理事の最後の悪あがきなのか、電子ロック部分が壊されて容易に開かないようにされていた。

物理的にロックされて(強引に歪ませられて)いては、エアのハッキングでも開きようがない。

 

『【これではこちらからシステムにアクセスしても無理なようです。ですが、問題ありません】』

「オペレータさんには、他にも何か手段があるんですか?」

 

エアが扉の様子を調べている間に、駐屯基地から車両をかっぱらってきた(!?)と言うアヤネさんが合流して尋ねる。

確かに外周はヒフ…覆面水着団と風紀委員会の皆さんが制圧したから、潜入は少し楽になっているとはいえすごい行動力だ。

私が内心驚いていると、交信でエアが開錠方法を教えてくれる。

 

【レイヴン。全力で扉にブーストキックして下さい。今のあなたの脚力なら蹴り飛ばせる筈です】

 

なるほど、マスターキー(獣足)と言う事らしい。理解した。

足から獣爪を出して、アサルトブースト(獣)(四つん這いの全力走行)で助走をつける。

その勢いのまま、MTを蹴り飛ばすように扉を蹴り飛ばす。

ガコォンと言う扉が吹き飛ぶ音に続いて、メリッと言う何かにめり込んだ音が響き渡った。

…そう。丁度扉の前まで来ていた、ホシノさんの顔に扉がめり込んだのだ。

 

「「「「”【………】”」」」」

 

………言い訳を、させて欲しい。

一人で特攻をしていた時には、このバンカーにすら辿り着けなかったのだ。

一体ずつ釣り出して殲滅しても、道中をなるべく無視しても、最後に「本番」がやってくる為、この扉を調べたのも開けたのも初めてなのである。

だから扉の前にホシノさんが居るとは、思ってもなかった。

アヤネさんが扉の向こうとは言っていたが、本当に真後ろにいるとは。

スキャンもこう言う時に限ってやり忘れていたのは、私の落ち度なのは認める。

暫くの間、皆さん沈黙に包まれていたが、やがてホシノさんが両手を動かしてめり込んだ扉を脇に除ける。

俯いていて詳細は分からないが、怪我らしい怪我はないようだ。流石ホシノさんである。

 

「…確かに、おじさんも一人で突っ走っちゃったからごめんと思ったし、皆に迷惑を掛けたとは思うよ?」

 

ゆらりと身体を揺らしながら、感情を見せない声色でホシノさんは反省を口にする。

ゆっくりと私に近づくと、両肩を掴んで逃がさないように身動きを封じられた。

 

「だからって、感動の再開に『この扱い顔面陥没』はないんじゃないですかね!?」

「キャウンキャウン!?」

 

こめかみの両側から握り拳で挟まれ、力を込めながら拳を捻られる。

あーっ!いけませんお客様!再会のグリグリ攻撃は条約で禁じられています!あ"ーっ"!!

そんな条約はルビコン(レッドガン隊員の悲鳴)でしか聞いた事はないが、キヴォトスにも多分あるだろう。

ホシノさんの両腕をタップして降参の意を示し続けるが、言葉遣いも変わった彼女は放す様子がない。

体感で長い間そうされたままだったが、実際は短い時間で満足したのか私は解放された。

大抵の痛みには慣れた私だが、想定外だったのとホシノさんの剛腕で頭が割れたかと思った。

大丈夫?私の目とか飛び出してない?

エアに確認したが、大丈夫らしい。良かった。

 

「…え、えっと。お、おかえり!ホシノ先輩!」

 

様子を伺ったまま戸惑っていた対策委員会の皆さんと先生だったが、私が解放されたのに伴いセリカさんが出迎えの言葉を口にする。

続いて他の皆さんも、言わないと言ってたのにズルいとか、無事な様子に安心したり、目に涙が溜まりながら出迎えの言葉を口にしたりしている。

ホシノさんも皆さんを見て戸惑っていたようだが、シロコさんの差し出された手と皆さんが期待する視線に気付いたようだ。

 

「うへ~…何だか滅茶苦茶だけど、可愛い後輩達も期待しているみたいだし」

 

そういって恥ずかしそうに頬を染めて、頬をかいていたが物凄く良い笑顔で、皆さんへ答える。

 

「ただいま」

 

この笑顔を取り戻せたなら、私のアビドスでの仕事も達成だ。

そう思える位の嬉しそうな笑顔だった。

 

 

 

――本番(・・)は、残っていると言うのに。

 

………パタパタパタ………

 

北の方からローターが空気を切り裂く音が鳴り響いて来る。

対策委員会の皆さんは、またカイザーのヘリかと警戒して銃を構えるがそんな優しい相手ではない。

恐らく北に居た風紀委員会の皆さんも、後方で退路を確保している覆面水着団も。

カイザー理事と戦っている便利屋の皆さんも、PMC兵達も空を見上げているだろう。

それはキヴォトスの戦い(ケンカ)には持ち出されない代物だから。

 

―――バタバタバタ!!

 

やがて「それ」は頭上に姿を現す。

…ルビコン3で惑星封鎖機構が扱っていた、大型武装ヘリコプター(AH12:HC_HELICOPTER)

傭兵達の間ではルビコプターと呼称されていた、上部に二つの大型ローターを備えたヘリ。

4連装の無誘導ロケットを下部に二つ。両翼にガトリングタレットをそれぞれ1基ずつと、6連装ミサイルも2基備えた代物だ。

 

――それが、キヴォトスサイズではなく(リサイズされず)。ルビコン3基準の巨大さで空に浮かんでいた。

 

高さが90弱(89m)、長さが270強(272m)と言う化け物だ。

二脚のACですら約10メートルあるのに、ブーストで空中に追い駆けて接近しないとまともに銃弾が効かない装甲。

武装している割にスピードが乗ると、アサルトブーストを使わないと追い付けない最高速度すら持つ。

生身で挑む様な相手ではない。

逃げれるような慈悲も持ち合わせていない。

未だ私が攻略の糸口すら掴めていない、本番(絶望)である。

 

 

 

『【…シャーレ。協力者の皆さんに避難…いえ。この場所に集まるよう指示をお願いします】』

 

少しの間、呆然としていた皆さんの中で最初に意識を戻したエアが、通信機を介して先生へ声を掛ける。

エアの声で先生も戻り、小型端末機(シッテムの箱)に声を掛けて連絡を付ける。

その間に少しでもこの場から奴を離れさせようと思い、足を踏み出した。

 

”何をするつもりなの?”

『【北側は風紀委員会の皆さんさえ退避できれば、広大な砂漠です。そこであれを片付ける算段を立てます】』

『ええっ!?無茶ですよ、あんなに大きいのを御二人でなんて!』

 

外へと向かおうとする私に先生が声を掛けて来る。

エアが代弁してくれた内容に対し、小さな耳鳴りと共に驚いた様子の半透明な少女が小型端末機(シッテムの箱)から現れる。

だけど他の人は初見殺しでしかないし、その点私なら問題ない。

以前にもルビコンで戦ったし、ここでもやり直し(リスタート)で何度もやりあっている。

そして死んでも再挑戦できる。

私のような旧世代強化人間――元だが――の使い処。使い捨てという奴だ。

さて、今度は何分持つだろうか。そう考えながら地下から出ようとした時、掌を掴まれる。

 

”算段を立てるって事は、策はまだないんだよね?”

『【…問題ありません。あれの脅威も撃破経験も、以前のレイヴンにはあります】』

”今のオンちゃんでもやれる、って言わないんだね?”

 

先生の質問にエアが沈黙する。確かにルビコンの頃ならACがあったから、あの巨体でもやりようはあった。

しかし今の私は生身。キヴォトスに来て多少の被弾は耐えれるようになっても、あの火力は無理がある。

ガトリングは喰らえば散らばるミートパテ化するし、ミサイルは跡形すらなくなる。

ロケットは誘導がないから、むしろありがたい方だ――疲労が溜まって回避できなくなれば爆散だが。

何も言えないでいると、先生が肉球の感触を確かめるように強弱をつけて握る力を強める(ニギニギしてくる)

先生。やる気(もふもふ)補充なら後で…。

 

”私はね、ヒーローヒロインになりたかった”

 

ハグとかなら後回しにして貰おうと思ったら、先生は唐突に語り出す。

何の話かと思って振り返ると、想像していた(癒しを求めるぞんびぃの)姿とは違い、真剣な表情の先生が私を見ていた。

目線が私の目をじっと見つめている。

 

”だけど一人では成れないって、私もある人に教えて貰ったんだ。だから、私も手伝うよ”

 

手伝うと言う先生は私の手を離すと、その手を懐に入れる。

そこから取り出されたのは一枚のカード。

紐で絡まれた片腕の絵(あの人のエンブレム)が描かれた「大人のカード」を取り出すと、それを掲げた。

 

絆の紐を繋げて火を点けろ

 

挫折しても足掻く心に燃え残った全てに

 




ご閲覧、しおり、ご感想や御気に入りをいつもご愛顧頂き、ありがとうございます!

あくまでネタだけで、本編にペイターは直接出る予定ありません。
次話はようやく本作にもあれが出せます。


今回も少しずつ、御名前記載をさせて頂きます。
一部時間順ではない場合もありますが御了承の程、お願いします。
(閲覧、しおり、ここすきは御名前が表示されず、感想は今の所個別で返信するため割愛とさせて頂いてます)


SCOPEWOLF様、博天様、まんごすちん様、画里怜汪様、setora様、
koyfe様、re.mk2re様、FMR1021様、エリート自宅警備員様、夜杜様。
お気に入りの登録、頂きましてありがとうございます!
書きたいモノ(又は読みたい作品)と流行りモノも違う時がありますし、悩ましいですよね…。
果物の女王様、美味しいですよね。猫の品種と間違えた事があるのは内緒
この警備員さんには「スゴみ」がある…っ、エリート(選び抜いた)と言う名の練熟された気配がっ!
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