COM「了解です。マスター・■■■■」
???「投下用の『穴』を開ける。後は向こうからの合図を待て…今だ。投下しろ」
COM「――KVTS。アビドス地区に着陸を確認」
???「時空座標は…誤差は出たが、許容範囲だ。後は奴が帳尻を合わせる」
◆◇◆◇◆
-エアサイド-
シャーレが掲げるカードと共に言った台詞。
それはキヴォトス語で、人同士の繋がりと諦めない心を賛美する言葉でした。
しかし似た音として聞いた場合、ルビコン語では「あの人」がレイヴンに残したメッセージと同じ響き(同音異義)でもありました。
偶然なのか、またはカードに描かれた絵――あの人を示すエンブレム――が示す通り、何らかの意図を含むのでしょうか。
レイヴンと同様に驚く私の知覚範囲に変化が起きます。
ワームホール…?いえ転送空間でしょうか。それが突如、上空に開いたようです。
地面と水平に、直径10m程の円形状に開いたそれは真っ暗な穴のようでした。
まるで日食のように周囲へ紫色の光を放ちながらも、中央の黒い面には時折水面に張った油膜のように虹色の波紋が揺らいでいます。
そしてそこから二つの金属塊がゆっくりと現れてきました。
その塊は徐々に降りてきて――両足、両手、胴体。最後に頭部が現れた所で自由落下し、砂地に大きな音を立てて着地したのです。
膝に大きな突起が伸び、各所にブースタを備えながらも滑らかな形状の装甲を持つ
人と同じ5本の指を持つマニピュレーター(手)、肘にはヒートシンク風のパーツを備え、肩には排気用の蓋を持つ
多数のアンテナやセンサー群を備え、展開すればパンタグラフの様な構造をした冷却機構を首裏に内臓し、左脇下にはウインチ(巻上げ機)が装備された
長方形の装甲で覆われた円柱状のレーダー装置、モノアイのカメラを下部に備え、全体的に洋犬か渡鴉を思わせる形状の
武装は今のレイヴンが所持しているものと同様――いえ、
ルビコンにおけるならず者の技術者集団、RaDの開発した探査向けパーツで組まれた人型兵器――
レイヴンの記憶で見た、初期機体のアセンブル(組合せ)そのままのACが、そこにありました。
◆◇◆◇◆
『【あれは…レイヴンのAC!?何故ここに?】』
エアが驚く通り、多分あれはローダーフォー…あの人が最初に組んでくれたACだ。
スキャンして見れば、胸部にはあの人のエンブレムがあり、肩の後ろには白いカラス(レイヴン)のデカール(ステッカー)が張られている。
うん、間違いなく私の機体だ。
いつの間にか掻き消えるように閉じた上空の穴を確認した後、先生を振り返る。
先生は目を丸くしてカードとACを交互に見ていたが、先生が意図して呼び出したものじゃないのだろうか?
しかしあれさえあれば、どうにかなる。私は走り出してACへ飛び乗った。
キヴォトスで得た身体能力があれば、搭乗口までよじ登る事も可能だ。いやちょっと足を滑らせかけたけど。
エアにお願いしてロックを開けて貰い、内部に乗り込む。
神経接続は…この身体じゃソケットもないし、無理か。諦めて久しぶりに手動で起動シーケンスを実行していく。
通常モード――よし。各部状態チェックは――オールグリーン――
内装(ブースター、
できればジェネレータは別なのが良かったが…これでどうにかするしかない。
戦闘シーケンスを起動し、カメラに映った敵影。ルビコプターを睨む。
”お、おぉぉ…ロボットだー!”
収音マイクも搭載しているのか、先生の感動しているような声が拾われる。
その声を聴きながら、私はACの足を一歩動かす。
謎の力?で先生に呼び出されたこの機体、どこまで本物なのか確かめるべく一つずつ動作をチェックしておきたい所だが。
敵はそこまで悠長ではないらしく、動き出した敵影――私の乗るACに対して攻撃をしかけてきた。
両翼のガトリングタレットが回り出し、火を噴く。
慌てて回避しようとするが…のろのろと一歩、二歩と横に歩いただけで全弾被弾した。
【レイヴン!?どうしました、やはり何か不具合が?】
エアが慌てた声色で尋ねて来る。しかしAC自体には不具合はない。ないのだが…。
…手動操作なんて久しぶり(キヴォトス感覚だと<
神経接続による補佐もないので、ブーストの仕方すらわからない。
操作を思い出すのと敵の攻撃予測のアラートで目を回している内に、私は呆気なく撃沈した。
【…私がサポートします。レイヴン、移動用のブーストはこの操作ですよ】
ええと、ジャンプとブースト上昇は…流石に覚えていた。空中でブーストもONにして、ゆらゆらと揺れながらガトリングを避ける。
【クイックブーストはこの操作で…っ、レイヴン!(無誘導)ロケットが来ます!】
エアの警告に焦りが混じる。えっ、どれどれこれだっけ!?
私の操作に機体が勢いよく前方へ弾き飛ばされるように突進(アサルトブースト)する。
勿論、ロケットは全弾被弾した。機体の耐久値(AP)が一気に削られる。
【レイヴン!?次が来ます、リペア…いえ、回避を!】
エアの驚く声と再びの警告。リペアキット起動、じゃなくて回避…クイックブーストはこれだっけ?
うろ覚えの操作を行うと、キャンセル音が鳴った。うん、これはチャージやマルチロックのキャンセル音だね。
今は何も溜めていないから、意味は全くない。
ガトリングの雨に打たれて、耐久値が半分削れた事を告げるCOM音声が何か残念なものを見たように聞こえるのは私の気のせいだろうか。
その後、エアからリペア、クイックブースト等の手動操作方法を聞きながら戦闘していたが、そんな状態が長く持つ筈もなく。
左右から来た12(6x2)のミサイル群に挟まれて、あっさりと爆散した。
もう一度
手動、無理。神経、繋ぐ。
そもそもACの操作は複雑すぎて、一般人だと少し装備を変えただけでまともに動かせなくなり、慣れるのに時間がかかるものである。
それを短期間で行えるようにしたのが強化人間であるが元であるし、以前から神経接続による操作ばかりだったのだ。
そして一番の理由として、元々私は物覚えが悪いのだ。やってられるかよと記憶の中の
エアが止めようとしたが、構わず腰とこめかみに突き刺す。
生身の時と同様に操作すれば、スムーズに起動した。動作確認、ヨシ!
【…どうやら問題ないようですね。出血等もないようですが、これは一体…?】
エアが安心した後に不思議そうにしている。
確かに感覚では一瞬刺さり、接続した感触もあったが外傷や痛みは感じない。
これもカードで呼び出された事による事象なのか。
気になる点ではあるが、今はそれよりも目の前の敵である。
遠慮なしに打ち込まれたロケットをクイックブーストで横に避け、ジャンプとブースト上昇で距離を詰めようとした。
しかし敵も丸見えの接近には気付いており、弧を描く様に回りながら距離を放される。
それならアサルトブーストで距離を詰めれば…。
【レイヴン、不用意に近づいては…!】
焦るエアの警告が聞こえたが、それに反応できる前に私は被弾した。
ガトリングでガリガリと耐久値を削られた上に、カメラの視覚外から回り込んできたミサイルで体勢を崩されかける。
慌ててクイックブーストで横へと追撃を避けようとしたが、無慈悲な音が鳴る。
エネルギー切れアラート。初期ジェネレータの性能は作業用MT用の汎用品並みに性能が悪く、良い点といえば重量が軽いという代物だったのを思い出す。
赤くなるエネルギー容量の表示に目を丸くしている内に、攻撃の嵐に晒されてリペアを起動する暇もなく稼働停止した。
良い子の皆さんは死体撃ちをしないように。
再度
地面をブースト移動で滑る様に距離を取りつつ、弧を描く様に回り込んで様子を見る。
強敵に対して動きを覚えるのは本来なら最初にやる事だ。
手動操作だったり、初期機体だったりですっかり忘れていた。
…そもそも昔倒した敵ではあるが、昔過ぎてどう動いて倒したかも忘れているのもある。
回避に専念すれば簡単に被弾はしない筈だ。
――そう考えていた私はお笑いだったのだろう。
機体足元の地面にロケットやミサイルが着弾、爆発した範囲に巻き込まれて耐久値がすぐに削れる。
慌ててジャンプやクイックブーストで避けるも、すでにかなり削られていた。
これは…ブースト上昇や下降も併用して、距離を詰めないとダメな奴では?
気付いた時にはもう遅く、相手の耐久値を半分まで削った所でこちらが削り切られてしまった。
…数をこなして動きを覚える。要領の悪い私にはそれしかない。
”お、おぉぉ…ロボットだー!…えっ、あんな急に動けるの!?”
収音マイクから拾った先生の声が驚いている。
そういえば、周囲を気にする余裕もなかった。皆さんは無事だろうか。
弧を描きながら北側へと誘導しつつ、お願いしてエアにも会話を拾ってもらう。
『先生、こちらは全員駐屯基地から退避したわ。あれは何?』
『”無事でよかった。あのロボットならレイヴンが乗ってて、ヘリコプターを相手して貰ってる”』
『ちょ、ちょっと先生。オンちゃ、レイヴンが乗ってるってどういう事?』
『こ、こちらコード123。私達も退避しました…援護頂いた便利屋の皆さんも一緒です』
ヒナさんの声からして、風紀委員会の皆さんは作戦エリアから退避できたみたいだ。
先生の説明に困惑した声でホシノさんが訪ねているが、割り込んだ123(
これで後はバンカーと、作戦エリア外に出ないよう気を付ければ心配はない筈。…気を付ける余裕があればだが。
発射された火を見て斜め上にジャンプし、クイックブーストも併用してロケットを避けた。
避けた勢いを失って落下し始めるがそのまま着地後、ブーストを吹かして回り込むように距離を詰め始める。
地面を移動するただのブーストならそのエネルギーはごく僅か(の上、別管理)だ。
一気にアサルトブーストで突進して距離を詰めたいが、節約しないとすぐにエネルギー切れしてしまう。
突進中に後退されればその分エネルギーも消費するし、焦ってはいけない。
【――ミサイル、来ます!】
左右に発射されたミサイル群と共にエアの声が聞こえた瞬間、思考を切り替えて前へ出る。
クイックブーストで弾かれるように機体が前に飛び出し、ミサイル群が後方へ飛んで行った音が聞こえた。
落ち着けばエアの交信から回避行動を判断できる。
私が見て判断するよりも、エアの交信を基準にした方が良いかもしれない。
【…買い被り過ぎです。あなたの戦闘経験は私の遥か上です】
エアはそうフォローしてくれるが、ルビコンの時も戦闘シミュレーターでボコボコにされた記憶がある。
当時すらエアは初AC搭乗(?)であったにも関わらず、私は何度も負けたものだ。
ようやく勝った後、不思議そうにしていた彼女は私が手加減したと誤解していた。
本当に全力だったのだが、
コーラルで全動作を制御できる機体さえあれば、エアが操作する方が良い。
とはいえ、ないものはないので私がどうにかするしかない。
ガトリングを多少被弾しながらクイックブーストで回避しつつ、敵の下へと潜り込む。
この位近付けばいけるだろうか?
ジャンプと共にブーストを吹かして上昇し、ある程度近付いてからブレードを起動する。
近接用の接近に消費するエネルギーは普段とは別に管理されている。
勢いよく近付いて左斜め上から叩き落す様に腕を振れば、青緑の光を放ちながら
更に右上から振り払うように腕を振り、二撃目の斬撃を叩き入れる。
パルスブレードは連続で二回まで起動可能なのだ。その後はクールタイムが入るが、何度でも使える。
ともかく私のような木っ端傭兵には、こういった残弾を気にせず使えるのはとても頼りになる。
火力も恐ろしい程あるので、使わない手は無い。
そして追撃としてアサルトブーストを起動し、その勢いを乗せてローキックを叩き込む。
こちらが本物、ブーストキック(本家)である。ACの武器を含めた積載量を支える程に頑丈な脚部が放つ蹴りだ。
その勢いとACS(姿勢制御システム)に与える負荷は無視できるものではない。
距離が離れたものの、ルビコプターはふらふらとするように空中で揺らいでいる。
【効いています、レイヴン!】
エアの少し嬉しそうな声に効果的であった事を感じ、私もつい調子に乗る。
アサルトブーストを起動し、突進しつつアサルトライフルと共にミサイルを射出して攻め立てる。
接近して再びの近接――パルスブレードは冷却中なので――そのままブーストキックで蹴り飛ばす。
ルビコプターがチュドンという音と共に吹き飛ぶ。モニターに映る敵側の情報を見れば、ACS負荷ゲージが真っ赤に染まっていた。
【スタッガー、好機です!】
ACSが負荷限界によりフリーズして正常に機能しなくなる状態、スタッガーが発生する。
ACSが止まるのでこの間は防御力が落ちるし、直撃補正と言うRad曰く「クリティカル」が発生して被ダメージが増加するのだ。私も良くこの状態になる。
硬直も発生するので、敵は空中でその場に留まっていた。
今がチャンスという奴だ。接近してブレードを叩きこもうと思い、私はアサルトブーストの起動操作を行う。
間の抜けるような柔らかいアラート音。
私がモニタを確認すれば、自機エネルギーゲージも真っ赤に染まっていた。
――再びのエネルギー切れである。
【…レイヴン。大型ヘリならば硬直時間は長い筈です。落ち着きましょう】
溜め息と一緒に宥める様なエアの交信が掛けられる。
ゆっくり地上へと落ちるACと共に、乗っていた調子が落ちた私は了承して頷いた。しょんぼり。
御閲覧にしおり、感想やお気に入りを頂き、誠にありがとうございますっ!
評価も頂いて感謝であります!
本話を執筆にあたり、実に9か月ぶりにAC6を起動しました。
リスタート3回もその際の筆者の腕前が元ネタです。正に木っ端傭兵
戦闘描写もですが、ロボットもといACの外見描写が難しい。
上手い表現が思いつきませんでした…ぐぬぬ。
今回も少しずつ、御名前記載をさせて頂きます。
一部時間順ではない場合もありますが御了承の程、お願いします。
(閲覧、しおり、ここすきは御名前が表示されず、感想は今の所個別で返信するため割愛とさせて頂いてますが、いつも感謝しております!)
虚無音様。
御好評頂き、ありがとうございます!
本作品を楽しんで頂けたなら…感激だ。筆者も喜んでいます。
フォーカ様、pomyomyo様、strelk様、座布団の下敷き様、如月華聖様、
FL274様、八雲麗奈様、カトン様、HELLO先生様、アヴィ様。
御気に入りを登録して頂けまして、ありがとうございます!
抗体…いや、照明…?いえ、偶々でしょうか…?
ようこそ、ご友人!遠くから新しい
お気に入りの他にもいつも感想も頂いており、ありがとうございます!純愛はいいぞ(いいぞ)
ホシノ「…あのブースターから噴射されてる炎の色は…」