青空の下、猟犬は求め流浪する   作:灰ネズミ

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社長「先生(閲覧者)!便利屋68からのお願…依頼よ!」
室長「くふふ~♪今回はカヨコっちの目線(風)なんだって。上手くできてるかなー?」
社員「あ、あのっ。す、少しでも楽んで頂けたら、嬉しいって事らしい、です」



36.幕間4

幕間~闇市場に潜む黒き絶壁~

 

-カヨコサイド-

 

アビドス襲撃に失敗した私達はレイヴンの提案で――実際には一言も喋ってないので、その場にいたアビドス生徒の翻訳と推察からだけれど――以前までアビドスを襲っていた不良集団が使用していた装備の、流通ルート調査の手伝いを持って敗者への手打ちとしてもらった。

非正規品の部品はキヴォトスにおいて個人間の取引なら兎も角、早々大規模には行われない。もし行われているのならそれは闇市場、ブラックマーケットだろうと私達も当たりを付けた。

最もその辺りや場所自体は例のシャーレの先生も調べていたようだけど、素知らぬ顔で案内を私達便利屋68へとお願いして来た。

恐らく生徒間の関係に配慮して、だと思う。敵対・敗北したからその対価にというのは多分建前。

何を企んでいるかはわからないけど、よく相手取る大人達とは違い言動からはこちらを利用しようという雰囲気は感じられない。

それは余り馴染みのない感覚で、少し戸惑う。ムツキやハルカの二人からも警戒してる雰囲気を感じる。

アルは…うん。いつも通りかな。

兎も角。ムツキの方はブラックマーケットの案内の道すがら、先生に絡みついてアビドス生徒達から威嚇されてた。

…多分あれが彼女なりの警戒や、どこまで踏み込んで良いのかの見極めなのかも。

それにしてもこの提案、どうして私達を利用するのかがわからない。

便利屋として依頼主の事は話せないし、ましてや私達はアビドスを襲った下手人。

幾らレイヴンとは一緒に仕事をした仲とはいえ、案内どころか調査協力なんてまともにする保証もない。

何なら、偽情報を掴ませる可能性が高いと私なら考える。

その辺を私達同様、裏で活動しているレイヴンが考えてないとは思えないけど…フードを目深に被りその表情は伺えない。

独立傭兵、レイヴン。何度か行動を共にしたけれど未だ性格は把握できてない。

キヴォトスにいる大人達のように動物のような見た目だけど、吠え声以外の言葉を話す所は一度足りともない――何故吠え声だけなのかすらわからない。

いつも裸同然の軽装で武装には偽装を施し、ムツキの持つ機銃並に大きいのにストックがない突撃銃。そのリコイルを片手で御す腕前。

左手に装着した小手のような装置は何処製なのか。

それから生み出される光そのものに見える刃物など、キヴォトスにおいて見聞きした事がないから何かしらのオーパーツ何だろうか。

それにアビドス襲撃戦では、私の神秘(パニックブリンガー)を警戒するように拳銃を逐一視界に収めて間合いを詰めてこなかった。

まるでそれが致命的になるとわかっている(・・・・・・・・・・・・・・・・・・・)かのように。

確かに何度か見せてはいたが、正確な範囲やレイヴンに通用するかは把握されないように立ち回ってきたつもり。

それにあの時はアルやムツキの事までなるべく視界範囲に収めて狙撃の兆候を見逃さず、あまつさえハルカの射程範囲ギリギリで釣ろうという動きさえして見せた。

果たしてたった数回程度の同行で、そこまで見切れるものなの?

レイヴン自身の動き自体はそこまで早くないし、特段タフな訳でもない。

けれどゲヘナの風紀委員長や、アビドスの対策委員長とは違う強さ。

いや…強さとは違う何かがある。形容しがたいけど、違和感を私は感じている。それに。

 

「…あれっ、あっあっ、あの。私に何か…?」

 

じっと見られている事に気付いたハルカが、レイヴンに対して挙動不審になる。

それを首を振って否定し、視線を逸らすのを見て彼女は更に警戒して見せる。

他の便利屋の皆よりもレイヴンはハルカに興味があるというか、交流を図ろうとしているようにも見える。

それは警戒心をあからさまに見せているから…とも言い切れない。

私もそれなりに表情に出ているのを自覚しているから。

それでも気にかけている様子はハルカの方が多い。最も、それで余計に警戒されているけど。

身構えられてどことなく凹んでいるように見えるのは、レイヴンが犬型の獣人だからかな。

 

 

 

「…手伝うのはいいけれど、これって契約違反にならないかしら?」

「あっはは~、アルちゃん今っ更じゃーん?」

 

ブラックマーケットの調査を始めて暫く。

何件目かの店で銃火器を調べている最中、ようやく気付いたアルに対し、ムツキが笑って返す。

相変わらずのやりとりに少し離れた所から見ていた私はため息を吐くが、これもまたいつも通りかと思う。

 

「仕事自体はアビドスを襲うって点だからギリギリだけど、それでもグレー寄りなんだよね」

 

思わず零してしまった言葉に私はしまったと思い、隣にいるレイヴンの様子を伺う。

幸い気分を害した様子や激昂する気配はない。

まぁ、レイヴンが感情を顕わにする所なんて見た事ないけど。

しかしどこか思う所があったのか、何も言わず考え込んでいるみたい。

虚ろにも見える瞳が僅かに伏せられ、顔が下向く。

それはどこか失望したような、それとも予想通り私達がアビドスに対し不利な情報を渡さないよう動いていると考えたかのような、諦観にも見える表情。

或いは…自身の無力さに打ちひしがれているようにも見えて。

 

「レイヴン」

 

思わず私は名前を呼ぶ。

視線を上げてこちらに向けてくるが、その目はきちんと見えているか不安になる程に虚ろだった。

――まるで誰も信用しない、信頼も出来ず生きる事に疲れたような瞳。

 

「ここでもなかったみたい。…仕事はちゃんとする。裏切らないよ」

 

思わず安心してほしいと思い、報告と共に言葉を連ねてみる。

レイヴンは不思議そうに首を少し傾げた後、頷いては見せた。

しかしその瞳の彩りは変わらずで、多少でも伝わった様子はない。

曲がりなりにも何度か一緒に仕事した仲なのにも関わらず、アビドスを襲撃した私達をこうした案内で許してくれたのに、レイヴンへ信頼の心を返せてない現状。

何故かそれが、私にはどこか歯痒かった。

 

 

 

それから更に時間を掛けて調べ回ったけれど、調査は芳しくない。

転売等といった痕跡を辿ると、途中で閉店やポップアップストア(突発的な屋台)等に行き当たり販売ルートがそこで途切れてしまう。

今はブラックマーケットの規模感を気にしたらしいレイヴンに対し、アルが「街一つ分はあるんじゃないかしら」と答えている。

それを横目にムツキが成果ゼロに対してキレた。

彼女をなだめるのはハルカに任せて、私はレイヴンの動きに注意する。

ないとは思うけど、万が一にもレイヴンまで苛立ちに任せて暴れたら、流石にマーケットガードに目を付けられるかもしれない。

流通ルートを調査中にそうなるのは、余り良くない。

幸いそうなる様子はなく、ペロロ人形を片手に店長とやりとりをしている。

やりとりと言うか、一方的に店長が話しかけてる感じだけど…案の定、ぼったくり価格の品物を買わせられている。

ちょっと口出そうかと考えていると、差し出された一枚の写真を見てレイヴンの動きが止まった。

何事かと思って、私も遠目に見てみる。…何あれ。壁?

垂直にそそり立つ黒い壁としかいいようのない何かを、レイヴンはじっと見つめている。

思い当たる節でもあったのかと思い、声を掛けようとした瞬間に通信機が鳴る。

 

『”オンちゃ…レイヴン、緊急任務をお願い”』

 

シャーレの先生から、任務と言う体の救援連絡。

相手はこのブラックマーケットの自治を担っていると言っても良い、マーケットガードの妨害。

リスクが高すぎる。そもそも何で闇銀行に対して銀行強盗なんてしてるの、アビドスの人達も先生も…。

頭痛がしてきたように感じて、思わず頭を押さえる。

そしてこういうアウトロー染みた行動を見た場合、アルがどう動くのかも大体想像がつく。

顔を見れば一目瞭然で、きらっきらしていた。やっぱりね。

しかもレイヴンまで巻き込む気を見せつけてきて、私達が抱え込むリスクを考えると頭が痛くなる。

便利屋の皆も全員行く気満々で、私は溜息を吐くしかない。

…だからって、私だけ反対する気もないけれど。

便利屋の皆は仲間だし、それに。

折角レイヴンが頼ってくれたのだから、少しくらいは名誉挽回しないとね。

 

 

 

想定よりもスムーズに事は進んだ。

普段ならムツキの爆破やハルカの突破力に頼む事が多いけれど、レイヴンが先陣や横槍によるかく乱を担ってくれるから相手側の先手を取れるのが強い。

何よりレイヴンは慎重で、多勢に対してむやみやたらに突っ込まない。

キヴォトスではそれなりに貴重なストライカーな気がする。

奇襲や一撃離脱に近い戦い方なのも丁度あっていたようで、かなりの数のマーケットガードを潰せた気がする。

懸念していたマーケットガードからのマークもそこまでなさそうで、私の気も楽になった。

これなら今後の仕事にも影響は薄く済みそう。

 

「銀行にも目立った破壊痕がないって事は、手際よく鮮やかに事を成したのね。これぞまさに真のアウトロー…ふふふ。その仕事の手伝いができるなんて。今日は吉日ね」

「社長、厄日の間違いじゃない?」

 

目標地点の闇銀行付近に到着し、辺りを見渡せば増援はもうなさそうだった。

アルが嬉しそうにしているけど、自治機構の一つに目を付けられるのは絶対吉日じゃない。

影響は薄そうとはいえ、ゼロじゃないんだから。

とはいえアビドスの人達は上手くやったのか、アルの言う通り大きな破壊活動の跡がないのは凄いと思う。

防犯用シャッターの下りた闇銀行の様子を眺めながら話していた…が、その私達の前で闇銀行の正面入り口が吹き飛ぶ。

シャッターの残骸と共に飛び出してきたそれは、ぱっと見は黒い壁だった。

しかしよく見ればキャノン砲やミサイルを装備してて、兵器である事がわかる。

わかったが、その巨体に圧倒されてしまった。これは大き過ぎでしょ…。

 

「な、ななな、何あれー!?」

「この闇銀行の責任者でもある私の目が黒い内には、銀行強盗など許さん!指導だ指導ぉ!」

「オンッ」

 

どうやら銀行側の切り札みたい。乗り込んでいた銀行員が私達に気付き、砲口をこちらへと向けて来た。

警戒を促すレイヴンの吠え声に反応してその場を飛びのく。

すぐ後に着弾したグレネードが先程までいた地面に大穴を開ける。

これは、ちょっと直撃は避けたい威力だね。

しかも装甲に関しても分厚く、反撃したレイヴンの弾丸を弾いてる。

続けて打ち込んだアルの狙撃銃すら弾くって、どんな金属使ってるんだか。

 

「何あれ()った!アルちゃんのも弾かれてるんだけど!?」

「牽制とはいえ、無傷っぽいね。ちょっとマズいかも」

「わ、私が前に出て何とかしま、す!?」

 

ちょっと楽しそうに驚いてるムツキに対し、警戒を促す。

アルの一撃すら擦れた金属音だけ残す程の装甲となると、正面突破はまず無理。

突出しようとしたハルカは、レイヴンが引き留めてくれたので一息吐ける。

レイヴンが首を横に振っている通り、あれは正面から殴り合うものじゃない。

どうしようかと考えていると、レイヴンがアルも手招きして呼び寄せて来る。

…レイヴンが招き寄せるなんて、珍しい。

肉球の付いた手指が振るわれ、作戦概要らしきものが伝えられる。

正面横を通過し、後ろを向かせる釣り役。そのまま囮になり背後を火力組が叩く。

なるほど、あの壁は正面装甲だけが厚いんだ。

意図を汲んだアルが任せろとばかりに、彼女自身の胸を叩いた。

こういう時、本当に社長は頼りになる。

でもハルカがこれも珍しく、囮も兼ねる釣り役をレイヴンだけに任せようとしないで口出ししかけた。

 

「ワフッ」

 

そんな彼女にレイヴンは首を横に振った後、サラシだけ巻いたその胸元を親指で指す。

便利屋だけなら良く彼女が担当して貰っていた最前線を、率先して自らが引き受けると見せたレイヴン。

その仕草にハルカは驚いてたようだけど、思う所ができたのか真剣な表情を浮かべて頷いた。

初見なのに作戦立案する辺り、レイヴンにはあの壁との戦闘経験があるみたい。

その経験もだし、走破力を考えれば適任の筈。筈なんだけど…何だかモヤモヤする。

 

「行けるわね?それじゃ作戦、開始!」

 

私の戸惑いに気付いたのか、アルが号令を掛ける。

こういう時の感が鋭い社長には助けられるよ。

考え事をしてる場合じゃない。今はあれをどうにかしないとね。

 

 

 

「まっ待て!落ち着け!いいか、私はこの銀行の会計責任者に当たる者だ」

 

アルのトドメで行動不能になった壁兵器から銀行員が転げ落ちてきて、レイヴンへ命乞いを始める。

今更とも思うし、そもそもお金には困って…るね、便利屋としては。

アビドス襲撃で雇った傭兵達の給料で、財布はすっからかんだし。

アルの口座もゲヘナの風紀委員会によって止められているのを思い出しながら、私達はレイヴンと銀行員との交渉を遠巻きに見ていた。

そうしたら一度見逃すとばかりに頷いて見せた後、壁兵器が爆発するタイミングに合わせて突撃銃で思いっきり打ち抜いた。

 

「うわっ、取引に応じたと見せかけてトドメ刺してる」

「あのやり口…まさにアウトローね!」

 

あれはちょっと、私でも引く…。

アルには琴線に触れたのか、すごく尊敬する目をしているけど。

レイヴンは爆発に巻き込まれた銀行員をじっと睨んでいた後、指さして頷いていた。

銀行員にというか、お金持ちに悪印象でもあるのかな。

…暫く社長には大金を稼ぎ過ぎないよう、進言しておこう。

 




いつもご閲覧やお気に入りも頂いておりまして、本当にありがとうございます!
長い間お待たせしており、申し訳ありません。
それなのに毎日閲覧して下さる方がいらっしゃっていて、嬉しいしありがたいしで筆者感無量でございます…!
本編の再開はまだお待たせしてしまいますが、ちゃんと続けますのでお待ちいただけたら幸いです。

カヨコからアルの呼び方ですが、もし違っていたらごめんなさい。
Wikiでも調べたのですが、ストーリー中だと社長としか呼んでないイメージだったので仕事中など対外的には社長、普段はアル呼びかな?と思って書いてます。


今回も少しずつ、御名前記載をさせて頂きます。
一部時間順ではない場合もありますが御了承の程、お願いします。
(閲覧、しおり、ここすきは御名前が表示されず、感想は今の所個別で返信するため割愛とさせて頂いてますが、いつも感謝しております!)

もし「あれ、順番飛んだ?」と思われる方は、下記の活動報告にて御記載させて頂いておりますので、もしよろしければ御照覧下さい。
 ⇒活動報告一覧(https://syosetu.org/?mode=kappo_view_list&uid=479630


プロト048様、syuu0208様、月見散歩様、ノモ様、エセ鴉様、
隼型一等水雷艇 隼様、コールテン様、煎餅さん様、御剣龍也様、縄文様。
お気に入り登録頂いておりまして、ありがとうございます!
月を見ながら散歩、雅で良いですね。
カラスとは意味深な…もしや…?
最近は昔ほどオタクに厳しくない(ニュースにも流れたり)とも小耳に挟みますが、どうなんでしょうね…?
いつも御感想頂き、本っ当~にありがとうございます!お気に入り登録も頂いており、感謝の極みです!
言い出しっぺの法則に似るアレですね、わかります。筆者も頑張って書きます!!
ライダー…ありふれ…なるほど、そういうのもあるのですね。面白い…!
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