アビドスオジョウサマ「ふふ、お疲れ様です。もっと癒されに来ても良いんですよ?」
アビドススナオオカミ「ん。
アビドスアカメガネ「あはは…無理のない程度で構いませんから」
アビドスオジサンモドキ「うへ~人気者だねぇ
幕間~猟兵達のカタプトロフォビア(1)~
※本話は「アビドスの恵みをナマで」~「傭兵の戦い方」までの内容を含みます
-ハルカサイド-
「ああ…俺も…
仕事の撃破対象である大型兵器が爆発して、今日の仕事が一段落した事に安堵の息を吐きます。
アル様がレイヴンさんとハイタッチするのが見えましたので、どうやら出来も上々みたいで良かったです。
「おっつかれさま~!やっぱりレイヴンちゃんが居ると楽だねー」
「お、お疲れ様です…。ヘイト分散、助かりました」
フードを目深に被ったレイヴンさんへ、
犬獣人の独立傭兵…レイヴンさん。
いつも目元まで隠す様に深く被ったフード付きのパーカーを羽織っているのに、インナーは包帯のみという凄い
過剰な偽装を施した強力な武器の数々に、地面の破片等を物ともせず靴すら履かない強靭な身体。
どこかの企業のお抱えと言われてもおかしくない強さだと、カヨコ課長が言っていたのを思い出します。
だからでしょうか。何となくあの人の事を怖いと思う様になりました。
いえ、他の人が怖くない訳ではないのですが…。
ムツキ室長の会話を聞きながらレイヴンさんと距離を保持していると、アル様とカヨコ課長の会話が一段落するのが聞こえます。
打ち上げをするようですが、今日は違う事があるのを仕事前にアル様から聞いていました。
なのでレイヴンさんがどう反応するのか、緊張してそちらへ視線を向けます。
「…その。よければ貴方もどうかしら、レイヴン」
レイヴンさんは顔を私達に向けると、見定めるように動きを止めます。
そのまま何も言わず――鳴き声以外聞いた事がないですが――にいると、室長が更に押して誘っています。
課長も相談がある事を伝えると、レイヴンさんの視線(マズル)が私の方を向いたのが見えたので慌てて頷きます。
次は大きな仕事があり、あのアビドス高等学校へ攻勢を仕掛けると聞いていました。
アビドスは昔、キヴォトス最大の学園だったらしいですが、今は衰退して数名の生徒がいるだけだとか。
そこに企業の邪魔をしている人達が居座っているそうなのですが、その方達が非常に厄介で可能ならばレイヴンさんの力も借りたいとアル様が仰っていました。
私なんかの考えや思い、怯えは脇に――いえゴミ袋に入れてレイヴンさんを引き入れようとしていると、思案した様子の後に頷いて下さりました。
この後はアル様に食事の予算をお聞きして、外食できる場所を探すだけです。
…誘われて獣耳や尻尾が嬉しそうに振られた気がしたのは、私の気のせいでしょうか?
失敗しました失敗しました失敗しました…。
アビドスを数時間も歩き回る事になり、私は自己嫌悪と自罰で内心一杯になります。
アル様にお伝えされました予算内に収まるような、かつアル様がレイヴンさんにも満足頂けるような配慮が利く店が全く見つからないのです。
どうして私はいつも失敗ばかりで何も出来ないのか。
こんなんじゃ便利屋の皆さんの役に何て、いつまでたってもなれやしないのに…!
焦りで思考と視野が狭くなっていると、スイッと誰かが私の前を歩きだすのが見えました。
視界に入るのは揺れる尻尾と翼…レイヴンさんが何かを嗅ぎつけたのか、誘導して下さるのに気が付くと慌ててその背中を追います。
やがて一軒のラーメン屋さんの前で止まると、指でその店を指し示してくださいました。
紫関ラーメン。看板を見た便利屋の皆さんも頷いてらっしゃいますので、外観も合格のようです。
不甲斐ない私を誘導して下さったのですから、ここでダメなら御店側を脅してでも予算内に納めてるしかないでしょうか。
代表して恐る恐る店内へと入ります。
「いらっしゃいませ!何名様ですか?」
ネコミミの店員さんが御迎えしてくださいますが、まずは予算内に収まるかの確認です。
一番安いメニューを確認すると、看板メニューでもあるラーメンの値段を教えて下さりました。
何とか予算内である事に思わず破顔します。良かった、何とかなりそう…!
私達が座れそうなスペースも空いている事を確認し、お礼を言うと皆さんを迎えに店外へ出てアル様達へOKを出します。
便利屋の皆さんが入店されると店員さんが席に案内して下さりましたので、再度御礼を伝えます。
少し遅れて来たレイヴンさんが席に座り、メニュー表を見ると首を傾げていました。
…時折、レイヴンさんは不思議な様子が伺える事があります。
恐らく大人な年齢の筈なのに文字が読めない時があったり、
あれ程の強さを持っているのですから、稼ぎが良すぎて逆に平凡な生徒の暮らしに慣れていないのでしょうか。
ムツキ室長がレイヴンさんに同じメニューで良いか確認を取りますと、注文を取りに来て下さった店員さんへ御伝えします。
二杯しか頼めない懐事情に店員さんが驚いてしまったので、大変申し訳なく思います。
「ご、ご、ごめんなさいっ。貧乏ですみません!お金がなくてすみません!」
「あ、いや…その、別にそう謝らなくても」
謝ると店員さんが驚いた様子でしたが、お金がないのは首が(回ら)ないとも言います。
つまり生きる資格がありません。今の私は草に集まる虫にも劣る存在で、虫以下の存在がこちらの御店に伺っているのが心苦しくなります。
その旨を謝罪していますと、カヨコ課長がフォローして下さりました。
「はぁ…ちょっと声デカいよ、ハルカ。ごめんなさいね、店員さん」
「いえ。それにお金がないのは罪じゃないよ!胸張っていいんだから!」
フォローして下さったのもあったのか、店員さんは私なんかを応援して下さるので驚きます。
何て優しく、気遣いもして頂ける店員さんなんでしょう。
レイヴンさんが誘導して下さったお店なだけあります。
このような所にまで感が効くレイヴンさんに、私は尊敬すると同時にまた一つ警戒心を上げます。
やっぱり慣れてないと見せかけて、様々な知見を持っているのではないでしょうか?
その後、課長とレイヴンさんが交渉している横でアル様が仰った”すき焼き”という、何て心惹かれる言葉づらの良い響きに心を奪われます。
好きに焼ける…一体何の食べ物を焼いて頂けるのでしょうか。想像も尽きません。
曰く、凄い高価な大人の食べ物だそうです。
私なんかが食べても良いものなんでしょうか。間違って食べてしまったら百鬼夜行において反省の仕方と聞く、
「はい、お待たせしました!お熱いのでお気をつけて!」
店員さんがラーメンを持ってきてくださった所で思考が戻りました。
しかし何故かテーブルに配膳されたものは10人前以上はありそうな、超が付く程の大盛りです。それも二杯。
オーダーミスかと思い、確実に予算オーバーしてしまう料理に私は慌てふためきます。
「いえいえ、これで合ってますって。紫関ラーメン並を2杯!ね、大将?」
「ああ。ちょいと手が滑っちまって量が多くなっちまったんだ。値段は変わらねぇから気にせず食ってくれ」
私達人数分の小皿を並べながら店員さんが、店長さんにも確認して下さります。
店長さんも値段は変わらないと保証して下さったので、ミスではないようです。
備え付けの割り箸を取り分けようとした所で、レイヴンさんが何かをテーブル上にないか探しているのにアル様が気付きました。
「あら、どうしたの…って、箸を使ったことがないのかしら?ならフォークなら大丈夫かしら」
アル様の提案に頷いて、お願いする様子を見せるレイヴンさん。
その様子にまた違和感を覚えます。キヴォトスにおいて箸を使わない学区があったでしょうか。
確かにフォークとナイフ、スプーンを多く使っていて箸を余り使わないという所はあると思います。
それでも狭いテーブル内を見渡す程、箸に見覚えがないのは聞いた事がありません。
私が知らないだけかもしれないですが…と思っていると、そのフォークすら扱い難そうにしていました。
頂きます、の挨拶すら私達に倣って行うレイヴンさんの様子に、違和感は膨らみます。
…もしかして一般的な暮らしに、稼ぎがあるから慣れていないのではなくて―――。
慎重に。一呼吸分すら堪能するように、匂いを嗅いでいます。
危なげにフォークを使って少しずつ噛み締めるように、麺を巻いて口にしました。
黙々と具材を刺しては口に入れて行きながら、獣耳は驚く様にピンと立ち尻尾は歓喜に振っています。
そして…僅かに見える目元から頬を伝わり、ぽろぽろと涙がテーブルに落ちていきました。
末端部位以外、全く感情を見せないあのレイヴンさんが泣いています。
確かにおいしいラーメンですが、まるで初めて人と一緒に食べる食事をした時の私のように感涙しているのです。
その様子に私は大変身勝手で
レイヴンさんは私達と違い、稼ぎが良く豪遊していた立場ではなくて――孤独か、平凡な食事すら取れない生活を送ってきた可能性があるのではないでしょうか。
便利屋の皆さんも何かお考えをしている様相で、レイヴンさんを見ていました。
そんな様子を見ていた店長さんも、黙って大盛りのラーメンをもう一杯お出ししていました。
レイヴンさん。貴方は一体…どういう人なのですか?
その後、アビドス襲撃への協力は断られてしまったとお聞きしました。
カヨコ課長が言うには、砂漠地帯の暑さが堪える他にも何か理由がありそうとの事です。
もしかして元アビドス所属の生徒だったりするのでしょうか。
衰退して荒れた土地で一人。支援もなく育った孤独な傭兵…いえ。私なんかが考えつくものは皆さんがすぐ思いつくでしょうし、他の何か別な理由なんだと思います。
それよりも今は街角に集まった別な傭兵さん達と共に、お仕事を成功させなくちゃ。
そう思っていたのですが、すでに察知されていたのか防衛の陣地を築かれていました。
学校の備品を使った遮蔽物を上手く使われて、時間を稼がれてしまいます。
その間に挟撃される形で増援が来て、注意を逸らされてしまいました。
増援はたった一人だったのですが、この方は凄く慎重で察しが良く私の間合いギリギリを出たり入ったりしています。
アル様の狙撃を躱す上に、ムツキ室長やカヨコ課長が時折攻撃しても直撃しないよう引いた立ち回りで、私達の注意をアビドスから逸らすのです。
そのせいで傭兵さん達への指示が滞って戦力を削られ、アビドス側から押し切られてしまいました。
ターゲットの方々が走り込み、アル様達と接敵してしまったのが見えます。
ま、まずはアビドス側へ向かい、人数不利をどうにかするべきでしょうか!?
そう考え焦っていた私を、更に混乱させる事象が襲い掛かります。
増援で挟み撃ちにきていた、獣人の方が
何事かと慌てる戦場。砂煙が多少見渡せる程度に晴れたかと思った時…私は地面に残された深い傷跡にゾッとします。
少しだけ私は頑丈な身体ですので、アル様の為ならどんな事でも耐えれると思っていました。
それでもこれは…ちょっと無理かもしれません、
「!?あわ、あわわわ。わ、私はどっちに行けば…」
この危険すぎる武器をアル様に近付かせないよう身を張るべきか、人数不利のアビドス側へ向かうべきか。
迷っていた内にアビドス側から詰め切られてしまった私達は制圧されて、敗北してしまいました。
アビドス高等学校からチャイムが鳴り響くと、傭兵さん達は引き上げていってしまいました。
アル様はまだやる気があったというのに…許せません。
そのような害虫は駆除しなきゃと思い、
「ア、アル様を裏切るなんて、許さない、許さない…!」
「はいはーい。そこまでにしてもらうねー」
いざ駆除開始と思ったところで、
この方は大きな盾を持っていて、今回の戦いでも私と同じ様に前線を張る程のタフさを持っていました。
この方を相手にしていては、害虫(傭兵達)を駆除しに追い付けそうもありません。諦めるしかないようです。
アル様、申し訳ありません…。
ご閲覧、しおり、お気に入り等を頂き、ありがとうございます。
評価も頂きまして、こちらもありがとうございます!
お待たせしましてすみません。
いつか書けたら良いなと思っていたハルカ視点。
書き始めたら書きたいシーンが止まらなず…しかも終わりが見えなかった為、今回はナンバリング付に…申し訳ございません。
代わりにスウィンバーンが再教育センターに送られておきます()
今回も少しずつ、御名前記載をさせて頂きます。
一部時間順ではない場合もありますが御了承の程、お願いします。
(閲覧、しおり、ここすきは御名前が表示されず、感想は今の所個別で返信するため割愛とさせて頂いてますが、いつも感謝しております!)
またもしも「あれ、順番飛んだ?」と思われる方は、下記の活動報告にて御記載させて頂いておりますので、よろしければ御照覧下さい。
⇒活動報告一覧(https://syosetu.org/?mode=kappo_view_list&uid=479630)
MtoB9024様。
ご好評を頂きまして、ありがとうございます!
ひと時の楽しみになれましたようで、筆者冥利に尽きます。
yayoi27282様、よしおか様、名も無き灰の巡礼者様、あいうえお^_^様、ミネ様、
レータ様、コミュ力が足りません様、CLOSEVOL様、ネリカス様、めた様。
お気に入り登録して頂き、ありがとうございます!
新しい世界からのご友人!ようこそ!ひとときの楽しみになれていましたら光栄です。
このような作品に不死の方がいらっしゃるとは…!恐縮です、一時でも篝って頂ければ幸いです。
これはご丁寧に…わたくし灰ネズミと申します、よしなに頂ければと思います。
コミュニケーション能力は自分も欲しい次第です。最近増々不足気味でして…!
ご友人、多様な踊りを踊っているのですね!どれも魅力的な作品達…素敵だ…
もしや達筆なお方…?ご同名の方でしたらすみません。登録頂きありがとうございます!
オマケの話:
筆者が始める直前だったアイドルマリーをようやっとお迎えできました。
アイドルサクラコも御一緒にお迎えできましたが、素材不足でゲブラに投入できるかは未定ですが、通常を見送り続けた甲斐がありました。
…リツを見送ったツケが来ないか。年末+周年向けも含め震えて待ってます。