青空の下、猟犬は求め流浪する   作:灰ネズミ

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重ね重ねて繰返す先は未だ仄暗(ほのぐら)
死に死にて死の終わりなく虚ろう思考



ひかり(あの人)は どこ?



散歩の2~ミレニアムエリア~
01.機械油香る犬の千年科学


アビドスの件も落ち着いてから暫くして。

私達はとある依頼を受けてキヴォトス三大学園の一つ、ミレニアムサイエンススクールに来た。

周囲は灰色のビル群や道路横にライトが並び立ち、どことなくザイレム(洋上都市)を思い出す。

あそこも同じような建物が一杯で、道路も整備されており――という事は、ミレニアムも浮上したりするのだろうか。

 

【しませんよ、レイヴン】

 

頭の中から溜息交じりにエアが否定する。そっかぁ。

少し残念に思いながらも、その綺麗に整った街並みを横目に歩き続ける。

目的地点に向かってエアにマーカーで示して貰いながら、時折すれ違う学徒からの視線を感じた。

 

(え…何あの人、素足…?)

(見た事ない恰好だけれど…どこかの部のテスターかな?)

(ケモケモしてる…モフモフしたい…)

 

遠巻きで小さく会話している様子に、獣耳を震わせながら考える。

アビドスでは人目も少ない為あまり気にしなかったが、やはり都市部ではこの武器群は珍しいらしい。

思い返してみれば、肩にサブアーム(兼ウェポンハンガー)が生えたり背負っているような学徒は傭兵業の合間にも他で見た事がない。

あるとすればオートマタ位だろうか…オートマタでも付けてる人はいなかった気がしてきた。

慣れると便利だし、ミレニアムで知り合った彼女達にも興味を持たれたのだけれど。

 

【彼女達はそれ(エンジニアリング)が本望な所もあるようですしね。ただ、ロマン。というのは未だわかりません】

 

エアも彼女達の事を思い出したのか、私の武装を見た時の感動振り(テンションMAX)を振り返って溜息を吐いた。

あの時は質問攻めにあったのもあって、私の代わりに代弁してくれたエアには理解できない部分が一杯あった。

元々は企業が開発した武装だし、キヴォトスにおいては何故かそれらが私の生身のサイズに合わせて小型化されている。

その仕組みは不明であるし、そもそも武器に対する思い入れというものをコーラルというエネルギー物質である彼女には共感し難いらしく――ロマンという事柄がよくわからなかったらしい。

エア、ロマンは大事だって。具体的にはパイル(PB-033M ASHMEAD)とか巨大砲(EARSHOT)とか。

あ、チェンソ(WB-0010 CHAINSAW)も良いかも。インビンシブルだーって感じ。

 

【…そういう割には、あなたがそれらを使っている所をあまり見た記憶がないのですが】

 

何となく半目で見ているような雰囲気で、エアが痛い所を突いてくる。

だって使ってて楽しいけれど、私の技量じゃ扱い切れないし…でもたまに当てれるとすごくすごいんです(語彙消失)。

頭の中で言い訳とロマン武器のみりき(魅力)について改めて説明してみたが、彼女の共感は今回も得られなかった。

私が覚えている言葉ではまだまだ表現力が足りないらしく、この思いを伝えれないのは悔しい(もどかしい)ものだ。

 

 

 

幾つかのセキュリティゲートを超え、建物を何件か経由する度に人気が減って行く。

背の高い建物群に囲まれた渡り廊下を抜けた先、どこかの建物内の一室でようやっと依頼人と会う事が出来た。

この厳重度合いにはヴェスパー部隊の人々よりも警戒心の高さを感じる…というのはエアの言葉だ。

私としては単にキヴォトス最先端の景色や機器類を見れて、興味を引かれていただけなのでやはり彼女は頼りになる。

頼りになる筈…なのだけれど。

 

「――という事で、貴方方にはミレニアム郊外にある廃墟群にこっそり侵入して来る、不良や無法者達の集まりである『KTRaD』…通称、軽トラ団の排除をお願いしたいのです」

 

ミレニアム製と思われる独特な形状の車椅子に腰掛け、足に布(ブランケット)を被せた女性の膝の上で私は絶賛撫で回されながら、依頼の詳細を聞かされていた。

ヘアバンドと白い花で飾られた髪は白く、左右で筒形の装飾品で下げられた長い髪。

そこから覗く耳はアビドス高校のアヤネさんのように長く伸びて尖っている。

体格は細く(エアが言うには私より健康的らしい)何枚も重ね着をしており、全体的に白い衣装の下には肌白さを強調するように黒の下地と手袋をしていた。

そんな彼女が初対面でこのように近くにいる(べったりくっついている)のは一見、無警戒のように見える。

しかし隣の部屋に別な人が待機しているのがスキャンで確認できているので、警戒はされている筈だ…警戒されているかも…ちょっと無警戒かもしれない。

 

「それにしても…深窓の可憐なる珠のような病弱天才美少女である私相手とは言え、御話に聞く通り依頼であればこのように無遠慮にされても何もおっしゃらないのですね?」

「ワフ」

『………仕事は仕事ですから』

 

何故か少し困ったような顔(苦笑)をして依頼人である彼女、明星(あけぼし)ヒマリさんは私のマズル上部を撫でる。

だって言われた通り、事前に提示された仕事内容は慰安と撃退なのだし。

エアの事前調査でも問題なし(ある)と教えてもらっているので、私は気にしない(してほしい)。

私の持つ通信機による合成音でエアが(随分間を開けて)仕事と割り切ったのを聞いて、ヒマリさんはクスクスと楽しそうに笑った。

 

「申し訳ありません。同居人の都合で今は室温が低く設定されており、寒くてつい…。廃墟の場所は先程お送りしました座標になりますが、もう一つ。私的な『お願い』をしても良いでしょうか?」

 

何だろう。ゲヘナ学園のヒナさんみたいに添い寝のお願いとかだろうか?

先日かなり疲れた様子(温泉開発部がまたやらかしたの)で添い寝の慰安をお願いされた事を思い出していると、ヒマリさんの両手が私のアゴ下に添えられて軽く持ち上げられる。

合せられた目線の先では、真面目な表情を浮かべた彼女の顔があった。

 

「先日シャーレの先生にとある事柄をお願い申し上げたのですが、その際に私と一緒に同席したミレニアムの生徒会である『セミナー』のトップ――会長の調月(つかつき)リオという女性がいます。彼女が最近秘密裏に雇った(・・・)怪しげな何人かの者達…そのカウンターとして備えて欲しいのです」

 

確かセミナーといえば、シャーレに慰安しに行くとたまに会う学徒――ユウカさんが所属している組織(部活)だった筈。

先生の過剰(ユウカさん談)なやる気補充(もふもふ)に注意していたり、握手されたり撫でられたりした覚えがある。

彼女からは企業の上層部に属しているような嫌な気配は感じなかったが、トップの会長ともなればまた別なのだろうか。

エアに確認するように目線を上げると、悩んでいると誤解されたのかヒマリさんから更に補足の説明をされる。

 

「備えて欲しいとはいっても、先生がミレニアムにいる間だけで構いません。私達も準備はしていますが先生の身に万が一があっては事ですし、貴方方の無理のない範囲でお願いしたいのです」

【…調月リオ、ですか。彼女に関する情報は秘匿されているものが多数あります。ですが…あなたが依頼を受けるのであれば、サポートします】

 

補足されている間に、リオさんについてすぐに調べたらしいエアに私は感謝する。

先生にはセーフハウスを提供して貰ったり、傭兵業を始めるにも色々お世話になった。

恩は返しておきたいし…先生の持つカードにも気になる点が一杯ある。

今の内に貸しを作っておいても損はない。ルビコンの独立傭兵(ノーザーク)と違って踏み倒されはしない(何故返す必要がある!?)だろうし。

ヒマリさんにお願いされた内容に対し、私は一鳴きして了承する。

代弁としてエアからも了承した旨を聞いた彼女は口端を少し上げて(微笑んで)、安堵した様子だった。

 

「ありがとうございます。本来ミレニアムとは無関係な貴方達に頼むのは、少々筋違いかもしれませんが…どうか宜しくお願いします」

「オンッ」

『問題ありません。それにミレニアムサイエンススクールと関係がなくとも、私達には関係ある事ですから』

 

感謝の言葉に返事を返すと、エアが私の考えを代弁してくれる。

そうそう。先生にはお世話になっているのだからこれ位は問題ない。

つい先日、温泉開発に巻き込まれて拠点の一つが爆発四散した事を話したら、別の新しいセーフハウスを紹介してもらったし。

エアに同意して私が頷いているのを見て、ヒマリさんは嬉しそうに笑う。

 

「そう言って頂き、ありがとうございます。それで報酬に関してですが、金銭以外にもご希望があると聞き及んでおりますが?」

 

彼女から感謝と共に報酬に関して質問される。そう、ここに来る前にエアに交渉して貰っていた。

金銭に関しては何故かルビコンに居た頃の資金が端末に残されており、その上キヴォトスのお金に換金が可能であった。

しかも最後に受けた仕事の支払いも行われており、それがキヴォトスの金銭価格に換算するととんでもない金額だったのだ。

なので今の私はちょっとした余裕(当人感覚)があり、かつお金よりも今は必要なものがある。

私は通信端末を使って、とある画像のホログラムを表示させながら、着ているフード付きパーカーのポケットから小型の外部記憶装置(USBメモリ)を取り出してヒマリさんへ差し出す。

 

『はい。今レイヴンが表示させている、エンブレムに関する情報を探しているのです。詳細は同じくレイヴンが取り出した外部記憶装置に入れてあります』

「なるほど…では、少し拝見しますね」

 

表示されたホログラムを覗き込むようにして確認した後、ヒマリさんは記憶装置を受け取った。

そして近くに置いてあった端末を手に取ると、それに差し込んで手早く操作する。

ザッと表示された内容…キヴォトスにおいて当たり障りのない範囲――エアと先生による検閲済――で、あの人に関する情報に目を通して貰った。

因みに検閲の結果、唯の仕事仲介人みたいな扱いになってしまったのはちょっと不満だ。

あの人はもっと凄いのに。

 

【ええ、わかっています。レイヴン】

『エンブレムの持ち主に関してだけでなく、何でも良いので関する情報があればそれで構いません。期限に関してもキヴォトスにおける常識的な範囲とさせて貰えればと』

「ええ、承知しました。ミレニアム最高の天才清楚系病弱美少女ハッカーである私にお任せください」

【…病弱そうなのはわかりますが、他の修飾語は自称するものなのでしょうか…?】

 

私の不満を受け入れてくれつつ、エアが報酬の話をヒマリさんへと伝えてくれる。

それをすぐに快諾してくれたヒマリさんだったが、エアとしては彼女の自称内容が気になったのか私の頭の中で不思議そうにしていた。

私としては依頼主がハッカーだった事に驚いている。

セイソケイと言うのはよくわからないが、美少女であるのは見て分かる通りである。

病弱らしいが、ルビコンの頃の私に比べたら健康的らしいし…何か見えない病気か何かでも持っているのだろうか。

手や腕もしっかり動かせているし、(強化人間)調整用の機器類も見た感じでは付けてないのに。

 

 

 

補足としてシャーレの先生がそのエンブレムのカードを持っている事と、先生自身はエンブレムに関する情報は持っていない事をヒマリさんに伝え、私達はこの後ミレニアムに来ると言う先生を迎えに行く事にした。

 

 

 

◆◇◆◇◆

-ヒマリサイド-

 

レイヴンさん達を見送って暫くすると、別室で待機して貰っていたエイミが部屋に入ってきます。

大きな溜め息を吐いて疲れた様な表情を浮かべた様子を見ますと、結果は芳しくないようですね。

外部の傭兵を雇うという事で、あの人達の素性や住い等を調べて貰っていたのですがどうにも上手くいかなかったようです。

 

「部長の作ったアプリでも調べたけど、驚く位の白さ。全部空振りだったよ」

 

肩を竦めて言うエイミですが、彼女自身の情報解析力は私も頼りにしています。

万が一を考えて私も手ずからのアプリを渡しておきましたが、まさか手応えなしとは思いませんでした。

僅かに目を見開いて見ていると、彼女は状況を改めて説明してくれます。

 

「リアルタイムで対処されないよう、呼び出してる間に何とか調べてみた訳だけど…住所に至っては、シャーレ経由で提供されてるセーフハウスの座標情報が文字を組み合わせた暗号になってた。それを解読したら――『You're looking for is in front of you.(貴女達の探し人は目の前に。)』だって」

 

普段表情の薄い彼女が、やや疲れた様子で溜息を吐きながら告げる。

苦労して得られた情報が「会っているのだからそれで満足しろ」と言わんばかりの内容では徒労に感じるのも無理はないでしょう。

…いえ、待って下さい。言葉の意味をよく考えれば、何時(・・)誰が(・・)調べても良いようなワードではありません。

これはまさに()、対面している何者か――私達(・・)に向けたメッセージという事でしょうか。

私の考えと同じ意見になったのか、近くに来たエイミが眉を顰めて彼女の端末画面を見せてきます。

 

「しかもシャーレ経由以外の座標情報に残されてた別パターンの暗号文。これも解読すると…『So,Who are You?SPTF(で、貴女達(特異現象捜査部)は誰?)』になってる」

 

その言葉を見て私は確信し、同時に背中がゾクリと感じました。

会合中の短時間とは言え、ミレニアム史上で三人しかいない学位である全知を持つ私の開発したものを使っても突破できないセキュリティを構築する手腕。

近辺調査を行っているのが、一般には公開されていない私達の所属する部活である事まで調べ済みである先見力。

そしてとある逸話を元にしたと思われる(外の世界の偉い方と農家の話)、都市伝説やミームを感じさせるワード選びをするセンス。

ええ、私…興味が俄然湧いてきました。

 

「…ヒマリ部長、悪い顔してる」

「あら。澄み切った純正のミネラルウォーターのような思考の最中である、万年雪の結晶とも評せる私の思案顔がそのような訳がないでしょう?」

 

ふふ。レイヴンさんと、そのオペレーターさん。…また会うのがとても楽しみですね。

 




エア【何故か目を付けられた気がします】



いつも閲覧やしおり、お気に入りを頂き続けておりまして、誠に、誠にありがとうございますっ!
そして長らく更新が滞っておりまして本当に申し訳ございませんでした…!!
Ex.デカグラマトンが一気に来た関係やら構想見直しやら諸々とありまして…続きは後日改めて更新致します。

御名前記載などに関しても、後日あらためて更新いたしますので、今しばらくお待ちいただければ幸いです…(土下座


<3/2追記>
遅れまして申し訳ありません(深々)
改めて今回も少しずつ、御名前記載をさせて頂きます。
一部時間順ではない場合もありますが御了承の程、お願いします。
(閲覧、しおり、ここすきは御名前が表示されず、感想は今の所個別で返信するため割愛とさせて頂いてますが、いつも感謝しております!)


にゃっく13号様。
好評価を頂きまして、ありがとうございます!
少しでも御眼に叶いましたなら、とても嬉しいです!


☁️様。
35話、40話の誤字報告頂きまして、ありがとうございます!
御礼が遅くなりまして申し訳ありません…!


グリモワール・ストリウス様、rusalka様、カムカム将軍様、066y様、高桑様、
小鳥遊絢様、あさふじ様、himajin409様、化け猫のドレッド様、湯たんぽぉ様。
御気に入り登録をして頂いておりまして、本当にありがとうございます!
全知全能に近しい仮面ライダーの方にまで見て頂けるなんて!光栄ですっ
水の女精霊の方でしょうか?水に引き込まれたら泳がなきゃ…犬かきで。
破天荒だったりⅢだったりする将軍様でしょうか…余の顔を(略)
このIDは、シマノ…?寒い時期に釣りをするなら欲しい品々ですね
温泉旅館、いいですよね(違ったらごめんなさい)。筆者は旅行の際に重視するのは温泉に入れる事だったりします
体毛がすごい事になりすぎて化け猫に…?!621ちゃんくんさんにも気を付けるように…言ってもだめそうなので先生とエアに伝えておきますね
今年入ってから寒さに大活躍でしたね。電気代の節約にもなってお財布にも優しい

ここすき、も更に頂いておりまして、大変ありがとうございます!!
励みになりますし、参考にもさせて頂きますっ



オマケの話:
Ex.デカグラは楽しかったですね…一部ボスがシステムに対応してなくてンンッとなりもしましたが、筆者は割と楽しめました。
バレンタインではまだまだ育成できてない生徒の話を見れたり、新たな一面を見えて尊氏してました。\KAWAII!/
セトもやっとクリアできて、臨戦アリス様様だなぁ…って思ってたら、テラーが4倍近くの火力を出しててビビりました。筆者のアリスは育成途中とはいえ、ヤバい。…シロコ様、腹筋ローラーいります?
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