いずれラスボスになる悪役貴族ですが、聖人縛りで生きることになりました   作:ねくしあ

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魔術を一つ使うシーン増やしました
聖女の髪色は金髪ではなくブロンドになりました


第6話:秘密の

「はっ……はっ……」

 

 剣を振り下ろし、横に薙ぎ、仮想の敵を翻弄し首を刎ねる。

 

「ふぅ……こんなものか」

 

 午前4時。

 公爵家の中庭で、剣術の型を黙々と練習する男がいた。

 

 そう、俺である。

 

 昨日はクラインに引きづられて練習させられたので、夕食を食ったら眠るように死んでいた。その分早く目が覚めたのだ。そういうわけで、せっかくだからと覚えたてほやほやの型を練習している。

 

「にしても、空が明るいなぁ……」

 

 時期的には春。午前4時なら夜明けが近いくらいだろう。ゲームでもそんな感じだった。

 しかし、見上げた空には既に日が昇っており、夜の暗さなど追い払われてしまったかのようになっている。

 

「おかしいなぁ……ゲームはきっちり時間で昼夜が変わってたんだけど」

 

 こんな時間はまだまだ暗かったはず。

 これも俺が転生した事による影響なのか? いやいや、展開が変わるならまだしも天候が変わるのはおかしいのでは……

 

「ま、考えても無駄か」

 

 今はただ、自分が強くなることを考えていればいい。

 時系列的に、今はまだゲームが始まる前なのだ。何も心配することはない。

 

「ならば、妾が稽古でもつけてやろうかの?」

「おっと、それは栄誉な話ですね、ルコ」

 

 いきなり話しかけてきたのは、久しぶりに人の姿になったホルコスだ。内心割とビビったが、聖人パワーで冷静に対応することが出来た。なんで驚いてないんだ身体。

 

 一方、ルコは相変わらずのJKスタイル。現代に持っていっても通用しそうな可愛さだと思う。なでくり回したいが、この身体はそれを許さない。

 

「妾が師となるなど滅多にないこと。喜ぶといい」

「とても嬉しいですよ。しかし、なぜいきなりそんなことを?」

「かかっ、お主、その年齢であれほどの魔術を覚えていたりあの速度で剣術を覚えたりと興味深いことばかりじゃろうて。妾も長生きしておるが、ここまで才覚に溢れた若者は見たことがない」

 

 魔術? ゲームの知識ですが何か。

 剣術? ノアの身体が何でも覚えれちゃうからですが何か。

 

 暴れるためにはちょうどいいスペックだ。女神の呪いさえなければ。

 

「なるほど。では、朝食を食べたらお願いします」

「もちろんじゃ。しかし……お主、その口調どうにかならぬのか? 念話の時と全然違うが」

「……海よりも深い事情があるので、お気になさらず」

「そ、そうか……」

 

 なんとかルコを引き下がらせ、1時間後。

 

 俺は屋敷を出てニレイスの森の近くまで来ていた。向こう側には鬱蒼とした森が延々と続いていて、不気味なようにも神秘的なようにも思える。

 

「ここならルコの姿も見られないはず。人になってください」

 

 すると、左手の指輪が形を変え、眼の前に移動して人の姿になった。

 

「それで、どのような稽古をつけてくれるんでしょう」

「ふっふっふ。それは――実戦じゃ」

 

 瞬間、俺の身体は宙に浮いていた。

 

 右手が強い力で引っ張られるのを感じる。視界は流れるように動いていて碌に見えない。

 

 なんだこれっ、めっちゃ息が苦しい——!

 

「!?!?」

「はー! この快感は久方ぶりじゃー!」

 

 どうやらルコのせいだったようだ。

 風に負けじと前を向くと、ルコは白い翼をはためかせて森の中を縦横無尽に駆け巡っているのが分かった。

 

「あぶっ……あばばばば……」

 

 しかし高速で顔面に吹き付ける風が息を阻害し、どうしようもない苦しさにもがく。だが右手を握る力はその華奢な身体からは想像できないほど強く、されるがままになってしまっていた。

 

 少しして速度が落ち、地面に降り立つ。

 

「かかっ、腰が抜けて立てなくなったか? まだまだじゃの」

「はぁ……はぁ……普通、人間は空中を連れ回された後に元気に動けないんですよ……!?」

「お主なら出来るじゃろ。なにせ神剣を持って平然としておったのじゃから。『普通』は力の奔流に耐えきれず消し飛んでおる」

 

 普通という言葉を使って意趣返しされてしまった。

 うん、確かにノアは普通じゃねぇや。さすがは魔帝ノア。意味分かんねぇスペックしてくれてやがる。

 

 ……うわマジで立てるじゃん。さっきの膝の震えはなんだったんだ。思い込み?

 

「さて、改めてどうするんですか?」

 

 息を整えつつ、ルコに疑問の言葉を投げかける。

 

「二つ選択肢をくれてやる。妾と戦うか、魔物と戦うか」

「……ちょっと何を仰ってるか分かんないですね」

 

 聖人がこんだけ言うんだぜ? 相当意味不明だろ。特に前者。 

 てっきり仲良く魔物討伐をすると思ってたんだが……

 

「審正龍として、しっかりと選択肢を提示しておるではないか。無理やり選ばせない分優しく寛大であろう?」

 

 何言ってんだこの駄龍。

 公正公平に万象を審判する役目を持つ龍がこんなんで良いわけないと俺は思うね。ガチで。

 

 いや……えぇ……世界最強の龍と戦うか、魔物と戦うか?

 

 ははは、そんなの魔物一択――

 

「ルコ。ぜひあなたと戦いたい」

「かかっ、そうこなくてはな!」

 

 ぬわああああああ!!! なんでそうなるんだよ!? こんなところで聖人ぶらなくていいって!

 確かにルコ喜んでるよ!? 正しい振る舞いかもよ!?

 でもそれとこれは違うじゃあああん!

 

「公平にするため、剣は互いに木剣としよう。ちょうどここに二本あるからの」

 

 そう言ってルコは木剣を虚空から取り出した。

 あれはインベントリみたいな感じの能力。なんで使えるのかは分からないが、便利なので神剣もそこに入れてある。

 

 閑話休題。

 ひょいと飛んできた剣を空中でキャッチして、ヴィズル流の構えを取る。

 

「言い忘れたおったが、別に剣じゃなくてもよいぞ? 魔術は制限なしじゃからの。では——始めじゃ」

 

 大事な事を言った直後、ルコの姿が掻き消える。クラインと同じ動きだが、速さは彼以上のように思えた。

 

 それに対して俺は——

 

「〈疾風化身(ウィンドシフト)〉」

 

 高速移動を可能にする魔術を使って逃げることを選択した。

 といっても敵前逃亡ではない。いわゆるヒットアンドアウェイ。

 

 まともに打ち合ったら膂力の差で即敗北するのは目に見えているからな。機動力と手数で封殺する方が効果がありそうだ。

 

「……さて、どこまで逃げようか」

 

 ルコの放つ魔力で居場所はだいたい分かるからわざわざ探す必要はない。

 適当に動き、防御の態勢を整えられる前に攻撃してしまおう。

 

「ここでいいかな。それじゃ、一発行くとしよう——〈雷剣一擲(フォールンボルト)〉!」

 

 いい感じに高い木を見つけ、その太い枝にかがんで魔術を詠唱する。見晴らしもよく、しっかりと攻撃を当てられそうだ。

 

 ありったけの魔力を込めると、手元に数本の雷が現れた。次第にそれは大きさを増し、バチバチとけたたましく電気を弾けさせる。

 

「ハッ——!」

 

 そして、その稲妻を魔力の元へと思い切り投げた。

 

 刹那——雷鳴が森を、空気を揺らした。

 

「どうせ防がれてるだろうけど……」

 

 改めて魔力を確認すると、既に場所は動いているようだった。

 それを捕捉し直し、その地点まで移動する。

 

 枝を飛び渡って少し。魔力の発せられている位置まで到着したが、そこには誰もいなかった。

 

 だが、俺には分かる。

 

「ふっふっふ、ちょっぴり(おど)かしてしまいましょうか」

 

 姿を隠してはいるが、魔力はダダ漏れ。場所を変えたからって俺が気づかないと思うなよ?

 

「〈風刃繚乱〉」

 

 ゆっくりと歩み寄りながら、魔術によって風の刃を周囲に撒き散らす。

 

 ヒュン、という風切り音がいくつも鳴り響き、木々に斬撃の跡が刻まれ、枝が折れ、落ちた葉が空中で細切れになる。

 

 その姿は、さながら風の魔神と言うべきか。

 

 うむ、絶対にかっこいい。俺が女なら惚れちゃうね。

 

「姿を隠すとは不粋。そう思いませんか?」

 

 刃を一つ掠めさせて、警告と言わんばかりにかっこよく告げる。

 

 ここで姿が現れた瞬間に、魔術をいくつも起動して封殺……という腹積もりだ。

 

 ――数秒後、透明な場所がぐにゃりと歪み、人の姿が5つ現れた。

 淡いブロンドの髪が美しい清楚な少女を中心に、黒尽くめの剣士の男4人が囲んでいる。

 

 ……はぁ???

 

「私たちは名もなき商人。魔物が出没する森のため、姿を隠させていただいておりました。ご無礼を深くお詫びさせて頂きたく思います」

 

 少女はそう言って頭を下げた。

 下ろした髪が、重力に従い肩から落ちる。

 

 それに合わせ、回りの男も頭を下げた。

 

「商人……ですか」

「えぇ。商人です」

 

 穏やかな笑みを浮かべ、少女が優しく答えた。

 

 ……先に言っておこう。

 こいつゲームに出てくる。しかも重要人物。 

 

 てっきりこの時期には国に閉じ込められてるもんだと思ってたんだけどな。少なくともゲームじゃそうなってたはずだし……正直めっちゃ驚いてる。なんなら二度見しかけたよ。

 

 でも、この黄金の瞳と美しい金髪、端正な顔立ち、溢れ出る清楚なオーラ——この全てを持ち合わせるような存在はあいにく一人しか知らないんだな。

 そりゃあ不自然なほどに屈強な護衛もついてるだろうよ。

 

 まぁいい、領主の子息として問いたださせてもらおうか。

 

「なぜ隣国の領地に貴女がいらっしゃるのか、詳しくお聞きしてもよろしいでしょうか——聖女様?」

 

 さぁ、どう来るよ。

文章にについてめっちゃ意見聞きたいのでマジお願いします

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