ユイをインストールしたMAGIがイロウルを倒してからしばらくして、シンジは冬月から北米の第2支部が吹っ飛んだこと、松代で3号機の実験が行われることを聞いた。いよいよ面倒なのが来たかと覚悟を決めた。誰かを傷付けるときが来たと。
「でパイロットは?トウジですか?アスカですか?」
「それがだな⋯⋯」
「まさか、僕ですか?」
「⋯⋯君の情報が、大きくズレ始めたようだ」
書類を受け取ると、そこにあったのは「真希波・マリ・イラストリアス」と言う名前。この名前にシンジは頭を抱えた。誰だコイツと思ったからだ。名前からして辛うじて女であることは分かったが、顔写真は黒塗りでそれ以上のことは分からない。
「この人物に覚えは?」
「いや全く」
会えれば共有したユイの記憶と照らし合わせる事ができるのだが、そう上手くは行かないだろう。都合よく会えるとは思えない。そもそも3号機が届くのは1週間後。パイロットも同時に届くことを考えれば、今の段階で計画を調整するのは難しいだろう。
「ちわ〜ッス!第2支部から異動してきました真希波で〜す!」
「「ッ!?」」
初号機のケイジに元気な声が響いた。まさかの書類の本人が現れた。その顔を見ても、誰だコイツ以外の感想が出てこない。ユイの記憶を思い返しても、中々合致する人物が見当たらないのだ。
「あ!君がNERVのワンコ君?よろしくにゃ〜」
「えっと、真希波⋯⋯さん?」
「マリでいいよ〜!同い年でしょ?」
グイッと近付き、シンジの顔を覗き込む真希波。顔を近くで見たことで、1人だけ思い当たる人物が出てきた。
「ちょっと失礼」
「およ?⋯⋯グエッ!?」
メガネを取り、顔を無理矢理冬月の方へと向ける。
「この顔に見覚えは?」
「⋯⋯?⋯⋯⋯⋯ッ!?⋯なんと言うことだ⋯⋯名前で気付くべきだったな」
「え?⋯⋯え?まさか、あれ?色々とバレてる?」
話合いという名目で、冬月の部屋へと連れて行かれる。鍵を閉めて椅子に真希波を座らせ、その前に2人が並ぶ。
「さて。色々と聞かせてもらおうか?詳しく」
「か、顔が怖いよ?冬月先生」
「冗談が通じる空気だと思うのか」
冬月が凄むと、洗いざらい吐き出してくれた。まず自分自身の正体。彼女は冬月が知る通りの人物だった。かつて、碇ユイやゲンドウとと共に自身のゼミに通っていた生徒の1人。
何故子供の姿なのか。早い話がエヴァの実験と、現在の身体はオリジナルの自分から作ったクローンであるため。エヴァの実験と言っても、正確にはエヴァの前身に当たる計画の実験によるものだが、彼女はエヴァの呪縛とか言っていた。
何故3号機と共に日本に来たのか。それは全くの偶然。元々はエヴァのパイロットとして楽しくやっていければそれで良かったのだが、巡り巡ってここに来てしまったとのことだ。特に他意はないそうだ。ただ、ユイの忘れ形見であるシンジとはそれなりに仲良くなりたかったとか。
「すまないがタイムだ。少し待っていろ」
「冬月先生ちょっと見ない間にコミカルになった?」
そんな事をいう真希波を無視して、彼女の処遇をシンジと話し合った。
「どうする?アメリカに送り返すか?」
「戦力増えるのはありがたいですけど、3号機消し飛びますもんね」
「やはり3号機は消し飛ばす方向か」
「嫌じゃないですか?使徒に寄生されたの使い続けるとか」
「確かにな。では諸々が片付いたら彼女には丁重に帰ってもらうようにしよう」
「えぇ。最悪殴ってでも言うことを聞かせましょう」
「ちょっと!私抜きで私の処遇について話し合うの止めてもらえる?!スッゴい不穏な言葉も聞こえたんだけど!?」
「正直、これ以上ボケキャラを増やされると困るんだ。だから帰ってもらえると助かる」
「私のこと勝手にボケキャラにしないでもらえる?!私こう見えてもツッコミだよ!」
その言葉に、シンジの表情が明るくなった。だがすぐに冬月が軌道修正する。不確定要素を入れると計画が御破算になりかねないと忠告した。
「そうでした⋯⋯戦力として是非欲しかったですが、仕方ないですよね」
「にゃぁぁ!待って!私色々できる!エヴァ乗る以外にもできることあるから!」
「⋯⋯例えば?」
「えっと⋯料理とか?」
「他には?」
「⋯⋯家事もできます。掃除とか洗濯」
「学生として学校に行くつもりは?」
「あります」
「採用!」
こうして、ツッコミとまともな同居人が欲しかったシンジは真希波を採用することにした。
「ところで、ワンコ君色々と知ってるぽかったし、冬月先生とも仲良さそうだよね?どう言うこと?」
その言葉を聞いた冬月は、いっそ真希波も抱き込んでしまおうとシンジに提案。確実にこの女なら自分たちの側に着いてくれると確信しているのだろう。シンジもそれを了承し、真希波に事の経緯とこれから起こることを話すことに。万が一敵に回れば、取り敢えず頭をどついて記憶を飛ばせばいいと判断した。
「異世界帰りのワンコ君に巨人に変身する子と戦うワンコ君?なにそれ超見たい」
「そこなんだ⋯⋯」
「むしろそこでしょ?超気になるんだけど。まぁ、それは置いといて、ユイさんブチギレじゃ〜ん。と言うか私することある?」
「あるよ。ゼーレの量産機のときや単純に強いゼルエルとか」
「でも3号機ブッ壊す予定でしょ?」
「君が構わないと言うのなら、除染作業後に我々の管理下に置き君が乗れるように取り計らおう」
「マジで?!やったぜ!」
大まかな修正は済んだ。次に彼女の住む場所についての話となったのだが⋯⋯
「是非うちに!」
「ワンコ君大た〜ん。そんなに私と一緒に暮らしたいのかにゃ?」
「家事と炊事を折半できる人なら歓迎だよ」
「目、ヤバイよ?」
一緒に住んでいるの保護者の片割れが全く料理や家事のできない人物であると冬月から説明された。一応文字通り身体に叩き込ませているのだが、中々まともになってくれない。加持は加持で、最近友人に会いに行っているとかで、シンジを手伝えないでいる。結果、シンジが家事全般を請け負わなければ、一瞬にしてあの部屋は腐海と化す。だから、今、早急に必要なのだ。ちゃんと生活できる人が。
「じゃ、話もまとまったってことで、生活に必要な物の買い出しでも行きますか!」
「グェッ!⋯ちょ!引っ張らないで!」
シンジを引っ張りながら副司令室から出ていき、買い物へと向かう。その途中、訓練を終えたアスカが三尉と綾波に抱きついている場面に出くわした。面倒な状況に遭遇しちゃったな〜とシンジは思った。
「あれなに?」
「あぁ〜⋯⋯僕がエヴァに乗るたびに、マダオをブチのめすのを報酬の1つに貰ってるって言ったら、ああなった」
「へぇ〜。私も何かお願いしちゃおっかにゃ?」
「つまみ出すぞ」
「えぇ〜?なんか私に当たり強くない?」
「気のせいですよ」
確実に自分に対して何か要求すると言う顔をしていた為、すぐに大人しくさせた。家に帰ってからは、早速ミサトと加持の2人に真希波を紹介。何故とミサトに言われたが、家事を覚えればこんなことにはならなかったと言われ、ぐうの音も出なかった。
真希波、最初はオリジナルのクローンにして、そこにオリジナルの意識と記憶を移植して現在の真希波・マリ・イラストリアスにしようかと思ったんですけど、それだけだと普通に気持ち悪かったんで、この形としました。