「じゃあ行ってきます」
「行ってらっしゃ~い……よしっ!」
葛城ミサトはこの日、有給をもぎ取った。間を置かずに現れた2体の使徒。シンジのお陰で被害らしい被害は出ていなかったが、それでも事後処理と言うものは残っている。その為、普通は休めないのだが、ミサトにはどうしてもやらなければならない事があるため、無理矢理有給を取得してきた。そのやるべき事とは……
「シンちゃんの1日、観察します!」
部屋の真ん中で1人で気合いを入れている可哀想な大人がいるが、ミサトがやることはシンジのストーキング。本来ならこの辺は諜報部と保安部が共同で行っているが、ミサトは自分の目でシンジの1日を見たかった。そうすれば、作戦を立てるのに何かしら役立つと思ったからだ。
この前の作戦はなかった本当に酷いを通り越してお粗末すぎる物だった。戦闘中のシンジにも怒鳴られる始末。自身の肩書き返上した方が良いだろなんて言われるレベルだった。二度とそうならないために、シンジを観察して作戦に生かそうと言う魂胆だ。
(しっかし、こんな時間に町をこうやって歩くのも新鮮ね~有給溜まってるし、また申請しちゃおうかしら)
そんなことを考えながら歩いていると、シンジの居る方角から「折れたわ~。これ治療費だわ~」「さっさと金を出せ」「100万で勘弁してやるよ」と言うベターなカツアゲの声が聞こえてきた。ヤバッ!と思い顔を出して覗く。するとそこには、カツアゲしてきた連中をボロ雑巾に変えて、リーダー格の首を掴んで持ち上げているシンジの姿が。心なしか頭の横に「!?」の文字が浮かんでいる。
(えぇ~?!あの一瞬で何が……相手どう見ても高校生よ?5人組よ?なんで数秒で鎮圧してるのよ!)
「た、頼む!もう勘弁してくれ!死んじまうよ!!」
(相手が命乞いしてる!?)
その後シンジは、カツアゲ集団を捨てて通学を再開。途中でトウジとケンスケの2人と会う。
(あの子たち……スゴい問題起こしてくれたけど、シンちゃんと仲良くしてくれてるのね。ありがとう。友達になってくれて……!)
「おはようございますシンジさん!!お荷物お持ちます!」
「いや良いよ。大した物入ってないし」
「そんな~。ワシらシンジさんにえらい恩あるんですよ?少しくらい手伝わせください!」
「そうだぞ。もうあんなバカな事はしないから……」
(友達じゃなくて舎弟だった?!相田くんに関しては何があった?)
そんなことがありながらようやく学校に到着。下駄箱を開けると沢山の手紙が落ちてきた。この日は5通ほど出てきた。
(ラブレターかしら?今も昔も、このやり方は変わらないのね~。良いの見たわ~。なんか縦に長いの気になるけど)
「今日は5通か。最近多いな」
「また果たし状ですかい?」
「碇がこの辺の不良をシメて回るようになってから、なんか結構な頻度で送られてくるようになったな」
この様子を遠くから見ていたミサトは膝から崩れ落ちた。私のときめきを返してと言いながら。
そうこうしていると授業に突入。1限目は国語。漢字の小テストがあったようだ。
(あれ?あの漢字ってどう書くんだっけ?パソコンばっかり使ってるとダメね~。すぐ忘れちゃうわ)
あるあるだ。続く2限目は数学。久し振りに見た数式にミサトは頭痛を覚えた。もし家でシンジに数学の宿題について聞かれたら、確実に詰む。数学が得意そうな、もっと言うと教えるのが上手そうな誰かに聞こうか本気で迷った。
3限目は体育。女子は水泳で男子は野球をやるようだ。教室では男子生徒が着替えている。
(あれ?シンちゃん教室の端で着替えてるわね。意外と年相応に見られたら恥ずかしいとかあるのかしら?あ、クラスメイトが引っ張り出してきた)
「ちょっと体操着返してよ」
(スッゲ。めっちゃバキバキじゃん。首から下別人かよ。シンちゃん良い身体してるじゃない)
※ペンギンを見ても驚かなかった為、ミサトは初めてシンジの身体を見た。
(バットもって待ってる姿、様になってるわ~。悪い意味で)
一昔前のヤンキーが相手を威嚇するときと何らかわりない姿だ。ヘルメットのお陰で野球をやっていると分かるが、無かったらメンチ切ってるようにしか見えない。
「行ったれシンジさん!かっ飛ばせ!!」
「行け碇!ホームラン目指せ!」
2人の応援が聞こえてくる。シンジのチームのテンションは最高潮だ。だが、ピッチャーの投げたボール運悪くシンジの肘に。デッドボールだ。
「おいなに考えとんのじゃワレェ!!」
「碇にボール当てるとは良い度胸だな!!」
「止めろ。僕らがやってるのは喧嘩じゃなくて野球だ。ほらノーアウト1塁だ。ゲームを続けよう」
(なにその野球と出会って更生した不良みたいなセリフは?!)
結局、雨が降ってきたので外での体育は中止。全員体育館へ移動してバスケットボールをやることになった。ばんばんダンクを決めている。
(もう私、シンちゃんが分からない……)
4限目は社会。セカンドインパクト以前の歴史の学習をしている。特になにもなく終わり昼休みに。不思議とシンジの周りにトウジとケンスケが寄ってくる。パイルドライバーきめられたり殴り飛ばされたりしたのに不思議なもんだ。
5限目、6限目も特に問題なく進む。ペアを作ったりグループを作れとなればトウジとケンスケがすぐに寄ってくる上に、バイオレンスではあるものの悪い性格をしてあるわけではない。クラスでの孤立はないようだ。
そして迎えた放課後。シンジは1人で校舎裏へ歩いていく。果たし状の相手をするようだ。そこには、シンジのいる学校とは別の制服を着たのが立っていた。
(他校?!え?シンちゃん、他校の生徒から喧嘩売られてるの?どんな噂が出回ってるのよ!)
相手は正々堂々タイマンで勝負しようとか言っているが、シンジの背後には角材持った手下らしき者が待機している。合図を出したのか、足音を出さないようにシンジに近づき角材を振りかぶる。
「うん。僕もタイマンは好きなんだ。だから1対1で大人しく勝負しようか」
ノールックで、後ろから来たのをぶっ飛ばした。相手は一瞬怯んだが、雄叫びを上げながらシンジに殴り掛かる。が、当然ボコボコにされて身ぐるみ剥がされていた。
(追い剥ぎかよ!なんで制服だけ丁寧に畳んでるのよ!!絵面がスゴくシュールなんだけど!?)
遅れてやってきたトウジとケンスケ。「なんで自分らを呼んでくれないんですか~」と嘆くトウジに、「大した相手じゃないから」と返して帰路に。途中で買い食いをしたりする中学生らしい行動を見ながら、有給を使ってまで行った尾行は終了。
「あらミサト。仕事ホッポリ出しての有給はどうだった?」
「もう1日申請したいくらい疲れた……」
「なんでよ?」
「もう、二度とシンちゃんの尾行なんてしない……」
「そう……作戦に生かせそうだった?」
「……取り敢えず、エヴァ用のメリケンサックと刀でも作っておいて」
「メリケンサック……?」
何故そんな超近接武器をと思ったが、ツッコミをしたら絶対に面倒な事になると察したため、深くは聞かなかった。と言うより聞けなかった。
さて、次はどうするか……
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