『ひゃ〜、急な崖です……。』
次なる目的地へ向かうため、クレアルは山を登っていました。膨大なエネルギーを持つクレアルは人間離れした身体能力を持っているため、この程度の山なら問題はないのです。
そうして山を登っているとき、クレアルは大きなエネルギーを感じました。クレアルは長い時を生きた結果、他者の生命力のエネルギーを感じ取れるようになっていました。そのエネルギーが気になったクレアルは、この山にドラゴンが住んでいるという噂を思い出します。確かにエネルギー量が人とは比べるべくもないレベルですが、クレアルと比べればちっぽけなエネルギーでした。おそらく、中級竜だろうとクレアルは考えます。
『……そういえば、グルマンディーズ以外の竜ってマジマジ見た覚えがありませんね。見に行ってみましょう♪』
クレアルは予定していた道を逸れ、エネルギーの感じる方向へ向かいます。その先にいたのは、一体の赤竜でした。驚くべきは、本来は下級竜レベルの種族であったことです。クレアルが感じたエネルギー量は中級竜レベルだったので、かなりの研鑽を積んだ個体なのでしょう。
ジッと見ていると、その竜は卵を抱えているのがわかりました。竜の親だったのかと興味を失いかけた時、クレアルは気づきました。その竜は、卵に対して何か大規模な魔術を使おうとしていたのです。その魔術をよく見た結果、クレアルは驚きました。それは魂を移すという魔術だったのです。緻密な魔術陣は、長い時を生きたクレアルでなければこんな短時間で読み解けなかったでしょう。
……クレアルは考えます。卵に宿る魂は、本来とても微弱です。そこにあの竜のような、強いエネルギーを持つ魂が入り込めば?卵に宿る魂は存在自体が消滅するでしょう。
クレアルは再び竜を見ます。その瞳には、確かな知性が見えました。
『……本来下級竜レベルの種族なのが信じられないですねぇ。』
クレアルは察しました。あの竜はかなりの研鑽を積んだ個体。速い話、年寄りなのです。それが、卵に魂を移すという高度な魔術を使おうとしています。つまりは……雛の身体を乗っ取って若返ろうとしているのでしょう。
『……会話が成立しそうですし、行きますか〜。』
クレアルは茂みから姿を現します。それを見た竜は警戒した様子でこちらを見ますが、気にせずクレアルは微笑み問いかけました。
『永遠を生きたいのですか?』
竜は少し警戒していましたが、クレアルが動く様子がないのを見ると答えました。
『当然そうだ___ッ!?』
クレアルは竜が答えきる前にその首を一太刀で跳ね飛ばしました。
もはや物言わぬ竜に微笑みかけ、クレアルは言います。
『大丈夫ですよ~、卵に魂移し替えるなんて非効率的な事をするより、私と1つになったほうが速いですし…私の一部となれば永遠を生きれます♡』
クレアルは、竜を食べ始めました。過去に村の人間全員を食べた時点でわかるかもしれませんが、クレアルに満腹という概念はありません。ものを食べた側から消化されエネルギーとなるのです。クレアルは鱗、牙、骨に至るまで全てを平らげると、一息つきました。
そして、残された卵に目をやります。
『この子も可哀想ですね。親から生を望まれず産まれるなんて。…ふふ、大丈夫ですよ。私と永遠を共に生きましょうね!』
そんな事を卵に呼びかけ、近づいた時。突如として卵にヒビが入り始めました。
『えっ___……。』
パキリ、パキリ。突然のことに固まるクレアルを置き去りに、その雛は産まれました。
『……まま!』