『……えー?』
突然孵った竜の雛からままと呼ばれたクレアルは、思わず固まってしまいます。しかしすぐに正気に戻り雛に手を伸ばしました。雛は無邪気にもクレアルに駆け寄ってきて……
『……うそ。』
喰らうためにと、雛に触れた瞬間。その雛のエネルギーを感じ取り、クレアルは固まりました。
雛のエネルギーは、不変。永遠に変化しないもの。そこには成長も退化もない。…クレアルと同じ、永遠を生きれる存在でした。
『まま、まま!』
雛はクレアルを母と思い込み、その手にじゃれつきます。
永遠に成長しない、幼いままの、無邪気なままの、死ぬことのない竜の雛。何故、永遠を望んだ竜の雛がそのような存在になったのかはわかりません。多少の仮説は建てられますが……結局は予想でしかありません。
クレアルは雛を見下ろします。…この雛は、喰らっても意味がないでしょう。クレアルがかつてそうであったように。その身を引き裂かれようと、蘇る事でしょう。
『……ねぇ。貴方は、どうしたいんですか?』
『……?ままといっしょ!』
…クレアルは本当の親じゃないだとか。本当の親は雛を犠牲にしようとしてたとか。色々と言いたいことはありましたがクレアルは飲み込みました。この雛は、自分と同じ永遠の存在なのです。そしてクレアルについてくる気満々。仮に拒絶したとしてもついてくるでしょうし、喰らうこともできません。
『……はぁ。わかりましたよ。一緒です。』
『わーい!ままー!』
雛を抱え上げ、クレアルは再び元来た道を歩きだします。幸い、この雛はこのサイズから成長しないから竜型のペットとして誤魔化せるでしょう。
そんなふうに取り留めない事を考えながら。クレアルは気づかないふりをしました。自分を置いていかない、永遠の存在と共にあれる喜びに。
結局その日は山で野宿する事になりました。竜の件で時間を使ってしまったのですから当然です。テントを張り、軽い食事(普通の人と同じ物)を済ませたクレアルは夜空を見上げます。雛はクレアルから分けられたご飯でお腹が膨れたらしく、仰向けに横になっています。
『綺麗です。』
クレアルが呟くと、雛は飛び起きて近づきました。
『まま、なにがー?なにがきれいなの?』
『……空ですよ。』
空を指差すと、雛は羽をパタパタと動かしました。
『まま!ぼく、とびたい!』
『……いや貴方、まだ産まれたばかりでしょう。』
『とべるもん!ん〜……やぁっ!』
果たして雛は、本当に空を舞いました。思わずクレアルは目を丸くします。小さな赤い竜の雛が夜空を舞う姿は、どこか幻想的で…。
『……
クレアルの呟きに、雛は振り返ります。
『ねえ!まま!それ、ぼくのなまえ!?』
『……え、えっと。』
『えーてる、えーてる…うれしい!』
無邪気に笑う竜の雛……エーテルに毒気を抜かれたクレアルは、1つため息をつきましたが、口元には微かに笑みが浮かんでいました。
この先、目指すのははじまりの町。ゲーム、あるけみすとの舞台。