グルマンディーズを喰らい尽くしたクレアルに、エーテルが駆け寄ります。
『まま、まますごい!びゅんってして、ざくーって!それに、あのこわいおばさんぜんぶたべちゃった!』
『ぷふっ……おばさんだったんですか?』
思わず吹き出したクレアルに、エーテルは笑顔でうん!と頷きました。それにクレアルは更に笑います。
『ふふ、ふふふ……!こほん。エーテル、今回は貴方のお陰で助かりました!』
『ほんと?まま、うれしい?』
『ええ、勿論!ですが、今回はなんとかなりましたがいつも上手くいくとは限りません。今度から隠れるよう言われたところから勝手に出ちゃ駄目ですよ?』
『うん、わかった!』
素直に頷いたエーテルはしかし、クレアルをじっと見つめます。
『ねぇまま、つのとかはねとか、ぼくとおんなじになったの?いっしょにそら、とべる?』
エーテルは、空を飛ぶことが好きです。なので大好きなクレアルと空を飛びたいと思ったのでしょう。クレアルは翼の感覚を確かめます。すると、簡単に身体が浮き上がりました。
『まま、とんでる!ぼくもとぶー!』
飛びながらじゃれついてきたエーテルを抱え、クレアルは考えます。エーテルを見た時、グルマンディーズは過剰に反応していました。そして、《不変の雛》とも呼びました。
『……帰ったら調べてみますか。それにしても……。』
クレアルは自身の身体に意識を向けます。これまでとは比べるべくもない膨大なエネルギーです。それこそ、やろうと思えばどんな事でもできるでしょう。そして、グルマンディーズを喰らい身体が変化したことで身体の内側も変化していました。何か喰らわずともエネルギーを勝手に生み出せるようになっていたのです。
『……まあ、エネルギーの使い道はまた今度にしましょうか!さ、エーテル。帰りますよ。』
『まま!そら!そらとんでかえりたい!』
『……仕方ないですね。まだ翼が生えたばかりなんですから、あまり高くは飛びませんよ?』
クレアルはエーテルと並び、空を飛んで町へと帰りました。
姿の変わったクレアルを町の者達は特に気にしません。突然姿が変わる事なんて、この町では珍しくないのです。クレアルは少しこの町は大丈夫なのか不安になりました。
夜、帰ってきたクレアルは文献を調べ始めました。エーテルはすやすやと眠っています。
『不変……不変……不変の、雛……ありました。これですね……。』
【不変の雛:竜の雛として極々稀に生まれるとされる
存在。
実際に確認された例は極めて少ない。
雛のまま成長する事は決してない。
そして何をされても死ぬことはない。
だが幼竜から成長しないため危険性は低い。
他の竜は不変の雛を見るとほぼ確実に襲いかかる。
竜からは竜と別の存在として捉えられているかと思
われる。
追記:確認されていた不変の雛の死亡を確認。
死亡原因は他の竜に喰らわれた事。
そして不変の雛を喰らった竜の存在が強化された。
魔術による捜査にて不変の雛の影響であると断定さ
れる。
魂を捕捉できる魔術で捜査したところ魂自体が特殊
だと判明。
そして喰らわれた不変の雛の魂は溶け喰らった竜の
一部となる事がわかった。
竜の存在強化はこれによるものだと思われる___。】
『……なるほど。竜に喰らわれると死ぬ……。そして喰らった竜の存在が強化される。だからグルマンディーズは……。まあ、いいでしょう。竜に喰らわれなければ、エーテルも永遠の存在なのですから。』
クレアルは窓の外を見ます。夜が明け始め、空は暁色に染まっていました。
『……ふふ。暁、永遠に一緒ですよ…。』
そうつぶやいたクレアルは狂気的な笑みを浮かべたのでした。