国王は部下に命令し、グルマンディーズの雛を攫わせようとしました。しかし、その計画は失敗に終わります。
そもそも、グルマンディーズの雛はまだ産まれていなかったのです。ならばと王は他の治療を次々と試します。それでも効果は現れません。
遂には王は禁術に手を出そうとしました。他者の命を奪い、クレアールに与えようとしたのです。それに寸前で気づいたクレアールは、王に告げました。
『お父様……私はもはや自身の死を受け入れています。私は、誰かを犠牲にしてまで生きたくありません……。どうかこのようなことはやめてください!もし、無理やりにその計画を進めるというのなら……私は自ら命を絶ちます!』
王にとって、クレアールは亡くした王妃の生き写しであり宝でした。その彼女が自ら命を絶つなど耐え難いことです。王は泣く泣く禁術に手を出す事を諦め、他の治療法を施しました。
しかし、どの治療も効果は現れず。クレアールはどんどん弱っていきました。王は諦めきれず、何度もクレアールに禁術を使うことを提案しました。しかし、クレアールは決して首を縦に振りませんでした。
『あぁ……クレアール……私の娘よ……どうか生きておくれ……。』
国王はなんとかクレアールを生かそうとします。しかし、クレアールは知っていました。クレアールを生かそうとするあまり、国庫の財産を大量に使っていることを。それにより、少しずつ民達の不満が挙がっていることを。
クレアールは、与えられた病の進行を止めるための薬を飲むフリをして捨てました。それを何度か繰り返し、この薬が効いていないと言って高価な薬を買うのをやめさせました。それによりクレアールの病状は進行します。しかし、クレアールは構いませんでした。国王に話がしたいとお願いし、自室に訪れてもらいました。
『お父様……私はきっと、もう少しで死ぬことでしょう。』
『クレアール……!そのような事を言わないでおくれ!きっと、その病も治してみせるから……!』
『いいえ、私にはわかります。……ねえ、お父様。幼い頃の私に、ずっと部屋にいるのは退屈だろうと沢山の本をプレゼントしてくださいましたよね。私、あれがとても嬉しかったのです。お父様が私を大切に思ってくれているんだって、そう思えたから。』
『当然だ!クレアールは私の娘……大切に思わない訳がないだろう……!?』
クレアールは、困ったような笑顔で国王に、父に笑いかけ言いました。
『お父様。私はお父様の娘として産まれてくることができて、嬉しゅうございました。お父様が民達のためにと真剣に政務に向かう姿を見た時、お父様はなんて素晴らしい王なのだろうと思いました。…ねえ、お父様。このところ、私につきっきりでしょう。私は、お父様に皆に嫌われるような王になってほしくありません。皆に慕われる、素晴らしい王として生きて欲しいのです。』
『……クレアール。私は、クレアールさえ居てくれれば……。』
『いいえお父様。私は助かりません。……お父様にとって、私が死ぬことは耐え難いのかもしれません。ですが……私はお父様が私のためにと国を、民を犠牲にするのを見たくはありません。……どうか。どうか……父ではなく、王として生きてください。』
クレアールはそう告げると、目を閉じました。そして、そのまま二度と開くことはありませんでした。
王は、顔を歪めて泣きました。しかし、クレアールの言葉を思い出します。クレアールの望みを叶えるには?王として、国のために生きるしかない。
その後、王は様々な政策を打ち立て国を更に繁栄させていきました。そして、後年は自身の弟の息子である甥に王位を継がせ国を存続させました。
それから長い時が経ちました。グルマンディーズ王国は、未だ栄えていました。かつて王が打ち立てた政策が実を結び、誰もが笑顔で過ごしてるのです。守護竜グルマンディーズとの関係も良好であり、その大陸の中でも大きな国として栄え続けました。
クレアールの死は、国を栄えさせるきっかけとなったのです。クレアールは王族の墓で、静かに眠り続けることでしょう。
遠い極東の地で、ある青年は剣士として村を守り続け、幸せに生きました。……どこかで、物足りなさを感じながら。
とある山の中、永遠を求めた竜は卵の中に魂を移しました。……卵の中に元々存在していた魂は消え去りました。
ですが、全ては関係ない事です。クレアールは、何も知らずに死んだのですから。永遠に生きることも、狂うこともなく。静かに眠り続けているのですから。