クレアルははじまりの町にたどり着いたあとも、各地を巡っていました。そんな折、要所要所にて争いが起きている事を知ります。
クレアルにとって重要なのは永遠を生きること。最初はそこまで気にしていませんでした。しかし、あるときクレアルは聞いてしまいました。
たまたま近くを訪れた平穏な村。そこで夜に火の手が上がっています。逃げ惑う人々はしかし、無残にも殺されるか連れ去られるかしていきました。
クレアルはその人々の叫びを村の近くにいたときに聞きました。
『いやだ!死にたくない!』
『やめて!殺さないで!』
『助けて!助けてよ!』
『まだ……生き……たいよ……!』
死にたくない、生きていたい。なら、きっと永遠の存在になりたいに違いない。そう思ってわざわざ村に近づいたクレアルはしかし、唖然とします。村に残された人々は皆、原形もないほどぐちゃぐちゃにされていたり、炭のように焼け焦げていたりしました。誰一人として、生きてはいませんでした。これでは永遠を共にできません。
クレアルはがっかりします。せっかく永遠を共にしてくれる人々だったのかもしれないのに、と。ですがクレアルにはまだ感じ取れる気配がありました。それは村から少し離れたところから感じれて、多数の人のようでした。クレアルはバレないようこっそり近づく事にします。
そこには拘束された多数の人々と、その目の前に立つ1人の鎧を身に纏った少女。そしてその少女に付き従うように立つ幾人もの兵達でした。
その少女は夜に溶けるような黒い髪に、緑にも紫にも見える不思議な瞳をしていました。少女の顔を村を焼く炎が照らすと、更に赤く変化した瞳はどこか神秘的です。美しくもあるその少女はしかし、嗜虐的な笑みを浮かべています。
『クク、そんなにも生きたいのか?』
『は、はいっ!生かして、生かしてください……!』
少女は拘束されている1人の女性の前に立ち問いかけます。女性は必死の様子で答えていました。地に頭を擦り付け、必死に慈悲を請います。しかし、少女は笑みを崩さず答えました。
『駄目だ。貴様らが生きる事は私が許さん。』
『そ、そんなっ……生きたければ命乞いしろと……!』
『何故、私がその命乞いを聞き入れねばならない?ククク、安心しろ。貴様達の死は我が野望の礎となるのだ。感謝してもいいのだぞ?』
『な……。』
その少女の言葉に、拘束されていた他の者が1人叫びます。
『ふざっ、巫山戯るな!俺の、俺の娘を殺しておいてよくもそんな事を−−−−』
『黙れ。』
少女の後ろに控えていた1人が、叫んだ男を押さえ込みます。それは騎士のような出で立ちの少女でした。金とグレーのオッドアイは憎しみでギラギラと光っています。
『貴様……我が主に……【北条雪乃】様に逆らうというのか?』
クレアルはそこでようやく黒髪の少女が北条雪乃という名だと知りました。抑え込まれて尚罵声を上げる男に、その少女はどんどん表情を険しくします。しかし北条雪乃は笑みを崩さず、その騎士のような少女に声をかけます。
『クク、落ち着け【ふぉのん】。』
『雪乃様!しかし……!』
『まあ見ていろ……。』
北条雪乃はふぉのんと言うらしい少女を立ち上がらせると、罵声をあげた男の前に立ちました。
『お、お前の!お前のせいだ!!!お前のせいで俺たちは−−−』
『ファイアボール。』
『え……ぃ、あ、ぎゃあああああああああああああああああああああああああああああああ!?』
生きたまま身体に火をつけられた男は、一瞬呆けた後悲鳴をあげ転げ回ります。その炎は男の身体をどんどん焼き焦がし、最後には男はピクピクと痙攣するだけになっていました。それを見た北条雪乃はつまらなそうに言います。
『……なんだ。もう終わりか。』
北条雪乃がパチンと指を鳴らすと、先程とは比べ物にならない炎が男を包み込みました。そして炎が消えた時には、地面に少し焼き焦げた跡があるだけでした。
『……ふん。それでは往くぞ。』
『はっ……。』
北条雪乃は兵達に命令し、拘束された人々を連れていこうとします。するとその中の1人が叫びました。
『わ、私たちを……どうするつもりなんですか!?貴方は……なんなのですか!?』
その叫びに北条雪乃はニヤリと嗤うと、叫びました。
『我が名は【覇王 北条雪乃】!やがては天下を統一する者なり!貴様達はこれから奴隷となる。精々主人に尽くす事だ!』
そして覇王を名乗った少女、北条雪乃は兵たちと絶望しきった者達を連れて引き上げて行きました。
その光景を見たクレアルに湧き上がったのは怒りでした。非道への義憤?そんなものではありません。
それは…『永遠』を共にできたかもしれなかった者を殺した事への怒りです。先程殺された男は、骨すら残りませんでした。これでは当然永遠を共にできません。
『……許せません。』
きっとあの少女……北条雪乃はこれまでも、そしてこれからも同じ事を繰り返すのでしょう。それでは永遠を共にできる者が減ってしまいます。
クレアルが怒りに震えていると、背後から気配を感じました。まさか先程の北条雪乃の仲間かと思い咄嗟に振り返れば、そこには黄昏色の髪に同じ色の狐耳と尻尾を持つ少女が居ました。