国の守護竜たるグルマンディーズが巣に帰った時、産まれたばかりの雛は居なくなっていました。まだ、歩くことも覚束ない幼い雛。自ら巣を出れるはずがないのです。故にグルマンディーズは雛が攫われたのだとはすぐに察しました。
巣立ちした雛が殺されたり攫われたりしたのなら、それは仕方のない事だとグルマンディーズは諦めたでしょう。何故なら野生界は弱肉強食。それに適応できなかったのが悪いと考えた事でしょう。
しかし、産まれたばかりの雛は、まだ巣立ちをしていませんでした。つまりは、グルマンディーズの庇護下にいたのです。それを攫われてグルマンディーズが、竜が黙るはずかありません。グルマンディーズはすぐに雛の気配を辿り始めました。
そうして気配を辿った先は、グルマンディーズの守護する王国。その王城でした。
何度も見たことのある国の王と、その王に抱きしめられている娘。グルマンディーズの雛の気配は、その娘からしました。
グルマンディーズは気づきました。他ならぬ自身の守護する国の王族が、自身の雛を攫い、殺し、喰らったのだと。同時に深く失望したグルマンディーズは、王国を滅ぼす事に決めました。
だが、雛を喰らった王女……クレアールをただ殺すのでは面白くないとグルマンディーズは考えます。そして、気づきました。クレアールに、自身と同じ…雛が持っていた力が宿っている事を。
グルマンディーズの名の意味は暴食。その由来はあらゆるものを喰らいエネルギーへと変える力を持つことでした。そして、そのエネルギーが尽きない限り老いることも死ぬこともない。それがグルマンディーズの不老不死性と強い生命力の秘密でした。
クレアールもまた、グルマンディーズと同じように喰らったものをエネルギーへと変えられるようになっていました。ですが、普通の人間と同じ食生活をするのならたいしたエネルギーは得られず少し普通より長生きする程度でしょう。
ですが、グルマンディーズはそれを許すことは出来ませんでした。クレアールの身体に自身の持つ膨大なエネルギーを無理やりねじ込んだのです。あまりに膨大なエネルギーを身体に入れられたショックで気を失ったクレアールを他所に、グルマンディーズは、竜は咆哮をあげます。
そして国を滅ぼし尽くし、そのまま去っていきました。
クレアールが次に目覚めた時には全てが終わっていました。国は滅び、クレアールだけが生き残っていました。
そして、クレアールは気づきました。自身の身体に溢れんばかりのエネルギーがあること。このエネルギーがある限り、自分は死ねないこと。何故、そうなったのかもわからずクレアールは滅びた国を去りました。
自身が老いない事に気付いてからは各地を転々としました。その旅の最中、クレアールは国王がしでかしたことを知ります。
……そして現状は自身のせいで国を、大切なものを失った、その状態で長く生きさせるという、グルマンディーズなりの復讐だということに気づきました。
知らなかったとはいえ、クレアールはグルマンディーズの雛を食べてしまいました。ゆえに、これはその罰なのだろうと。クレアールはグルマンディーズへの復讐はしないことに決め、各地を放浪しました。永遠に近い時を生きる、それを自身への罰として。