クレアルが村を訪れて3年が経ちました。本当は1年ほどで旅立たなければ不老不死がバレるかもしれないのに、居心地のよさと引き留められたこと、暁の存在もありズルズルと村に滞在していました。
ですが、そろそろ潮時です。3年も経ったのに、クレアルは一切成長してないのです。このままでは不老である事がバレるでしょう。そろそろ旅立とう、と考えていたクレアルの元に暁が訪れました。3年経ち18歳になった暁は精悍な青年になっていました。暁は、神妙な面立ちでクレアルに尋ねます。クレアルは3年前から姿が全く変わっていないが、何故なのかと。
クレアルは、ああついにバレてしまったと目を伏せます。これまでにも、何度か不老不死がバレることはありました。その度化け物扱いされたりしていたクレアルは暁がどう思っているのか、怖くて仕方ありませんでした。
クレアルはぽつぽつと自分の事を暁に話します。時折暁がする質問にも正直に答えました。自分は不老なのだと、長い長い時を生きているのだと。そう話してクレアルは俯きました。
暁は、クレアルにとって師匠であると同時に初恋の人でした。これまで不老不死である事を隠していた負い目もあり、クレアルはもし暁が自分を化け物扱いするのなら、正直に出ていこうと考えます。
しかし、暁はクレアルを化け物扱いしませんでした。ただ、困ったような顔をして言いました。
『この事は2人だけの秘密にするにしても、いつかはバレてしまう。だから村長達に相談しよう。』
クレアルは驚きました。まさか暁が当たり前のように自分を受け入れようとしてくれるとは思わなかったのです。
それに、村長や村の重役である老人達はとてもよくできた人達でした。彼等ならば、暁同様に受け入れてくれるかもしれない。クレアルはそんな淡い期待を抱きました。
そしてクレアルと暁は村長達に正直に話しました。様々な質問をされ、話は長引き、夜になってしまいましたが、村長達の態度は変わりませんでした。
『もう夜も遅い。この話の続きはまた明日にしよう。』
そう言ってくれただけで、クレアルは嬉しく思いました。不老不死がバレると化け物扱いして話も聞いてくれない人が何人も居たのですから。
その晩は、村長の家の客室でクレアルは眠りにつきました。安心しきって眠っていたとき、カタンと音がして目が覚めます。寝ぼけ眼で顔をあげると、何人もの男たちがクレアルに襲いかかりました。
理由がわからず混乱している内に拘束され、クレアルは小さな小屋に閉じ込められます。
クレアルは知りませんでした。かつて父が集め、参考にした文献の1つが極東のものだと。
人魚伝説なるものがあり、人魚を喰らえば不老不死になれるという伝説があるのだと。
クレアルは気づきませんでした。クレアル達の話を聞くうち、村長達の顔が少しずつ醜く歪んでいった事を。