混乱しているうちに、村の男衆が何人も小屋にやってきました。理由もわからずにいるクレアルに……男達は刃物を突きつけました。
『ぇ……?』
そんな声と共に、クレアルの身体に刃物は突き刺さりました。手を、足を、切り落とされ、腹を裂かれ……それでもクレアルは死ねませんでした。どれだけ身を引き裂かれようと、不老不死であるクレアルは死にませんでした。
そして、彼等はあろうことかクレアルの身体を切り落とした肉を食べ始めたのです。いいえ、彼等だけではありません。小屋の外には他の村人達もいるようでした。彼等もまた、クレアルの肉を食べ始めました。
痛みに喘ぎながら、クレアルは何故なのか問います。それにいつの間にか近くに来ていた村長が答えました。
『人魚伝説なんてものがあるのだから、不老の者を喰らえば同じく不老になれるだろう』
そんな、世間話でもするかのように軽い調子で。唖然とするクレアルを置いて、周りの者たちは騒ぎ立てます。
『傷がどんどん治っていくぞ!』
『内臓を引きずり出しても死なない!』
『『『きっと不老不死だ!』』』
村長は笑って言いました。
『傷が勝手に治るとは!これならば不老不死の肉が大量に手に入る!』
それは、いつも通りの笑顔にしか見えませんでした。
それからは地獄の日々でした。毎日のように身体を引き裂かれ、喰らわれる。痛みと裏切りに嘆くクレアルはしかし、絶望はしていませんでした。なぜなら、暁の存在があったからです。
きっと、きっと、暁なら。この地獄から、助けてくれると。そう信じていました。クレアルの身を引き裂き喰らう者たちの中に暁はいなかったからです。
『そういえば、あいつはどうするんだ?』
『あー、あいつか……。』
村の者達の会話を聞くまでは。暁は、クレアルの師匠にして想い人は。クレアルを、村から逃がそうとしていたのです。
しかしそれがバレて、不老不死の存在を逃がそうとした罪人として捕らえられていたというのです。
村の者達は、クレアルと暁が互いに大切に思っていることに気づいていました。だからクレアルが逃げ出そうとすれば暁を、暁が抵抗すればクレアルを、酷く痛めつけました。
そして、村の者達は嘲笑い口々に言います。
『暁も『永遠』に生きたかったのだろう』
『だから、不老不死の存在を独り占めしようとしたのだろう』
そして、そんなに生きたいのならばと暁にクレアルの身を引き裂いた肉を無理やりに喰わせ嗤いました。
暁は罪人として、不衛生な牢獄に閉じ込められました。
クレアルは、不老不死の肉を生み出す存在としてその身を引き裂かれ続けました。