クレアルはいつしか、抵抗をやめました。抵抗すれば暁が痛めつけられると知ったからです。そんなある日、村の者達が次々とクレアルの閉じ込められている小屋に押し寄せました。そして、クレアルを口々に罵倒しだしたのです。
理由がわからないクレアルは、村長の言葉で気が付きました。
『あいつが死んだ!不老不死の肉を食べても不老不死になれなかったんだ!ふざけるな!』
村の者達は、見える範囲に皆いました。老いた者も、若い者も、男も、女も、クレアルとかつて親しかった者も、皆。
ただ一人、彼だけがいませんでした。
クレアルは、震える声で尋ねました。
『あ、暁は……どうしたんですか……?』
それに対して村長は顔を醜く歪めて答えました。
『あいつは死んだ。病気にかかってぽっくりだ!ちくしょうふざけやがって……』
村長のその後の罵声など、クレアルの耳に入りませんでした。
ただ、考えれば当然のことでした。不衛生な牢獄に入れられて、与えられるのはクレアルの肉くらい。ストレスだって大層なものでしょう。病気になるのは当然のことと言えました。
村の者達はクレアルを口汚く罵ります。そして、口を揃えて言うのです。
『『『永遠に生きられると思ったのに!』』』
……クレアルの理性は、そこで途切れました。
そんなに。そんなに永遠に生きたいのなら。
永遠を生きる、私の一部にしてやろう。
私が、これまで身を引き裂かれ喰らわれたのだから。
同じく身を引き裂いて喰らってやろう。
クレアルは、その身に秘めたエネルギーを解き放ちました。それにより拘束が破壊され、近くにいた者達が巻き込まれましたがクレアルにとっては些事でした。
クレアルはその場にいた村の者達を喰らいました。大人も子供も関係なく皆喰らい尽くしました。
そして、見つけました。
牢獄の片隅、弔われる事もなく放置されていた暁の遺体を。
それを見つけたクレアルは、これ以上ないほど絶望しました。よろよろと牢獄に近づき、そして気づきました。牢獄には何箇所も、逃げ出そうとした形跡がありました。ただ逃げ出そうとしているのではなく、クレアルの捕らえられていた場所へ向かおうとしていた痕跡もありました。
クレアルはもう物言わぬ暁を、冷たく、固くなった彼を抱きしめ泣きました。
余りにも暁と離れがたく、クレアルは暁の遺体を喰らう事にしました。
クレアルはわかっていました。これは異常だと。
ですが、もうどうでもいいのです。彼はクレアルと一つになったのですから。
しかし、クレアルにとってこの出来事は余りにショックだったのでしょう。クレアルは村の皆が大切だったから永遠の存在にするために喰らった、と自身を正当化しました。
……そして。誰よりも大切だった彼は、暁は。クレアルが、喰らいました。
クレアルの一部となりました。
ならば、クレアルが生き続ける限り。彼は永遠の存在となる。
クレアルは、人間という存在にとうに失望していました。
皆、永遠を望む。クレアルにとって大切なのは、もはや暁だけでした。ですが、何も喰らわずにいればいつしか『永遠』は終わりを迎えるでしょう。なら、永遠を望む存在を、喰らおう。
……そして、皆で永遠となろう。
それが暁を失い狂ったクレアルの出した、最終的な答えでした。