人のいなくなった廃村で。正確には、クレアルによって人が食べ尽くされた廃村で。クレアルは旅の準備をしていました。
暁のためにも。永遠にならなければ。
それだけが、クレアルを突き動かしていました。
きっと、クレアルの望む『永遠』と、他の者達が望む『永遠』は違うのでしょう。
きっと、クレアルは他の者達から見れば狂人なのでしょう。
でも、それで構いませんでした。
だって、間違いなくクレアルは暁と1つになれて『幸せ』なのですから。
それに、クレアルは気づかないふりをしていましたが。人間を喰らう事によって産み出されるエネルギーはかなりの効率を誇りました。
元々グルマンディーズによって与えられたエネルギーでクレアルは不老不死となっていましたが、普通の生活をしていればエネルギーは少しずつ減っていっていました。しかし、人間を喰らえば普通の食事とは比べ物にならないレベルでエネルギーを生み出せたのです。要は、『永遠』として生きやすくなるということでした。
クレアルの考える『旅』は……きっと、常人にとって悍ましいものなのでしょう。それをわかったうえでクレアルは行動を続けました。
元々クレアルの住んでいた小屋は荒らされていました。それでも残っていた荷物がありました。更に他の者達は要らないと思ったのか、暁から渡された刀も残っていました。
『……あはは。暁、貴方のくれた刀、ちゃんと残ってましたよ。……大切に、使いますね。』
それらを持ち、他の家も回ります。少しでも役に立つものがないかと考えて。
そして、最後に。暁の住んでいた家にクレアルは入りました。暁は速くに親を亡くし一人暮らしをしていました。暁の家は荒らされていたのを加味してもあまり物がなく、元々物を置いていなかったのだろうとクレアルは思いました。
そして、小さな机の引き出しを開いた時。思わずクレアルは声を漏らしました。そこには紅色のお守りと、一冊の本がありました。その本の表紙には、日記帳と書かれていました。
クレアルは静かにページを開きます。暁の日記を勝手に読むのはいけないことですが、今のクレアルは暁と1つです。問題はないだろうと考えました。
最初は、両親が魔物に殺された、という内容が書かれていました。村にやってきた魔物から暁を逃がすため囮になり、そして殺されたのだと。両親のような人をもう出さないため、自分は剣士になる、という決意が綴られていました。
そこからは鍛錬の内容がほとんどでした。あまり頻繁に書いていなかったのか、日にちが飛んでいることもよくありました。そして後半に書かれていた文章に、思わずクレアルは苦笑いを浮かべました。
『他所から来た女の子供が弟子にしてくれって言ってきた。』
『断ったのにしつこい、鍛錬に集中したい。』
これはきっと、クレアルの事でしょう。でも、読み進めるにつれて内容も変化していきます。クレアルを弟子に取ったときのこと。クレアルに稽古をつけたときのこと。クレアルが無茶したときのこと。他にもクレアルの事が、沢山書いてありました。
『クレアルって、昔から全然見た目が変わらない。俺に関わるときも剣に関してばかりだし。俺自身に興味はないのかよ……』
こんな愚痴を見たクレアルは、思わず赤面してしまいました。読めば読むほどわかります。暁が、どれだけクレアルを大切に思ってくれていたのか。
クレアルは日記を読み終えると、鞄に仕舞いました。これは、大切にしなければならないと思ったのです。もう1つのお守りは、健康御守りでした。きっと暁自身のものでしょう。クレアルはお守りを身に着け、微笑みました。
『……ねぇ、暁。ずっと、一緒ですからね。』
クレアルは人の居なくなった廃村を、静かにでていきました。