黒服の弟   作:灰色の男

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おかしい。話を進める予定だったのにグルメリポ回になった。
なんで?


0.5 柴関

「……ここか」

 

 

アビドスの市街地にあるホテルで一泊した翌日。

俺は兄貴から送られてきた座標のラーメン屋に来ていた

 

 

「すいません、やってますか」

 

「おっ、いらっしゃい。やってるよ」

 

「犬っ……!?いや、ここだと一般的なんだったか。すいません」

 

 

屋台の暖簾を上げて声をかけると、身を屈ませていたのか対面カウンター下の方から声が返ってくる。

声の主が身体を起こすと、そこには人間サイズの芝犬ががいた。

一瞬驚くも、ここはそう言う場所だと言われていたことを思い出し席に着く

 

 

「例外を除き、"ヒト"の大人と男性はおらず、獣人やロボットがその役割を担っている場所……分かってはいたが……」

 

「なんだ兄ちゃん、キヴォトスの外から来たのかい」

 

「えぇまぁ、ちょっとした縁がありまして」

 

 

注文は?おすすめで。そんなやり取りをしながら雑談に興じる。

 

店主の柴大将はとても気さくで、知りたいことを聞くと大体のことは教えてくれた

 

 

「うーん、やっぱり外とはだいぶ違うな……」

 

「そうなのかい?」

 

「話を聞く限りは。外じゃ銃撃戦なんて滅多に起きないし、人は銃弾一発で致命傷です。

 加えて聞く限り、一国級の特色の違いを持つ地域を収めてるのが全て生徒とは……

 正直、異世界に来たと言う感覚が強い……というより、本当に異世界なのかもしれませんね」

 

「ま、外と比べたらな。話を聞く限りまるで違うしな」

 

 

麺を湯切りしながら大将は言う

 

 

「"先生"からも聞いたけどよ、外とこっちの常識はまるで違うらしい。

 外での常識は通用しないと思ったほうがいい。こっちじゃ小競り合いや喧嘩でも銃撃戦が発生する。

 兄ちゃんも銃の一つは持っておいたほうがいいぜ」

 

「やっぱりですか」

 

「キヴォトスでは裸よりも銃を持たない方が珍しい、なんて言うしな」

 

「世紀末か……?外じゃ銃一丁持ってるだけで銃刀法違反で逮捕モノだ」

 

「そりゃすごい」

 

 

と、ここでラーメンが出来上がる。

麺の湯切りが終わり、麺が丼に投入され、スープが注がれる。

そしてその上にトッピングが盛られていくのだが……

 

 

「こ、これは……!?」

 

「おっと、手が滑っちまった。ま、キヴォトスへようこそってことで食っちゃってくれ。

 兄ちゃん食べるみたいだしな?」

 

 

山。正しく山!フトメカタメヤサイマシマシチャーシュータマゴモリモリとでも言うべきか。

キヴォトスの外で形容するならばそう、二郎系!正しく二郎系ラーメン!

香り高い醤油の匂い。外で頼めば見ただけで胃もたれしそうなそれ。

しかし、だがしかし!まるで!まるでそんな感覚は起きない。

むしろ逆!なぜだ。見てるだけで腹が減ってくる!

 

 

「い……いただきます……」

 

 

ゴクリと喉を鳴らし、割り箸をパキッと割って野菜を掘る。

すると見てみろ麺の量!

持ち上げればわかる麺の重厚さ。滴るスープがその濃い味を想像させる。

 

一口。たった一口。

全体の総量には遥か及ばないその一口で、脳裏に電撃が走る

 

なんだこれは。なんだこれは!

硬め太めの歯応えのある……しかし顎が疲れず、食感を最高に楽しめるように茹でられた麺!

これでもかと絡みついたスープ。

だが、濃厚なそのスープからは一切の手抜きを感じられない……!

ガツンとパンチの効いた味であるにも関わらず同時に響く繊細な出汁!

醤油の塩辛さに鰹節の風味も同時主張しているにも関わらず互いに邪魔をしない絶妙な濃度……

外のラーメン屋……チェーン店など論外!

本格ラーメン店でさえここまでの絶妙な配合を生み出せるかどうか……ッ!

 

もやしに絡めて……不味いはずがないッ!

淡白な味のもやしはスープに絡めて食べるのが基本……だがまずはそのまま……

 

馬鹿な!スープのこの旨さを持ってしてなお!

もやしの茹で加減まで完璧だと言うのか!?

 

もやしを茹ですぎてはならない。

なぜならほんの数秒余分に茹でただけでしんなりしてしまい特有のシャキシャキとした食感が半減してしまうからだ。

だがもやしはその細い構造上熱が通りやすい!

よって正しく数秒……下手をすればコンマ数秒にまで神経を集中させて茹で上げる必要がある。

しかもだ!ラーメンの上に乗せる都合上!

ラーメンの上に乗せた際、そして提供後に追加でじわじわと熱は入り続けていく!

 

だが……だが……!だが……ッ!

 

一切の風味も!食感も!食べ進めているにも関わらず変化しない!

否、変化はしている。よりラーメンを食べている口内に相応しく風味が出るように!

 

もやし一つを取ったとて、ここまでの完成度……まてよ。

 

ならば……ならばより。より卓越した腕前を求められる煮卵……そしてチャーシューはどうなる!?

 

卵の厳選、茹で具合、茹でる温度と茹で時間……!

チャーシューならば茹でる時間と、ラーメンとは別に要求されるタレの配合……!

 

一つを箸に取り、食べる。食べる……ッ!

 

まさかッ……!

 

ラーメンの味を邪魔しないように……否!スープに浸かることで最高の旨みを演出する味付けだとッ!?

濃厚ながらも繊細!そんなラーメンスープに浸かって初めて真価を発揮するタマゴとチャーシュー!

 

 

何故ッ!何故何故何故何故ッ!?

 

何故ここまでも!俺を感動させるッ!?

 

麺を啜り、もやしを齧り、チャーシューやタマゴを齧り、また再び麺を啜り……!

 

気づけば俺の丼は……

 

 

「ッ!?」

 

 

空となっていた……

 

 

「お、食い切ったか。いい食べっぷりだったぜ兄ちゃん」

 

「……一つ、聞かせて欲しいんだ大将」

 

「ん?なんだい?」

 

 

─俺は……

 

 

「何故、ここまでのラーメンを生み出せた。外の専門店にも……否、専門店すらも凌駕する、この最強のラーメンを」

 

「そう言ってくれるのは嬉しいが……んー、そうさなぁ……」

 

 

─この一杯に……

 

 

「俺のラーメンを食ってくれた皆がな、美味いって言ってくれたのよ」

 

 

─この大将に……

 

 

「なら、その皆に感謝する意味も込めて、更に美味いラーメンを食わせてやろうって。そうやって改良を続けてきた結果がこのラーメンな訳だ」

 

「……それだけ、なのか?この味ならば外に出せば間違いなくその年の最優秀料理まで掻っ攫える!そんな味だったんだぞ!?

 野心も、欲もなく、ただそれだけのためにこの味を完成させたと!?」

 

「応」

 

即答であった。

 

 

─完敗し、そして感謝を捧げざるを得なかった

 

 

「は、はは……ははははは!流石だ。流石だよ柴大将……あんた最高だ」

 

「う、うん?まぁよくわからんが、褒めてくれてんのはわかるわ。ありがとな」

 

「いや、感謝するのは俺の方だ。御馳走様でした(素晴らしい出会いをありがとう)。」

 

「応!いい食べっぷりだったぜ!」

 

 

この後、会計の際に金額を聞き、再び驚愕するのは……また、別の話。

 

 

 

 

───────────────────────────

 

 

「よぉ兄貴」

 

『珍しいですね、貴方から電話してくるとは……』

 

「別にいいだろうが……まぁいい本題だ。住居を一箇所貸してくれ」

 

『住居ですか?』

 

「応、爆発やら銃撃戦が横行してる場所で下手な建物選んだら容易に御陀仏だろ

 兄貴はセーフスポット見つけんの上手かったし何箇所か抑えてんだろ」

 

『相変わらずよく勘が働きますねぇ……そうですね、ここなんてどうでしょう───』




次は進める!絶対!

彼の住居は……

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