連邦生徒会をぶっ壊ァす   作:つくよん

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今際の際ってやつ? (震え)

 

 

「ゲヘナ自治区の中でも軒並み酷い不良生徒の巣穴(廃校エリア)の、さらに奥。構造が歪で複雑だから、私たち以外はまともに進むことすら出来ない迷路街」

 

 高々と廃れた建造物が連なることで、陽の光を遮り、辺りは薄暗さに包まれていた。

 ここは弟子にして間もない頃、ワカモが迷子になり私が迎えに行った場所でもある。

 

「侵入者を迎撃をする罠をたくさん仕掛けたんだ。爆発や落とし穴、さらに幾千もの検知器のオプション付き。音の反応で君がどこまで進んだかもわかっていたよ」

 

 熱を感じさせない程の冷徹な目だった。

 入り組んだ構造物から突起した鉄パイプを足場にして、その少女は静かにこちらを見下ろしている。

 

「数々の噂から君のことは聞いてたからね。仮に君が来て、ここの迷路が強引に突破されたとしても、ある程度の時間稼ぎができるように」

 

 

 

 

 

「……ほんとにどうなってんだよ、君。同学年って信じられないんだけど」

 

 その少女は無傷だった。

 さらに言えばワカモと別れる前に音が鳴ってから、まだ腕時計の秒針は半周程しか回っていない。

 

 ──いや、は? あの距離を30秒で来たのか? 

 その間にあった私お手製の罠たちは? 

 砲撃とは異なる爆発音が聞こえていたことから、作動自体はしていると見ていいだろう。

 なら全部避けきった? それとも効かなかった? 

 どちらだとしても考えたくはないね。

 

「まいったな。少しくらいは準備しておきたかったんだけど……まぁいいか」

 

 

 

「久しぶり、ヒナ。また随分と名を挙げたようだね?」

 

 空崎ヒナ。

 私と同じ2年生にして、今ゲヘナで最も名を響かせる実力者。風紀委員の下っ端ながら、他の年長者ですら全く引けを取らない最強の新星(ニュービー)

 

「不良連中含め、裏社会いる奴らは君の話で持ちきりだよ。やれ空崎ヒナに一撃入れたとか。君に一泡吹かせてやったとかさ」

 

 この少女に関する噂は千差万別だが、それらは往々にして彼女の強さを示すものが多い。今私が言った例えも真偽は定かではないが、裏を返せばそれだけ空崎ヒナという名声価値(ブランド)に星が付いているということだ。

 さらに言えば、ここで目を背けたくなる事実が1つある。誰かが空崎ヒナに勝ったという噂は、私のも含め、ワカモの可愛い耳にも入ったことがない。

 

「この分じゃ、君が風紀委員会を束ねるのは時間の問題なんじゃない? あ、そういや委員長さん元気?」

 

「……委員長は今、何者かに襲撃されて前線から外しているわ」

 

 ここで初めてヒナの口が開く。その音色には怒りが込められている気がした。いやまぁここに来ているということは気のせいではないのだろうが。

 

「そっか。まぁ確かに彼女、ザ・武闘派って感じではなかったからね。強襲されたなら仕方ない。お大事にって伝えて……」

 

「あなたがやったのね?」

 

「そうだよ」

 

 何故バレたんだろうね? 

 私が考えた"かんぺき〜"な計画で実行したのに加え、二重三重の細工まで施したのに。

 やっぱり匂うなぁ。

 

「言い訳は聞きたくないけれど、一応聞いておくわ。何故やったの?」

 

 ヒナの愛銃であるデストロイヤーの銃口が私に向けられる。その殺意に呼応するかのように、彼女の瞳から放たれる眼光も熱を帯びていく。

 

 ──言い訳? しないよそんなこと。

 

「動機……動機ねぇ、面倒だったから? それとあの人、強くはないけど事務処理と指揮だけはこの上なく優秀だったからね。邪魔された分、卒業までには報復しようと思ってた……っていうのがおまけかな」

 

 私の言葉にヒナの頬がピクリと動く。

 

「おまけ……?」

 

 彼女の疑問に私は頷き、人差し指を頭に当てる。まるで記憶を掘り起こす仕草さながら、時間稼ぎと煽り(・・)を意識して、私は言葉を重ねる。

 

「そうそう、あの時の主な目的は情報部の秘密書類に関する依頼があったのと、久々にあそこの事務所をテロりたかったってだけで……委員長は偶然あそこにいたから、ついでに?」

 

 ──ダンっ! と。

 

 また異なる爆発音が響く。

 私の斜め上の位置から飛び降りたヒナ、着地地点のコンクリートには亀裂が出来ていた。

 力に作用した重さの大半はデストロイヤー(彼女の愛銃)なのだろうが、それには感情の強さも含まれているだろうと私は推察する。

 

「そう……」

 

 私はヒナの表情を見てニヤリと嗤う。

 

「覚悟はできてるのね? 女狐」

 

 うんうん、しっかりと効いてるね。

 銃みたいに冷たい子だと思っていたけど、意外と先輩を慕う心くらいはあるみたいだ。

 

「必要ある? それ」

 

 デストロイヤーが唸り声をあげる。

 ヒナの殺意が最高潮に達したのを感じた。

 予定より少し早いが、仕方ない。

 

 私は倒れるかのように身体を左後ろに傾ける。簡単な動作で退避の姿勢を整えた私を見て、ヒナの口が動く。

 

また(・・)逃げるの?」

 

「……驚いた。まさか君の小さい身体にもその機能が搭載されていたとはね」

 

 ──だが残念、私の煽り耐性はMAX(カンスト済み)だ。

 

 私に放たれる紫色の弾丸。

 その圧倒的な破壊力を持つ咆哮に、私は億さず冷静を保って、デストロイヤー重心と銃口、さらにヒナ自身の目を見ていた。

 

 ──この銃弾の雨を掻い潜るなんて自殺行為、今の私にできるわけがない。

 

 だから私は一呼吸、肺に空気を入れると、彼女の攻撃に対して敢えて前方に飛ぶ。

 

「前に……?」

 

 驚きの声をヒナは呟いた。

 当然だ、そこらの生徒ではまずお目にかかれない。空崎ヒナの攻撃における最適解。

 これは経験談なのだが、今の私とヒナの立ち位置である中距離(ミドルレンジ)は非常にまずい。遠距離(ロングレンジ)などもってのほかだ。拡散された弾幕は破壊力がありすぎて、攻撃範囲を狭めないとまず勝負にすらならない。

 私とヒナな実力差から、戦いという舞台に持っていくには……。

 

 ──近距離(クロスレンジ)……まで接近する必要はない。

 警戒させる。逃げの一手だけではなく、攻撃の意志をチラつかせる。

 

「……っ」

 

 たった半歩。

 弱気とも言えない小さな防衛本能。

 それで十分だった。

 

 ──今の(・・)君との差は、十分に分かった。

 

 強さを決める要素。

『火力』『耐久』『速度』

 どれをとっても彼女に勝つことはできない。

 

 ──だが。

 

「『思考』が追いついてないんじゃない!?」

 

 私は予め右手に隠していた起爆機器を作動させる。

 途端に発生する連鎖爆発。それはヒナを中心として次々と炎を巻き上げた。

 

「罠?」

 

 自らの目の前で爆ぜる火薬に、ヒナは眉を顰める。

 

『少しくらいは準備しておきたかったんだけど……』

 

 

 私は確かにそう口にした。ヒナも走る速度には自信があるだろうし、準備時間を与えたつもりもないのだろう。

 

「なら何故……」

 

「私は心配性だからね! 君みたいな理不尽がいつ来てもいいように、保険加入は欠かさなかったのさ。というか平気そうだね!?」

 

 炎の中から無傷で現れるヒナ。恐ろしい予感が当たったと嘆きながら、私は次なる小細工に手を掛ける。

 

 ──無効化(そっち)かぁ、こりゃ被弾(ダメージ)は期待出来ないな。とりあえず隙と言えるか怪しい隙は出来たけど……予め設置してた罠も少ない上に効果が薄いし、最短で決めにかかるのが最善手(ベスト)か。

 

「とくれば……」

 

 胸元から取り出した物を投げる。

 それは投手者の狙い通りヒナの足元へ向かった。

 

「っ……閃光弾っ!」

 

 ──さっすが、反応早い! 

 

 すかさず目元を隠し後ろに下がるヒナ、その驚異的な速度に、私は内心称賛の声を口にする。

 心とは裏腹に苦笑いをするしかないが、それでも。

 

 起爆する前の閃光弾がコロコロと転がる。

 ヒナは防御姿勢を保ったままだ、おろらく次の行動を考えている。

 私が取れる選択肢は2つ。追撃か否か。当然ヒナもそれを分かった上で予測してくるだろう。

 

 逃げるのか? 追撃してくるのか? 

 ヒナの思考が手に取るように分かる。

 

 私からすれば、彼女は直感的すぎだ。

 強すぎるが故に、ある程度ならそれで問題ないという慢心にも似た弱点。

 だが、そのある程度の範疇に収まらない事象が起きた時、それは大きな亀裂となる。

 

「……?」

 

 ヒナの両腕に隠された頭に疑念が募っていく。未だに起爆しないまま地面を走るそれを、ついに自らの足元まで転がってきた閃光弾を。

 そこでヒナは気づいた。いや気づいてしまった。

 フェイントの可能性という直感に従い、彼女はすぐに反撃体制を整える。

 

「しまった……っ!」

 

 一瞬といえど短くはない時間、視界を塞いでいたという状況に、ヒナは若干の焦りを感じたことだろう、すぐに私の視認して銃を構えるが──

 

 またもやその表情が驚きに染まる。

 

 ──知ってるかな? ヒナ。

 

 自身の耳に手を当てながら(・・・・・・・・・)後ろに飛ぶ私。

 その姿を最後に、ヒナの視界は真っ白な世界へと誘われた。

 

バッ──、──、──! っと。

 耳鳴りが響く。

 

 

 ──戦い方ってね、キモければキモいほどいいんだよ。

 

『戦闘慣れしてくれてありがとう』と、彼女の直感に感謝(皮肉)しながら、1人音のない世界で微かに笑う。

 

「ぐうっ……!」

 

「あーあ、ちゃんとピンを抜いてたかどうか見ていれば……それよりどうかな? 私の特殊閃光弾の……って聞こえてないか」

 

 至近距離、それも全く無警戒の状態での致命的な一撃(クリティカルヒット)。単純計算でざっと2倍の効力があるだろう 知らないけど。

 それにしてもここまで上手くいくとはね。通常の市販ものと違って、たかだか起爆タイミングをズラせるだけの閃光弾。

 それに加えて、私の着用しているこのお面は、光だけならほとんど遮ることが出来るお手製もの。是非とも今この場でヒナに説明もとい煽りをしてやりたいところだが……絶好の逃亡チャンスのことだし、またの機会にしておこうか。

 

「まぁ、本番はこれからだしね」

 

 別にヒナを倒せたわけではない。ただ隙ができただけ。

 ここで追撃してもいいが、今回の私たちの勝利条件は勝つことじゃない。欲に駆られて歯釘を出そうものなら、矯正局かゲヘナ地下牢の二択だ。

 彼女の視界が戻る前に退散と行こうか。

 

「でもやっぱ小細工は重ねるに限るね」

 

 そう改めて納得しながら、私は余裕を持ってヒナに背を向けた。

 

 

 

 

 

 

 

 







・主人公ちゃん。
トリニティ出身のテロリスト(ガチ)。
趣味:破壊活動、略奪、可愛いもの
ワカモと同じ狐種族。
強さは原作時空のシロコ以上最強組未満。
一応2年生には進級している。
余裕ぶってはいるけど、今回の戦闘では冷や汗が止まらなかったようです。

・孤坂ワカモ
主人公ちゃんより1つ年上だが、それでも師匠を尊敬し慕っている。
原作よりも強い。
ちなみに先生に惚れるのは運命みたいなものなので確定。

・空崎ヒナ
2年生でほぼゲヘナ最強。
主人公ちゃんを目の敵にしており、女狐と呼んでいる。
過去に主人公ちゃんと戦った際は圧勝していたので、今話では過剰に侮っていた模様。





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