TS転生者のライザのアトリエでのなんてことない生活   作:雷雷帝王

39 / 40

 今回は少し長めです!



TS転生者はなんてことなくない『なんてことない』を守りたい

 

 淡水化装置を直してしばらく経った。ボクはクラウディアに誘われて広場の海岸に来ていた

 

「おお、いい景色だねえ……」

「人工島とは思えない、それとも人工島がこれだけキレイなことに感動するべきなのかな……」

「クラウディア、何か用があるわけじゃないのか?」

「ないよ。ライザがあんまり休まないから連れ出しただけ。根を詰めるばかりじゃ、潰れちゃうでしょ」

「確かに、その通りだね……休まないと頭も働かない、ってのを忘れるくらい頑張ってたし」

「ありがとうね、クラウディア……どうもあたし、突っ走ると自分すら見えなくなるみたいでさ」 

「それは、みんな知ってるよ」

「うんうん、お転婆錬金術士だもんね」

「レイ、タオ、あんたたち──」

 

ライザが文句を言おうとしたら、アンペルさんとリラさんが焦った様子でボクたちに向かってきた

 

「お前たち、揃ってたか!!一緒に来てくれ!!」

「ど、どうしたの二人ともそんなに慌てて」

「入り江の『門』だ!!フィルフサが這い出している!」

「へっ、いよいよ、ってやつか。やってやるぜ!」

 

ボクたちは入り江の『門』へと急いで向かうのだった

 


 

入り江の『門』に着くと、そこにはサソリ種のフィルフサが一体だけいた

 

「む、私たちが見た時と違って、単独になっているな。監視だけ残して、後は引き上げたか?」

「あれって、斥候じゃ、ない?前にリラさんが言ってた、斥候の次ってやつかな」

「そうかも知れん。だが、今は」

「そうだな、まずはぶっ倒す!」

「よし、行くよ!」

 

そしてフィルフサとの戦闘が始まった

 


 

今回は一体だけなのと他のみんながいたので難なく倒すことができた。ライザたちは初めてフィルフサを倒したことに驚いていた

 

「よし……!」

「なんとか、なったな」

「あの、乾きの悪魔を……倒しちゃったんだね、僕ら」

 

なんて話しているとアンペルさんがリラさんに何やら尋ねていた

 

「リラ、どうだ」

「ああ、やはり間違いない。こいつは『空読み』だ」

「空、読み……どういう意味なんですか?」

「名前の通り、空を読む……つまり、その地の気象を鋭敏な感覚で観測する、特別な種だ」

「それって、つまり……」

「こっちが乾期になったことがフィルフサにバレた、ってこと、だよね」

「ああ、こっちの雨が当分降らないことを『蝕みの女王』に知られてしまったんだ」

「つまり、つまり……いよいよ来ちまうのか、『大侵攻』が……!!」

「ど、どれくらいの時間で、攻めてくるんですか?」

「巨大な群れとして動くから、今すぐというわけではないだろうが……もう猶予はない」

「そ、そんな……一体、どうすれば……」

「まずはアトリエに戻って今後の作戦を考えよう」

 

そしてボクたちはアトリエに戻るのだった。……ボクは戻る道中にリラさんに小声であることを聞いた

 

「……リラさん、ちょっといい?」

「なんだ……?」

「実は秘密の相談なんだけどさ、もし『蝕みの女王』を倒したらフィルフサの群れって瓦解したりする?」

「!……ああ、その通りだ。まさかお前も私と同じ考えだったとはな」

「くっはは、まあ、一番手っ取り早い方法だなあ、って思い付いただけだよ」

「だが、いいのか?危険なことには変わりないぞ」

「……いや〜、私欲なんだけど『蝕みの女王』と戦ってみたいなあ、って」

「……はぁ、まあいい」

「ごめんって、あっでも、もしライザたちに反対されたらボクたちだけで倒しに行こう」

「……いいだろう。たが、二人の分さらに危険になるぞ」

「くっはは、危険でなんぼでしょ。それくらいしなきゃ島を救うなんてできないよ」

 

ボクとリラさんは秘密の話し合いを終え、みんなと一緒にアトリエに戻るのであった

 


 

アトリエに戻ったが、みんなの雰囲気はとても重苦しいものだった

 

「『大侵攻』を止める方法は、ないの?」

「ない、だろうな。よりにもよって『蝕みの女王』の支配地の近くで『門』が開いてしまった。奴ら、喜び勇んで殺到してくるだろうよ」

「『門』をぶっ壊すのは、駄目なんだよな」

「ああ。『門』に込められた莫大な力が解放されてとんでもない被害が出る」

「こっち側の遺跡を壊して『門』を水で囲うのは?」

「一匹、二匹ならともかく、『大侵攻』ともなれば多少の水は味方の死骸で埋めて乗り越えてくるだろう」

「『門』の封印は、無理にでもできませんか?」

「封印は繊細な作業だ。フィルフサがいつ群れを成して飛び出てくるか、って状況ではとても無理だな」

「逆に……どういうことならできるの?」

「今すぐできること、となると……1つは、あの古式秘具を今すぐぶち壊すこと、かな。もし、聖地の水が一瞬で元通りに戻ったならそこそこの足止めくらいにはなるかもしれん」

「それでも、そこそこの足止め程度なんだ……」

「既に『女王』が、群れを率いて巣食っちまったんだ。水が戻っても、その勢い自体は消せないだろう」

「その方法を取っても、奴らが来る可能性は高くて、しかも島の乾期の中で、水を失う……」

「もう1つの方法はクリント王国の連中がそうしたように、息を潜めて島に引きこもることだ」

「『大侵攻』が何もかもを呑み込んで荒らし尽くすのを乾期が終わるまで眺めてる、ってこと……?」

「でも、この地方の島以外の場所は……あの古城や、塔みたいになってしまうんですよね?」

「乾期の間中、群れは広がってゆくだろうな。正直、この場合どれほどの被害が出るかは見当も付かん」

「もう一つ……できることは、ないでもない。最も危険だが、確実に『大侵攻』を防げる一手だ」

「教えて」

「我々の方から打って出て、『蝕みの女王』を倒す。そうすれば、統率者を失ったフィルフサの群れは瓦解し……『大侵攻』も潰える」

「お前ならそう言うだろうと思ったが……成功の確率を考えるだけ馬鹿らしい、無謀な行為だ」

「でも、それが……それが、一番確実な方法、なんだよね」

「俺は、付き合うぜ。要するに、俺たちが頑張りゃスッキリ片付くんだろ?」

「私も、ライザが行くのなら。今が……もらった勇気を返す時だと思う」

「当然、提案者の私は行く。アンペル、お前も格好付けてないで、さっさと言え」

「分かっている。だが、誰かが慎重論を唱えなきゃいけないだろ。でなければ、行き辛い奴が──」

「僕も行くよ」

「なにっ?しかし──」

「しょうがない、って付き合うわけじゃないよ。上手く言えないけど……やっぱり僕も行かなきゃ」

「やれやれ、余計な気を回しすぎたってことか。大人ってのはこういう時、いまいち格好がつかんな」

「あとは、レイ、どうするの?」

「……」

「?レイ?」

「まさか、また反対するんじゃねえだろうな」

「……はぁ、おい、起きろ」

「うがっ!?」

 

リラさんに叩き起こされたボクは変な奇声を上げてしまった

 

「……あんた、まさか今の今まで寝てたの」

「えっ……ああ〜、ね、寝てないよ。話は聞いてたよ」

「……」

「信用ないなあ……。そもそもボクはもうリラさんの考えに賛成してるからね」

「ああ、そうだな。もしお前たちが反対していたら私とレイで『蝕みの女王』を倒しに向かう想定だった。が、それもなくなった。ふふっ ライザ、思いのままにやれ」

「みんな、ありがとう!……にしても、『蝕みの女王』の城に殴り込み、かあ。冒険もここに極まれり、って感じね」

「やっぱり村の人たちには、知らせないんですか?」

「以前も言ったが、私たちの目的は『門』を始めとするクリント王国の遺産を、密かに封じることだ。また別の誰かが、異界のに触れる機会を増やすわけにはいかない。悪いが、これは私たちの前提だ」

「それに、半端に喧伝して混乱を起こされると、無用の被害も増えるだろう。せめて真実を知るボオス少年に、我々が出発した後、それとなく街道の往来を止めてもらうとしよう」

「なあに、要は俺たちが勝てばいいんだよ」

「そうそう……それに誰にも知られずに危機を救うってのは最っ高級にカッコイイでしょ!」

「気楽にいうなあ。でも、本当にそうするしかない、そうでなきゃ僕らは…って状況なんだよね」

「私たちの命がけの戦いは、村の人たちの誰にも知られないまま始まって……終わるんだね」

「それでいいんだよ。この戦いは『なんてことない』当たり前のものを守る、あたしたちだけの戦い……。明日も普通にやってくる『なんてことない』1日のための戦いなんだよ」

「いい覚悟だ。じゃあ、これからお前たちのそれを……『なんてことない』ものを、もう一度見直してこい」

「その間に私たちが出発の準備をしておこう」

「うん。みんな、それじゃ一旦解散ね。またここに集まって、出発しよう」

 

そしてボクらはいつまでも続く『なんてことない』日常を改めて体感していくのだった。最後の戦いが始まろうとしていた





 レイガルン·アガタール…難しい話が続いて大事な会議中に居眠りしていた人。実は全部聴いていた

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。