ーーアルケミ大陸 北部 エステレラ自然保護区域 近辺ーー
(身なりのよい白髪の老人が、ウアスに静かに語る)
お前は……あの烏とは違って、日だまり草を捕りに来たわけではないようだね
(ウアス、矢に塗られた麻痺毒により身体を動かせず、地に顎を付ける)
【………うぅ…っ…】
(老人は極めてゆっくりと頭を動かし、巨大な鳥の死骸のある大きな木の陰を見る)
お前はあの烏の……仲間か
【大切な……親友…です】
(老人はわずかに口角をあげる)
モンスター達の間では、盗みが流行っているのかな?
【オルフェが……あなたのお庭から日だまり草を盗んだことは……僕がほのめかしたからです。悪いのは僕…です。本当にごめんなさい…】
なるほど……どんなルートで売り捌いているんだ?私も混ぜてもらいたいところだ……モンスターの交易ルートなどは気になる
【ち、違うんです……日だまり草は、薬草として使えて……僕のお友達の、”ハル”に…渡すために……】
(老人の目がウアスを捉える)
……なに?それは……本当に?
【はい……僕の知ってる、日だまり草がある場所は……ここしか、なくて】
(老人、じっとウアスの瞳を見つめる)
”竜はウソをつかない。人と違って、竜は真実の中から生まれたから”……古い言い伝えだがね。
(老人、ウアスに近づき…ウアスがその気になれば首を持ち上げて噛みつけるほどにまで接近する)
お前は……”竜”か?
【…はい。僕はロウドラゴンです】
……分かった。お前を信じる。どうせ……もう私は使い道を知らないものだから
(狩人たちが、少し驚きながらも…ウアスへ向けていた武器を下ろし、警戒を解く)
【あ……ありがとう、ございます…!本当に…ごめんなさい……】
(老人、優しさよりも悲しさが滲む表情で)
いいのだよ、もう。元より……ただの悪あがきだったのだから
【わる……あがき……?】
孫娘の病気をな……おそらく君の友人と同じものだろう。だが今朝方になって……もう、こんな抵抗はする必要がなくなった。
(老人、自らの館のある方角へ振り返り)
やさしい子だったよ……自分がどういう状態なのか、薄々気付いていたのだろうね。”日だまり草をあの鳥さんの自由にさせてあげて”…”きっと何か理由があってしているはずなのだから”……と。
【………!】
(老人、メガネを外して涙を拭く)
たった一人の孫娘の、最期の願いだ……日だまり草は、必要なだけ持っていくがいい
【あ……ありがとうございます!ありがとう…】
(老人、ウアスを呼び止める)
君……名前は?
【僕は、”ウアス”といいます】
ウアス……君の友人を傷つけて、殺してしまって、すまなかった。今朝は……大変興奮してしまっていた。
【彼は……オルフェは、”自分が誰かの生を繋ぐことができて満足している”と……言っていました。】
そうか……確かフレスベルグは、死骸しか食べることができない…
(老人、悲しみが幾分失せた表情で)
ウアス、私が言えたセリフではないのは重々承知している……だがもし許してくれるなら……ハルという、その友人を大切にしてあげてくれ
(ウアス、決意を込めて)
【……はい…!】