司は光のコーチとなり、なんやかんやで楽しく過ごしていた。
一方その頃、もう一組の師弟たちは……
《東京・スターフォックスFSCが拠点とするスケート場》
クラブの活動が終わり、チームメイトたちが帰宅した後も私は滑り続けていた。
余裕がない、焦りばかりが募る、こんなんじゃダメだ、まるでうまく出来ていない。
心臓が激しく脈打つ、全身の疲労もピークに達している。
止まるな、動け、動け、動け、いいから動いて!
何とか完走したものの、及第点とはいかなかったようだ。
それは自分が一番わかっている。
お手本に比べて、あまりに無様なスケートだった。
疲労から立っていることもできず、氷上に手をついて荒い呼吸を繰り返す。
私のコーチは、冷たい眼差しのまま言葉を発した。
「もう、終わるかい?」
「いえ……まだ……やれます…」
「精度が落ちてきている、ミスも3回を超えた、自分でも気づいているだろう?」
「……っ……」
「これ以上やっても得られるものはない、今日は終了だ」
「…る…ちゃん…‥なら」
「……?」
「光ちゃんなら、まだやれる、こんなところで終わったりしない」
そうだ、光ちゃんなら、この程度で挫けたりはしない。
ここで練習をやめてしまったら、あの背中には追いつけない。
「確かに、光ならやれていた、僕も止めはしないだろう」
「だったら、続けさせてください。私は…」
私は、止まるわけにはいかないのだ。
払ってしまった犠牲のためにも…
「
「……先生…」
コーチが私の名前を呼んだ。
これは、彼が大事なことを言う前の合図だ。
「何度でも言う。キミは光にはなれないよ」
「っ!そんなの、わかってます」
本当に理解しているのか?という鋭い視線を睨み返す。
ここで目を逸らしてしまったら負けだ。
わがままを聞いてもらうには、その意思を見せなければならない。
やがて、先に目を逸らしたのは先生の方だった。
「あと一本だけだ。それで今日は切り上げる、いいね?」
「はい。ありがとうございいます!夜鷹先生」
私、結束いのりは夜鷹純をコーチに迎え、練習の日々を送っていた。
全ては、金メダリストになるために。
そして・・・
●
満を持して挑戦した全日本選手権。
私は完膚なきまでに敗北した。
やれることは全部やった、死力を尽くしたつもりだった。
それでも、光ちゃんには届かなかったのだ。
どうしても勝ちたかった、一番になりたかったのに。
結果は表彰台落ちという無様なものだった。
悔しくて、惨めで、情けなくて、どうしようもない激情が胸中に渦巻いた。
司先生、あんなに目をかけてくれたのに、信じてくれたのに…
その信頼を私は裏切ってしまった。
返し切れないたくさんの恩に、報いることが出来なかったのだ。
自分だって悔しいだろうに『お疲れ様』と言って、労ってくれた先生。
いっそのこと、叱責してくれた方がマシだったかもしれない。
先生の気遣いや優しさが…今は少しだけ辛い。
全日本選手権から数日、私はずっと考えていた。
このままでいいのか?
ずっと司先生に甘えたままで、光ちゃんに勝てるのか?
全部やった、死力と尽くした、本当に?
まだ捧げるべきものが、勝つための犠牲があったはずなに…
手放すことをしなかったのではないか?
そんな事ばかり考えて、ずっとモヤモヤしている。
練習にも身が入らないし、司先生ともギクシャクしっぱなしだ。
私は、どうすればいいんだろう?
そんな時だ。あの人に再会したのは…
「よ、夜鷹純……さん?」
「??キミは確か、麦茶の妖精?」
「違います!いのりです。結束いのり」
「いのり?のりは味付けが、いい…」
「あの、お腹空いてます?」
クラブに行く前に立ち寄った、いつもの公園に黒づくめの不審者がいたのだ。
ベンチに行儀悪く座った男は、よく晴れた空を睨みつけながら、缶コーヒーをチビチビ飲んでいる。
知らないフリをしてもよかったのだが、なんだか気になって声をかけてしまった。
「こんな所で何をしている?練習、いかないの?」
「いや、こっちのセリフですけど。光ちゃんの所へ戻った方がいいんじゃ…」
「やめたんだ、光のところには戻らない」
「へ?」
「もう僕は、光のコーチじゃない」
「は?え?はぁ?はぁぁぁぁ!?!?」
この人、今何て言った?
やめた…だと…???
光ちゃんのコーチを辞めただとぉ!!
「ど、ど、どいうことなんですか?一体何が?」
「見ての通り、今の僕は、暇を持て余した、ただのおっさんだ」
「知らねぇよ!あ、すみません」
思わずツッコんでしまった。
おっさんて……自分で言うなよ。悲しくなるわ。
「気にしなくていい、年下からの罵倒、悪くない///」
「変態か!」
この人、こんなキャラだったけ?
最初の印象と大分違うな。
もっとこう、怖い感じの人だったはず…
「ここで会ったのも、何かの縁、キミ頼みたいことがある」
「な、なんですか、私にできる事なんて、そうありませんよ」
「仕事を…紹介してくれないか?」
「えぇ…」
何言ってんだこのおっさん。
てか、今無職なのかよ!?
「小学生に頼む案件じゃないですね。素直にハローワークへ行ってください」
「ハロー?なんだそれは…うまいのか?」
ダメだこいつ……
これが社会不適合者、なんて残念な生き物なんだろう。
一応、私にわかる範囲でハローワークとは何かを教えてあげた。
「なるほど、便利な組織があるものだ、キミ聞いて正解だったな」
「私に職の斡旋を頼んだ時点で、何もかも間違ってますよ」
「お返しに、キミの相談に乗ろう…」
「別に、相談したい事なんてありません」
「それは嘘だ、なぜかというと、僕には悩みを抱えた少女を嗅ぎ分ける力がある」
「すごく気持ち悪い!」
「遠慮することはない、こんなサービス、光にだってしたことないよ?」
何で私のお悩み相談コーナーが始まったんだろう?
そして、なぜこの人はこんなに偉そうなのだろう?
でも、これは渡りに船かもしれない。
司先生にもできない話を、金メダリストのこの人にならできる気がした。
「じゃ、じゃあちょっとだけ聞いてほしいことが…」
「エビフライをリスペクトした髪型は、キミによく似合っている、そのまま続けるといい」
「髪型の相談じゃねぇよ」
言われなくてもエビフライは継続する気だ。
そうじゃなくてですね……
私は全日本選手権後から抱えて来たモヤモヤを話すのだった。
・・・・・・・・・・
「まだ、光に勝つ気でいたのか…」
「そうですよ!いけませんか?」
『その程度で?』とバカにされた気がして口調が荒くなる。
「本気?」
「本気です」
「エビフライ神に誓える?」
「誓えます…エビフライ神って何だ!?」
変な神様を捏造するな。
「理解しているだろう?光は強い…あの子は僕の目から見ても異質だよ」
「天才…ですもんね…」
「その表現は好きじゃない」
天才という言葉に夜鷹さんは不快感を示した。
「天才というのは周りが勝手に貼ったレッテルにすぎない、負け犬の遠吠えだ」
「『あいつは天才だ自分たちとは違う』『だから勝てなくて当然なんだ』」
「勝利を諦め、己の未熟を認められない者の戯言だ。勝つためにどれだけの犠牲を払ったか、何も知らない癖に…」
この人も、周りから散々好き勝手言われて嫌な思いをして来たのかな?
光ちゃんだって、己の才能に胡坐をかいていたわけじゃない。
いっぱい努力して頑張ったからこそ、優勝を勝ち取って来た。
歯を食いしばりながら必死に積み重ねた時間、それこそが光ちゃんの強さなんだ。
やっぱりそうか…答えは至極単純明快だった。
私はただ単に、支払う犠牲が足りなかったのだ。
「大多数の人間は、強い輝きから目を背け、線引きをする。それをしない、できないキミもまた、異質だよ」
「私って、そんなにおかしいでしょうか?」
「おかしいね、だからこそ、光はキミに注目していた『いのりちゃんマジやばくね?』と、呪文を唱えるほどに」
光ちゃん、私を気にしてくれていたんだ。
それなのに私は……ガッカリさせてごめん。
「本気で光に勝ちたいと言うならば…」
「必要なんですよね。今よりもっと多くの犠牲が」
「キミ聡明だな。だが、おススメはしないよ…犠牲を払い、ひたすらに勝利だけを望んだ結果、何も残らない人生は嫌だろう?」
それは実体験ですか?という言葉を飲みこむ。
金メダリストの苦悩を、ちょいちょい混ぜて来るの困るわ~。
「そう思うなら、なぜ光ちゃんに犠牲を強いたんですか?」
「必要だと思ったからだ。狼嵜の名に縛られない、別の価値をあの子に与えたかった」
「??…よく、わかりません」
「わからなくていい。今のは忘れてくれ」
カミサキ?別の価値?
なんだか踏み込んではいけない気がして、それ以上聞くのはためらわれた。
「私はこれから、どうしたらいいと思います?」
「行き詰まっているのなら、環境を変えるのも手だ」
「環境をですか?」
「『居心地のよい場所を離れ広い世界で冷たい風に触れよ』と、魔法オババも言っている」
「魔法オババって誰!?」
オババはともかく、夜鷹さんの言いたいことは理解した。
環境を変えるか…
「喋り過ぎた、そろそろ行くよ」
「あ、はい。話、聞いてくれてありがとうございます」
夜鷹さんは空になった缶をゴミ箱にシュートして公園を出て行った。
シュートは3回も外れた上に、舌打ちしていてカッコ悪かった。
話してみると案外いい人だったな、変な人でもあったけど。
●
「お仕事、見つかりました?」
「いや、しばらくダラダラ過ごそうと思う」
「ダメ人間じゃないですか」
「いざとなったら慎一郎君を頼るさ…あ、でも光がいたら、気まずいな…」
あれから、夜鷹さんは度々公園に出没するようになった。
示し合わせたわけではないが、よく見かけるので、こうやって会話する程度の関係にはなった。
無職の癖にジュースやたい焼きを奢ってくれたりする。
たまに財布を忘れて、私が奢ったりもする。
服装は相変わらずの黒一色。最近、近所の子供たちに『黒づくめの組織』と呼ばれ出している。
名探偵が来る前に身を隠した方がいい気がする。
「僕はジンではない、ジュンだ」
「……そうですね」
「ジュンの兄貴だ」
「しつこいです」
ジュンの兄貴とする、とりとめのない会話は私の癒しになっていた。
この人と話していると、胸のモヤモヤを気にしなくてすむ。
「で、光ちゃんのコーチ、どうして辞めたんですか?」
まだ理由を聞かせてもらってない。
ケンカでもしたのだろうか?
「同じだと思った。でも、違ったんだ…光にもう僕は必要ない」
「何が何だかわかりませんね」
「光は既に別の道を見つけた。その邪魔はしたくない」
「えっと、つまり、夜鷹さんは光ちゃんにフラれた、と?」
「そう、なのか?……そうか……そうだったのか…わぁ…きっつ…」
お、落ち込まないで!
黒一色の男がガチへこみすると負のオーラがすごいよ。
光ちゃんから引導を渡した?そんなことある?
二人の関係はよく知らないけど、夜鷹さんは言葉が足らないクソボケなので、大きな行き違いがあったりしてそうだ。
光ちゃん視点では、夜鷹さんがいきなり別れを告げて、光ちゃんが『あの野郎ふざけんな!』と怒っていたり……十分ありえる!
「先生と呼ばれたのは、アレが最初で最後だったな…」
「あの、今からでもちゃんと話をしたら」
「それはできない。僕たちはもう
「よっわぁ!メンタルクソ雑魚じゃないですか」
「キミは知らないんだね。光が僕に向ける豚を見る様な、あの目を……ふ、ふふふ///」
「思い出して興奮するな」
本当にどういう関係だったのやら?
話によると、夜鷹さんは光ちゃんのためを思って別れたらしい。
それがうまく伝わっているかは、微妙だけどね。
一方的にもらってばかりの私とは違う。
真に相手を思うなら、時には突き放すことも必要なのか。
「光ちゃん、新しいコーチを探すのかな?」
「慎一郎君がなんかするだろう。僕がいなくなった程度で、あの子は止まらない」
「光ちゃんに教えられるコーチなんて、それこそメダリストぐらいじゃ…」
「新たなコーチを求めて、名港ウインドを去ってしまうかもね」
他人事みたいにいっているけど、その原因を作ったのはあなたでしょうに。
「光が別の男をコーチに…ふふ…これがNTR」
「まだ新コーチが男だと決まってないでしょ。未練タラタラなの見苦しいです」
「誤解しないでもらいたい、僕は光に対して恋愛感情は持っていない。慎一郎君と同じ、父親目線で彼女の身を案じているんだ。もし『パパ』と呼ばれたら、僕は昇天する」
ショック死したり昇天したり、忙しい奴だな。
どうせ、そういう気持ちを光ちゃん本人には伝えていないんだろう。
「ちゃんと言葉にするべきでしたね」
「そんなことをしたら心停止するだろ?僕はキミが思う以上に繊細なんだ」
「めんどくさい人だなあ」
「よく言われる///」
「褒めてないです」
夜鷹純すぐ死ぬ。
危なっかしいというか、なんだか放っておけない人だ。
司先生といい夜鷹さんといい、スケートやっている男性は頭のネジが基本外れているの?
理凰君とかはしっかりしてそうだけど…
「キミはどうするか、決めたかい?」
「まだです。夜鷹さんが仕事を決めるまでには、何とかしたいです」
「じゃあ、永遠に決まらないかもね」
「おい、働けよ」
「その蔑んだ目、光のとはまた違った
「ゾクゾクするのやめてください。通報しますよ?」
ドMの相手するの、すごく疲れる。
「私、光ちゃんみたいになりたい。どうすれば、あんな風になれるんだろう?」
私は何となく、いつも考えている事を口に出した。
返答は求めていなかったが、夜鷹さんは反応を示す。
「キミは光にはなれないよ」
「私じゃ、何をやっても勝てないって…こと、ですか?」
「そういう意味じゃなかったが…まあ、そうなるな」
お前では無理だ。
ずっと自問自答していたことを言われて、頭の奥がカッとなった。
何もかも無意識の行動だった。
気付けば、私は夜鷹純に縋っていた。
司先生ではなく、ライバルのコーチをしていた、この男に…
「教えて下さい。私が勝つための方法を」
「どうしても勝ちたい、強くなりたい、絶対に負けたくない」
「元、金メダリストにして、光ちゃんのコーチだったあなたなら、私を強くできますか?」
なりふり構わない姿勢でまくし立てる。
それほどまでに、私は勝利に飢えていた。
「自分が何を言っているのか、理解しているか?」
「………」
「仮に一番になったとして、キミに幸せは訪れない、氷の上でしか生きられない空っぽの獣になって、それが何になる?」
空っぽの獣になった男が諭すように言う。
やめておけ、今なら引き返せる、自分のようになってはいけないと、私を心配している。
余計なお世話だ。
「それでも!私は勝ちたい、一番になりたい、ならなくちゃいけない!」
「氷の上は私の舞台、私の居場所だ。ここで最強になれないなら生きている意味がない!」
「強くなれるなら、幸せなんていらない、私は……空っぽの獣になりたい!!」
これが私の本性。
どんな犠牲を払っても一番になりたいという狂気。
こんな事を言う私を、司先生はきっと止めるだろう。
あの人は優しいから、優しすぎるから、私が犠牲を払うことを良しとしない。
今、全部理解した。
私が払うべき犠牲がわかった気がする。
最低最悪の思い付き、でもそれが正しい、それしかないと思えてしまう。
醜い醜い醜い!勝ちたいというエゴを貫く私は、なんとおぞましく醜悪なのだろうか。
心だけは、とっくの昔に獣だったみたい。
「そうか…ここに、いたのか…」
私のエゴを聞き終えた夜鷹さんは、震える声で呟いた。
彼の冷たい目は大きく見開かれ、私の顔をまじまじ凝視する。
ちょ、近い近い近い!無駄にイケメンな無職が至近距離でガン見してくるの怖い!
勢いで生意気言ってすみません!
何か気に障ったなら謝ります。たい焼き奢るから許して!
「キミの覚悟はわかった。だが、ゆっくり考える時間も必要だろう」
「えっと、それはどういう」
「三日後だ、覚悟が完了したのなら、またここで会おう」
「あ、ちょっと!」
ひとりで何かを納得した夜鷹さんは、私を放置して立ち去ってしまった。
浮かれているような気がしたけど、アレは何だったのか?
「三日後か…」
この事を司先生に相談するべきだろうか?
いや、ダメだ。話してしまったら私の決意は揺らいでしまう。
私の醜い本音、司先生にも聞かせたことなかったのにな…
●
「東京に行く」
「えぇぇ」
三日後、例の公園で私は夜鷹さんの計画を知った。
「スターフォックスFSC、そこでコーチをすることにした」
「おめでとうございます。お仕事決まったんですね。で、誰を教えるんですか?」
「キミだ」
「は?」
「キミだよ、結束いのり。僕はキミのコーチになる」
「なんですと!?」
「だから、東京に行くよ、準備して」
「待ってください!話が急展開すぎて理解が追いつきません」
「キミが望んだ事だろう?今更、冗談だったでは、すまないよ」
確かに、私は夜鷹さんを頼った。
でも、私のコーチになって東京へ行くだなんて…
そんなの…
「自分を偽るな、わかっているはずだ、キミは今のままでは満たされない」
「……う」
「一番になるのだろう?光も他の子も全部蹴散らして、金メダリストになる、それがキミの望みだ」
「それは、でも…」
「今ここで決めて、僕と一緒に東京へ行くか、ここに残ってずっと
「………」
「冷たい風に触れる時が来たんだよ、いのり」
大いなる分岐点。
ここでの選択が私の人生を変えてしまうだろう。
ためらう素振りはやめろよ。
後ろめたい自分を隠したいだけだろ?そんなに自分が可愛いか?
そういうズルいところ、夜鷹純にはとっくに見抜かれているぞ。
私の覚悟はとっくに決まっていた。
司先生を蚊帳の外にして、決めてしまっていた。
最悪だ…私って…本当に最低だ…
司先生…私は…あなたを‥‥
私は夜鷹純と共に行くことを決めた。
●
その日のうちに、私は司先生に別れを告げた。
当然の如く司先生は動揺を示した。
だけど私は、彼の懇願も嘆きも全部無視して、一方的に切り捨てた。
私の決意が固いと知って最後には送り出してくれたけど、納得はしていない顔だった。
あの後、彼はどうなったのだろう?
やめよう……私には司先生を心配する権利すらない。
胸の奥に感じる痛みは、きっと気のせいだ。
醜い空っぽの獣には、痛み感じる心などないのだから…
司先生を裏切って、夜鷹
勝つためには恩人すら切り捨てる心無き獣。
それが私、結束いのりの本性だった。
・・・・・・・・・・
今でも考える、あの日、あの時、あの場所で、
司先生に出会ったのが、私でなければよかったと…
彼は私なんかよりも、もっとずっと、いい生徒に恵まれるべき人だった。
何があっても絶対に裏切らない、そんな相手こそが彼のそばにいるべきだ。
こんなことを言えた義理ではないけど、願わくば、
司先生の希望になれる、素敵な生徒が見つかりますように…