光ちゃんと司先生が結ばれる話   作:青紫

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赤ずきん

 カミサキの武力集団・狼亜(ロア)の襲撃を受け窮地に立たされる、司。

 救援に駆けつけた光と共に何とか撃退するが、そこへ狼亜の増援が到着する。

 話し合いでの解決を望む司たちの前に現れたのは七星狼(しちせいろう)・壱の牙の肩書を持つ老婆。

 通称、ばぁや。

 ばぁやの放った挨拶代わりの一撃で、司の体はぶっ飛ばされるのであった。

 

 ・・・・・・・・・・

 

 訳も分からず大勢に襲われる恐怖、知らない一面を見せた光への驚き、殺意マシマシで発砲された弾丸への対処。

 一連の出来事で俺のストレスは既にピークに達していのだ。

 そこへ更なるストレス要因、謎のババアによる謎の一撃で、ついに俺の中で何かが切れた。

 転がりながら衝撃を逃しダメージを最小限に、完璧な受け身を決めてババアを睨みつける。

 

「何をするだァーッ!ゆるさんッ!」

 

 拳を握りながら咆えた。ジョナサンばりに咆えた。

 即座に体勢を立て直した俺にババアは『ほう』と感心したような息をもらしている。

 カミサキだろうが何だろうが知った事か!この得体の知れないババアは敵だ!

 話し合いすら許されない状況、光を守るためにはババアを倒すしかない。

 

「司さん戦っちゃダメ!これ負けイベントだよ」

「光、お前のことは死んでも守る」

「フラグ立てなくてもいいから!死ぬだなんて言わないで」

 

 止めてくれるな、負けるとわかっていても戦わないといけない時もあるんだ。

 後から思うと、この時の俺は完全にどうかしていた。

 度重なる理不尽と、格上のババアを相手取らないといけない状況に頭の中はもうグチャグチャ。

 

「光は絶対に渡さない。勝負だ」

「虚勢だとしても、その気概だけは認めて差し上げます。かかって来なさい」

「ばぁやもやる気になってる!?二人ともやめてってば!」

 

 俺VSババア、光の命運を賭けた戦いが始まった・・・

 ・・・そしてすぐ終わった。

 結論から申し上げますと、手も足も出ませんでした。

 ババア強すぎぃ!

 

 俺の攻撃は全く通用しなかった、そもそも攻撃の殆どが当たらなかったのよ。

 ババアに軽く触れられる度、俺はなすすべもなくぶっ飛びまくったというのに・・・

 そんな戦闘とも呼べない、一方的にボコられるだけの時間は長くは続かなかった。

 俺の体に限界が訪れ、その場に崩れ落ちそうになる。

 戦いの制止を訴え続けていた光がすぐさま駆け寄り支えてくれた。

 死んでも守ると言ったそばからこの始末、本当に情けない。

 

「カッコ悪いな俺…お前をマモレナカッタ…」

「わかったでしょ?ばぁやはカミサキの中でも別格の強者、幼い私も何度泣かされた事か…」

「光…き…きさまといた数か月……わ…わるく…なかったぜ…」

「死にかけのピッコロさんやめて!」

 

 俺がナメック星人になっていると、涼しい顔をしたババアが歩み寄って来た。

 光はババアから庇うように俺の顔を自分の胸に抱きすくめた。

 あの、当たってますけど?

 顔に柔らかな感触がして、何故だかとっても幸せですけど?

 順調に育ちつつあるようで、この先も楽しみである。

 しまったなあ。ババアにやられたダメージで体が動かないぞ。

 されるがままになっちゃうなあ。

 

「まだまだ拙いですが筋は良い。鍛錬を積めば上級の狼亜にも成りましょう」

「司さんは私のコーチで手一杯なの!カミサキの戦闘員なんかやってる暇ないよ」

「随分とご執心ですね光様、暴虐の限りを尽くした野生児も色を知る歳ですか…」

「若気の至りをバラすな!お願いだから!」

 

 野生児とは?

 光を見ると『聞かないでね』とニッコリされた。

 なるほど黒歴史か、小さい頃の光がどんな子だったかは興味あるな。

 

「明浦路様とお話させていただいてもよろしいでしょうか?」

「話し合う前にぶっ飛ばしておいて何を今更…」

「誠に失礼致しました。光様のお選びになった殿方を前に、気が急いてしまったようです。お恥ずかしい」

「何?カミサキってのは初対面の相手をボコらないと話もできないの?」

「違う…と、思いたい」

「否定できないところが悩ましいです」

 

 光とババア、そして控えている黒服たちが一斉に俺から目を逸しやがった。

 この戦闘民族どもめ!

 

「司さんと話がしたいなら私も一緒だよ。いいよね?」

「かしこまりました。では皆さん、撤収作業をよろしくお願いします」

 

 ババアの言葉を受け、黒服たちは手際よく動き出した。

 未だに倒れ伏している者を回収し、戦いの痕跡を残さないよう後片付けを行っていく。

 銃を発砲した例の女も担架で運ばれていった。

 キレた俺と光の攻撃で大ケガをしているけど、命に別状はないようだ。

 

「ご安心ください。あの者には厳しい処罰を下し、二度と光様には近づけません」

「そうしてくれる?司さんはもちろん、私の大事な人たち全てに接触禁止を厳命するから」

「心得ております」

 

 撤収作業を終えた黒服たちは一礼して去って行った。

 俺を見る目は少々訝しいが、光には頭が上がらないといった感じがする。

 残されたのは俺と光とババアの三人だ。

 話しをするために場所を変え、今は襲撃現場からほど近い公園にいる。

 ババア戦で疲労困憊の俺はベンチに仰向けになった。

 ベンチは固くてひんやりしているが、後頭部は柔らかくて温かい。

 なぜなら、光が膝枕をしてくれているからな!

 この枕すごいよぉ!天才スケーターは膝枕も一流なのね。

 何だか凄くいい匂いもするし、見上げると光の端正な顔が微笑んでくれる。

 

「どうかな?」

「最高だ。このまま眠ってしまいたい」

「眠ってもいいよ。あなたが望むだけ、ずっとこうしててあげる」

 

 優しく頭を撫でられてしまい、本当に眠ってしまいそうだ。

 年下の全肯定美少女に甘やかされる幸せ。

 そうか、ここが天国だったか・・・

 久々のヒカルセラピーは俺の心身に安らぎを与えてくれた。

 

「コホンッ!お二人とも大変仲がよろしいようで、私の存在を忘れる程に…」

「忘れてないよ。司さん、ばぁやとお話するけどいいかな?」

「俺も聞きたい事がある。お話とやらを始めようじゃない」

 

 楽にしていいと言われたので、膝枕されたままのリラックス態勢で会話に応じる。

 まずは光の質問から始まった。

 

「襲って来た狼亜たちは何?アレはばあやの指示だったの?」

「滅相もございません。此度の愚行、その全ては奴ら『光様好き好き愛してる団』の独断によるものです」

「好き好き愛してる団www」

「うっわぁ、まだそんなのいたんだ。引くわー」

 

 カミサキの中でも光を信奉するファンクラブが存在していたらしい。

 光が幼い頃から複数の団体がいて、光の成長と活躍を見守って来たのだとか。

 

「一部の過激なファンが暴走して俺を襲ったと?」

「その通りでございます。私共の監督不行き届き、誠に申し訳ございません」

「嘘つき…ばぁやは知っていて止めなかった癖に」

「どういうことだ?」

「ばぁやはあの連中をいつでも処分できた。あえて泳がせていたんだよ。全ては、司さんの反応を見るためでしょ?違う?」

「ホッホッホ。さすがの慧眼、恐れ入ります」

 

 つまり、ババアは俺が襲われる事を事前に知りながら放置していたのか?

 そのおかげで、銃で撃たれたんだぞ!

 うん。やっぱり倒さないといけないな、この妖怪ババア!

 俺と光はババアをじっとりとした目で睨むが、ババアはどこ吹く風だ。

 

「司さんだけじゃなく、私の反応も探りたかったみたいだね」

「試し行為かよ。やられた方はいい気分しないな」

「なんでこんな…私が人を好きになるのはそんなにおかしい?七星狼は恋愛禁止だって言うの?だったら今すぐ辞めてやる!狼嵜の姓も要らない、今日から明浦路光として生きていくから」

「勝手に籍入れられたわ。どうすんだコレ」

「そう興奮なされますな。別に光様の恋愛は禁止されておりません」

 

 だったら何故?

 ババアは探るような目で俺をじっと見つめる。

 

「私共が知りたかったのは…明浦路様、あなたが真に光様の味方であるかどうかです」

 

 何だその言い方は?

 それじゃあまるで、俺が光の敵かもしれないと疑っているみたいに聞こえるぞ。

 

「な、何を言っているんだ。俺はコーチだぞ?光の味方に決まっているだろうが」

「そうだよ!司さんの何を疑ってるのか知らないけど、失礼すぎる!」

「大体俺は一般人だ。光のバックにアンタらみたいなのがいた事すら、今の今まで知らなかった」

「一般人?これは異なことを…ただの一般人が低級とはいえ狼亜を一蹴し、弾丸を回避するほど力をみせた?冗談が過ぎましょうw」

「アレは光が一緒だったからで…」

「そうそう、私を守るために覚醒した愛の力だよ」

 

 一般人だと言い募る俺をババアは首を振って否定した。

 あの、本当に一般ピープルなんですけど・・・

 

黒狼街(こくろうがい)という場所をご存知でしょうか?」

「日本の主要都市、その地下に広がるアウトローな街でしょ。国とカミサキが共同で管理運営しているのは知ってる」

「そこの名古屋支部・地下闘技場で行われる、ルール無用の武闘試合に面白い人物がいると聞きまして」

「はぁ?」

「不定期に現れては並み居る強豪を打ち倒し、優勝賞金をかっさらう化物がいると」

「大した奴がいたもんだ」

「額から血を流し壮絶に戦う姿から、ついた異名は『赤ずきん』」

「え、こわっ」

「よくわからないけど、その残虐ファイターが何なの?」

 

 俺も光も頭に『?』マークが浮かぶ。

 地下闘技場に出没する化物が何だというのか?

 困惑する俺たちをよそに、ババアは懐から取り出したタブレットで動画を再生してこちらに見せて来る。

 騒がしい怒号と歓声の中、リングで激しく殴り合う男たちが映し出された。

 お、いい筋肉しているな。

 特にこの流血している方が・・・なんか見覚えある顔してない?

 

「これはあなたですよね?『赤ずきん』明浦路司様」

 

 あ、なんだ俺かぁ。

 通りで見覚えあるはずだわ。

 

「えええぇぇーーー!?俺ぇぇぇ!?」

「司さん!?何やってるの!本当に何やってるの!今日よりもずっと危ない事してるじゃん!」

「ちょ、ちょっと待ってくれ!こんなの身に覚えが……あーアレか」

「身に覚えあるんだ。なんで黒狼街に行ったの?しかも地下闘技場って…」

「光、スケートを続けるにはな、金がかかるんだよ!」

「シンプルにお金目的!?」

「そうだ俺は金が欲しかった」

 

 遡ること数年前・・・

 今でこそコーチとして生計を立てるが、当時の俺にはとにかく金がなかった。

 親からの援助は得られず、バイトで食いつなぐ日々、そんな時だ。

 繁華街の裏路地で『キミ、いい体してるね。稼げるバイトしないか?』と声をかけられたのが始まりだった。

 空腹で思考能力を欠いていた俺は、怪しい男たちに言われるがままどこかに連れて行かれ、

 気が付いたら・・・

 なんかよくわからん武闘大会で優勝していたのだ!

 結構な大金を貰ってホクホク顔で帰宅したのを覚えている。

 それから、金に困る度に何度かバイトに参加させてもらっていたんだけど・・・

 『赤ずきん』はねーよwww

 

「昔の話だ。過去のちょっとした火遊びで、ヤバい奴認定されても困る」

「はて?最後に赤ずきんが優勝した試合は去年となっておりますが?」

「……司さん?」

 

 そ、そんな目で見るなよ。

 お金がすぐ無くなるのが悪いんや。

 スケート用の装備一式に、耕一さんと羊さんの誕プレ買ったりとかさあ。

 あとは、めっちゃ良く効くプロテインが高くて・・・

 どうしよう、光の目がどんどんハイライトを失っていく。

 プロテイン禁止はしないよね?

 

「ちょっとバイトをしただけで、カミサキから疑われるのは納得いかん」

「あなたをバイトに誘った連中はカミサキの敵対組織。『赤ずきん』は奴らの手先だと裏の業界では有名です」

「うそやん」

「つ・か・さ・さーん?」

「ひぃぃ!?信じてくれ、光!俺は本当に何も知らなかったんや!」

 

 今回の事件概要はこうだ・・・

 

 光様に好きな人ができる。いろんな意味で沸き立つカミサキ一同。

          ↓

 相手の男は敵対組織の人間?光様は悪い男に誑かされたのか?

          ↓

 光様のファンクラブが暴走、利用するために放置。

          ↓

 想定通り司が襲われる。敵か味方か見極めさせてもらうぞ。

          ↓

 光を命がけで庇う。満を持してばぁや登場。

          ↓

 司をボコってスッキリ。これぐらいで勘弁してやる。

          ↓

 おやおや、思いのほか光様がゾッコンラブなご様子。

 

「そういう経緯でしたので、このような形で明浦路様を試させていただきました」

 

 何も知らなかったとはいえ、これは俺が悪いみたいだ。

 良い子のみんなは怪しいバイトはしちゃダメだぞ! 

 光にもババア…ばぁやさんにも謝り倒して許してもらった。

 

「俺の疑いは晴れたんですよね?」  

「はい。明浦路様と光様の態度を見ていれば、想い合っているのが伝わってきますとも」

「あー、そ、そうっスかね…」

「特にゴム弾から光様を守り抜いたお手並み、大変見事でしたよ」

「ゴム弾だったのかよ!頬っぺた切れたのに…どこから見ていた!?」 

「きっと夜間警備用のドローンで一部始終監視していたんだよ。プライバシーも何もあったもんじゃないね」  

 

 良からぬ動きを見せていた、あの女の銃は被殺傷武器へとすり替えられていたらしい。

 あの時は本物だと思っていたから、かなり焦ったぞ。

 ゴム弾でも当たれば骨ぐらい折れるからな。光に当たらなくて本当によかった。

 ドローンで監視とかもうヤダ怖い。

 

「ばぁやの言い分は理解したよ。結局、全部私のためだったんだ」

「さようでございます」

「御前も一枚嚙んでいる。いや、試し行為自体が御前の発案だったみたいだね」

「御前は光様の身を案じております故…」

「だとしても、司さんを危ない目に合わせたのは許せない。私に一言、相談してくれもよかったのに」

 

 光は怒っていた。

 俺のために怒ってくれていた。

 光にとってばぁやさんや御前なる人物は、目上の存在であるにもかかわらず一歩も引かない物言いだ。

 

「御前に伝えておいて、次同じような事をしたら……私は狼嵜をやめるからね」

 

 膝枕されている俺まで息が詰まるようなプレッシャー。

 敵意をむき出しにして光はばぁやさんを威圧した。

 

「ふふ…本気で明浦路様が好きなのですね」

「そうだよ。私の恋は御前にだって邪魔させない」

「承りました。光様の言葉、御前へと確かにお伝えしましょう」

 

 ばぁやさんは深々とお辞儀をして立ち去っていった。

 去り際に俺へと頷いてみせたのは『光様を頼みます』で合ってると思う。

 二人っきりになった夜の公園で俺たちは同時に長いため息をついた。

 緊張の糸が切れて、脱力してしまう。

 

「終わったんだよな?」

「うん。なんとかなったね」

 

 とんでもない目にあったが、俺も光も無事だ。

 非日常に満ちた夜を切り抜けた疲労感と、妙な達成感がある。

 

「お前、結構ビビッてただろ?あんなこと言って大丈夫だったのか?」

「大丈夫じゃないよ。あ~怖かったぁ……ばぁやもだけど御前はマジでヤバい人だから、あの方が本気になったら私の首が物理的に飛んでもおかしくないよ」

「マジかぁ…」

「その時はたぶん、司さんの首もセットだと思う。お揃いだね☆」

「なんて嫌なセットメニューなんだ」

 

 仲良く晒し首ってか?笑えねぇ・・・

 

「あーあ、折を見て説明するつもりだったのに、急にいろいろバレちゃって…こんなはずじゃなかったのになあ」

「心中お察しいたします」

「ねえ、嫌いになった?こんな面倒事を抱えた女とは縁を切りたい?」

「どうしてそうなる。お前の実家には正直ドン引きだが、それがどうしたって感じだ」

「器の大きい男だね。嫌われても大好きだよ」

「嫌いになんかなるかよ。もう逃げないって言っただろ?誰に何を言われても、俺はお前のコーチであり続ける。必要ならばぁやさんや御前とやらにも逆らってやる。メッチャ怖いけどな!」

「司さん…愛してる…」

「そうか」

 

 『俺もだ』と言いかけたのをグッと我慢。

 雰囲気に流されてはいけない。

 そういうのは、コーチとして結果を残してからだ。

 『そうか』としか答えられない俺を、どうか許してくれ。

 

「羊さんたち心配しているかな。もう少し休んだら帰ろうぜ」

「『野外でハッスルしてます』て、LINE送っておいたから大丈夫だよ」

「文面はもうちょっと考えてくれ」

 

 羊さんたち絶対誤解してるわ。

 帰ったら『お楽しみでしたね』とか言われそうで嫌だ。

 

「今日は私の実家が迷惑かけたけど、あまり危険な事はしないでほしいな」

「面目ないっス」

「怪しいバイト禁止!地下闘技場の試合なんて下手したら死人が出るんだから」

「悪かったよ。無知でごめん」

「黒狼街に行くなら同伴させて、私と一緒なら司さんはカミサキの一員って事になるからね」

「なあ、俺ってばお前のコーチになった時点でカミサキの構成員なの?」

「裏の住人から見ればそうだね。ばぁやたちの試練も合格して万々歳~」

 

 万々歳か?知らぬ間に俺の経歴ヤバいことになってないか?

 夏合宿では表の人たちにも発表するんだよな。

 ・・・もう逃げられないゾ☆

 

「司さん、赤ずきんだったんだwww」

「そのリングネームやめてくれよ。今日初めて知ったけど恥ずかしいっ!////」

「赤ずきんの試合動画、ばぁやに頼んで送ってもらおう」

「やめて!俺の黒歴史鑑賞しないで!」

「流血しながら戦う司さんも好き」

「わかっていると思うが、この事は誰にも言うなよ」

「了解。カミサキの事も含めて、二人だけの秘密だね」

 

 裏の世界に片足突っ込んだ俺と、最初からどっぷりつかっていた光。

 なにやら共犯者のような関係になってしまったが、これはこれで相性がいい気がして来た。

 

 さて、光の膝枕も堪能したことだし、そろそろ帰ろう。

 起き上がろうとする俺の頭を光は手で押し留めた。

 ちょっと、何やってんの?

 

「赤ずきんはね、オオカミに食べられちゃうんだよ?」

「はぁ、そうですか」

「赤ずきんはオオカミに食べられちゃうんだよ、性的に!」

「それは違う」

「オオカミな私は赤ずきんな司さんを捕食する。これは至極当然のこと」

「膝枕しながらそんな事を考えていたの?引くわ」

「ここなら羊ちゃんたちの邪魔は入らない。では、いただきまーす」

「ちょ、まさか本当に野外でアーッ!!」 

 

 ・・・・・・・・・・

 

「ううっ…もうお婿に行けない…」

「行けるよ。狼嵜司にならすぐになれるからね…んっ…」

「いつまで続けるねん?」

「んー?傷が塞がるまでかな?」

 

 銃で撃たれた頬の傷から出血していたのを忘れていた。

 光はそれがずっと気になっていたようで・・・

 

 今、俺の頬っぺたをペロペロ舐めております。

 

 オオカミというか犬みたいな奴だ。

 舐めるだけじゃなくて吸い付いて来たりもするので、ヒルかもしれない。

 本当に何のプレイだコレ?

 光曰く、これもヒカルセラピーの一環らしい。

 

「私は司さんの傷を癒す能力者。その根拠は無い」

「無いのかよ」

「無いけど、たぶん治るよ。信じて…あむっ…」

「くすぐったい///」

「我慢我慢、もうちょっとだから、ね?」

 

 頭がガッチリ固定されていたので、俺は終始なすがままだった。

 無理やり振りほどいたら、勿体ないとか思ったりはしていない。

 この光景を誰かに見られたら俺は社会的に死ぬだろう。

 その時は、光と一緒に裏社会へ逃げてもいいか、とバカな考えがチラついてしまう俺だった。

 

 数日後、頬っぺたは傷があった事すら嘘のように完治した。

 ヒカルセラピー侮りがたし。

 

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