光ちゃんと司先生が結ばれる話   作:青紫

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既知との遭遇

 会いたいと思っていた人が突然目の前に現れたらどうする?

 普通なら運命的な何かを感じたりするのだろう。

 だけど、俺の場合は違ったようだ。

 只今絶賛、運命ではなく恐怖的な何かを感じています。

 

「……」

「……」

 

 狼嵜光だ。

 フィギアスケート界期待の新星、天才少女の狼嵜光がそこにいた。

 今すぐにでも逃げ出したいのに足が動いてくれない。

 蛇に睨まれた蛙状態だ。

 見られてる、俺今めっちゃ見られてる。

 

 俺の壊れた脳みそが創り出した幻などでなくご本人の模様。

 下ろした前髪の隙間から覗く瞳は爛々と輝いていて生気に満ちている。

 その瞳の輝きが紛れもなく彼女が本物の狼嵜光なのだと雄弁に物語っていた。

 そんなに見つめるなよ…漏らしちゃうだろ?

 マジで目力パネェな。

 

「……」

「……ふふ」

 

 なにわろてんねん。

 

 何がそんなに楽しいのかニヤニヤしながら俺を観察する狼嵜光。

 獲物をいたぶる瞬間を想像して楽しんでます?

 くっ、殺せ!・・・嘘です殺さないで!

 

 目と目が合う~瞬間好~きだとぉ気付~いたぁ~(司の脳内BGM)

 

 見つめ合うこと数分間。

 案の定、先に均衡を破ったのは狼嵜光の方だった。

 

「立ち話もなんだし座ったら?」

 

 そう言って彼女は隣のコンクリートブロックをポンポンと叩く。

 そこに座れと?猛獣の攻撃範囲内に獲物自ら飛び込んでこいと?

 無理です怖いですこれ絶対罠です。

 

「司先生?」

 

 ノーリアクションを不信に思った狼嵜光が可愛く小首を傾げて名前を呼んで来る。

 いちいち可愛いの何なの?

 落ち着け俺、まだこの危機的状況を回避する策はあるはずだ。

 

「ツカーサ?ソレタブンヒトチガイデスネー」

「何のキャラかわかんないよ。あなたどう見ても司先生でしょ?」

「奴なら死んだよ。教え子に捨てられてな」

「ならちょうどよかった。私幽霊とお話したいと思ってたの」

 

 人違い作戦は失敗。

 逃がしてくれる気はないらしい。

 

「初めまして眼光鋭いお嬢さん。どこかでお会いしたことがありましたっけ?」

「今度は初対面の設定か、めんどくさいなぁ」

「子供一人でこんな所に来ては行けない。不審者にエンカウントしたら危ないだろ?」

「今絶賛エンカウント中だけどね」

 

 それはお互い様だろ。俺からしたら君も十分不審者だからな!

 

「知らんぷりなんてやめましょう。光ですひーかーる、狼嵜光(かみさきひかる)です。はい、ちょっと呼んでみて」

「カミキヒカルさん?」

「それ違うの漫画の人!!」

 

 似てるよね。

 名前だけじゃなく、ラスボスっぽいところや目力パないところが。

 

「いいから座ってよ。話しが進まないでしょう」

「俺は君に話すことはないけど」

「はぁ?わざわざ私に会いに来た癖に何言ってるの?バカなの?」

「そっちこそ何言っちゃってるの?ここに来たのは偶然だぞ。ちょっと自意識過剰なんじゃない?」

「あるぇー?おかしいなぁ。いのりちゃんとコンビ解消したショックで自暴自棄になってようやく元気出たところ雨の中絶叫ランニングしつつも無意識に愛しの光ちゃんを探してここに来たのかと思っちゃった」

 

 全部当たっとるがな!

 この光ちゃん怖いよ~自分のこと『ちゃん』付けで呼んじゃうところもあざと怖いよ。

 俺の情報を漏らしたの誰よ?勘弁してくれよ。

 

「司先生はわかりやすいから全部顔に出てる」

「俺の顔面のバカ!」

 

 胸の内を悟られてしまった。観念して彼女の横に腰を下ろすことにする。

 人間一人分の間隔を開けて座る。すると何故か狼嵜光がズズッと近づいて来て至近距離に。

 おい、近い、近いってば。

 改めて間隔を開けるとまた更に近づいて来る。

 この子距離感エッグッッ!!ピッタリ寄り添うのやめてくれませんか?

 何が望みだ?インファイトをご所望か?

 

「美少女の急接近を喜ばないなんて、ホモですかアンタは?」

「違いますー。危険動物から距離を取っただけですー」

 

 くそっ、こいつ自分で言うだけあって可愛いな。

 端正な顔を近づけるのやめなさい。惚れてまうやろ!

 

 ●

 

 バグった距離感はそのままに獣との会話を試みる。

 

「どうして君がここにいる?」

「偶々オフだったので、いのりちゃん目当てでルクス東山FSCに行ってみるとなんと!既に東京へ旅立った後でした~。途方に暮れた私はフラフラと街を彷徨い気付けばこの高架下まで…」

「で、本当は?」

「ルクス東山FSCには行ってない。最初からここでスタンバってた」

 

 はい?最初からだと?

 よく見れば狼嵜光の服は雨に濡れてはいない。

 俺が現れるずっと前から高架下で待機していたなんて・・・変わった奴だな。

 

「べ、べつに司先生に会いたかったからじゃないんだからね!」

 

 突然のツンデレ、あーはいはいカワイイカワイイ。

 

「この日課を始めたのは5日前なんだからね!」

 

 暇か?暇を持て余したカミサキの遊びなのか?

 

 要約すると狼嵜選手は5日前から毎日同じ時間帯この場所で張り込みをしていた訳だ。

 いつ来るかどうかもわからない俺を待ち続けて・・・アホだな。

 理凰さんを経由するなりして連絡してくれたら、俺から会いに行ったのに。

 

「約束なしでバッタリ再会したほうがロマンチックじゃない?」

 

 知らんがな。

 だからといって、こんなギャンブル性のある方法をとらなくても。

 

「でも、司先生はちゃんと来てくれた。私の勝ち」

 

 偶然だっつーの。

 

「あーあ、運命感じちゃうなー」チラッ

 

 運命か・・・

 いのりさんのコーチになると宣言したあの日、俺は確かに運命を感じたのだ。

 それなのに、それなのに・・・

 やりました!やったんですよ!必死に!その結果がこれなんですよ!

 いのりさんのコーチになって、苦楽を共にして、今は何故か猛獣が傍にいる。

 これ以上何をどうしろって言うんです?何と戦えって言うんですか!

 

 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・あーホント世の中クソだな。

 

「先生?……司先生ってば!」

「っ!?あ、ああ悪い。ボーっとしてた」

 

 会話中に意識が飛んでいたようだ。

 膨れっ面した狼嵜光が両手で俺の頬を包んでいるのは何故?

 痛っ!なんか頬っぺたがヒリヒリするんだけど。

 こやつめ、ハハハ。俺を起こすために往復ビンタくれやがったな。

 もっとこう優しく起こすとかできんもんかね。

 

「いのりちゃんショック結構重症?」

「かもね。近いうちにカウンセリング行く予定」

 

 あの日から俺は壊れてしまったのだろう。

 知り合いたちにも雰囲気が変わったと言われるし、頭の中がぐちゃぐちゃで考えがまとまらない。

 言葉遣いも妙な感じになっている自覚がある。

 きっともう俺は前の自分には戻れない。

 

「前の熱血ピュアな感じもいいけど、今の司先生も好きだよ。からかい甲斐がありそうで」

「いじめカッコ悪い」

「いじめじゃないよ。愛あるスキンシップだよ」

 

 屈託なくと笑う狼嵜光。

 からかい上手の狼嵜さんはいろんな意味で手強いぞ。

 

 夜鷹純がコーチを降りた件はさして気にした様子もない。

 彼女も何かと大変だったろうに、強い子だ。

 

「あの人、自己中の塊だからさ『好きにしろ』とか言われて最後もアッサリ気味だったな」

 

 わかるー。

 それで君も『あ、お疲れっス』みたいな感じで軽く別れてそう。

 君たちみたいなカラッカラに乾ききった関係性嫌だわ。

 湿度が足りない。

 

 俺なんか、いのりさんの前で泣くのを必死に堪えたんだぜ?

 PTSDを発症したんだぜ?あれから毎晩悪夢見てるんだぜ?

 

「いのりちゃんと組んだのも意外じゃなかったなぁ。あの二人根っこが一緒だから」

 

 そういえば夜鷹純もいのりさんを同類と言っていたな。

 え?いのりさんこのままだと根暗の人でなしに成長しちゃうの?

 ご家族が泣くよ?俺も泣くよ?

 

「これからどうするつもりだ?」

「スケートは続けたいな。いのりちゃんとの勝負もあるし」

「新コーチのアテはあるのか?」

「それは何とかなりそう。これからの交渉次第だけど」

 

 ほぇ~、もう新しいコーチ決めちゃってるんだ。

 この行動力、俺も見習いたいね。

 狼嵜光がオファーを出すような人材、一体何者なんだ?

 

「司先生はどうするの?」

「俺は……」

「①新しい金の卵を見つけてコーチを続ける」

「え?」

「②選手として現役復帰する」

「ええ?」

 

 突然、選択肢出して来たんだけど?

 この中から選んで決めろってこと?

 

「③スケートを嫌いになって全部やめちゃう」

「………」

 

 この子、どこまで俺を理解しているんだ。

 

 ②はありえねぇよ。

 そんな気力残っちゃいないし、ブランクが長すぎた。

 元々始めるのが遅かった俺が今更どうこうできる程甘い世界じゃないのだ。

 

 ③についてはここ最近ずっと考えていたことだ。

 これまでの人生全てを否定することになる最悪の選択。

 しかし、何もかも投げ出してしまいたい衝動も確かに存在するのだ。

 

「おすすめは断然①だよ。①を選ぼう①しかないよね①に決定!」 

「結局お前が決めるんかい!」

 

 選択肢出した意味何?

 俺の心を抉っただけじゃん。

 

 いのりさんこそがマジもんの金の卵だったんだよ!

 それをまんまと奪われた情けない奴がこの俺だ!

 新しい金の卵を見つけるだと?

 そんな簡単に見つかったら誰も苦労しないんだよ!

 仮に見つかったとして、卵の方からお断りされる未来しか待ってねぇよ。

 

「先生、目ん玉腐ってんの?ここに最強で無敵のキンタマがいるのに」

「キンタマ言うな」

「先生運がいいよ。ちょうど今、夜鷹純がキンタマ(光)を出品したところ。送料無料返品不可!もちろん買うよね?」

「中古じゃんか」

「失礼な!新品未開封だよ!!謝って!せめて美品だって言って!」

 

 自称新品未開封のキンタマがうるさい。

 

 え?何この子?

 もしかして、俺にコーチをやれって言ってるの?

 

 俺に?いのりさんに捨てられたばかりのこの俺に?

 今を輝くフィギアスケート界の天才スター、狼嵜光のコーチをやれと・・・

 

 いや、無理無理無理無理無理むーりーぃぃーーーー!!

 

「そういうわけでよろしくね、司先生」

「どういうわけ!?理解が追いつかないんだけど」

「少しは察しろよ。そんなんだからいのりちゃんにフラれるんだよ」

「がはっ!」

 

 き、効いた。今のは効いた。

 いきなり言葉のナイフで心臓刺すのやめてくれないかな?

 俺もう虫の息だよ。

 

 腹を抱えてうずくまる俺の髪を掴み無理やり自分の方へ向けさせる狼嵜光。

 吐息がかかる距離に彼女の顔があった。

 ゾッとするほど綺麗な瞳に俺の情けない姿が映っている。

 

「司先生。自分がどうして今日ここに来たかわかってる?」

「無我夢中で、君に……なぜか会いたくて…」

「会うだけ?話すだけで満足?違うよね。先生は私が、()()()()()()()()ここに来たんだよね」

 

 そうなのか?もしそうだったら最悪だ最低だ。

 いのりさんを失ったことで生まれた心の隙間を、あろうことかその宿敵である狼嵜光で埋めようとしていただなんて。

 気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い。

 本当に反吐が出る。

 

「ホント最低wwでもいいじゃない。私もそれを望んでいるんだからw」

「……は?」

「私もね、司先生がほしくて待ってたんだよwwどれだけ最低な行為でも合意なんだから問題ないないww良かったねwww」

 

 心底楽しそうに嬉しそうに彼女は笑う。

 その微笑みに身震いする。

 最初からわかっていたのか、全ては狼嵜光の望んだままに事が運んだのか。

 

 餌だ。俺は餌だった。

 ここ何日かの俺の苦悩も葛藤も憤りも全部全部、狼嵜光という獣の腹を満たすための餌だった。

 俺が最初に感じた恐怖は間違いじゃなかった。

 怖い、怖い、怖い、俺はこの美しい少女の形をした獣のことが怖いのだ。

 

「そんなに怖がらないで、こっちを見て」

 

 優しい声色で獣は語りかけるて来る。

 

「これでも私はただの女の子。好きな人に振り向いてほしくて必死なだけの女の子」

 

 頭の中を直接揺さぶるような声が全身を侵していく。

 

「ねえ先生、私は最初から決めてたよ。何があってもあなたを選んだよ」

 

 だからさぁ・・・・・・

 

「あなたも私を選んでよ」

 

 結束いのりじゃなくて、狼嵜光を選んでよ。

 

 ●

 

「どうかな?」

「今の何!?何が起こった!?」

「あれ?ダメだった?結構気合入れてみたんだけど」

 

 ハアハア、なんて奴だ。

 本気で食われるかと思ったぞ。

 

 今のは催眠術とかチャチなもんじゃねぇ、狼嵜光という少女が持つ圧倒的カリスマ性に屈服させられそうになったのだ。

 危うく雰囲気に流されて頷くところだったわ。

 

 ないわー。状態異常『魅了』使って来るとかないわー。

 

「洗脳しようとしたな?」

「そんなんじゃないよ。言う事を聞いてほしかっただけ」

 

 それを洗脳と言うのじゃよ。

 狼嵜光、恐ろしい子!!

 

「よし、楽しく話せたね」

「そう思ってるのは君だけだ」

「ここからクライマックスまで一気に行くよ。ほら、立って」

「もう勝手にしてくれ」

 

 体形に似合わない力強さで俺を引っ張り起こす狼嵜光。

 立ち上がった俺の前で彼女は優雅に一回転する。

 長い黒髪とヒラヒラの服、そしてスカートの裾が翻り、彼女の魅力をより一層と引き立てる。

 たったそれだけの所作で見惚れてしまう。

 氷の上でなくとも少女の美しさは変わらない。

 細くしなやかな腕が俺に向けて伸ばされ、小さな手の平が差し出された。

 

「司先生、私と組んでよ。一緒に金メダル取っちゃおう」

 

 遊びに誘うような気軽さでとんでもない事を言ってのける彼女を呆けたまま見つめてしまった。

 一体この俺の何が琴線に触れたのだろうか?

 実力も実績もない男が真の天才である君に差し出せるもなど、何もないというのに。

 

「悔しくないの?ムカつかないの?やられたままでいいの?」

 

「アッサリ別れたなんて言ったけど、少なくとも私は悔しいし腹が立ったよ」

 

「本音では司先生も同じ気持ちだったはず」

 

「許せないよね。散々利用しておいてポイ捨てなんて、本当に何様って感じ」

 

「捨てられた者同士、協力すべきなんじゃないかな?」

 

「見返してやろう。後悔させてやろう。思い知らせてやろう」

 

「二人で最高の復讐劇(リベンジ)を始めよう!」

 

 狼嵜光が俺を誘う。

 それはとても甘美で心惹かれる提案だった。

 

 だがしかし、ここで即決できるほどの大胆さを司は持ち合わせていなかった。

 

 どうする?どうするんだ俺?こんなチャンスは二度とないぞ?

 一人では到底無理な話でも彼女となら、きっと夢の続きが見れるはず。

 狼嵜光だぞ?あの狼嵜光が俺を必要だと言ってくれているんだぞ。何を迷う必要がある。

 一歩踏み出して、あの綺麗な手を取るだけでいい。

 そうすれば、俺は彼女のものになれるのだ。

 待てよ。本当にそれでいいのか?

 お前は二度も失敗したじゃないか、三度目が上手くいく保証がどこにある?

 一人ではメダリストになれはしない。だから、コーチなんぞをやって自分を慰めているんだろ?

 そういう浅ましい気持ちを見抜かれたから捨てられたのだと、いい加減気付け。

 結束いのりの足枷になっただけでは飽き足らず、今度は狼嵜光のお荷物になるつもりか?

 冷静になって考えてみろ、狼嵜光がお前を選ぶなんて都合良すぎないか?

 もっと疑えよ。お前騙されているんだよ。

 滑稽な大人を手玉に取って遊ぶぐらい、目の前のガキはやってのけるぞ。

 彼女はそんな人間じゃない!

 お前が彼女の何を知っているんだよ?

 信じたいんだ。

 そしてまた裏切られる。

 夢を見るのがそんなに悪い事か?

 バーカ夢は所詮夢だ。

 バカはお前じゃバーカバーカ。

 

 俺は、俺は、一体どうすればいいんだぁーーーー!!!!

 

「さすがに悩みすぎぃ!腕が疲れて来たから早く決めて!!」

「うぇ!?あ……ごめんなさい」

 

 究極の選択を迫られたことで脳みそがパンクした。

 その結果、狼嵜光を放置プレイしていたらしい。

 ごめんて、許してや。

 

「私だよ?狼嵜光だよ?この私が誘っているのに何が不満なの?」

 

 自己評価高めの君に不満はないよ。

 ただ、俺の覚悟ができてないってだけで。

 

「私のコーチになるってことは『富・名声・力』この世のすべてを手に入れたの同義なのに~」

 

 お前ワンピースだったのか。

 

「もういい!こうなったら私も最終手段に出る。まったく、男の人っていつもそうですね…!」

 

 最終手段とな!?嫌な予感しかしない。

 断ったら通報からの逮捕だから言う事聞けってヤツじゃなければいいが。

 間合いを取ってにらみ合う俺と狼嵜光。正直もう帰りたい。

 

「司先生!」

「はい!なんでございましょうか!」

「もしあなたが、私のコーチを引き受けてくれたのなら」

「くれたのなら?」

 

 スーッとここで狼嵜選手深呼吸をしたぁー!

 次の一手は何を繰り出して来るのでしょうか、楽しみですね!

 

「私が司先生のお嫁さんになってあげます!」ドヤァ

 

 ※しばらくお待ちください

 

 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・っ!?

 

「ぷっ!うぷぷぷ‥‥」

「???」

 

 だ、だめだwコレは耐えられん。

 

「あはははははははwwwお嫁さんwwwおよめさんって言ったwww何こいつくっそカワイイんだどぉwwwうひぃwあー腹いてぇwwwwwあはははははははは」

 

 あはははははははwww

 狼嵜光が、あの天才少女狼嵜光が、ここまで終始俺を圧倒していたドSの獣が、およwおよめさんwwwってwwww

 いきなりすぎるよ~精神防壁貫通しちゃったじゃんかwww

 これでどうだ!みたいな顔でめっちゃカワイイこと抜かしよるwwww

 

 俺は地面を転がりながら笑った。

 『お嫁さん』という突拍子もないワードが、張り詰めた緊張の糸を完全に断ち切った故の爆笑である。

 辛いわ~光ちゃん可愛すぎてツライわ~。

 

 ふと見れば、当の光ちゃんは顔真っ赤になっており涙目でプルプル痙攣している。

 うひょ!泣き顔も可愛いとかズルいわ!ごめんちょっと興奮した。

 

「狼嵜光史上最大のプレゼンを嘲笑うとは……人の心とかないんか?////」

「ごめんwwあまりにも可愛すぎてww辛抱堪らんかったwww」

「司先生への好感度が10下がった。でも、可愛いと言ってくれたので50上がった////」

「心配になるぐらいチョロwww」

 

 あー笑った笑った。

 こんなに笑ったのはいつ以来だろうか。

 ん?なんか、気分が楽になったというかスッキリしたような。

 あれほど空虚だった胸がポカポカして来たような。

 何だろうこの気持ちは、惨めったらしくウダウダ悩んでいたのがバカみてぇ。

 まるでいのりさんと出会った頃のような・・・・・・・やめよう。

 もう、いのりさんを引きずるのはやめよう。

 彼女とは終わったんだ。

 今すぐには無理でも現実を認めて前を向かなくてはならない。

 

 これからの俺と新しいパートナーのために、やるべきことをやれ明浦路司!

 

「なし!今のなし!ここ数分間の黒歴史はどうか忘れて!いいよね?ね?先生は何も聞かなかったことにしてお願いだから!!」

 

 両手を振り回してアタフタしている可愛い生き物がいますね。

 はははは、痛い痛い。俺の記憶を物理的に消そうとしても無駄だぞう。

 先程ハイライトシーンは脳内の光ちゃん珍プレー好プレー集フォルダに刻み込んだ。

 はーいどうどう。大丈夫だから落ち着こうね~。

 

「司先生がサッサと決めてくれないのが悪い!私を辱めた責任とってもらんだからね!」

「いいよ」

「そうそう最初からそう言って……へぁ?」

「責任をとるよ。俺は君のコーチを引き受ける」

「お、おう」

 

 あれだけ騒いでいたのに急に大人しくなった光ちゃん。

 目をパチクリさせながら自分の頬をつねったり叩いたりしている。

 

「いったぁ!夢だけど夢じゃなかった!」

「そうだね」

「司先生は今日から私のコーチ」

「そうだね」

「そして私の旦那様////」

「それは違う」

「もう~本当は嬉しい癖に。教え子と嫁さん同時ゲットとかやるね~この色男」

 

 まーた変なキャラにチェンジしたよ。脇腹を肘で突くな微妙にウザい。

 女の子はいろんな顔を持っているんだね。コロコロ変化して飽きないな。

 

「あなたが私のマスターか?」

 

 バーサーカーが何か言ってる。

 それやりたかったのね。

 

「星5サーヴァントの私に令呪でいやらしい命令する気でしょ!この鬼畜マスター!」

「令呪を持って命じる。正気に戻れ」

「しかしなにもおこらなかった」

 

 今のいままで正気だったのか・・・アレで?

 先が思いやられる。

 茶番は置いといて改めてご挨拶を。

 

明浦路司(あけうらじつかさ)だ。好きな物はフィギュアスケートと筋トレ。よろしくな」

「好きな物に狼嵜光を追加しておくこと、いいね?」

「善処する」

狼嵜光(かみさきひかる)です。好きな物は明浦路司。よろしくお願いします」

「フィギュアスケートは?」

「あー、好きというか。呼吸と同じぐらい当たり前のことなので」

「キミにとっては生体機能と同義なの!?すげぇというか怖ぇぇ!」

 

 パートナーを無事?ゲットした二人の行く末は如何に・・・

 

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