光ちゃんと司先生が結ばれる話   作:青紫

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微笑みの爆弾

 東京での暮らしも板について来た頃。

 私、結束いのりは今日も今日とてフィギュアの練習に励んでいた。

 不安もあったけど、今では東京に出て来て正解だったと思う。

 学校にもクラブにも馴染めたし、友達だって沢山できた。

 夜鷹先生とお姉ちゃんのラブラブっぷりが鬱陶しいこと以外、今の生活に不満は無い。

 不満は無いのだけど・・・心残りはある。

 それはやはりというかなんというか、名古屋に残して来た司先生のことだった。

 

 光ちゃんに敗北して焦っていたとはいえ、あの様な別れ方は本当に最低だったと思う。

 腹を割って話し合い、自分の選択を理解してもらう必要があったのだ。

 必死に頭を下げてコーチを辞退してくれと、お願いすべきだったのに・・・

 それなのに私は自分のエゴで、恩人の司先生を一方的に切り捨ててしまった。

 自分の決意を曲げないため?違うだろ?

 私は司先生と向き合うことを恐れたんだ。

 醜い自分を見せたくない一心で、酷い事をいっぱい言って、司先生が混乱している内に逃げた卑怯者が私だ。

 

 司先生の絶望した顔を思い出さない日はない。なぜもっとうまくできなかったのかと思う。

 己に残った僅かな善性が『お前は最低だ』と今もずっと罵って来るが、その通りだから反論もできない。

 私は許されない事をした。

 いつか罰を受ける日が来るだろう。

 

 だとしても、私はもう選んだのだ。

 空っぽの獣になる道を、そうありたいがために最低な自分を甘受する道を。

 私の罪が許されるとしたら、自分のエゴを貫いた時だけだろう。

 一番になって金メダルを取る。

 もしそうなれたのなら、その時は・・・司先生にまた、会いたい・・・

 

 こんな最低な私でも、また会ってくれますか?

 

「ねえねえ、いのりん。とっておきの情報を仕入れたんだけど、聞きたい?」

「唐突に何ですかライリー先生?今、ストレッチ中なので邪魔しないでください」

 

 物思いに耽りながら体をほぐしていると、今日も元気いっぱいなライリー先生が話しかけて来た。

 

「つかっちの話なんだけどな~。聞かなくていいのかな?」

「興味ありません。邪魔するなら向こう行ってください。シッシッ」

「ああん。いのりん冷たいよぉ。先生を邪魔者扱いしても無駄無駄無駄ァ!勝手に喋るからね!」

 

 この人、本当に自由でつかみどころのない人だな。

 他の子たちも『やれやれ、またか』みたいな顔してるよ。

 

「つかっちってば新しい生徒を迎えたらしいのよ」

「へ、へぇ~。それは良かったですね」

 

 声が少々上ずってしまった。

 コーチを続けていくなら、新しい生徒を迎える事もあるだろう。

 それは当然のことで、自分にはそれを咎める権利は全く以ってないはずだ。

 ショックを受けるなど、お門違いも甚だしい。

 

「……」

「……」

「……終わりですか?」

「あれれー続き、聞きたいの?聞きたいのかなぁ?」

「張り倒しますよ?サッサと全部ゲロってください」

「いのりん、ヨダカ君の相手し過ぎてキレ安くなってない?」

 

 いいからはよ喋れや。

 なんだか酷くイライラしてライリー先生の金髪をわしゃわしゃしてやった。

 

「女の子なんだって!しかも、めちゃくちゃカワイイ子みたいよ。もう、つかっちも隅に置けないなぁ」 

 

 胸がチクりと痛んだ気がする。いいや、今のはきっと幻痛だ。

 フィギュア選手は女の子が多いし、可愛い子だっていっぱいいる。

 そもそも、あの司先生が下心で生徒を選ぶとは思えない。

 新しい生徒が女の子で可愛いとか普通だ。普通な事だから何も感じない。

 

「フィギュアの腕も相当なものらしいよ。どんな子か楽しみだね~」

「そうですか。で、その子のお名前は?」

「わかんなーい」

「は?ふざけてます?」

「真面目だよ。私も手を尽くして調べたんだけど、どういう訳かその子の情報が全く出て来ないのよね」

「いやいや、おかしいでしょ。そんな事あるわけ…」

「うんうん、そう思うよね。まるで魔法でも使ったみたい、それともコレは呪いの類だったりするのかなww」

 

 ライリー先生が心底おかしそうに笑う。

 オカルトめいた言動は冗談なのか本気なのかよくわからない。

 

「ともかく訳アリの子だってことだよ。必死に隠したくなるぐらいのね」

 

 訳アリでも何でもいい、新しい生徒が司先生を大事に思ってくれる子なら、それでいい・・・

 

「まあ、つかっちよりも心配なのはピカるんの方だけどね。あの子、どこで何をしているのやら?」

「え、どういう意味ですか?光ちゃんに何かあったの?」

「ピカるん、名港ウインド辞めちゃってたんだよ。今どこのクラブで練習しているのか誰も知らないの、これまた不思議だよね~」

「……光ちゃん」

「だというのに、保護者の慎ちゃんたちは全然気にした様子がないと来た。これはどういうことだろうね?」

「いや、私に聞かれても知りませんよ」

「まさかピカるん、恋人ができたのでは!男の所に入り浸ってラブラブしていたらどうしよう?」

「どうもしません。あの光ちゃんに限ってそれはないです」

「そうかな?恋しちゃうと人間変わるもんだよ、良くも悪くもね…ふふ、私にもあったな。初恋の甘く切ない思い出が///」

「ライリー先生の恋愛遍歴には1ミリも興味ないです。早く練習始めましょう」

「ひどい!!」

 

 司先生の新しい生徒、そして練習場所のわからない光ちゃん。

 私はこの二つに言い知れない不安を感じたのだが、ストレッチを終えて練習をする頃には綺麗サッパリ忘れてしまっていた。

 

 もっと気にするべきだったのに・・・

 

 ●

 

 

 今日からジュニアGPに出場する選手たちの3泊4日の強化合宿が始まる。

 ライリー先生、そして同じクラブの胡荒亜子(こあらあこ)ちゃん鵯朱蒴(ひよどりすざく)君と一緒に大阪・関空アイスアリーナへと向かった。

 続々と合宿参加者が集まる中、嬉しいサプライズが待っていた。

 三家田涼佳(みけたりょうか)ことミケちゃん、それに大和絵馬(やまとえま)ちゃんと鹿本(かもと)すずちゃん、ノービスの知り合いたちも合宿に参加するらしいのだ。久しぶりに皆に会えて、すっごく嬉しくてテンションが上がった。

 理凰君もいたのだけど、私を一瞥するなり舌打ちしてそれっきりだった。

 やっぱり司先生のことで怒っているのだろう。

 あの様子だと、まともに話はできそうにない・・・

 

「なー、光はまだ来とらんの?」

「え……なんで、光ちゃん」

 

 ミケちゃんの口から光ちゃんの名前が出て来て驚く。

 まさか、光ちゃんもここに来るの?

 何も聞いていなかった私はライリー先生の方を見ると、テヘペロしていやがった!

 

「ピカるんも当然合宿参加者だよ。言ってなかったっけ?」

「聞いてませんよ!」

「ふふん。いのりんがビックリして先生満足。今日は新しいコーチも一緒らしいから、みんな興味津々なんだよ。さてさて、ピカるんのお眼鏡にかなったのはどんな人なのかな~」

「光ちゃんの新コーチ…」

 

 光ちゃんの事だ、生半可な人物では歯牙にもかけなかっただろう。

 彼女が連れて来る人はきっと、光ちゃんという規格外と同じ目線を持つことのできる、規格外のコーチだ。

 それってヤベェ奴じゃない?会うの怖くなって来た。

 

「いのりちゃん。元気そうね」

「瞳…先生…いらしていたんですね」

 

 ルクス東山にいた頃、お世話になった瞳先生も来ていた。

 多分、理凰君の付き添いなんだろう。

 私と会っても気まずいだろうに声をかけてくれた。

 相変わらず優しくて素敵な人だ。

 ヤバい。ろくな説明もなく急にクラブを移籍してしまった手前、何を話したらいいかわからない。

 

「高峰瞳先生こんにちはー!アッツイですねー!この日差しでジリジリ焼かれちゃってもう大変ですぅ」

「こ、こんにちはライリー先生、日本語お上手ですね」

「私なんてまだまだですよ。あ、ホテルはどちらなんですか?合宿中いっぱいお話したいです~」

 

 割り込んで来たライリー先生が瞳先生と挨拶がてら談笑している。

 会話に困っている私を助けてくれたのは嬉しいけど、瞳先生から情報を引き出したくて堪らないのが透けて見える。

 その証拠に、あざとくフレンドリーな感じが普段の二割増で、瞳先生もタジタジだ。

 

「ちょっと小耳に挟んだのですけど、つかっち…司先生が新しい子のコーチをしていると聞きまして…ぶっちゃけどんな感じです?」

「……ええ、二人とも仲良くやってますよ。仲が良すぎて困るぐらいに」

 

 瞳先生がチラッとこちらを見たのは、元弟子の私を気にしたからだろう。

 それにしては、なんだか複雑な顔をしていたけど?

 

「うわ!そうなんですね。どんな子か楽しみすぎます~きっと才能あふれる子なんでしょうね!」

「すぐにわかると思いますよ。では、私はこれで」

 

 ライリー先生の相手に疲れたのか、瞳先生は他の参加者たちへ挨拶をするため、そそくさと行ってしまった。

 私に小さく手を振ってくれたのが何だか嬉しい。

 

「う~ん。あの余裕と若干の疲れが入り混じった感じは何だろうね?」

「知りませんよ。瞳先生にちょっかいかけるのはやめてください、みっともない」

「ぶーぶー。いのりんだってつかっちの新弟子が気になってる癖に~」

 

 自由過ぎるライリー先生が迷惑かけないよう、亜子ちゃんと共に見張っておかないといけないな。

 それから、私も一通りの挨拶回りを済ませ、ミケちゃんたちとのお喋りに興じていた時だった。

 

 突き抜けるようなエンジン音と共に黒と銀の何かがやって来た。

 その何かは驚いて目を見開く合宿参加者の前でピタリと停止してみせる。

 

「うわ、何だ?バイク?いやアレはバイクと言っていいのか?」

「すっげぇー!かっけぇー!」

「あんなの見た事ない、一体どこの誰が?」

 

 突如として現れたバイクらしき乗り物に男の子たちは大興奮。

 バイクに興味の無い私やその他の人たちにも、アレが普通で無いのは一目でわかる。

 近未来的な外観のバイクは元より、搭乗者たちの放つ雰囲気がただ者ではないのだ。

 バイクには二人が乗っていた、運転席には大柄な男性らしき人物、後部座席には少女と思われる体躯の人物がいて男性に抱き着くようにしていた。

 二人とも犬耳のような突起のついたフルフェイスヘルメットを装着しているので顔が見えない。

 あのライリー先生ですらポカンとしている中、少女がバイクから降りてヘルメットを外す。

 頭を振る彼女に合わせ長い黒髪が揺れた。

 

「ふぅ……なんとか間に合ったね」

 

 私はその子を知っていた。

 最後に会った時より大人びた外見に成長していたが、その顔を見間違える事は無い!

 

「……光…ちゃん」

「いのりちゃん、久しぶり」

 

 瞬間、私の中で何かが激しく沸騰した。

 お腹の中が熱い、グラグラする。こんなのは初めてだ。

 前は光ちゃんに会うと嬉しい気持ちでいっぱいだったのに今は違う。

 悔しい、悔しい、悔しい!

 悔しさで彼女が真っ黒に見える。

 あの大会で私は全て出し切った、なのに届かなかった。

 嫌だ、もう負けたくない、リベンジしたい。

 勝ちたい、あなたに勝ちたくて堪らない。

 そのために私は・・・

 

 大事なものを捨てたのだから。

 

「いのりちゃん、ストップ。みんな怖がってるよ?」

「……あ…」

 

 光ちゃんが私の頭にポンポンと触れる。

 それで私はようやく現実に引き戻された。

 ミケちゃんたちが私を見て怯えてしまっていた。

 理凰君や他のみんなも引いている。やってしまった。

 

「闘志メラメラで来てくれるのは嬉しいけど、それは氷上で、ね?」

「…っ…ご…ごめん……」

「全然いいよ!心地よい殺気をありがとうね」

 

 さっきまでの黒い気持ちが一気に霧散した。

 いや、私の殺気を光ちゃんが払いのけた?

 なんだろう、光ちゃんがまるで別人に見える。

 今までにない落ち着きというか包容力が備わった感じがする。

 これが大人の余裕というヤツなのか?

 私より年下なのにどうやって身に付けたのか教えてほしいぐらいだ。

 

「お互い合宿頑張ろうね」

「あ、う、うん」

 

 ぐぁ!なんか光ちゃんメッチャ可愛くなっとる!?

 キラキラしてない?物理的に光ってない?

 元から美人だと思ってたけど、これは反則だろってほどに綺麗で可愛く成長したなあ。

 参加者の男子だけじゃなくて女子や、コーチ陣だって見惚れてるんですけどぉ!?

 理凰君だけはのんきに欠伸しているのは何故?

 お前は光ちゃんラブ勢ではなかったのか?

 奇跡の美少女に殺気を飛ばしてしまった自分が酷く矮小に思えて落ち込むわ!

 でも、それはそれこれはこれだ。

 光ちゃん、絶対に倒すよ!負けないからね!

 

 私が内心で盛り上がっていると、光ちゃんはバイクの運転手に何やら話しかけていた。

 一瞬だけバイクの運転手が私を見た気がする。気のせいかな?

 話し終えた運転手は光ちゃんの頭を一撫でしてから、駐車スペースの方へ走り去っていった。

 

「バイク停めて来るってさ。行こう」

「あ、ちょっと私顔洗ってくる…」

「ん?わかった、後でね」

 

 光ちゃんに会っただけで感情が大きく乱れてしまった。

 夜鷹先生にも『光を意識しすぎるな』と注意されていたのに、この様だ。

 気持ちを切り替えるために冷水で顔を洗っておくことにしよう。

 

 道中でジュニアの特別強化選手・岡崎いるかちゃんに遭遇。

 お姉ちゃんと因縁があるらしいのだが、私を見る目が時々怖い。

 選手としては尊敬できるので合宿中にいろいろと見習わせてもらおう。

 

 ●

 

 メディカルチェックの後、開講式が始まった。

 コーチ陣と選手たちの顔合わせに、特別講師の紹介や合宿中の説明がなされていく。

 選手たちは3つのグループ分けられ、それぞれが別のスケジュールで動くようだ。

 私は光ちゃんといるかちゃんがいるグループとなったので、余計に気合いが入る。

 開講式も終盤に差し掛かった頃、大人たちが困った顔で何やらヒソヒソ話をし始めた。

 何かトラブルでもあったのだろか?

 光ちゃんと瞳先生をチラチラ見ているのも気になる。

 

「えー、狼嵜光選手?」

「はい、なんでしょうか?」

「今日はコーチの方を連れて来られてますよね?その方はどちらに」

「彼は重度のあがり症なので、皆さんに会う前の精神統一をしているみたいです。申し訳ありませんが、もう少々お待ちください」

「はぁ、そうですか。そのコーチなのですが連盟に名前すら知らされていないのは、どういった理由がおありで?」

「それは呪術と私の実家が…」 

「ウェオホンッッ!!!」

「あ、ヤベ……ん、何か手違いがあったようでようですね。苦情は全て"カミサキ"までお願いします、ね?」

「っ!?……承知いたしました」

 

 今の会話変じゃなかった?

 瞳先生の大きすぎる咳払いといい、カミサキという言葉ですんなりと引き下がった連盟の人といい、何かがおかしい。

 おかしいけど下手に突いたらヤバそうなのでみんなでスルーした。

 そのタイミングで部屋の扉がノックされる。

 

「……」 

「えーっと、どちら様?」

「私のコーチです!」

 

 ペコペコしながら入室して来たのは犬耳のフルフェイスヘルメット被った男だった。

 さっきのバイクを運転していた人だ。

 勢いよく立ち上がった光ちゃんが、ヘルメット男にすぐさま駆け寄って行く。

 

「何してたの?みんな待ってたのに」

「……」 

「え?ヘルメットが外れないの、そんなバカな…」 

 

 男の声はくぐもって聞こえないが、ヘルメットが外れなくて困っているようだ。

 何事かとみんなが見守る中、光ちゃんは力任せにヘルメットを引っ張る。

 

「アレ?ぬ、抜けない、マジで外れない!?」

「!?!?!?」

 

 やめてあげて!

 メッチャ痛そうにしてるから!首もげそうになってるから!

 光ちゃんの肩にタップを連打しているの気付いてあげて。

 

「ロックを解除しないとダメみたい」

「……!!」

「指紋認証?……違うか、私のでもエラーが出る。これを作った人がやりそうなロック……あ!そっか」

「???」

「もう!余計な解除方法を設定してくれちゃって。ちょっとジッとしててよ……んっ」

 

 な、な、な、何してるのぉ!? 

 光ちゃんはヘルメット男の頭部をガッチリつかむと、その口元辺りに狙いをつけてキスをした。

 もの凄く自然な動きでキスしやがりましたね。

 みんなが呆気にとられていると、ヘルメットから『ロック解除』という電子音声と金属音がした。

 そしてヘルメット男の素顔があらわになる。

 

 は?

 

 なんで?

 

 なんなのそれ?

 

「ブッハァ!……ハァ…ハァ…や、やっと外れた」

「お疲れ様。とりあえず汗を拭いてあげるね」

 

 光ちゃんが持参したタオルで、甲斐甲斐しく男の顔を拭いていく。

 その顔は慈愛に満ちていた。

 

 その一方で私の頭は大混乱に陥った。

 今の状況は本当に現実なの?これは悪い夢じゃないの?

 

「なんなんだよこのヘルメット!呪われたのかと思ったわ!」

「私の唇紋(しんもん)でしかロックが外れないようになってたの。つまり、キスしないと外れないんだよ!」

「ふざけんな!お前がいなかったらヘルメット団のまま生活しろってか?ああ?」

「私とずっと一緒にいろって事だね。おかあ……ゲフッ!(ヨン)の牙も粋な計らいをするよね」

「お母さんだろ?七星狼・肆の牙はエイヴァさんのことなんだろ!!もうヤダぁこの母娘こわいよぉぉ!」

「バレちゃったwww」

 

 異常なテンションで意味不明な会話を繰り広げる二人。

 周りの全てを完全に置き去りにしていた。

 

 私はもうどうにかなりそうだった。

 グチャグチャになった感情、嫌な汗が出て、体が震える。

 見たくないのに、二人から目が離せない。

 だって、あの人は、光ちゃんと仲良さそうにしている、あの人は・・・

 

 私の・・・だったのに・・・

 

「みんな見てるよ。ほら、シャキッとして」

「あ、え、あああ!?ほ、本日はお日柄もよく、大変お、お騒がせしてしまいすいませんしたァッッ!!」

「何言ってるのwwいいから、ここは私に任せてね」

 

 みんなの脳内に大量の?マーク浮かんでいる。

 そんな中、理凰君は『やっぱりな』みたいな顔をして、瞳先生は頭を抱えていた。

 ミケちゃんは心配そうに私と光ちゃんを交互に見て来る。

 そっか…知っていたんだ。

 

「みんな紹介するね!」

 

 光ちゃんは全身から嬉しい気持ちをあふれさせ、男に抱き着いた。

 男の方は戸惑いつつも『仕方ないなぁ』という表情で光ちゃんを受け止める。

 

「この人が()()()()()…明浦路司さんだよ」

 

 光ちゃんは笑っていた。

 とても、とてもとてもとてもとてもとても、とっっってもっ!

 楽しそうに、嬉しそうに、面白そうに、上機嫌で笑ってみせたのだ。

 それは天使の微笑みだったのだろう。

 だが、私にとってのそれは悪魔の微笑みに他ならなかった。

 

 いつか罰を受ける日が来ると思っていた。

 そのいつかは私が思うよりもずっと早く訪れたようだ。

 

 悪魔の微笑みは私の脳を粉々に破壊した。

 

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