光ちゃんと司先生が結ばれる話   作:青紫

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一件落着?

 ナイトホーク・ピュア太郎だとぉ!?

 一体何者なんだ・・・とでも言うと思ったか?

 

「どう見ても夜鷹純だろうが!」

「キミもしつこいな、僕はピュア太郎だと言っているだろ」

「バカか?」

「バカではない…夜を切り裂く一陣の風『ナイトホーク・ピュア太郎』だ」キリッ

「ウッッッザ!」

 

 しゃがんだままの姿勢でドヤ顔を決めるピュア太郎がウザすぎた。

 顔の半分を手で隠した痛々しいポーズが様になっていて、それが余計にムカつく。

 

 どうしてこの男がここに?

 それは後で問い質すとして、今は光といのりさんの事だ。

 一触即発の二人を止めなくてはならない。

 身を隠した生垣から出ようとするが、ピュア太郎が俺の腕を掴んで制止する。

 この野郎、意外と力が強くて振りほどけない。

 

「邪魔すんなよ」

「今、キミが出て行くのは得策ではない」

「このまま傍観してろってか?殴り合いに発展したらどうするんだよ」 

「そんな事にはならない」

「何を根拠に…」

 

 俺は二人の教え子たちを正しい方向に導く義務がある。

 これ以上、関係が悪化する前に大人が介入するべきだ。

 大人びているとはいえ、二人まだ子供なのだから・・・

 

「僕はいのりを信じる」

「……あ?」

「そして、光のことも信じている」

 

 こいつ、いのりさんを呼び捨てにしているのか。

 腹立つんですけど!無性に殴りたいんですけど!

 信じるって何?何が言いたい?

 

「キミは二人を信じていないのかい?」

「……っ!」

 

 クソッ!やられた、見透かされた。

 よりにもよって、この男に・・・

 二人を心配だと言っておきながら、一時しのぎで場を収めようとしている、己の弱さを見透かされていた。

 二人が争う姿を見たくないという思い、これは俺のエゴに過ぎなかった。

 正面からぶつかって、言いたい事を言い合う過程も彼女たちには必要なのだ。

 それを俺のワガママで止めるなと、ピュア太郎は言っている。

 

「俺だってあの子たちを信じてる!」

 

 立ち上がるのを中断してピュア太郎の横へ並ぶように身を屈める。

 悔しいが、まだ俺の出るタイミングではないというのは理解した。

 

「それでいい」

「チッ!」

 

 『よく我慢した』とで言いたげな顔で微笑したピュア太郎に舌打ちを返した。

 余裕の態度がムカつくんじゃい!

 

 ●

 

 コーチたちが潜んでいる事も知らず、光といのりは口論を続けていた。

 些細なマウント合戦に始まり、どれだけ司の事を理解しているかで揉めに揉めていた。

 

「だからさぁ。司さんは、まず左腕から洗うんだってば」

「なんでそれを知っているかが問題なんだよ!お風呂覗いてるの?」

「偶然の事故だよ。完全防水加工のスマホが動画撮影モードになったまま、風呂場に忘れちゃう事ってあるよね☆」

「あるかぁ!こいつ確信犯の盗撮魔だ!」

「甘いなぁ…いのりちゃんは、コーチの体について熟知するのも教え子の務めなのに」

「だったら、夜鷹先生にも同じ事したの?」

「気色悪いこと言わないでくれる?それはいのりちゃんがすればいいんじゃね?」

「してたまるか!」

 

 常識人であろうとするいのりも、司の()()について光が語り出した時は思わず息を呑んだ。

 詳細は濁されたが、中々に素晴らしいサイズのご立派様らしい。

 

「何の話してるの!?」 

「いや、いのりちゃんも興味津々だったじゃん?」

「もうやめようよ。光ちゃんのせいで、私どんどんバカな子になって行く気がする」

「きっとヨダカのアレは短小だと思うんだけど、どう思う?」

「続けないでよ」

「今度、お姉さんに聞いてみてくれる?小っちゃかったですかってw」

「聞けるかぁ!」

 

 ダメだこのエロオオカミ、早くなんとかしないと・・・

 今の話を誰かに聞かれたら、恥ずかしくて外を歩けない。

 真面目な話をしようと思ったのに、この始末である。

 いのりは光という人間の事がわからなくなってきた。

 

「いのりちゃんにはさ、私と司さんの事を認めてほしいんだよね」

「うわっ、急に真面目になったよ」

「今、おふざけは禁止!」

「先に始めたのはそっちなのに、納得いかねぇ」

 

 まあまあと言いながら姿勢を正した光は、真っ直ぐにいのりを見つめる。

 いのりも彼女の意を汲んで頷き返す。

 

「私は司さんが好き。この先、何があっても添い遂げる覚悟がある。それだけは信じて」

「本気…なんだね」

「うん。この想いだけは、他の何にも代えられない」

 

 光の気持ちは痛いほど伝わって来た。

 彼女の眼差しが嘘偽りではないと教えてくれる。

 

「司さんが私のコーチになったのビックリした?」

「したよ。頭をハンマーで殴られるのってああいう感じなんだろうね」 

「内緒にしていてごめん。正直に言うと、いのりちゃんに意地悪したかった」

「だと思ったよw」

 

 いのりが去ってから、司は本当に苦しんでいた。

 いっぱい悩んでいっぱい泣いて、夜も碌に眠れない日々が続いていた。

 想い人の苦しみを知った光は、いのりに対して少なからず憎悪を抱く。

 『いつの日か後悔させてやろう』『思い知らせてやらないと気が済まない』と・・・

 そうした負の感情を引きずったまま行われたのが、昨日のネタ晴らしであり、人目も憚らず司とイチャつく理由だ。

 見せつける事で、いのりに反省と後悔の念を植え付けてやろうとした。

 光は自分の心情を隠すことなく打ち明けた。

 

「でも、結局自己満足なんだよね。司さんはそんな事を望んでいないって知ってたのに……私、嫌な子だ…」

「だったら、私は光ちゃん以上にサイテーな子だよ」

「いのりちゃん…」

「私は、逃げたの。逃げた癖に…司先生はずっと私の先生だって、思い違いをしていた」

 

 本心を伝えてくれた光に応えたいと、いのりは思う。

 この身勝手でカッコ悪い私を、ライバルのあなたには知ってほしいから・・・

 

 全てをかけて挑んだ決戦に敗北した自分。

 司を裏切ってしまった自分。

 己の至らなさが憎くて仕方がなかった自分。

 今もこうして、光に気を遣わせてしまっている自分。

 

 こんな自分が私は嫌いだ。

 だけど、それでも、私はフィギアを続けるんだ。続けたいんだ!

 氷上でしか生きられない不器用で空っぽな自分になりたいんだ。

 

 きっとそれは修羅の道だ。

 司先生を巻き込んでしまう訳にはいかない。

 いや、違うな。そうじゃない。

 私は怖かっただけだ、期待に応えられない自分の姿を、司先生にこれ以上見てほしくなかった。

 

 ああなんだ。そういう事か・・・

 今、やっとわかった。

 私はただ、見栄を張りたかったのだ。

 司先生には無様な自分ではなく、最高に輝く自分を見てほしかった。

 そのために、司先生を傷つけてしまったら、本末転倒なのだと気付くのが遅すぎた。

 

「バカだなぁ、いのりちゃんは…一緒に苦しんでくれって言えば良かったのに」

「そう、だね。本当にそう出来たら良かったかもね」

 

 光の言う通りだ。

 司先生にはもっと本心をさらけ出してしまえば良かったのだ。

 でも、そうならなかったんだよ。

 夜鷹先生に東京へ行こうと誘われた時、運命だと思った。

 これしかないと、これ以上の良案はないと、これで・・・

 

 私から司先生を解放してやれると、本気でそう思ったんだ。

 

 私って本当にバカだ。

 あーあ、今更ながら笑えて来た。

 自嘲する私を光ちゃんがヤレヤレといった顔で見ている。

 ちょっと自己陶酔入った語りだったのは許してね。

 

 でもさぁ。私の後釜が光ちゃんってのは、さすがにヤバくない?

 厄介な私からリリースした結果、もっと厄介な女の子を教え子にしたのは解せない!

 司先生、あなたという人は、本当に苦労人ですよね!

 

「結局、いのりちゃんは司さんをどう思ってるの?」

「光ちゃん程じゃないけど、好きだよ」

「ラブ?ライク?」 

「ライクでお願いします」

「なんだ、そうなら早く言ってくれれば良かったのに!ライクなら全然オッケー、いのりちゃんとは友達でいられるよ~。いや~良かった良かった」

「ま、今後ラブになる可能性も無きにしも非ず」

「やっぱり貴様は敵かぁぁ!」

「もう光ちゃん情緒不安定ww」

 

 いのりの肩を揺さぶる光の目は血走っていた。

 いろんな意味で油断ならない相手だと、いのりへの警戒レベルを引き上げる光であった。

 

「なんだか変な気分」

「あ、私もずっとそう思ってた」

「いのりちゃんとこんな風にケンカして、バカなこと言い合って、お互い本心さらけ出してさ。おかしいよねw」

「うん、おかしい。でも、嫌な気分じゃないかも」

「そうだね。前よりもっとその、私たちの絆って言うのがね、ほら、強くなった感じがしない?」

「光ちゃん、もっとクサい感じで言ってよ」

「私たちの友情パワーに乾杯☆」

「キモwww」

「よーし、前が見えねェ顔にしてあげるね!」

「やーめーてーよーw」

 

 散々言い合った挙句、相手に対する気持ちが変化していることに二人は気付いた。

 少女たちの間にあったわだかまりは少しずつ解れていく。

 光もいのりも、聡明かつ善性を持った良い子たちである。

 要するに、二人ともケンカはしたが仲直りはしたいと望んでいたのだ。

 

「ヨダカとはどうなの?やっぱ苦労してる?」

「なんかもう慣れたというか、慣れざる負えなかったというか…」

「お姉さんと付き合ってるってマジ?」

「マジだよ。鬱陶しいぐらいにラブラブで、目障り」

「あのヨダカがラブラブとな!?……お姉さんすげぇ!」

「機会があれば紹介するね。いい姉なんだけど、夜鷹先生が絡むと面倒臭いから注意して」

「ふーん。そうだ!いのりちゃんもヨダカとラブラブしたらどう?」

「それはない!気持ち悪い事言わないでよ」

「姉妹丼、楽しみだなぁ」

「おい!今何て言った!?」

 

 

「……と、言うのが私と司さんと出会いって訳」

「ヤバッ!思ったより運命の出会いだった。倒れそうなところを颯爽と救ってくれるとか、最高にカッコイイ///」

「でしょでしょ!『惚れてまうやろー!』って叫びたくなるよね?」

「完全同意!!さすが私の司先生だ////」

「待て待て待てぃ!司さんは私のもんじゃい!」

 

 

「ストーキングの期間が長すぎない?怖いんだけど」

「私がどれだけ悩んだと思ってるの!勇気を出して会いに行ったら、いのりちゃんが生徒だと知った時の絶望ったら」

「普通に声をかけてくれれば良かったのに…光ちゃんって案外ヘタレだよねw」

「く、くそぉ。自覚があるだけに反論できない」

 

 

「私が夜鷹先生を取っちゃった事になるんだけど…それについてはどう思ってる?」

「あ、自分全然平気っス!」

「うわー、これ以上ないってぐらい清々しい顔だ」

「『いのよだ』応援してるっス!」

「しなくていいから」

「姉妹丼も期待してるっス!」

「ホントやめて!」

 

 気付けば二人は笑いながら語り合っていた。

 紆余曲折あったものの、光といのりは互いを大切な友として認め合ったのだ。

 殴り合いにならなくて良かったと思う。

 

 ●

 

 教え子たちを見守る事にした俺は息を潜めて身を隠していた。

 すぐ横にはピュア太郎を名乗る不審者がいるので、居心地は非常に悪い。

 

 いつもの黒ずくめの格好はどうしたんだろう?

 アロハシャツにハーフパンツとは、大胆なイメチェンに踏み切ったな。

 

「最愛の人に勧められてね。似合ってるだろう?」

「そ、そうっスね」

 

 最愛の人とは例の彼女さんか?

 女の意見を聞くような奴には見えなかったが、丸くなったというのは本当っぽい。

 

「何故自分は、年中全身黒一色で過ごしていたのか…今考えると意味不明だ」

 

 夏は太陽光を吸収して辛かったらしい、知らんがな。

 

「おいクソボケ、お前がここにいる理由はなんだ?」

「えぇ…何その態度?以前のキミは僕に対する敬意(リスペクト)があったのに、今は微塵も感じられない」

 

 知るか!

 そんなもん、お前がいのりさんを奪った時点で吹き飛んどるわい。

 それに今は夜鷹純ではなくピュア太郎なんだろ?

 初見の不審者に丁寧な対応ができる程、こちとら暇じゃねーんだわ。

 ムカつくから一発殴っておこうかな?

 

「なんて野蛮な男なんだ!?キミ、変わったよ。それも悪い方向に…」

「お陰様でな。そっちも頭が変になったみたいだな。変態だな」

「こんな僕でも愛してくれる人がいる。彼女のことはそう…ミカエルとでも言っておこう」

 

 お前の彼女は大天使なのか?

 妄想の中で天使と付き合っている、というオチだったら檻付きの病院に入れよう。

 

「言い得て妙だな。彼女こそ僕のため、地上に遣わされた天使に他ならないよ」

「うわ、ウザッ」

「ちょっと惚気話を聞いてくれないか?男同士で恋バナというヤツを体験してみたいんだ」

 

 なんなんだよコイツ、頭アッパッパーじゃないか!

 俺自身も大概だと思ったけど、この変わりようはドン引きだ。

 こんな奴のスケーティングを真似していたとか恥ずかしい////

 

 お前と恋バナなんかするかぁ!

 そもそも、俺は誰にも恋しとらんわい。

 

「本気で言っているのか?光とアレだけ乳繰り合っておきながら…」

「言い掛かりはやめろ。何を根拠にした発言だ」

「熱烈なスキンシップ、親密度が限界突破した距離感、お姫様抱っこに『はい、あーん』、ディープキスまでしていたはずでは?」

「見てんじゃねーよカス!」

「カスじゃない、ピュア太郎だ」

 

 昨日のベロチュー目撃されとるがな!

 光の索敵から逃れる気配遮断は勘弁してほしい。

 

「まさか、光を弄んでいるのではあるまいな?」

「そんな事は断じてしていない!」

「フンッ、日常的に告白されているのに、返事を保留にして逃げるクサレ外道が吠えるなよ」

「言い過ぎじゃね?」

「すまない、失言だった。ヘタレ外道に訂正しよう」

「あんま変わってなくね?」

 

 俺は外道なのか?

 美少女中学生の気持ちを知りながら、有耶無耶な態度を取り続け、イチャコラだけは都合よくする男!

 紛れもないクズだな!!

 

「キミにも立場あり、大人としての倫理や矜持を守ろうとする気持ちは理解する」

「そりゃどうも」

「だとしても、光を(ないがし)ろにしてほしくはない。彼女の害になるようであれば、僕はキミを処断する事も辞さない」

「やってみろよクソが」

 

 俺は光の幸せを本気で願っている。

 ピュア太郎ごときに言われなくても、あいつは大事なパートナーだ。

 蔑ろになどするはずがない!

 寂しい思いをさせている自覚はあるが、俺だって精一杯やっているつもりだ。

 光のコーチを降りた癖に、今更しゃしゃり出てウダウダ抜かしてんじゃねーぞコラ!

 

「やめてくれないか?そんなに睨まれると……いろいろ漏らすぞ」

「漏らすな!」

「フフフ、下手な極道よりキミの方がよっぽど怖いな。光を守るためなら何だってする覚悟はあるとみた……及第点だ」

「偉そうに…お前、光のなんなんだよ?」 

「光に『パパ』と呼んでほしかった、哀れな男だ///」

「かぁっ!気持ちわりぃっ!やだおめぇっ!」

 

 慎一郎さんを差し置いて何を抜かしてるんだ!

 こいつ、光に会わせたらダメだ。早々にお引き取り願いたい。

 かなり脱線したが、この男がここにいる理由はなんだろう?

 オラ!早くゲロっちまいな。

 

「気配を消してずっといのりを見守っていた。その過程でキミと光のアレコレも目撃したわけだ」

 

 ずっとって、一体いつから?

 

「初日からだ。誰にも気付かれることなく、ずっとスタンバってたよ」

「アホか!だったら最初からいのりさんの引率してやれよ!」

「甘いなキミは」

「何?」

「僕は引率しようとして、いのりに断られただけだ」

「悲しい理由ww」

「『あ、いいです。来ないでください』と、真顔で言われた僕はミカエルの胸でちょっと泣いた」

 

 ざまぁwと思いつつ、初めてピュア太郎に同情した。

 合宿にいきなり夜鷹準が来たら周りが大混乱するもんな。

 いのりさんはそうならないよう配慮して断っただけだと思うが、もう少し言い方があったのでは?

 

「夜鷹純ではない、ピュア太郎だ。いい加減覚えてくれ」

「こだわるなぁ」

 

 断られてもコソコソと様子を見に来てしまったピュア太郎。

 それだけ、いのりさんを大事にしているという事か。

 伝わっているかどうかは別として、光に対してもこの男なりの情があったはずだ。

 とても不器用な奴だと思う。

 でも、俺が思っているような冷血人間ではないと知って、ほんの少しだけ親しみが湧いた。

 

「キミのことを『つかっち』と呼んでいいかい?」

「距離の詰め方下手くそか!」

 

 ちょっと気を許したらこれである。

 ライリー先生じゃあるまいし、ピュア太郎からの『つかっち』呼びは勘弁してほしい。

 

「他の候補だと『つかぽん』『つかつか』『ウラジミール』がおススメだ」

「どれも嫌だな」

 

 最後のヤツはロシア人男性に多そうな名前じゃねーか!

 普通に名前を呼びたきゃ呼べよ。

 

「無難でつまらないが、司君に決定だな。フフ、慎一郎君に続いて二人目の友人ゲットだ…」

 

 友達すくなっ!!

 

「司君、LINEというの知っているか?フレンド登録をすると気軽にメッセージのやり取りができる優れモノだ」

「ああうん。後でな」

 

 なんか凄く嬉しそうなので、フレンド認定は嫌とは言えなかった。

 まさか夜鷹純と友達になってしまうとは、人生何が起こるかわからないものだ。

 

「ピュア太郎だ!」

「わかったってば!二人にバレるから静かにしろよ」

 

 ●

 

 光たちの会話が聞き取り辛いと言うと、ピュア太郎が無線のイヤホンを差し出して来た。

 二人の座っているベンチに予め盗聴器を仕掛けておいたらしい。

 やるじゃない!今回は準備が良くて助かったが、用意周到すぎてちょっと引いたぞ。

 

 随分と話し込んでおり、俺の事もしばしば話題に上がるので、照れ臭くてたまらん!

 光の俺に対する激重感情がダイレクトに伝わって来て、顔から火が出そう。

 

「愛されてるな」

「うらやましいか?」

「僕にはミカエルがいる。キミと違って犯罪ではない健全な成人女性の彼女だ」

「犯罪って言うなよ…マジでへこむぞ」

 

 

「小さいのか?」

「ノーコメントだ」

「ま、まあ、人それぞれだから、気にしない方がいいと思う」

「そんなに言うなら確認してみるかい////」

「きめぇwww」

 

 不本意ながら、教え子たちの会話に一喜一憂する俺たちは、似た者同士なのかもしれないと思った。

 

 それにしても、主に光のせいで会話の内容が少々お下品だ。

 あれではツッコミを入れるいのりさんも、さぞや大変だろう。

 光の奴め、立派な淑女から全力で遠ざかってるではないか。

 鴗鳥家やカミサキにも申し訳が立たないので、後ほど説教しておこう。

 

「……」

「……」

「する気か?」

「何を?」

「姉妹ど…」

「言わなくていい。キミは光に何を教えてるんだ!?見損なったよ」

「俺のせいにするなよ。あいつの偏った知識は元からだろ!」

「いいや、キミの下へ行ってから確実に酷くなっている。あの子に何をした?」

「したというか、されたのは俺の方だというか」

「なんだと!既に一線を越えてしまっていたのか、おめでとうロリコン」

「うるせーよ姉妹丼のクズが」

 

「あ?」(゚Д゚)

「お?」(゚Д゚)

 

 教え子たちが仲直りしたというのに、コーチたちはみっともなくメンチを切り合っていた。

 

 

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